2011年から続くシリア内戦では、様々な要因が複雑に絡み合っており、解決までには多くの課題が残されています。
この記事ではシリア内戦の現状や原因、経緯を解説します。
シリア内戦の原因・現状は?難民の人々が必要としている支援とは
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シリア内戦が起こった背景とは?
シリア内戦のきっかけはアラブの春と言われていますが、アラブの春の火種となったのがジャスミン革命という民主化運動です。これは2010年12月にチュニジアで起こっており、その波が中東諸国へ波及しました。
この民主化運動はやがて近隣アラブ諸国へ広がっていき、2011年にアラブの春へと発展。エジプトでは30年続いたムバーラク政権、リビアでは42年続いたカダフィ政権が崩壊します。他にもサウジアラビアやモロッコ、イラク、アルジェリアでも同様の民主化運動が活発化し、この動きはシリアへも広がっていきます。
シリアではアサド大統領による独裁政権が40年にも渡って続いていたため、国民は長年社会経済への不満を抱いていました。そして2011年、アラブの春を皮切りにシリアでも抗議運動が始まりました。
この中心となったのが政権から虐げられていたスンニ派の人々です。
スンニ派を中心とした抗議運動はシリア全土に広がり、シーア派を主とするアサド政権政府軍とスンニ派を主とする反政府軍との間で内戦へと発展したのです。
デモ運動
当初は紛争ではなく、民主化を求めるだけのデモ運動に過ぎませんでした。
デモ運動が激化したのは、反政府軍が近隣国から様々な支援を受けることで武装蜂起をし、自由シリア軍を結成したことが要因とされています。
さらに自由シリア軍が政府軍を圧倒したことで、シリアでの民主化の契機が高まることとなりました。
- シリア内戦のきっかけは「アラブの春」
- アサド大統領の長期の独裁政権に対して、社会経済への不満からデモ運動が始まる
- 反政府軍が近隣国から様々な支援を受けることで武装蜂起を行い、自由シリア軍を結成
(出典:法務省 「国別情報及びガイダンス シリア: シリア内戦」,2016)
(出典:公益財団法人 日本国際問題研究所「シリア内戦の帰趨とイスラエル北辺の安全保障環境」)
(出典:外務省 わかる!国際情勢「「アラブの春」と中東・北アフリカ情勢」)
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シリア内戦の始まりから現在までの経緯とは
2011年から長い間続いているシリア内戦ですが、どのような経緯で現在に至っているのでしょうか。シリア内戦が始まって以降の経緯を見ていきましょう。
自由シリア軍からヌスラ戦線の分離(2012年ごろ)
自由シリア軍は拡大を続け、やがて内部でも意見が対立。武闘派の急先鋒に立った人々は政権打倒を掲げ、自由シリア軍から独立する形でヌスラ戦線という過激派組織を結成したのです。
自由シリア軍とヌスラ戦線の台頭により、アサド政権と政府軍に壊滅的な打撃を与えることとなりました。
シリア内戦の激化(2012年ごろ)
一方、アサド政権もロシアやイランの後ろ盾を受け、反撃を行います。
さらに政府軍側のシーア派過激組織であるヒズボラもこの内戦へ参戦することとなりました。
これにより、両陣営の過激派組織が台頭し、参戦したことで戦況が激化。シリア国内を混乱へと陥れることとなりました。
イスラム国の介入(2012年ごろ)
これをさらに混乱させたのが当事勢いを増していたイスラム国(ISIS)の介入です。
イスラム国はイラクを拠点としていたスンニ派のイスラム過激派組織です。世界的にも猛威を振るっていましたが、シリア内戦にも介入し支配地を広げようと画策したのです。
三つ巴の戦いとイスラム国の崩壊(2013年ごろ)
イスラム国が内戦に介入したことで、アサド政権政府軍、反政府軍、イスラム国という三つ巴の戦いが内戦を泥沼化させることとなりました。
シリア国内は各地で戦火を見ることとなり、抵抗する力を持たない国民は、大量の難民となってあふれ出ることとなったのです。
しかし内戦の中には長期化する動きもありました。アサド政権政府軍と反政府軍だけでなく、その後ろ盾となっていた欧米諸国やロシアを敵に回してしまったつながるイスラム国は集中的に攻撃を受けることになり、実質的な崩壊へとつながったのです。
それでもイスラム国がシリアに残した傷跡は悲惨なものとなりました。
またこのイスラム国の崩壊により、勢力図に変化が起こったのです。
これまで三つ巴だった戦いは再び政府軍と反政府軍の戦いの形になりましたが、同時に政府軍を支持するロシアと反政府軍を支持するアメリカとの対立構図へとシフトしてしまったのです。
化学兵器の使用
2017年に入り、アサド政権は内戦において、爆撃の際にサリンなどの化学兵器を使用するという凶悪な攻撃を行いました。
多くの女性や子どもが狙われ、凄惨な被害をもたらしたのです。
これによりアメリカ軍がシリアの空軍基地に空爆を仕掛けますが、ロシアの影響もありアサド政権への攻撃は限定的なものとなりました。
アメリカ軍の撤退
アメリカではトランプ大統領就任後、在シリア米軍の撤退を示唆していましたが、アメリカ軍の撤退はロシアの実質的なシリア支配へとつながるとの懸念があり、アメリカ国家安全保障チームがトランプ大統領を説得し、何とか駐留していました。
しかし2018年の暮れにはイスラム国の掃討が完了したとして、トランプ大統領がアメリカ軍を撤退させることとなりました。
これはシリアの北部から北東部にかけて広がる事実上の自治区であるロジャヴァを叩きたいトルコ政府への配慮もあり、シリアへの直接介入はこれで終わりを迎えます。
しかし、直接介入が終わっただけで、シリアへの攻撃は続いています。
停戦合意に至るも
2020年にはロシアとトルコの間で停戦合意に至りますが、2021年には再び攻撃が再開。停戦は失敗に終わったとされています。
- 政府軍と反政府軍両陣営の過激派組織が台頭し、戦線が激化、さらにイスラム国の介入で内戦は泥沼化
- イスラム国が政府軍と反政府軍、諸外国すべてを敵に回したことで崩壊するが、政府軍を支持するロシアと反政府軍を支持するアメリカとの対立構図へシフト
- 2018年、イスラム国の掃討完了でアメリカ軍は撤退したが、内戦は続いている
(出典:法務省 「国別情報及びガイダンス シリア: シリア内戦」,2016)
(出典:公益財団法人 日本国際問題研究所「シリア内戦の帰趨とイスラエル北辺の安全保障環境」)
(出典:外務省 わかる!国際情勢「「アラブの春」と中東・北アフリカ情勢」)
シリア内戦の現状と今後の展開は?
2011年の内戦開始から11年目を迎えるシリアは、現在は複雑な勢力図となっています。
アサド政権政府軍と反政府軍の戦いだけでなく、クルド人勢力やトルコ支援勢力、それぞれを支援するアメリカとロシアの代理戦争と宗教的、政治的思惑が複雑に絡み合っている状況にあります。
シリアの内情は混乱を極めており、終わりの見えない内戦状態が続いていると言わざるを得ません。
これらを解決するためには、シリアの国や政府だけでなく国際機関や周囲の国々の協力も必要となりますが、内戦が激化する可能性も秘めていることから解決の糸口が見いだせない状況でもあります。
- 2011年の内戦開始から11年目を迎えるシリアは、現在は複雑な勢力図となっている
- シリアの内情は混乱を極めており、終わりの見えない内戦状態
- 解決のためには、シリアの国や政府、国際機関や周囲の国々の協力も必要だが、内戦が激化する可能性もあり、解決の糸口が見いだせない状況
(出典:法務省 「国別情報及びガイダンス シリア: シリア内戦」,2016)
(出典:公益財団法人 日本国際問題研究所 「シリア内戦の帰趨とイスラエル北辺の安全保障環境」)
(出典:外務省「わかる!国際情勢「アラブの春」と中東・北アフリカ情勢」)
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