中東で起きた民主化運動をきっかけに内戦が続いたシリアは、2024年12月に独裁政権であったアサド政権が崩壊したものの、その後は移行政府のもとで再建と政治的な移行が進む一方、治安や宗派対立などの課題も残る不安定な状況が続いています。
今回の記事では、シリア内戦についての解説から、現状と情勢について詳しく説明します。
シリア内戦の原因・現状は?難民の人々が必要としている支援とは
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シリア内戦とは

「アラブの春」は、2010年12月にチュニジアで始まったジャスミン革命を契機に、中東・北アフリカ諸国に広がった民衆の民主化運動です。
「アラブの春」によって、チュニジアやエジプトでは大統領が退陣、リビアでは反体制派との武力衝突を経た政権交代が行われるなど、かつてない大規模な政治変動となりました。
反政府運動に参加した人々はSNSを駆使し民衆同士の繋がりを強固にし、かつてないスピードで国境を超えて拡大しました。
この流れは、中東の国・シリアにも飛び火。チュニジアとエジプトでの政変を受けて、シリアでも強権的だったアサド政権に対して政治改革を要求する声が上がったのです。
アサド政権は憲法改正など一定の政治改革を行うことで市民の声に答えようとしましたが、民主化運動が激しさを増し、軍・治安部隊を用いて弾圧することになります。
弾圧を受けた人たちの中から武器を取る人が現れ、革命闘争が開始します。
2011年9月には「自由シリア軍」と言う武装組織が生まれ、その後も多くの組織が乱立。これにより長いシリア内闘争が始まったのです。
シリア内戦は今世紀最大の人道危機とも言われています。UNHCR協会によると、2024年2月時点で周辺国に逃れるシリア難民は505万人、国内避難民は720万人、国内で人道援助を必要としている人は、1670万人にも上ります。
(出典:外務省「中東と北アフリカ」)
(出典:国連UNHCR協会「シリア」)
なお2024年12月のアサド政権崩壊以降、難民の帰還が加速しています。国連UNHCRによれば、2025年に国連登録ベースで約130万人がシリアへ帰還しました。
(出典:Arab News Japan「2025年、国連に登録された130万人の難民がシリアへ帰還」 )
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シリア内戦の現在に至るまでの状況とは

その後、武装組織勢力は、ホムスやアレッポといった主要都市を手に入れようと戦いを繰り広げ、内戦が激化しました。
2013年にはダマスカス近郊で毒性のあるサリンを用いた攻撃をアサド政権が行ったとの疑惑が浮上。これによって1,000人以上もの命が奪われました。
シリアの各都市を舞台に内戦が激化した関係で、2017年までにシリア国民の死亡者数は45万人を超えたのです。
今までは反政府組織とアサド政権という構図だった戦いに、ISIL(イスラム国イラク・レバント)やアルカイダ関連組織「ヌスラ戦線」などのイスラム過激派も台頭。
内戦による混乱に乗じて、シリアからイラクにかけての広大な地域を制圧しました。
長期化となったシリア内戦の影では、アサド政権を避難し同政権と戦う反政府組織を支持するアメリカ、そしてアサド政権を支えるロシア・イランの間での代理戦争にも発展しました。
ロシアは、アサド政権に武器の供給を続け、パルミラやアレッポといった主要都市では2017年に入っても戦闘が続きました。
6年にわたる絶え間ない空爆や戦闘が、今まで時間をかけて作ってきたインフラや社会基盤に取り返しのつかない打撃を与えたのです。
2017年にアメリカのトランプ大統領は、アサド政権側の戦闘機が化学兵器を積んだとされる飛行場に巡航ミサイルを発射。2011年に内戦が勃発して以来、アメリカはこれまで反政府勢力への支援を行うなど間接的に介入していましたが、シリア政府に直接攻撃を行ったのは初めてでした。
これらの目に見える闘争と国同士の代理闘争によって、シリア国民の半数にあたる1,200万人以上が家を追われました。周辺の国々に逃れた人々は500万人以上に及び、今も難民として避難生活を続けています。
(出典:国連UNHCR協会公式サイト)
(出典:公安調査庁「シリア」)
2017年には子どもの犠牲者が過去最大に
シリア紛争が続く中で、障がいを負った子どもたちは社会から阻害され忘れられる危機にさらされています。
2017年もシリア紛争は弱まることなく続き、2016年の1.5倍にもなる過去最大の子どもの犠牲者を出しました。2018年の1月と2月だけでも、暴力の激化により1,000人の子どもが死傷しています。
シリア国内で子どもたちが犠牲になる現状はあまりにも悲惨です。
推定330万人の子どもたちが、地雷・不発弾・簡易爆発装置を含む爆発物の危険にさらされています。そして、150万人以上の人々が、戦争の影響によって治ることのない身体的障がいを負い、そのうち8万6000人が手足を失ったのです。
政権と民衆から派生した武装組織の争いは、未来に希望を持った子どもたちの命までを奪います。このような現状を踏まえて「保険・栄養・教育・子どもの保護および水を含む包括的な基本的サービスへのアクセス改善」などの支援が早急に求められています。
2017年に戦闘に駆り出された子どもの数は2015年の3倍にまで膨れ上がり、現在でも予断を許さない状況が続いているのです。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
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シリアの現在の情勢は?

2019年以降も、シリア北西部のイドリブ県やダマスカスなどで空爆が行われました。
トルコ・イスラエルなどの近隣国との関係から派生した空爆など、2024年12月のアサド政権崩壊まで不安定な情勢が続いていました。
2019年8月にトルコ部隊が狙われた空爆について、トルコはシリア政権の後ろ盾となっているロシアとの合意に違反するとして批判。
シリア国内のアサド政権と反体制派の闘争以外にも、それぞれを支えるロシア・イラン・アメリカなどによる代理戦争は継続しました。
アサド政権崩壊
2024年11月下旬、シリア内戦は急展開を迎えます。11月30日には反政府勢力、シリア解放機構(HTS)がシリア第2の都市アレッポの大部分を制圧。
12月8日には首都ダマスカスも制圧されました。これにより、親子2代・約半世紀にわたるアサド政権は崩壊したのです。アサド大統領がモスクワへ亡命したことがロシア政府により発表されました。
反政府勢力を主導したシリア解放機構のもとで暫定政権が発足し、平和的な移行や安定した政治の実現が求められています。
暫定政権の中心となる組織、シリア解放機構の前身はアルカイダ系のヌスラ戦線です。シリア解放機構は2016年にアルカイダとの関係を断ち再編された組織でありますが、かつては国連やアメリカ、トルコからテロ組織に指定されていましたが、2024年12月の政権崩壊後、国際社会は段階的に制裁の解除・関係正常化へと舵を切っています。
またアサド政権は崩壊したものの、アラブの春で独裁政権が崩壊したリビアやイラクでは、いまだに混乱が続いています。シリア国民に平和な日常が訪れるのかは、現段階では不透明な状況です。
(出典:NHK「シリア政権崩壊 首相は早期に政権移譲の考え 専門家はどう見る」)
(出典:NHK「アサド政権崩壊なぜ?シリアでいったい何が?」)
アサド政権崩壊後(2025-2026年)の展開
2025年3月、シリア解放機構を率いたアフマド・シャラア氏を暫定大統領とする移行政府が正式に樹立されました。移行政府は憲法宣言を発布し、一定期間の移行統治を経て恒久的な統治体制へ移行する方針を示しています。
2025年10月と2026年3月には、暫定的な「人民議会」の議員を選ぶ選挙が段階的に実施されました。議席の一部はシャラア大統領による任命枠とされ、内戦後初の議会が構成されました。国民への周知が十分でないなどの課題も報じられています。
国際社会の対応も変化しています。アサド政権時代に科されていた各種の経済制裁は段階的に緩和・解除され、復興と難民帰還を後押しする動きが広がりました。一方で、2025年3月には沿岸部で宗派間の衝突が起きるなど、治安・宗派対立の火種は残っています。
難民の帰還も進みました。国連UNHCRによると、2025年に国連登録ベースで約130万人がシリアへ帰還。シリア政府は「自発的帰還」を促していますが、住居やインフラ、地雷・不発弾など帰還後の課題も指摘されています。
(出典:CMEPS-J「シリア移行期政権下の暫定人民議会選挙」)
(出典:ニューズウィーク日本版「シリアでアサド政権崩壊後初の議会選挙が行われる」)
(出典:国連UNHCR協会「シリア難民・国内避難民、そして帰還民をご支援ください」)
・2025年10月・2026年3月に内戦後初の人民議会選挙を実施
・国際制裁は段階的に解除、2025年に約130万人の難民が帰還。一方で治安・宗派対立の課題は残る
シリア内戦の現状を知ったうえで私たちにもできることとは

シリア内戦は2024年12月に事実上終結しましたが、社会の再建と和解には時間を要すことが想定されている状況です。
子どもたちが犠牲となり、多くの難民が他国に逃れ避難生活を送ってきました。近年は帰還が進む一方、帰還後の生活再建の支援も求められています。
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