公園や河川、駅舎などで見かけることがあるホームレス状態の人は、過酷な環境に身を置きながら生活しています。
ホームレス状態となった経緯はそれぞれですが、日々命を危険に曝しながら生きています。
私たちにとってホームレス状態の人の問題は対岸の火事ではなく、身近なものであり、なぜホームレス状態になるのか、なぜホームレス状態の人がいなくならないのか知っておく必要があります。
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この記事ではホームレス状態の人がなくならない原因や支援方法などを紹介します。
ホームレス状態の人とは
まずホームレス状態の人とはどのような人のことを言うのか、その定義から説明していきます。
2002年に施行されたホームレス自立支援措置法(ホームレス状態の人の自立の支援等に関する特別措置法)によれば、「ホームレスとは都市公園や河川、道路、駅舎、その他の施設に故なく起居の場所として、日常生活を営んでいる者」とされています。
ただし、これはあくまで法律を作成、施行するためにホームレス状態の人を定義したものです。
明確な定義が生み出される以前は、野宿生活者や浮浪者のことを指す言葉として使用されていましたが、イギリスでのホームレス状態の人の定義は、家があっても立ち入れない場合、住むことが許されていない車両や船で生活している場合、家があってもに継続的に住む理由をもっていない、などとされています。
日本でも昨今は住居を持たず、簡易宿泊所やビジネスホテル、ネットカフェなどに寝泊まりするなど、ホームレス状態の人の在り方が多様化しています。
日本におけるホームレス状態の人の実態
厚生労働省では、ホームレス状態の人の実態について定期的な全国調査と生活実態調査を行っています。
2019年に実施された全国調査によると、ホームレス状態の人が確認された地方自治体は275市区町村であり、前年度(2018年の生活実態調査)と比較して25市区町村減少していることが分かりました。
確認されたホームレス状態の人の数は4,555人であり、うち男性が4,253人、女性が171人、不明が131人という結果になっています。
こちらも前年度に比べれば422人(8.5%)減少しています。
この内、最もホームレス状態の人の数が多かったのは東京都であり1,126人、次いで大阪府で1,064人、神奈川県で899人と大都市に集中していることが分かります。
東京都23区及び指定都市で全国のホームレス状態の人の約4分の3も占めていることからも、その多さが伺えます。
ホームレス状態の人が確認された場所の割合は都市公園で22.7%、河川で30.3%、道路で18.7%、駅舎で5.2%、その他施設で23.1%の内訳であり、こちらは前年度と大きな変化はありませんでした。
2003年に行われた概数調査では、25,296人ものホームレス状態の人々がいると推計されており、そこから20,741人も減少していますが、それでも4,000人以上のホームレス状態の人が今も全国にいるというのは多いと言わざるを得ません。
また、ホームレス状態の人の在り方が多様化しているため、この数に含まれないホームレスもいるのが現状です。
2018年の調査によれば、平均年齢は61.5歳と高く、年齢分布は65歳以上が42.8%を占めており、ホームレス状態の人の高齢化が進んでいると言われています。
ホームレス状態の人の現状
ホームレス状態の人の現状を見てみると、ホームレス状態となって1年未満という人は45.9%でしたが、5年以上前に初めてホームレス状態になり、路上と屋根のある場所を行き来している層が増加しているという結果になりました。
寝場所は3年を境に、ホームレス状態の期間が長いほど一定の場所に留まっている割合が高くなる傾向にありました。
ホームレス状態の人であっても仕事に就いている人はおり、全体の55.6%を占めています。
内容としては廃品回収が70.8%と多く、平均的な収入月額は3万円以上5万円未満が33.6%で最も多いことが分かっています。
次点で1万円以上3万円未満が30.7%であり、平均月収は約3.8万円となっています。
先ほど65歳以上のホームレス状態の人が42.8%いることに触れましたが、そのうちの53.8%は収入がある仕事をしています。
年齢が上がるほどホームレス状態の期間が長くなる傾向は、一定の収入を得て、特定の場所に決まって起居し、ある程度安定していることが背景にあると考えられています。
健康状態については悪いと答えた人が27.1%、そのうち治療などを受けていない人は60.9%にも上ります。自覚症状としては歯が悪いが24.9%、腰痛が24.1%となっています。
また、よく眠れない日が続く人が15.0%、2週間以上毎日のように落ち込んでいた時期があった人が4.7%となるなど、鬱病などの精神疾患を有すると思われる層も存在しています。
(出典:厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について」,2019)
(出典:厚生労働省「ホームレスの実態と自立」)
(出典:厚生労働省「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」,2018)
なぜホームレス状態の人はなくならないの?その原因とは
ホームレス状態の人の実態や現状については説明した通りですが、なぜホームレス状態の人がなくならないのか、それには原因があるはずです。
政府ではホームレス自立支援法や生活保護法、生活困窮者自立支援法などでホームレス状態から脱し、自立を促すための制度の構築を行っています。
もちろんそれらの法律や制度もあって2003年と比較してホームレス状態の人の数が減少したことも確かでしょう。
しかし今も完全にいなくなってはいません。それはなぜなのか、いくつかの要因に分けて考えられる理由を説明します。
ホームレス状態になった経緯と今後希望する生活
ホームレス状態の人がなくならない理由を知る上で、ホームレス状態となってしまった経緯と今後希望する生活についての調査を知る必要があります。
まずホームレス状態になる直前の職業は、建設業関係が48.2%と多く、製造業関係が次点で13.0%となっていました。
また雇用形態が常勤や正社員の人が40.4%と最も多く、日雇いが26.7%、臨時・パート・アルバイトが24.1%となっていました。
この職業と雇用形態からホームレス状態となってしまった理由は仕事が減ったのが26.8%、倒産・失業が26.1%、人間関係が上手くいかなくて仕事を辞めた人が17.1%となっています。
この調査結果は高齢者に多く見られる傾向であり、若年層はやや異なります。
45歳未満の若年層では直前の雇用形態において、常勤が他の年齢層と比べて少なくなっており、最も長く就業した職業はサービス業という結果になりました。
またホームレス状態に至った理由としては、倒産や失業が37.0%、人間関係が上手くいかなくて辞めたが25.9%、家庭内のいざこざも25.9%、家賃が払えなくなったが14.8%となっていました。
この高齢層と若年層の違いが、今後希望する生活にも違いを生んでいます。
年齢層が低いほど、アパートに住んで就活したいという傾向にあり、再起や自立を望む人が多いということがわかります。
このような人は生活保護や支援を受けることで、ホームレス状態から脱する人も出てきますが、高齢層になると大きく異なります。若年層のように希望する人は少なくなり、「今のままでいい」とする人が65歳以上の人で41.1%もいる状態でした。
理由としては、今の場所に馴染んでいるという人が32.8%、アルミ缶や雑誌集めなどの仕事で暮らしていけるという人が27.2%もおり、現状維持を望み、ホームレス状態から脱しようとしないため、一定数のホームレス状態の人は今も存在している状況にあります。
ホームレス状態の人を支援する生活保護の問題点
ホームレス状態の人は住居を失った生活困窮者と区分することができます。そのためホームレス自立支援法はもちろん、生活困窮者自立支援法や生活保護法の対象にもなりえる人々です。
ここで生活保護法を見てみると、生活保護法は日本国憲法の第二十五条の規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的としています。
この生活保護の要件は世帯単位で行われ、世帯員全員が利用できる資産や能力、その他あらゆるものを活用し、最低限度の生活を維持することが前提であり、それができない場合に保護の対象となります。
また、預貯金や利用されていない土地、家屋などがあれば売却などを行い生活費に充て、働くことが可能な人がいる場合は能力に応じて働かなければならず、生活保護の要件は満たしません。
要件を満たす場合は生活、住宅、教育、医療、介護、出産、生業及び葬祭の8種の扶助あり、生活扶助と住宅扶助は、いずれも金銭給付で行われます。
要件そのものは厳しいですが、生活に困窮するすべての国民を対象として、生活保護法が十分に機能しているのであれば、失業などによりホームレス状態になった人は、そのほとんどが生活扶助や住宅扶助を受けられることになります。
しかし、実際には要件にある「働く能力がある人」は少なくないため、要件から外れてしまい、生活保護を受けられないことが多いです。
わずかな収入となる廃品回収が就労とみなされて生活保護を受けられないというのは、本来の目的から逸脱しており、本末転倒といわざるを得ません。
(出典:厚生労働省「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」,2018)
ホームレス状態の人を助けるための支援方法は?
生活保護法やホームレス自立支援法や生活困窮者自立支援法は、ホームレス状態の人も対象となり得ることから、支援を行える法律と制度として機能すると言われています。
ただし、生活保護法の問題点もそうですが、自立支援法は自身の自主的な相談が必要であり、今の状態を維持しようとする高齢層のホームレス状態の人にとっては関心のない制度であるとなります。
しかし、今のままでいいとは言え、食事などには余裕があるわけではなく、いつ廃品回収などができなくなるか、あるいは収入が得られなくなるか分かりません。
また、若年層でホームレス状態を脱しようとしていても、すぐには支援を受けられず、途方に暮れている人もいるかもしれません。
行政の支援ではどうしても行き届かないこともあり、ホームレス状態の人が苦しんでいることもあります。
そのような状況を変えられるのは、地域に住む私たちの手による支援です。
個人的に行うのは難しいですが、ホームレス状態の人を支援する民間団体の活動などに参加することで、支援することができます。
では、どのような支援活動が行われているのか、そのいくつかを紹介します。
炊き出し
民間団体では炊き出しを行い、ホームレス状態の人に食事の提供を行っています。収入があるホームレス状態の人であっても炊き出しなどを頼りにしていることは多く、彼らの健康の維持のためにも必要な支援となります。
また炊き出しの際に、必要に応じて薬や衣料品の配布なども行われ、健康相談やよろず相談も受け付けています。
季節的に夏は蚊取り線香、冬はカイロなどの用意している団体もあり、関わりを持つことで食事の支援を行うと同時に、ホームレス状態の人々がどのような支援を必要としているのかを知ることも、大切な活動となります。
団体によっては炊き出し後に、炊き出しまで来られなかった人のもとまで行き、お弁当や薬を渡しつつ、安否確認を行うこともあります。
自立支援センターの運営
民間団体の中には自立支援センターの運営を委託されているところもあります。ホームレス状態の人の中でも、若年層は就職し再スタートを切りたいと願う人もいるため、住まいを確保し体調を整え、ハローワークなどを活用して、再就職をするための支援を行います。
期限付きの住居の提供や食事、入浴や洗濯の無料提供、仕事など自立に向けての相談
看護師による健康面の相談、技能講習事業を利用した無料での免許、資格の取得などを実施しています。
緊急シェルターの設置
ホームレス状態の人の生活は過酷であり、命に関わることが多いです。
ホームレス状態の人の数は減少しているものの、年に数名は路上で亡くなることや、緊急搬送され、病院で治療のかいもむなしく亡くなるということも現実に起こっています。
そのため支援として、緊急避難所となるシェルターを準備している団体もあります。
自立支援住居の提供
ホームレス状態からそのまま入居できる家を提供する支援もあります。
これにより経済的困窮と社会的孤立の両面からの支援を行います。ホームレス状態の人にとってどちらも心身の健康を損なう要因となるため、入居期間中に再就職などを行いつつ、担当者や他の入居者、ボランティアとのつながりを深め、社会復帰による自立を目指しています。
ホームレス状態の人の生活保護の問題点や支援方法について知り、共存できる社会を目指そう
ホームレス状態に望んでなる人はほとんどいません。何らかの理由でやむを得ず住居を失い、野宿生活を余儀なくされた人ばかりです。
再び社会復帰を目指す人は、支援を元に立ち直っていく人もいます。自主的に自立を望むのであれば行政による支援は手厚く、ホームレス状態を脱することも可能でしょう。
しかし今のままであることを望む人にとっては、ホームレス状態から脱しようとはしません。
今のままを望むとは言え、過酷であることもまた事実です。特に高齢者に多い傾向であることから、心身に大きな影響を与える恐れがあります。
そのような人がいる限り、ホームレス状態の人が完全になくなることはないでしょう。それなら、今のままであることを望む人たちを支援する取り組みにより、共生できる社会の構築も考えていかなければいけません。
同時にこれ以上ホームレス状態の人が生まれないような社会構造を考えていかなければ、解決は見込めないでしょう。
誰もがホームレス状態の人の問題について考え、どのような支援をする必要があるのか、行政や支援団体だけでなく、私たち一人ひとりも取り組んでいくことが重要です。
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