飢餓をゼロに

SDGs目標2「飢餓をゼロに」の取り組み内容とは?

世界には豊富な食料があるのにも関わらず、多くの人々が飢餓により苦しんでいます。

十分な食事を摂取することは、栄養状態の回復や飢餓をゼロにするだけでなく、雇用や教育の問題へとつながります。

SDGs目標2に掲げられている「飢餓をゼロに」について解説します。

成長期に栄養を取れない子どもは2億人
最前線の現場で活動する団体の報告で知る「栄養失調」

栄養失調の深刻な影響が及ぶのが、生後半年から2歳になるまでの赤ちゃんです。そのため、離乳期支援が最重要の課題とされています。途上国の最前線で活動するユニセフが、最新のデータや現地の状況、活動の様子を写真を交えてこの課題をまとめています。

SDGsと世界の飢餓問題

2015年9月に持続可能な開発目標として、SDGs目標2「飢餓をゼロにする」が掲げられましたが、過去10年以上減少していた飢餓人口は、2016年時点で増加に転じました。

持続可能な開発目標・SDGsの目標2「飢餓をゼロに」のターゲットや現状は?

飢餓人口増加の要因として、紛争や気候変動を指摘されています。しかし、紛争や気候変動とは関係ない平和な地域での食の安全保障と栄養面の悪化も懸念されているのです。

SDGs(持続可能な開発)とは

SDGs(持続可能な開発目標)は、一定の成果を挙げたMDGs(ミレニアム開発目標)を引き継ぎ、2015年9月の国連サミットで定められた世界共通目標のことを指します。

SDGsは、17の目標と169のターゲットから構成されており、持続可能でよりよい世界を目指すための世界目標とも言えます。

MDGsは発展途上国が中心の目標でしたが、SDGsは先進国も共通の目標として積極的に活動することが求められています。

SDGsの目標

SDGs目標で掲げられている項目は下記の通りです。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロ
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任 つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

SDGs17の目標は、それぞれがつながっており、包括的に解決を行うことが必要です。

SDGsを理解するためには、世界で起きている問題に目を向けなければいけません。

飢餓問題の現状

世界には十分な食料が生産されているにもかかわらず、世界では8億2,800万人が飢餓で苦しんでいます

さらに、3人に1人は、何かしらの栄養不足に陥っているのです。

2020年から2021年にかけ、新型コロナウイルス感染症の影響で飢餓人口が急増したとはいえ、長期的に見ると飢餓人口は確実に減少しています。国連によると、世界の人口が19億人増加したにも関わらず、飢餓人口は1990~92年と比べ、2億1,600万人も減少しています。

現在は、国連WFPと連携している機関の活躍により、世界の飢餓をゼロにする取り組みが行われています。

例えばユニセフでは、主に途上国において、飢餓による子どもの栄養不良の予防や治療といった支援活動も行ってます。

2019年は490万人の重度の急性栄養不良の子どもがユニセフの支援で治療を受けることができました。

国連関連の支援団体なので、スケールが大きく質の高い支援を行っています。ユニセフの活動内容や寄付に関心のある方は、ぜひ下記をチェックしてください。

>>日本ユニセフについて詳しくみる

人類が飢餓とのたたかいにより大きく進歩したとはいえ、まだまだ改善するべき課題が多く残ります。

  • 過去10年以上減少していた飢餓人口は、2016年時点で増加に転じた
  • 世界人口の9人に1人に該当する8億2,800万人が飢餓で苦しんでいる
  • 3人に1人は、何かしらの栄養不足に陥っている

(出典:農林水産省公式サイト「SDGs、世界の栄養不良改善への貢献を」)
(出典:外務省公式サイト「(8)食料安全保障および栄養」)
(出典:国連世界食糧計画(WFP) 「飢餓をゼロに」)
(出典:国連世界食糧計画(WFP) 「記録的飢餓が拡大: 世界の食料安全保障と栄養の現状」)

SDGs目標2「飢餓をゼロに」の内容

飢餓をゼロにするためには、「飢餓に終止符を打つこと」、「食料の安定確保」、「栄養状態の改善」が重要です。

そして、「持続可能な農業を推進すること」が飢餓撲滅につながります。

世界の人々が食糧に困らないためには、世界の農業を発展させ、農家の生活と生産能力を向上させなくてはいけません。

SDGs目標2を解決し、持続させるためには各国が積極的に農業市場へ投資する必要があります。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」のターゲット

SDGs目標2のターゲットは下記の通りです。

ターゲット
2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
2.2 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.3 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

SDGs目標2である「飢餓をゼロに」のターゲットは、2.1〜2.cまでの計8つです。

飢餓をゼロにして栄養状態を改善させるだけでなく、様々な課題を解決する必要があります。

小規模食料生産者の生産能力の向上や所得を増やすことや、農業の生産性を向上させるために災害に対する適応能力を高めることも重要となってきます。

様々な課題を解決することが、飢餓をゼロにすることにつながるのです。

  • 飢餓をゼロにするためには、「飢餓に終止符を打つこと」、「食料の安定確保」、「栄養状態の改善」が重要
  • 「持続可能な農業を推進すること」が飢餓撲滅につながる
  • 様々な課題を解決することが、飢餓をゼロにすることにつながる

(出典:農林水産省公式サイト「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット」)

SDGs目標2「飢餓をゼロに」のための取り組み


2030年に向けて飢餓ゼロという目標を達成させるために、世界中で様々な活動が行われています。

その中心となっているのが、国連世界食糧計画(WFP)です。WFPは、1963年に設立された飢餓撲滅を目指す最大の人道機関です。

20億人以上の世界の最も貧しい人々への食糧の提供や、緊急事態には食糧援助を利用して世界80ヶ国以上の国々において支援してきました。

WFPをはじめ、NPO・NGO、各機関が飢餓撲滅に向けて取り組んでいることを紹介します。

国連世界食糧計画(WFP)の取り組み

WFPが飢餓撲滅のために継続して行っている活動の中心は、以下の通りです。

緊急食糧支援

自然災害や紛争などの緊急事態で命を脅かすような深刻な食糧不足に直面した人々に、食糧を届けます。

学校給食プログラム

子どもたちを栄養不良から守るために、栄養価の高い学校給食を提供することで、学校に通うきっかけを作り、教育の機会を広げます。

母子栄養支援

乳幼児や妊婦・授乳中の女性に栄養強化のための食糧を届けることで、母子の健康を守ります。また、子どもたちの命を守り健全な発育を助けます。

NPOやNGOの取り組み

世界では、様々なNPOやNGOが飢餓のない世界を作るために活動しています。

とあるNGOでは、飢餓を根本的に解決するために、飢餓に陥っている人々が「食への権利」を得られることを目指しています。

「食への権利」を阻んでいる原因を見極め、政府や企業、地域社会、国際機関、家族など「食への権利」を阻んでいるものに対して働きかけ、根本的な解決を目指します。

飢餓状態にある人々に対しても、「食料への権利」があることを自覚してもらい、自ら行動できるように支援しています。

他にも下記の活動内容があります。

地域をつくる

住民とともに、栄養・教育・保健衛生・収入創出・ジェンダー平等・環境について改善できるように取り組んでいます。

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、生まれ育った環境を変え、貧困を断ち切るための活動を行っています。

4,500円/月(1日あたり約150円)の定額寄付で、モノや資金を支援するだけでなく、地域に根差した支援活動を進めています。

教育や生計向上など、生活の質を上げ根本的な問題を解決し安心して暮らせる社会にするサポートをしています。ワールド・ビジョン・ジャパンの活動や寄付に興味がある方は、ぜひ下記からチェックしてください。

>>ワールド・ビジョン・ジャパンについて詳しくみる

しくみを変える

政府機関や国際機関に対して、飢餓の解決に必要な国際ルールや政策や法律の整備を提言します。

気づきをつくる

「食料への権利」は誰もが持つ権利であることを理解して、実現のための行動を呼びかけます。

若い力を育てる

飢餓のない世界を作るために、若者が活躍できるように支援しています。

日本における飢餓問題の取り組み

日本において飢餓問題の取り組みを行っている団体は、政府や企業、NPO・NGOなど多くあります。

政府は、農林水産省の食料産業局で下記の取り組みを行っています。

  1. 栄養改善の国際展開
  2. 日露協力プラン(うち病院食)
  3. 農林漁業の6次産業化
  4. 食品ロス削減・食品リサイクル
  5. 食料品アクセス問題ポータルサイト
  6. スマイルケア食

様々な視点から飢餓問題を取り組むことで、総合的な活動が広まっています。

また、食品ロスに関する取り組みも行っています。食品ロスの具体的な問題について「もっと詳しく知りたい!」という方におすすめなのが、下記の本です。

挿絵やふりがなが多いのでわかりやすく、お子さんと一緒に楽しみながら食品ロス問題の知識を深めることができます。気になる方はぜひチェックして下さいね。

また、世界の栄養状態の改善に関わっているのも、健康寿命の長い日本だからこそできる取り組みと言えるでしょう。

また、日本は世界で活動している機関に対しても積極的に関わっています。

国連世界食糧計画(WFP)へ拠出することで、食糧支援をし、水田の整備や緊急食糧支援など多くの活動に携わっているのです。

多くの企業が飢餓問題に対して取り組みを行っており、主食である米や野菜などを研究し、品種改良にも取り組んでいます。

品種改良は、作物を育てやすくするだけでなく、安心で安全に育てられるために行っています。

農作物の品種改良を行うことは、農家の負担を減らすだけでなく、生産性と生産量を向上させることにもなり、所得を増やすことへとつながります。

  • 国連世界食糧計画(WFP)は、20億人以上の世界の最も貧しい人々への食糧の提供や、緊急事態には食糧援助を利用して世界80ヶ国以上の国々において支援してきた
  • ハンガーフリーワールドは飢餓を根本的に解決するために、飢餓に陥っている人々が「食への権利」を得られることを目指す
  • 日本は、国連世界食糧計画(WFP)へ拠出することで、食糧支援をし、水田の整備や緊急食糧支援など多くの活動に携わっている


(出典:国際連合広報センター公式サイト 「世界食糧計画」)
(出典:国連世界食糧計画(WFP)公式サイト「国連WFPは飢餓のない世界を目指します」)
(出典:ハンガー・フリー・ワールド「活動内容」)
(出典:農林水産省公式サイト 「開発途上国における世界農業遺産人材育成事業」)
(出典:農林水産省公式サイト 「アフリカ農業統計人材育成による世界戦略支援事業」)
(出典:国連世界食糧計画(WFP)公式サイト「日本政府、27か国に国連WFPを通じて多額の食糧支援」)

SDGs目標2「飢餓をゼロに」のために私たちにもできる支援とは


世界には豊富な食料がある一方で、多くの人々が飢餓により苦しんでいます。

飢餓をゼロにすることを目標に、日本だけでなく世界中で飢餓撲滅のための様々な活動が行われています。
しかしながら、継続した活動をおこなうためには資金や人材がまだまだ足りていません。

そこで、無理のない範囲であなたのお力を貸していただけませんか?

成長期に栄養を取れない子どもは2億人
最前線の現場で活動する団体の報告で知る「栄養失調」

栄養失調の深刻な影響が及ぶのが、生後半年から2歳になるまでの赤ちゃんです。そのため、離乳期支援が最重要の課題とされています。

途上国の最前線で活動するユニセフが最新のデータや現地の状況、活動の様子を写真を交えてわかりやすく掲載しています。

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この記事を書いた人
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