私たち日本人は、日々当たり前に食事をし、水を飲んでいます。その質に違いはあれど、このような恵まれた環境が準備されている国や地域ばかりではありません。
食糧問題という深刻な状況、食糧危機に苦しめられる子どもたちや人々が存在するのです。
その中でも子どもたちは抵抗力も弱いため、命を落としてしまうこともあります。
そんな子どもたちを救う方法は何かないのでしょうか。
この記事では、現状の食糧問題や食糧危機などを紹介します。
子どもたちを苦しめる飢餓状態。飢餓に耐える子どもたちの実状や支援方法は?
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食糧問題・食糧危機とは
飢餓とは、十分な食糧が得られず栄養不良な状態にあることを言い、生存と社会的な生活が困難になっている状態を指します。
栄養不足とは、十分な食糧を得られず、健康的で活動的な生活を送るために十分な食物エネルギー量を継続的に入手することができないことと定義しています。
生きていく上で重要になっていく最低エネルギー必要量は、年齢や体格、生活水準、病気にかかっているかどうか、妊娠や授乳中であるかどうかなど様々な要因で決まります。
また、食事は量だけ摂っていれば良いわけではなく、ビタミンAや鉄、ヨウ素といった生命維持に不可欠となる微量元素、ビタミンの欠乏も様々な病気につながります。
心身の正常な機能を損なってしまう可能性があり、例えば鉄の欠乏が貧血、妊産婦の健康や乳幼児の発育に影響する、あるいはヨウ素の欠乏が甲状腺に異常をきたすなど、危険な状況を引き起こすことがあります。
栄養不足が増加傾向にある主な原因として、武力紛争の拡大や気候関連の大きな変化などによる影響が挙げられています。
その結果、食糧問題や食糧危機などの深刻な問題が引き起こされるのです。
紛争地域では難民となってしまい、作物の収穫はもちろん家畜の飼育などもできず、それどころか毎日飲む水さえ確保するのも危うい状況の地域もあります。
干ばつや洪水など自然災害により、作物や家畜が全滅し、食糧の確保ができない食糧危機の地域も存在しています。
このような地域では食糧の価格が高騰してしまい、貧困な農村部では食糧を得ることができず、飢餓状態に陥ってしまうのです。
しかし栄養不足の問題は何も紛争や気候だけの影響だけではありません。日本のような先進国が起こしている飽食やフードロスも影響しているのです。
食糧問題や食糧危機は、飢餓問題へと発展しており、現在アジアやアフリカなど、様々な国で急性栄養不良や栄養不良など、支援や治療を必要とする子どもを生み出しています。
飢餓・食糧問題
2018年版「世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書によると、世界の飢餓人口は増加しており、2017年には8億2,100万人が飢えに苦しんでおり、9人に1人が該当します。
過去3年間飢餓は増加しており、10年前の状況に後退しました。
南米やアフリカの大半の地域で状況は悪化し、アジアの栄養不良の改善速度も著しく減速しています。
気候変動による異常気象により、干ばつや洪水などの極端な気象現象が起こっていることは、紛争や景気後退とともに飢餓が増加している主な要因の1つです。
飽食
食糧廃棄の問題は、飽食である日本などで問題視されています。世界では年間、食用に生産された食糧の内、3分の1にあたる13億トンが廃棄されています。
これは日本のような先進国で行われている「食べ残し」や「賞味期限切れ」など消費する段階で捨てられる食べ物が多くの割合を占めます。
しかし、「食べ残し」や「賞味期限切れ」だけが食糧廃棄として挙げられるわけではありません。発展途上国では同じだけの農作物が収穫できたとしても保管方法がない、加工するための技術がない、運搬する手段やお金がない、といった理由で、必要な人の手元に届かず廃棄されてしまうことが多いのです。
このようなフードロスは、食糧問題を起こしている人々に届けられれば、問題改善につなげることができるでしょう。
しかしフードロスが食糧問題に起こす影響はこれだけではありません。これによって廃棄するときにでる温室効果ガスは36億トンといわれており、世界の温室効果ガスの約8%を占めてしまうのです。
そうなると気温の上昇、気候の変化、それにともなう干ばつや洪水などの被害が起こりやすくなり、さらに食糧難となる国や地域を拡大することにもつながってしまうのです。
その影響を最も大きく受けるのは、アジアやアフリカといった最貧国に住む小規模な農家の人々になります。
アジアやアフリカの小規模な農家の人たちは飢餓・食糧問題に苦しめられている人々であり、結果として飽食やフードロスはさらに事態を悪化させることにもつながってしまいます。
つまりこれらを改善することは、大きく食糧問題を解決する糸口にもなり得るのです。
- 飢餓とは、十分な食糧が得られず栄養不良な状態にあることを言い、生存と社会的な生活が困難になっている状態
- 世界の飢餓人口は増加しており、2017年には8億2100万人が飢えに苦しんでおり、9人に1人が該当
- 食糧廃棄は、先進国の「食べ残し」や「賞味期限切れ」だけでなく、途上国の収穫された農作物の保存や加工、輸送の手段がないことからも起きている
(出典:WFP「世界の飢餓人口は3年連続で未だ減少せず、肥満は依然増加傾向-国連の報告」,2019)
(出典:ハンガーフリーワールド「飢餓とは」)
(出典:WFP「世界の飢餓人口の増加は継続ー最新の国連報告書」,2018)
(出典:みんなで食べる幸せを世界食糧デー月間「世界の食料問題」,2019)
食糧問題はどんな国・地域で深刻?
食糧問題が世界的な規模で起こっていますが、その中でもアジアやアフリカの最貧国、特にアフリカではこのような問題が山積している国が多いのが現状です。
アフリカには54の国と地域がありますが、その中でも深刻な食糧不足に悩む国や地域が存在するのです。中でも代表的な国や地域を紹介しましょう。
食糧問題に苦しむ国々
マリ共和国
西アフリカのマリ共和国では2017年以降人道危機が拡大しており、77万人が国内での避難を強いられている状況です。
また気候変動に弱い国なので、洪水や干ばつの危機にもさらされています。これらの災害及び人道の危機によって160万人の子どもが支援を必要としており、17万人の子どもが急性栄養不良の危険に直面しています。
マリ共和国は決して最貧国というわけではないのですが、開発されている都市部に住んでいる人は一部であり、国民の70%が貧困な農村部で暮らしています。
このような地域はライフラインも確立されておらず、水道なども整備されていないため食糧も安全な水も十分に確保できない地域が多数となっているのです。
チャド共和国
アフリカ中央部のチャド共和国でも深刻な食糧難に直面しており、99万人が食糧難、450万人が食糧不安に直面しています。
また230万人の子どもを含む410万人が人道支援を必要としており、5歳未満の子どもの13.5%が栄養不良、4%が重度の急性栄養不良となっています。
このような状況は気候変動、貧困、不適切な食習慣の改善ができていない、安全な水の確保ができていない、衛生・保健サービスを利用できていないことが引き金となっています。
セネガル
セネガルでは2017年に降雨量が少なかったことにより、農作物の収穫量が減る時期「lean season」の影響が深刻化し、2017年の時点で25万人、2018年には73万人と約3倍にまで食糧不安に直面する人口が増加しました。
気候による食糧危機ですが、それにより7万6,000人の5歳未満の子どもが急性栄養不良のリスクに直面しています。
コンゴ民主共和国
コンゴ民主共和国は武装勢力との対立が起こっており、暴力の激化によって210万人が避難生活を余儀なくされています。
これにより2018年には1,280万人が食糧不安と急性栄養不良の危機に直面しており、2017年から1.3倍にまで増加しました。
衛生面でも不安があり、コレラの流行やエボラ出血熱の症例が報告され、多くの感染症にも脆弱で子どもたちの多くが栄養状態の問題と命の危機の両方に直面しています。
- マリ共和国では、洪水や干ばつなどの災害及び人道の危機により、160万人の子どもが支援を必要としており、17万人の子どもが急性栄養不良の危険に直面
- チャド共和国では99万人が食糧難、450万人が食糧不安に直面
- セネガルでは、2017年に降雨量が少なかったため、農作物の収穫量が減り、2017年の時点で25万人、2018年には73万と食糧不安に直面する人口が3倍に増加
- コンゴ民主共和国では、2018年には1,280万人が食糧不安と急性栄養不良の危機に直面
(出典:日本ユニセフ協会「アフリカ栄養危機」)
世界中の団体が支援を行っている
食糧問題が起こっている地域で行われる活動としては、栄養不良の子どもたちを救う支援を中心に行われています。それは主に急性栄養不良の治療や食生活指導などです。
例えば急性栄養不良の子どもが大勢いたり、不適切な食生活が問題となっている国では、急性栄養不良の治療を提供するとともに、2歳未満の子どもを育てる妊産婦に対して食生活指導も行っています。
他にも栄養食プログラムや乳幼児の食事に関する包括的なパッケージ、乳幼児の食事に関するカウンセリングを提供している地域や、治療だけでなく、ビタミンAのサプリメントを提供するといった活動が行われている地域もあります。
どの国でも急性栄養不良の治療は行われており、まず抵抗力が弱い、命を落とす危険がある子どもを第一に支援しています。
- 食糧問題が起こっている地域では、栄養不良の子どもたちを救う支援が中心
- どの国でも急性栄養不良の治療は行われており、まず抵抗力が弱い、命を落とす危険がある子どもを第一に支援
食糧問題で悩む子どもたちのために私たちにできることは?
政府や人権支援を行うNPO・NGO、企業や大学など大きな単位での支援は食糧問題を解決するために必要不可欠と言えます。では、私たち個人では何ができるのでしょうか。
私たちは、寄付やボランティアなどを行うことで間接的に支援をすることができます。
例えば寄付による支援金がなければ、人権支援の活動が滞ることもあります。食糧問題で悩む子どもたちのためには必要な支援であるということです。
支援金の寄付
支援金の寄付は少額から始めることができ、金額は任意で選択できます。
毎月寄付する定期コースや都度ごとの寄付から選べる団体もあり、自分で決めて子どもたちの支援ができるのです。
ボランティア活動
ボランティア活動に参加することで支援する方法もあります。直接現地へ赴くことは少ないですが、日本で対象地域へ運ぶ食料などの仕分けや運搬などを手伝うことで、支援しながら世界の飢餓・食糧問題について知ることもできます。
- 個人でできる支援は、寄付やボランティア
- 寄付は小額から可能であり、毎月寄付する敵的なものや都度寄付するものから自分にあったものを選び支援できる
- 日本国内で、対象地域へ送るものの仕分けや運搬などを手伝うボランティアで支援できる
食糧問題の現状を知ることが支援の第一歩
食糧問題は、世界中で起きている深刻な問題です。
日本での飽食も間接的には食糧問題につながっています。
食糧問題を解決するには、まず現状を知ることこそ支援の第一歩となります。
そこからどうするべきか考えることも大切です。
フードロスを極力減らしたり、支援のために寄付やボランティアに参加するのもいいでしょう。
どのような形であれ、世界の食糧問題と向き合い、今できることに参加していくことが、この問題に苦しむ子どもたちや人々を救うのです。