「ソーシャルイノベーションとは何だろう?」
「言葉の意味や事例などを知りたい」
このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
ソーシャルイノベーションとは、社会問題を解決するような事業や取り組みのことを指す言葉です。「社会的変革」とも訳されます。
本記事を読むことで、ソーシャルイノベーションの意味や課題、事例、私たちにもできることが分かります。ソーシャルイノベーションについて詳しく知りたい方はぜひ読んでください。
なお「ソーシャルイノベーションの事例を知りたい」という方は下記をチェックしてください。
ソーシャルイノベーションとは?簡単に解説
ソーシャルイノベーションとは、社会課題を解決するような事業や取り組み、アイデアのことを指す言葉です。
たとえば貧困問題を解決するための新しい取り組みを行ったり、SDGsを意識した持続可能な社会に向けた取り組みを行ったりすることが、ソーシャルイノベーションの活動例としてあげられます。
利益の追求だけでなく、社会福祉や世の中への貢献を意識したサービス・製品または取り組みは、すべてソーシャルイノベーションといえます。企業の社会貢献や政府の新しい社会福祉の取り組み、支援団体の活動などもソーシャルイノベーションといえるでしょう。
ソーシャルイノベーションが必要とされている理由
ソーシャルイノベーションが必要とされている理由を3つご紹介します。
- 政府の対応には限界があるから
- CSR(企業の社会的責任)が問われるようになったから
- SDGsへの意識が高まっているから
どういうことか、詳しく見てみましょう。
政府の対応には限界があるから
社会課題を解決しようと政府はさまざまな対策を行っています。たとえば虐待をはじめとした子どもにかかわる問題に一元的に対応するため、2023年4月、政府はこども家庭庁を設立しました。
>>こども家庭庁とは?何をするところなのか、わかりやすく解説
しかし下記の理由から、政府が社会課題すべてに対して迅速に対応するのには限界があります。
- ・世の中の移り変わるスピードが速くなっている
- ・問題のグローバル化が進んでいる
- ・問題の背景が複雑化している
スマホをはじめとする通信機器の進化により世の中に情報が溢れ、物事が移り変わるスピードが速くなりました。たとえばビジネスにおいては、少し前まで「足を使って稼ぐ」といった価値観があり、顧客のもとへ訪問して対面で商談をすすめるのが一般的でした。しかし昨今は、オンラインで顧客と接点をもったり商談したりするのも普及しています。
通信機器の進化は私たちに恩恵をもたらした一方で、問題の複雑化やグローバル化が進んでいます。たとえばITに疎い人を狙った詐欺が発生していますし、最近では「闇バイト」など危険な誘惑に触れる機会が多くなってしまったのです。
闇バイトを取り仕切っている実行犯が海外に潜伏しているなど、問題は複雑かつグローバルになっています。このように新しい手口や問題が次々と生まれてくるなかで、政府がすべての問題にすぐ対応するのは困難です。
人手の問題だけでなく予算が年度単位で決まっており、現場の実情に応じた対応を柔軟に行うことが政府の性質的に難しいからです。
CSR(企業の社会的責任)が問われるようになったから
CSRとは、企業は利益だけでなく社会貢献や環境への配慮も行うべき、という考え方のことです。「企業の社会的責任」とも言われます。
CSRが注目される背景としては、定期的に発生する企業の不祥事が挙げられます。たとえば食品の成分や産地の偽装、公害問題などが問題となりました。このような企業の不正問題を防ぐため、CSRという考え方が人々の関心を集めるようになったのです。
CSRが注目されるようになり、社会に対する企業の責任がより注目されるようになったから、社会問題の解決に向けた取り組みである「ソーシャルイノベーション」という言葉も次第に注目されるようになりました。
SDGsへの意識が高まっているから
SDGsとは、17のゴールと169のターゲットから構成される、持続可能な開発目標のことです。大手メディアでもSDGsという言葉が使われるようになり「言葉だけ聞いたことがある」という人もいるのではないでしょうか。
SDGsでは「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」といった大きな目標から、環境保護や働き方、ジェンダー平等といった、私たちに身近なテーマも目標に定められています。
>>持続可能な開発目標・SDGsとは?17の国際目標やターゲットなどを簡単に解説
企業はもちろん私たち個人もSDGsという言葉を認知し、理解する人が増えてきました。こうした社会課題への問題意識が、ソーシャルイノベーションという言葉の認知にもつながっていると思われます。
ソーシャルイノベーションの課題
ソーシャルイノベーションには下記の課題が挙げられます。
- ・利益より社会課題の解決を目的にするため、資金調達が難しい
- ・取り組みを行った後の効果検証を行いにくい
ソーシャルイノベーションでは利益の追求よりも社会貢献・社会課題の解決を目標に活動します。そのため銀行や投資家からは理解を得にくく、資金調達が難しい場合があります。
最近ではクラウドファンディングも一般的になりましたが、自分たちの活動を伝えて理解してもらい、寄付を募るのも簡単ではありません。
またソーシャルイノベーションの活動を行った後にどのような効果があったのかどうか、前後比較が難しい場合もあります。活動内容によっては取り組みのインパクトについて、定量的・定性的に評価するのが難しい場合が多いからです。
世界におけるソーシャルイノベーションの事例
世界が抱えている普遍的な問題に対してソーシャルイノベーション(革新的な取り組み)を行っている事例として、ユニセフ(国際連合児童基金)の活動をご紹介します。
ユニセフは世界中の子どもたちに対して、保健や衛生管理など様々な観点から支援を行っている団体です。たとえば途上国の子どもたちに対して予防接種を普及させたり、安全な水を飲んだり衛生的な環境を確保できたりするよう支援を行っています。他にも教育支援や虐待からの保護など、ユニセフが取り組んでいる活動は多岐に及びます。
>>【わかりやすく】UNICEFユニセフとは?活動内容は?を専門サイトが解説
近年では人道支援活動にビッグデータを活用し、災害支援や復旧状況のモニタリングといった活動にデータ工学を取り入れています。また仮想通貨による寄付も受け付けており、支援活動を続けるための資金として活用されています。
なお寄付は仮想通貨だけでなく、オンラインでクレジットカード決済も可能です。ユニセフの活動に興味が湧いた方は、下記記事も参考にしていただけると幸いです。
>>世界の各地で活躍する「ユニセフ」への寄付はどんな人におすすめ?その理由を徹底解説
日本におけるソーシャルイノベーションの事例
日本で活動している、社会問題を解決するための革新的な事業・取り組みを行っている団体を紹介します。
どの団体がどのような取り組みを行っているか、詳しく見てみましょう。
フローレンスの事例
社会課題の解決に向けた革新的な取り組みを行っている団体として、病児保育問題やひとり親家庭の貧困問題の解決に取り組んでいる「フローレンス」が挙げられます。
- ・医療的ケアが必要な子どもを長時間預かってくれる保育園がない
- ・子どもが37.5℃を越える熱を出すと保育園に預かってもらえない
- ・母子家庭の58%が収入200万円未満でかつ過酷な環境に置かれている
このような課題を解決するため、子どもおよび家族に対して支援活動を行っています。
たとえば生活するうえで医療的ケアが必要な子ども(医療的ケア児)に対して、最長9.5時間保育が可能な、日本初の長時間障がい児保育園を設立。訪問保育やシッターサービスも提供しています。
「長時間の親の付き添いが必要で、仕事を辞めなければならなかった」
「相談できる場所が多くないため、孤立している感じが強い」
このような悩みを抱えている人を支援しています。
>>医療的ケア児とは?家族が抱える課題や行われている支援、私たちにできることを解説!
上記はフローレンスが取り組んでいる活動の一部です。フローレンスのその他の取り組みについては、下記記事をご一読ください。
>>【怪しい?】フローレンスの気になる評判や実態は?寄付先として信頼できるかを徹底解説
こども食堂の事例
日本で行われているソーシャルイノベーションの取り組みの1つに、こども食堂の活動が挙げられます。こども食堂とは、地域住民・自治体が主体となり、子どもたちに無料または低価格帯で食事を提供する、コミュニティの場のことです。
「子どもに食事を提供する場」だけでなく、「地域交流」「孤食の解消」「食育の実施」といった目的で運営されています。
2012年に東京都大田区にある八百屋の店主が始めた取り組みが、こども食堂のきっかけです。十分にご飯を食べることができない子どもたちがいると知った店主が自ら活動を始め、それを知った東京都豊島区の子ども支援団体がメンバーとして参加し、全国に活動が広がっていきました。
今では子どもへの食事支援だけでなく、「家庭的な雰囲気の中で暖かいご飯を皆で食べる(孤食の解消)」や「食育」といった目的をもって運営されています。
>>こども食堂とは?目的やメリット、これからの課題、支援方法などについて解説
私たちにもできるソーシャルイノベーションに関する取り組み
最後に、私たちができるソーシャルイノベーションに関する取り組みを2つご紹介します。
- ・ソーシャルイノベーションに取り組んでいる団体を支援する
- ・社会起業家を目指す
ソーシャルイノベーションに取り組んでいる団体を支援する
私たちにできることの1つに、ソーシャルイノベーションに取り組んでいる団体を支援することが挙げられます。
たとえば本記事で紹介したような団体に寄付することで、ソーシャルイノベーションの取り組みを継続して行いやすくなります。私たち自身がソーシャルイノベーションを起こすのはなかなか難しい場合もありますが、既に取り組みを行っている団体を支援するのは簡単です。
最近はオンラインでも手軽に寄付をできるようになりました。寄付に興味がある方は、ぜひ下記記事も読んでみてください。
>>はじめて寄付する人必見!寄付の仕方や団体の選び方まで完全ガイド
なお寄付を受け付けている団体の中には怪しいところ、いわゆる「寄付してはいけない団体」も存在します。怪しい寄付の呼びかけにひっかからないよう、下記記事も参考にしてみてください。
>>寄付してはいけない団体は本当にある?寄付先を選ぶときのポイントを3つ紹介!
社会起業家を目指す
社会起業とは、社会課題をビジネスで解決しようと起業する人のことです。
一般的な起業では利益を追求し、その結果生まれた利益を従業員の給与や寄付などで社会に還元します。一方、社会起業の場合は最初に社会課題解決を目指し、その結果として利益が生まれる、という違いがあります。
「社会課題に強い問題意識があり、解決するために自分が先頭になって頑張りたい」という人にとって、ボランティアや寄付と並んで有力な選択肢となるものです。ただし通常の企業と同じように、会社を立ち上げて利益をあげていく必要があるため、よほど強い目的意識と計画性がない限りは慎重になった方が良いでしょう。
ソーシャルイノベーションについて理解を深め、私たちにもできることを考えよう
本記事ではソーシャルイノベーションについて解説しました。ここで、紹介した内容をまとめます。
- ・ソーシャルイノベーションとは社会課題を解決するようなアクションのこと
- ・CSRやSDGsという言葉が注目されているように、社会課題への意識が高まっている
- ・政府や企業はもちろん、NPOなどの支援団体もソーシャルイノベーションといえる取り組みを行っている
貧困や格差など、社会課題は私たちの身近なところにあります。私たちにできることを考え、できることからアクションを起こしてみましょう。日本の社会課題については下記記事でも解説しているため、気になる方はご一読ください。