大気汚染は生産・消費活動が原因の可能性も?人に及ぶ被害や影響について知ろう


私たちが住むこの地球は大気に覆われ、人や動植物を守っています。

そんな大気の汚染は、私たちや自然環境に様々な悪影響を与えることにつながります。大気汚染の原因としては私たちの生産や消費活動が要因の一つとされています。

この記事では大気汚染の原因、そして人に及ぶ被害や影響について紹介します。

大気汚染とは

大気とは地球を取り巻く空気の層であり、太陽から放たれる有害な光線である紫外線やX線などから地球を守るバリアの役割をしているものです。
また地表の温度を一定に保つ効果もあります。大気そのものは地表から1,000kmもの分厚さで地球を保護してくれています。

大気汚染とは空気の層が自動車や工場などから出る化学物質によって汚染されることを言います。

それだけでなく、その原因となる化学物質は空気中で人間を含む動植物にとって有害な物質に変化し、様々な問題を引き起こす原因になっています。

(出典:豊田市「空気のよごれ(大気汚染)」,2019)
(出典:環境省「大気汚染が引き起こす問題」)

大気汚染に関するする日本の歴史

大気汚染と日本とはこれまで長い歴史があります。日本では明治政府の成立後、それまで鎖国によって差がついてしまった列強国に対抗するため、殖産興業政策による国の経済強化を図っていました。

その頃には大気汚染は問題視されていませんでした。それから幾度かの時代の節目をむかえ、第二次世界大戦後には高度経済成長と呼ばれる他国に類のないほどの経済成長を果たしました。

しかし1901年の八幡製鉄所の開業以降、大気を汚染する化学物質の発生は増えていき、高度経済成長を迎え大きな発展を遂げたころには深刻な環境汚染が始まっていたのです。

これが社会問題にまで発展した公害問題です。環境汚染は大気汚染だけに留まらず、河川などへの化学物質の流出から井戸水の汚染や水質汚濁などの公害をもたらし、さらに水俣病イタイイタイ病を引き起こしました。

これもまた人々や動植物に多大な害をもたらしましたが、大気汚染も深刻な公害病である四日市ぜんそくを発生させています。

これらが日本の大気汚染を含む公害の最も悲劇的な結果を生んだ四大公害病です。
このような事態となり、やっとその対策に乗り出したことで1967年に公害対策基本法が成立し、環境法の整備が始まりました。

しかし新しく都市・生活型公害や地球環境問題などの環境問題が発生しました。新たな問題に対応するため、1993年には現在の地球環境時代に相応しい新たな枠組みとして制定されたのが環境基本法であり、これに基づいた政策として環境基本計画が策定されました。

公害の中でも大気汚染は今なお起こる環境問題であり、これを含む幅広い問題に対処するため、循環、共生、参加、国際的取組の4つの原則に基づいて、新しい環境政策システムの構築が必要であると考え、それに対する取り組みが現在も行われています。

(出典:独立行政法人 環境再生保全機構「日本の大気汚染の歴史」)
(出典:総務省「公害」とは」)
(出典:国立研究開発法人 国立環境研究所「4大公害病」)

  • 大気汚染とは空気の層が自動車や工場などから出る化学物質によって汚染されること
  • 1901年の八幡製鉄所の開業移行、大気を汚染する化学物質の発生は増えていき、その後四大公害病と言われる悲惨な被害があった
  • 1993年には現在の地球環境時代に相応しい新たな枠組みとして環境基本法が制定された

大気汚染の原因とは

大気汚染の原因は先述したように、自動車や工場などから排出される化学物質です。私たち人間が社会活動によって大気汚染は引き起こされると言われています。

1960~1980年代の高度経済成長期には、工場から大量の二酸化硫黄(SO2)などが排出されました。この物質は大気中に留まり、汚染の原因となる化学物質です。
工場による汚染物質の排出は二酸化硫黄が主になりますが、自動車からはまた別の物質が排出されます。

自動車は私たちの移動手段としてだけでなく、物流などにも利用され、長時間あるいは長距離を多くの自動車が移動します。そのため人口が多い大都市を中心に自動車、特にディーゼル車から排出される二酸化窒素(NO2)浮遊粒子状物質(SPM)が大気汚染を進行させる原因物質となり問題となりました。

これらの大気汚染物質は、人を含む生物の呼吸器に望ましくない影響を与えます。
現在は大気汚染防止法などで規制されるようになった物質も多いですが、それまでは数多くの化学物質が大気中に排出され、大気汚染を引き起こしていました。

健康被害

これらの化学物質は人体や生物の身体に深刻な影響を与えます。先述した四日市ぜんそくはその中でも特に悲惨であり、公害を世に知らしめ、対策を講じる要因となった健康被害だと言われています。

大気汚染は広域にわたり起こるため、広範囲で健康被害は引き起こされ、酷い場合は死者も出してしまうなど、深刻な問題となっています。

  • 1960~1980年代の高度経済成長期には、工場から大量の二酸化硫黄(SO2)などが排出され、大気汚染の原因となった
  • 自動車、ディーゼル車から排出される二酸化窒素(NO2)や浮遊粒子状物質(SPM)が大気汚染を進行させた
  • 大気汚染物資は、人体に多大な影響を引き起こす

(出典:独立行政法人 環境再生保全機構「大気汚染の原因」)
(出典:独立行政法人 環境再生保全機構「大気汚染物質の種類」)

大気汚染防止法

大気汚染を食い止めるため、政府が対策として制定したのが大気汚染防止法です。

高度経済成長期に深刻となった大気汚染に対応するための法整備であり、その抑制に大きな成果を上げました。

大気汚染防止法とは

大気汚染防止法は高度経済成長期に問題となった大気汚染、そして公害病の原因を抑制し、人々の健康を保護して生活環境を保全するため、環境基本法に基づいて設定されています。

環境基本法の環境基準を達成することを目的として規制を設けて実施しており、工場や事業場などの固定発生源から排出または飛散する大気汚染物質について規定されています。

排出される物質の種類ごと、施設の種類・規模ごとに排出基準などが定められ、大気汚染物質の排出者などはこの基準を遵守しなければいけません。

大気汚染物質は大きくばい煙、揮発性有機化合物、一般・特定粉じんの4つに分けられ、それらを排出する施設に対して、それぞれに合った対策や届出を義務付けることで大気汚染の抑制につながります。

大気汚染に対する取り組み

大気汚染を防ぐため、法整備以外の取り組みも行われています。

工場以外だと自動車から出る物質も大気汚染を引き起こす原因となっていました。これを抑制するために、大気汚染や地球温暖化の原因にもなる二酸化窒素や二酸化炭素などの排出ガスを抑えたハイブリット自動車や、排出ガスを出さない電気自動車などのエコカーの開発と普及が進められています。

また自動車のアイドリング時間の長さが、排出ガスをより多く出してしまう原因にもなっており、交通の流れを良くするために交差点や踏切道の整備、ETCの普及による渋滞の緩和などの環境整備も行われています。

他にも運送で自動車が使われる頻度を下げるために物流の効率化を図ったり、一度に多くの人を輸送できる公共交通機関の利用の促進をしています。

世界に目を向けても各国で様々な取り組みがなされています。例えばドイツであれば二酸化炭素や窒素酸化物を酸素に変える巨大な苔の壁「グリーンウォール」の開発や、アメリカのサンフランシスコでは中古車を買取り、新しい電動自動車を購入してもらうトレードプログラムなどが行われています。

(出典:環境省「大気汚染を防ぐために」)
(出典:鹿児島市「第1章 大気汚染防止法」)

  • 大気汚染防止法とは、工場や事業場などの固定発生源から排出または飛散する大気汚染物質について規定している
  • 大気汚染物質は大きくばい煙、揮発性有機化合物、一般・特定粉じんの4つに分けられている
  • 日本政府は大気汚染に対する取り組みとして、ハイブリッド自動車やエコカーの開発や交通環境の整備を行っている

大気汚染物質について

工場から排出される二酸化硫黄や硫黄酸化物などの大気汚染物質は石油や石炭などの化石燃料を燃焼させた際に発生します。

高度経済成長期にこれらを大量に排出したことから、人体に大きな影響を与える原因となりました。

また大気汚染物質は気管支炎やぜんそくの原因になると言われています。当時、四日市市の石油化学コンビナートでは非常に多くの硫黄酸化物が排出されていました。そのため多数のぜんそく患者を生み、死者も出してしまいました。これが四大公害病の1つである四日市ぜんそくです。

この事態を重く受け止めた政府は1968年に大気汚染防止法を制定し、脱硫装置の設置を義務付けや硫黄酸化物の排出の規制を始め、大気汚染やぜんそくが改善されました。

しかし人口の増加や都市化が進み、自動車の普及率が急激に増えたこともあり、今度は二酸化窒素を含む窒素化合物や、浮遊粒子状物質などが大気を汚染するようになりました。

窒素化合物は高濃度になると喉や気管、肺を含めた呼吸器に悪影響が発生します。また浮遊粒子状物質も高濃度になれば呼吸器への悪影響だけでなく、ガンや花粉症などのアレルギー疾患への関連も指摘されています。

これ以外にも光化学オキシダントと呼ばれる自動車や工場から排出された窒素化合物と揮発性有機化合物が紫外線を受け、光化学反応を起こすことで生じる物質があります。

これらの物質は高濃度で大気中に滞留することがあり、目の痛みや吐き気、頭痛などを起こす物質として危険視されています。

このように大気汚染物質は、どれも人体に悪影響を与え、健康被害を引き起こします。

(出典:独立行政法人 環境再生保全機構「主な大気汚染物質と人体への影響」)
(出典:国立研究開発法人 国立環境研究所「大気汚染の健康影響研究」)

  • 大気汚染物質は人体に悪影響を与え健康被害を引き起こす
  • 四日市市の石油化学コンビナートでは非常に多くの硫黄酸化物を排出し、四大公害病の一つである四日市ぜんそくの原因となった
  • 大気汚染防止法により一時大気汚染やぜんそくの被害は改善されたが、人口増加や都市化が進み二酸化窒素や浮遊粒子状物質などが大気を汚染するようになった

中国の大気汚染問題

日本では高度経済成長期の大気汚染問題を経たこともあり、現在はその防止に向けた取り組みが行われています。

一方で隣国の中国では2013年ごろから深刻な大気汚染問題となっています。特に中国の首都である北京や上海など中国都市部では開発された高層ビルをスモッグが覆っている光景はたびたび報道されています。

これは高濃度の大気汚染物質が蔓延している状態であり、中国の各都市では深刻な問題となっています。

しかしこの問題は中国だけに留まらず、日本にも影響を与えています。日本は春になると中国側から揚子江気団(揚子江流域に発現する熱帯大陸性気団)が訪れます。

また偏西風が日本海側から流れ込んでくるため、大陸で発生した大気汚染物質がこれらに乗り日本列島に到達して拡散されるシミュレーションが出ています。
特に中国に近い位置にある九州では大気汚染物質や黄砂の影響を大きく受けると言われています。

こうした情報は季節変わらず発信されており、全国規模でPM2.5や黄砂の情報が常に流れていますが、特に福岡市などでは市の公式サイトなどでも情報を取り扱っています。

現在こそ中国では劇的な改善が行われ、大気汚染物質の濃度は半分程度にまで抑えられました。
しかし日本の環境基準から考えれば、同水準の環境になるまでに厳しい道のりが予想されており、今後も中国からのPM2.5の飛来は警戒すべきであると考えられています。

(出典:国際環境経済研究所「中国の環境・エネルギー事情」,2019)
(出典:福岡市の環境「福岡市PM2.5予測情報」,2017)

PM2.5とは

中国の深刻な大気汚染の原因となった一つにPM2.5という物質があります。
これは大気中に浮遊している直径2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子であり、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、硫黄酸化物などが原因となる粒子状の物質のことを言います。

PMとは粒子状物質(Particulate Matter)の頭文字から取られています。これらは非常に小さいことから、肺の奥深くまで入り込みやすく、気管支炎やぜんそくなどの呼吸器系疾患や循環器系疾患を引き起こすリスクを引き上げるとされ、子どもや年配者は影響を受けやすいと言われています。

これ以外にもPM10などが存在しますが、PM2.5は当時の中国では深刻な問題となり、多くの人の命を奪ったため、対策が急務となりました。

(出典:政府広報オンライン「「PM2.5」による大気汚染」,2018)

  • 2013年ごろから中国の大気汚染問題は深刻化しており、都市部の高層ビルにはスモッグかかるなどの被害が発生した
  • 揚子江気団や偏西風の影響により、日本にも中国の大気汚染が飛来した
  • 中国で問題となっているPM2.5は非常に小さく肺の奥深くまで入りやすいため、気管支炎やぜんそくなどの呼吸器系疾患や循環器系疾患を引き起こすリスクが高い

大気汚染の原因や影響を知り、私たちにできることをしよう

大気汚染は私たちの身近にあり、今なお起こっている公害の一つです。様々な法整備や環境整備などの取り組みによって改善はされているものの、自動車などの使用を止めることはできないことから、汚染物質の排出は続いています。

現在の基準でも深刻な影響は受けないものの、子どもや老人によってはぜんそくなどを起こすこともあります。現状に甘んじることなく、さらなる改善は必要となります。そのためには政府の対策や取り組みだけでなく、私たち一人ひとりが動いていく必要があります。

まずは大気汚染の原因や影響を知り、そして私たちが取り組めることを知ることが大切です。

一人ひとりの力は小さいものでも、多くの人が取り組めば、それだけ影響も大きくなります。
まずは自らが動き、そして周りの人にもその取り組みが波及するよう、行動を起こしていくことが良いでしょう。

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