社会貢献

アドボカシーとは?NPOの活動事例とともに専門メディアがわかりやすく解説!

「アドボカシーってどういう意味?」
「アドボカシー活動って具体的に何をするの?」

このように考える方に向けてこの記事では以下の内容を紹介します。

  • ・アドボカシーとは?
  • ・アドボカシー活動を行うNPO6団体
  • ・アドボカシーに参加するには?

アドボカシーとは、社会的な立場の弱い子どもや高齢者、貧困地域に住む人々に代わって、個人の権利を主張し支援する活動のことをいいます。

社会的立場が弱い人々のために行動してみたいと考えている方は、ぜひご一読ください。

アドボカシーとは?

アドボカシー(英:advocacy)とは、「擁護」「支持」を意味し、個人の権利をなんらかの理由で行使できない人に代わり、実現を支援する仕組みのことをいいます。

世界では、貧困や差別などの厳しい環境を自ら変えられない人たちがいます。また、高齢者や障がい者、子どもたちなどの社会的弱者は、自らの力で権利を表明するのが困難な状況にあります。状況を改善し、彼らの権利を守るために代わりに声をあげ行動する活動が、アドボカシーです。

「アドボカシー=政策提言」と訳されがちですが、働きかける相手は政府だけではありません。

具体的な例として以下のような場面があります。

  • ・高齢者や障がい者、患者が生活に不便を感じていても、それを伝えることができない状況において、介護士や看護師などが見つけて代弁すること
  • ・養護施設で暮らす子どもが直面する不安や悩みを関係者が受け止め、解決に向けて取り組むこと

アドボカシーは、アメリカで市民の要求を政策にまとめて提言する活動として広がりました。

日本においてアドボカシーが大きなムーブメントとなったのは「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンです。貧困問題の解決を目指し、アーティストやタレント、スポーツ選手などの著名人がシンボルとなった「ホワイトバンド」を広めました。このキャンペーンは、当時まだアドボカシーが知られていない日本において、大きな注目を集めました

アドボカシーという言葉はビジネス分野でも使われており、自社のサービスや商品を熱心に支持して使ってくれるファン心理を指します。このような熱心な顧客を得るため、徹底的に顧客本意のサービスを提供する手法をアドボカシー・マーケティングと呼んでいます。

本記事では社会福祉分野におけるアドボカシーについて解説します。

アドボカシーが求められる背景

貧困状態の人や差別されている人、高齢者、障がい者、子どもたちといった社会的に立場が弱い人たちは、経済力や知識が不十分であったり、発言の機会がなかったりします。問題解決に向けて自ら声をあげることが難しいため、力のある代弁者が代わりに声をあげる必要があります。

また、当事者だけだと伝えられる範囲が狭かったり、客観性が低くなったりするので、多くの協力者が必要となるのです。

アドボケイトとは?アドボケーターとは?

「アドボケイト」とは、介護や看護、福祉の現場において、権利主張のできない子どもや障がい者、寝たきりの人などに代わってその権利を主張し支援する人のことです。つまり、アドボカシーを実践する代弁・擁護者のことをいいます。

「アドボケーター」はアドボケイトと同じ意味で使われています。

アドボカシーの活動内容


ここではアドボカシーの活動内容を、訴えかける相手別に解説します。

  1. 政府や行政
  2. 一般市民

上記に訴えかける全段階として、実態調査を行う場合もあります。説得力のある情報を収集したり、活動が与える影響の大きさを明らかにしたりするためです。

1.政府や行政への訴えかけ

政府や地域の行政機関に対し、政策を変えるよう呼びかけます。

代表的なものとして、以下の2つがあります。

  • ・ロビー活動(ロビイング)
  • ・署名、デモ

ロビー活動とは、団体や企業、個人などが自分たちの主義主張が政策に反映されるよう、政治的な影響力のある議員などに接触して働きかける活動のことを言います。直接会うだけではなく、電話やファックス、メールなどを通して行ったり、新聞等に意見広告を出して政策提言を行ったりすることなどもロビー活動に含まれます。

署名を集めて政治家など影響力のある人に提出したり、公共の道路を借りて意見を表明したりして、問題を訴えかける方法もあります。

2.一般市民への訴えかけ

政府への訴えかけがメディアに取り上げられ社会を動かす場合もあれば、逆に一般市民への訴えかけが世論を形成し、それが政府への訴えかけになる場合もあります。キャンペーンや広報活動を通して、人々の意識を高め、行動を喚起していきます。

方法として、以下のようなものがあります。

  • ・テレビなどのマスメディアを利用し、多くの人に問題を知ってもらう
  • ・ソーシャルメディアを使って、知人や繋がりのある人に向け社会問題を発信する
  • ・イベントや講演会を開き、協力者や仲間を増やす

これらを活用して世論を形成し、人々の行動を促します。

アドボカシーを行うNPO団体6例


ここではアドボカシーを行っている6つのNPO団体を具体的な活動事例とともに紹介します。

公益財団法人 日本ユニセフ協会


ユニセフは約190の国と地域で子どもたちの命と健やかな成長を支えるため、保健、栄養、水と衛生、教育、児童労働などからの子どもの保護、緊急支援・人道支援の分野で活動しています。

ユニセフの活動を通して「すべての子どもの権利が実現される世界」を目指しています。

ユニセフのアドボカシー活動は、こども基本法にも書かれた「子どもの権利条約」のさらなる普及と実施が中心です。

2022年には、国会議員への働きかけや情報提供、こども家庭庁準備室との連携、広報活動等を通して、こども基本法、こども家庭庁の誕生を応援しました。ユニセフが作成した「レポートカード16(※)」は、国会でも何度も取り上げられ、この動きを大きく後押ししました。

※レポートカード16:日本の子どもの幸福度(ウェルビーイング)の課題を提起し、子どもの意見を聴くことや、子どもに関わる政策を調整することの重要性を伝えたレポート。子どもの幸福度を、多層的・多面的な新しいモデルを使って分析した。日本は38カ国中20位

ユニセフについてもっと知りたい方はこちらをご一読ください。
>>【口コミ・評判】ユニセフは怪しい?信頼できるかを寄付専門メディアが徹底解説

認定NPO法人 フローレンス


フローレンスは、親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決するため、病児保育、小規模保育園、障害児保育・支援、特別養子縁組、子ども宅食、ひとり親支援などの事業に取り組んでいます。

活動を通して、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現を目指しています。

フローレンスの署名活動により、以下の政策が実現しました。

  • ・ひとり親世代の児童扶養手当引き上げを36年ぶりに実現(2023年4月分より)
  • ・10万人以上の署名を集め、児童虐待防止法の改正案を提言(2016年6月に成立)

他にも、子育て家庭の悩みを解決するための仕組みをつくり政府に提案しています。

フローレンスが2010年に始めた小規模認可保育所「おうち保育園」は、2015年に待機児童問題解決の国のモデルとして認められました。現在は3,500ヶ所と全国に広がっています。

フローレンスについてもっと知りたい方はこちらをご一読ください。
>>【怪しい?】フローレンスの気になる評判や実態は?寄付先として信頼できるかを徹底解説

認定NPO法人 カタリバ

カタリバ
カタリバは、自身ではどうすることもできない家庭環境などの課題を抱える子どもたちを対象に、居場所・学習・食事を地域と連携しながら届ける活動などを行っています。

活動を通じて「すべての10代が意欲と創造性を育める未来」の実現を目指しています。

カタリバの特徴は、支援対象である10代の子どもたちだけでなく、学校や行政、地域のNPOと連携して事業に取り組んでいることです。

2022年に、オンライン署名プラットフォーム「みんなのルールメイキング」を立ち上げ、全国の中学・高校と連携して取り組む対話的な校則見直しを行っています。各学校のルール作りの活動を個別にサポートするだけではなく、自治体と連携した普及にも取り組んでいます。

カタリバについてもっと知りたい方はこちらをご一読ください。
>>【実際どう?】カタリバの気になる評判は?寄付先として信頼できるかを徹底解説

認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ

全国こども食堂支援センター・むすびえ
むすびえは、各地域のこども食堂ネットワークの支援、社会に貢献したいと考えている企業・団体と協働でこども食堂の支援、こども食堂に関する調査・研究を行っています。

こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくることをめざしています。

むすびえは、子ども・こども食堂・支援者をつなぐための調査研究事業と、それを活用した適切な制度・政策の実現のための活動を行っています。

具体的には

  • ・全国箇所数調査
  • ・こども食堂実態調査
  • ・こども食堂の現状&困りごとアンケート

といった調査を行っています。

また、理事長の湯浅誠さんを中心に、こどもの居場所づくりに関する検討委員会に参加するなど、政策実現に向けた提言活動に取り組んでいます。

むすびえについてもっと知りたい方はこちらをご一読ください。
>>【怪しい?】むすびえの気になる口コミ評判は?寄付先として信頼できるかを徹底解説

認定NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパン

ワールドビジョンジャパン
ワールド・ビジョン・ジャパンは、約100カ国において保健、水衛生、生計向上、教育、栄養の分野での開発援助や緊急人道支援を通して、困難な状況で生きる子どもたちのために活動しています。

活動を通じ、宗教、人種、民族、性別にかかわらず「すべての子どもたちが健やかに成長できる世界」を目指しています。

ワールド・ビジョン・ジャパンがアドボカシーに取り組む分野は、「持続可能な開発目標(SDGs)」「子どもの権利」「紛争・難民」「保健・栄養」「人身取引」などです。

アドボカシーは、多くの人による合意を得るため

  • ・政府・国際機関と市民社会の両方に働きかけ
  • ・支援地域での啓発活動
  • ・国際レベルでの政策提言

など、さまざまな方法で行われています。

活動の1つとして支援地域において地域コミュニティと公共サービスの提供者の対話を促しています

例えば、ケニアのツルカナ地域では、コミュニティの人々の働きかけにより、地域の保健サービスのための予算や人材確保の状況が改善しました。また、このプロセスへの参加を通じてコミュニティの保健に対する意識が高まりました。これにより、より多くの人々が保健施設を利用するようになり、より多くの子どもが予防接種や栄養不良の場合の対策を受けられるようになったのです。

ワールド・ビジョン・ジャパンについてもっと知りたい方はこちらをご一読ください。
>>【怪しい?】ワールド・ビジョン・ジャパンの気になる評判は?寄付先として信頼できるかを徹底解説

特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)


AAR Japan[難民を助ける会]は世界14カ国で紛争・自然災害・貧困などにより困難な状況に置かれている人々を支援しています。

活動を通し、一人ひとり多様な人間が、各々の個性と人間としての尊厳を保ちつつ共生できる、持続可能な社会を目指しています。

現地での直接の支援だけでなく、戦争や貧困などの渦中にいる、なかなか声を上げることができない人々の声を拾い上げ、現地政府や国際社会、先進国の世論に改善策を提言しています。

例えば、地雷の被害者支援を行ってきた経験を活かして、スイス・ジュネーブで開催された地雷対策に関する国連主催の国際会議にて政策提言を行ってます。

AARは他にも、以下のようなキャンペーンに参加し、世論に訴えかけています。

  • ・ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)
  • ・キラーロボット(※)反対キャンペーン

※キラーロボット:人間の介入および操作なしに攻撃目標を定め、人を殺傷する自律型致死兵器

難民を助ける会についてもっと知りたい方はこちらをご一読ください。
>>【怪しい?】AAR Japan[難民を助ける会]の気になる評判は?寄付先として信頼できるかを徹底解説

アドボカシーに関してよくある質問2つ


アドボカシーに関してよくある質問を2つ紹介します。

  1. アドボカシーをするには資格が必要?
  2. アドボカシーに参加するには?

1.アドボカシーを行うには資格が必要?

アドボカシーを行うのに資格は必要ありません。誰でもアドボカシー活動ができます。

体系的に学びたい人は。民間団体が開催する養成講座を受講することでより効果的な手法が学べます。

子どもの意見を尊重するための「子どもアドボカシー」に関しては、NPO法人が専門の講座を開いています。講座はアドボケイトを目指す人だけでなく、学校や福祉、保育など、様々な分野で子ども・若者と関わる方にも役立つ内容となっていることが多いです。

子どもアドボケイトは、子どもが意見を表明する権利を支えるために存在するので、保護者や学校など子どもに関わる人や組織から完全に独立している必要があります。よって、質を担保するため、アドボケイトの『国家資格化』をめざす動きも出てきています。

2.アドボカシーに参加するには?

アドボカシー活動に参加するのは、難しいことではありません。

友だちや家族等、まわりの人たちに世界の子どもたちのことや社会課題に取り組む団体のことを伝え、広めることもアドボカシーの1つです。世界の課題を知る人が増え、同じ思いを抱く仲間が増えれば、世界は少しずつ変わっていきます

具体的には

  • ・SNSで社会課題に取り組む団体の活動に、いいね・リツイート(リポスト)する
  • ・各団体が行う街頭募金活動に参加する
  • ・署名活動を広める

などがあります。

少しでもアドボカシーに関わってみたいなと思った方は、本記事で紹介した6団体のホームページやSNSをチェックしてみてくださいね。
>>アドボカシーを行うNPO団体6例

アドボカシーへの参加は社会貢献の1つ!私たちも今すぐ関われる


この記事では、アドボカシーとはなにかを解説しました。紹介した内容をまとめます。

  • ・アドボカシーとは、子どもや高齢者、貧困地域に住む人など社会的に弱い立場にある人々に代わり、個人の権利を主張し支援する活動のことである
  • ・アドボカシーを行うNPO団体は国内に多くあり、子どもの権利を守るためなど様々な活動を行っている
  • ・アドボカシーには、政府や行政への働きかけと一般市民への働きかけと2種類あり、どちらも誰でも参加することができる

アドボカシーは誰でも参加することができます。なかなか自ら声をあげられない人の役に立ちたいと考えている方は、ぜひ検討してみてください。

こちらでは、他にもできる社会貢献を紹介しています。ご一読ください。
>>個人でできる社会貢献とは?種類や活動例など学生でもできることを解説

なかなか時間がないという人はインターネットで手軽にできる寄付をする方法もあります。
>>はじめて寄付する人必見!寄付の仕方や団体の選び方まで完全ガイド

この記事を書いた人
gooddoマガジンはソーシャルグッドプラットフォームgooddo(グッドゥ)が運営する社会課題やSDGsに特化した情報メディアです。日本や世界の貧困問題、開発途上国の飢餓問題、寄付や募金の支援できる団体の紹介など分かりやすく発信しています。 なお、掲載されている記事の内容に関する「指摘・問い合わせ」「誤字脱字・表示の誤りの指摘」につきましては、こちらの報告フォームよりご連絡ください。

- gooddoマガジン編集部 の最近の投稿