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人身取引が多い国や現状とは?法律や議定書など国による取り組みなども解説

人身取引が多い国や現状とは?法律や議定書など国による取り組みなども解説

日本に住んでいる方にとって「人間が組織によって売られる」という言葉は、具体的なイメージが湧きづらいかもしれません。

しかし、世界に目を向けると女性や子どもたちを対象にした人身売買が当たり前のように横行しているのです。

今回は、人身取引の定義から目的、人身売買が行われている地域の他、人身売買が引き起こす問題と具体的な支援活動などを紹介します。
人身売買の凄惨な現実を知り、どのような支援を必要としているのか知ることができるでしょう。

人身取引とは


人身取引(人身売買)とは、「弱い立場にある人を搾取する」ことが根底にあります。

ここで言う「弱い立場にある人」とは子どもたちや女性が対象とされる場合が多いです。

強制的な手段である暴力・脅迫・誘拐・詐欺・拉致などで人員を獲得し、その後は労働を強いたり、奴隷化したりすることを指しています。

人身取引の目的は、強制労働と性的搾取に利用される場合がほとんど。
他にも、偽装結婚、強制結婚、ポルノ制作・臓器売買などを目的としたケースもあります。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

人身取引はなんのために行われる?


では、人身売買をする目的は一体何なのでしょうか。

強制労働

強制労働には、「家庭内労働」と「家庭外労働」があります。

「家庭内労働」は、家事や子守り・子育てなどを主に担当し、家業として行われている農業なども手伝います。

貧しい国の多くは小さな子どもたちが教育を受ける権利が保障されていません。その理由として人身売買によって教育を受けられないまま、家庭内労働が行われていることが背景に存在しています。自分の子どもに教育を受けさせる代わりに、貧しい国の小さな子どもを働かせる家庭も多いのです。

児童売春・強制結婚

働き手の男たちを癒すために、「売春」「結婚の斡旋」などは大きな利益を生むビジネスになっています。

人身売買によって強制的に売春宿で働くことを強要するのです。
もし反抗的な態度を取った場合は、店主からの暴力に屈服するしかありません。

このような悲惨な現状から逃げることができず、毎日複数の男性と性的関係を持つことを強制されます。

毎日の性交渉によって、性病を発症した場合には商品価値がなくなったとして簡単に切り捨てられます。また、知らない男性と強制的に結婚させられ、性的搾取の対象となり暴力で従わされることもあります。ここでは、自身の意志は無視され続けるのです。

臓器売買

臓器移植が必要な人たちは世界に数多くいます。
大切な人を助けたいという想いから、多くの人が大金を出して臓器購入を希望します。

しかし、このような臓器売買をビジネスとして多額の利益を生み出す組織があるのです。

人身売買で購入した人間の臓器を摘出する例も少なくありません。

その他にも、生活があまりにも苦しいことから子どもの綺麗な臓器を提供してお金に変えるケースも増加しています。

人身取引が多い国


次に、世界的に人身取引が多い国について具体的に説明します。

中国

中国は臓器売買の闇マーケットが最も大きい国とされています。
臓器は高値で売れることから、臓器売買を目的とした人身売買が後を絶ちません。

その他にも「一人っ子政策」を導入しているため、「男の子が欲しい」「2人目が欲しい」などの理由で子どもが売買されるケースや、「人権や命よりも金銭」という思想が根付いていることで、人身売買を行って高いリターンを得ることに比較的抵抗が少ない点も影に隠れています。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

インド

インドは人身売買における送出国、中継国、受入国として機能しています。

人身取引がなくならない理由として、インド国民の中に根強く残るカースト制度が挙げられます。インドではスラムに1億人以上が住んでいると推定されており、差別が横行しています。また、インド周辺国の貧困問題にブローカーが付け入ることで、周辺国の女性に「インドで給料の高い仕事を紹介する」という文句で、売春宿に売っていくのです。

特に、ネパールとインドの国境線は「オープンボーダー」と呼ばれており、ビザ、パスポートがなくても国を行き来することができてしまいます

この「開けた国境」が、人身売買を生む原因のひとつになっているのです。

(出典:認定NPO法人 かものはしプロジェクト公式ホームページ)

アフリカ

アフリカで起きている人身売買の背景には「貧困」が原因として挙げられます。

例えば、自身の子どもたちに教育を受けさせることで、自宅で行っている農業などの人手が不足してしまいます。
その不足人員を他国から買い、家庭内労働を強いるパターンも増加しているのです。子どもたちが教育を受けられたとしても、他国の貧しい国の子どもが教育を受ける権利を奪われてしまいます。

そして、サハラ以南のアフリカ地域は世界のあらゆる地域の中でも児童労働に従事する子どもの割合が最も高い地域と指摘されているのです。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

人身取引の被害にあう子どもたちに及ぼす影響とは


人身取引において被害者になってしまう子どもたちには、どのような影響が及んでしまうのでしょうか。

教育を受ける権利を失う

人身売買によって、強制労働を強いられた子どもたちは学校に通って勉強する権利を失います

「小さい頃に他人の家で家庭内労働を余儀無くされる」
「売春宿に売られてしまい、逃げることができない環境で仕事をする」

特に小さな子どもたちが強制労働を強いられることで、大人になった時の職業選択もできなくなってしまいます。
また、自分の子どもに教育を受けさせるために他国から働き手の子どもを買う負のスパイラルも続いているのです。

未来の「貧困」から抜け出すためにも、教育を受けることは大切な権利となります。

精神的なストレスを抱える

人身取引で売春宿に売られた女性は精神的なストレスを多く抱えることになります。

給料の良い仕事があるなどを誘い文句に、売春宿に売られる女性は後を絶ちません。そんな彼女たちに待ち受けるのは複数の男性との性的搾取なのです。

建物には常に見張りが付いており、自由に外出することもできない環境です。そんな中で反抗的な態度を取れば、暴力で屈服されられ奴隷のような扱いを受けるのです。売春宿から解放されたとしても、彼女たちは心の中に一生消えない傷を抱えて生きていくことになるでしょう。

身体的な暴力

人身取引の対象になる人のほとんどは子どもと女性です。
これは「身体的暴力で屈服させることができる」という理由があります。

反抗的な態度を取れば武力で行使。このような暴力は、未来にも大きな傷を残します。

人身取引を引き起こす原因・背景とは

次に、人身売買が引き起こされる原因と、社会的な背景について説明します。

貧困

人身取引が引き起こされるひとつ目の原因は「貧困」です。

「貧困問題」は、世界的にも重要な問題になっています。

例えば、農業に収入を依存しているアフリカにおいては、ここ数年進行している「地球温暖化」による異常気象の影響を受けているのです。

大規模な干ばつや長期間の日照りによって収入が激減、日常的な生活を維持することが困難になってしまいます。

また、スラムに住んでいる子どもはゴミ拾いなどで生計を立てる「スカベンジャー」を家族を守るために強いられることがあります。

このような貧困に苦しんでいる人に対して、人身売買を扱うブローカーが甘い言葉を投げ掛けるのです。

「都会に行けばいい仕事があるよ」
「家事手伝いの仕事でたくさん稼ぐことができるよ」
「あなたにだけ紹介する仕事だから誰にも言わないで」
「早く決めないと仕事がなくなってしまうよ」

このような巧みな言葉で「家族を少しでも楽にしたい」「将来の夢を叶えたい」という純粋な想いを強制労働力としてカウントします。

貧困であることが、人身売買を生み出すひとつのきっかけになっているのです。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

教育

人身売買に繋がる「貧困」は、連鎖します。

例えば、両親が教育を一切受けずに、小さい頃から安い賃金で働いている場合、生まれてきた子どもに対しても学校に行かずに働くことを強いるでしょう。

一切の教育を受けられずに、働くことだけ教えられた子どもが大人になり、家族を持った場合も、「学校に行かずに働く」という考え方が継承されるのです。

この「貧困のスパイラル」を断ち切るためには、「教育」が必要になります。
もし子どもたちが満足に教育を受けることができたら、将来の職業選択にも幅が生まれ、十分な賃金を得られる仕事にも就きやすくなるからです。

目に見える結果になるまでに時間を要するため、「教育」は後回しにされがちです。しかし、将来的な貧困から抜け出すためにも必要です。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

紛争

民族・宗教などの問題により、紛争が多く起こっている国があります。
紛争は、お金に困らず裕福に暮らす家庭からも全てを奪い、一瞬にして貧困に陥れる怖さがあるのです。

食べるものや、生きるためのお金がなくなった時にブローカーなどからの誘いを受けてしまうと、人身売買の対象になる場合があります。
生活に困っていない層も、簡単に人身売買の対象になることも知っておくべきことでしょう。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

ビジネス

人身売買は、多額の利益を生むビジネスとして多くの組織が活動しています。
具体的なビジネスを以下に示します。

ポルノ制作

インターネットが普及している現在は、世界に対してコンテンツを販売することが可能です。

その中でも人身売買の小さな女の子、女性を利用したポルノコンテンツで莫大な利益を得る組織が存在するのです。
何か分からないままに、ポルノ制作組織に引渡しが行われ、ポルノコンテンツを作る道具として使われてしまいます。

このような事例の急増から、ポルノコンテンツに対してもっと警鐘を鳴らすべきでしょう。

臓器売買

自身の大切な人を守るために、人身売買で売られた人の臓器が使われます。

このような臓器売買も、多額の金額が動くことからビジネスとして多くの組織が暗躍している現実があるのです。

大切な人を守るために、誰かの未来を奪うビジネスは大きな問題となっています。

国の特色

中国では拝金主義が広まっており、結婚するために「資産」がより重視され、多くの女性がより多くのお金を稼ぐ男性との結婚を目指し都市部に移動しています。
これによって、中心部から離れた農村部の男性の結婚が難しいという実態が浮き彫りになっています。

この問題を解決するために、中国周辺国から女性を斡旋しています。
良い働き口があるなどと女性を騙し、農村部の男性と強制結婚させるのです。

力を持つ先進国で起きる問題に対して、貧しい国の人間が使われる構図が浮き彫りになっています。

(出典:日本ユニセフ 公式サイト)

人身取引の被害者に行われている支援活動


ここまでは人身取引を引き起こす原因、背景などについて解説しました。
次に人身取引の被害にあった方に行われている支援活動をご紹介します。

被害にあった人に対して心身回復をサポート

売春宿に売られた女性たちの精神的なダメージは計り知れません。
助けられたとしても、あまりの恐怖から社会復帰することが難しくなるケースがほとんどです。
また、売春をしていた事実から周辺住民からの差別、政府の保障制度に対するアクセスの難しさも更なる苦しみを与えます。

そんな彼女たちを助けるために心身回復を行うサポート事業がスタートしました。

具体的な活動内容として、ダンスや体の動きを通じて自分の体であることを認識するセラピーや、語学教育、社会復帰を目指すためのリハビリプログラム、政府の保障制度を利用するサポートなどを行っています。

人身取引の原因となる問題に対して行われている支援活動


ここまでは、人身取引の被害者が社会復帰するための支援活動を取り上げました。
次に、人身取引の原因となる問題に対する支援活動を解説します。

貧困問題に対する支援活動

貧困問題として注目を集めているのが「学校給食制度」です。

学校給食が取り入れられることで、「学校に行けば無料でご飯が食べられる」というメリットから学校に通う子どもたちの増加が期待されます。

また、学校に通う習慣ができることで将来的な職業選択も可能になり、未来に対して希望を持って生きるきっかけになるのです。

貧困問題とは、食べるものがないことが原因で子どもたちに労働が強いられることが原因です。

この問題を断ち切ることで、断続的に続く貧困問題に終わりを告げるきっかけになるでしょう。

(出典:国連WFP 公式サイト)

紛争問題に対する支援活動

紛争が原因で難民になった人は、すべてのものが一瞬で奪われます。

そんな難民になった人々に対して、多くの法人が支援を行っているのです。

例えば、紛争被害にあった精神的な悲しみから抜け出すためのカウンセリング、心理的ケアや離れ離れになった家族を詳細なインタビューによって捜索する活動を行なっています。

また、難民になってしまったことで受けられなくなった教育。

実際に避難した難民キャンプで教育支援を行なったり、現地スタッフの給与支援なども行うのです。

その他にも、死亡率が高い5歳以下の子どもに対しての適切な栄養食と治療を行います。

このような生活に関わるたくさんの支援によって、難民が日常生活に戻れるよう動いているのです。

人身取引の被害者に対して私たちができること


最後に、人身取引の被害を受けた人に対してできる支援について説明します。

寄付

問題の起きている最前線で活動している団体も、資金がなければ動くことは出来ません。
そのような団体に対しての支援は、常に求められています。

継続寄付

生活の基盤となる「食事」「医療」「電気」などのお金は毎日継続的に発生します。
継続的な支援は、このような生活基盤を守る上でも重要な支援です。

単発の寄付

まずは1度だけ寄付してみたい、という想いでも構いません。それでもひとりの命を救う可能性があります。
日本では少額だとしても、問題に苦しんている人たちにとっては大きな支援となるでしょう。

遺言や寄贈による寄付

近年は、遺言などでお金を寄付するケースも増えてきました。
使いきれなかったお金を恵まれない状況に苦しむ人たちに支援することも可能です。

現実を知り情報を広める

そして、最大の支援は「どのようなことが起きているのかを知る」ことです。
世界で確実に起きている問題を学び、周りに広めていくことが必要です。

ひとりの行動がきっかけで多くの支援が集まることにも繋がります。

私たちの行動が人身取引の被害者を救う大きな力になる


今回の記事では人身取引の概要から各国の現状、実際に行われている支援活動について解説しました。

世界で起きている人身取引事情はとてつもなく深刻です。
貧困、紛争などの問題と絡み合うことで、簡単には解決できない状態になっていることは事実です。

しかし、少しずつ改善していくことはできるはずです。
そのためにもできる限り多くの人が現状を知る必要があります。そしてできる範囲でも支援を始めることが大切なのではないでしょうか。

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