世界では今、食糧不足や栄養不良、飢餓が大きな問題となっています。
飢餓は紛争や気候変動など様々な要因により、途上国や貧困国で食料の入手が困難になっているため、世界規模で対応が求められています。
その対応の1つに食料安全保障があります。
食料安全保障は日本も行っており、国際機関と連携して様々な国で取り組んでいます。
この記事では食料安全保障について、日本や海外が行っている取り組みについて解説します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標2「飢餓をゼロに」のターゲットや現状は?
また、SDGsの達成や「飢餓のない社会」に貢献したいと少しでも思う人は、まずは30秒の無料支援をスタートしてみませんか?
約30秒のアンケートに回答いただくと、栄養失調を含む途上国の子どもが直面する問題に取り組む団体に10円の支援金が届きます。記事を読み進める前にぜひお試しください!
\たったの30秒で完了!/
食料安全保障とは
「食料安全保障」は、全ての国民が現在から将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるよう保障していくこと、そしてそれは国の基本的な責務であることを規定したものです。
そのために後述する食料・農業・農村基本法と輸入や備蓄を適切に組み合わせ、食料の安定的な供給を確保することとしています。
現在、世界は人口増加に伴い食料の需要は増大しています。それに加えて気候変動による生産量の減少など、国内外で様々な要因が食料供給に影響を及ぼす可能性が示唆されています。
食料不足による国民の不安の高まりを解消すべく、不測の事態に備えて、要因の影響分析、評価、食料不足が起きたときの対応手順の整備など、総合的な食料安全保障の確立を図っています。
(出典:農林水産省「食料安全保障とは」)
(出典:農林水産省「食料安全保障について」)
食料・農業・農村基本法
食料安全保障に関する規定を設けたのが「食料・農業・農村基本法」です。
この規定により不測の事態において国が必要な施策を講じることを明らかにしています。
基本理念の中にそれが盛り込まれており、以下のような条文で規定されています。
食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。
(出典:食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号) 食料の安定供給の確保 第二条)
またこれを実現するための基本的な方針や施策も記されています。
その中には必要な農地や農業用水、農業資源、農業の担い手の確保による農業の持続的な発展や高齢化により縮小している農村の復興などが盛り込まれています。
(出典:農林水産省「食料・農業・農村基本法のあらまし」)
世界の食料安全保障の現状とは
日本国内では「食料安全保障」や「食料・農業・農村基本法」を施行し、食料安全保障に取り組みを行っています。
世界でも食料安全保障について、各国ごとに協力し、様々な施策を行っています。もちろんその中には日本が参加している取り組みもあります。
世界では飢餓が問題の一つとして取り上げられており、持続可能な開発目標(SDGs)では飢餓ゼロを目標に掲げ、その撲滅を行うべくターゲットを定めて世界規模で取り組んでいます。
この問題は、世界人口の増加や新興国の食生活の変化、紛争の勃発や長期化、気候変動や異常気象の頻発など、様々な要因で起きていると言えます。
2015年までに1990年比で飢餓人口を半減させる目標を立てていたミレニアム開発目標(MDGs)では概ね達成できました。
しかし2016年には飢餓人口が再び増加し、8億1,500万人と世界人口の約11%が慢性的な栄養不足に陥る事態となったのです。
このような事態を改善するために、世界でも食料安全保障を確立していく必要があります。
(出典:国連職業農業機関(FAO)「飢餓の現状」,2016)
慢性的な栄養不足人口
慢性的な栄養不足人口は先述したとおり、2016年には8億1,500万人にものぼりました。
特にサブサハラ・アフリカや東南アジア、西アジアの一部で悪化していることが分かっています。
その原因は紛争下であったり、その紛争に干ばつや洪水が重なったりしたことで起こっています。
紛争・気候変動と食料安全保障
紛争が原因で食料不足となっているのはイエメンが顕著であり、次いで北部ナイジェリアやコンゴ民主共和国が挙がります。
また気候不順による食糧不足はエチオピアが最も多く、次いでマラウイが続いています。
このような状況下で、2017年には世界51カ国と地域で約1億2,400万人が危機的な食糧不足に陥っています。
そのうち18カ国は紛争が主な要因であり、7,400万人が緊急支援を必要とし、23カ国が干ばつを主とする気象災害が要因で、3,900万人以上が緊急援助を必要とする状況に陥りました。
(出典:国連世界食糧計画(WFP)「食料危機に関するグローバル報告書:1億人以上がいまだ急性の栄養不良に直面」,2019)
(出典:外務省「日本と世界の食料安全保障」,2018)
日本が食料安全保障のために行っている国際的な取り組み
日本が食料安全保障のために行っている国際的な取り組みが多数あります。それらは次の4つに分けられます。
これらを外交的取り組みとして行っています。この中でも特に近年行われている取り組みを抜粋してご紹介します。
(出典:外務省「日本と世界の食料安全保障」,2018)
アフリカ稲作振興のための共同体 (CARD)
SDGsが採択される以前から行われているのが「アフリカ稲作振興のための共同体」による稲作技術の普及に関する取り組みです。
2008年5月に第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)での立ち上げを表明して以降、サブサハラ・アフリカでの米生産量を2018年までに1,400万トンから2,800万トンに倍増することを目標に取り組んでいました。
そして、この目標は2018年に達成され、2030年までに米生産量をさらに倍増を目指すとされています。
さらにCARD参加国の国別稲作振興戦略(NRDS)の作成支援や、第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)にて農民6万人及び普及員2,500人に対しての稲作技術の普及を表明しています。
(出典:外務省「日本と世界の食料安全保障」,2018)
(出典:独立行政法人国際協力機構JICA「アフリカ・サブサハラで「コメ生産量10年間で倍増」の目標達成へ」,2018)
国際機関との連携
国際機関とは多種多様な連携をしています。SDGsの目標2の設定や、2015年に行われたG7エルマウ・サミットでの「2030年までに5億人を飢餓・栄養不足から救出する」の設定にも関わっています。
国際協力機構(JICA)を通じた農業開発支援の他、国連食糧農業機関(FAO)や国際農業開発基金(IFAD)、国連世界食糧計画(WFP)、食糧援助規約(FAC)など様々な機関との連携を行っています。
国連食糧農業機関(FAO)との連携
近年では国連食糧農業機関(FAO)とは無償資金協力や貧困農家を対象とした農業資材の提供、灌漑設備などの整備、農家の生計向上に向けた技術支援などを連携して行っています。
国連世界食糧計画(WFP)との連携
国連世界食糧計画(WFP)とはキルギスにおいて、食糧不足が深刻、または自然災害の影響を受けやすいコミュニティで協働の取り組みを行っています。
主に女性を対象とした職業訓練の実施や、その対価としての食料支援などが行われました。
(出典:外務省「日本と世界の食料安全保障」,2018)
栄養支援
日本は栄養支援も行っています。これも上記の国際機関と連携することで、栄養補助食品の供与はもちろんのこと、食と栄養のアフリカ・イニシアチブや栄養改善事業推進プラットフォームなどにも取り組んでいます。
食と栄養のアフリカ・イニシアチブ
2016年に行われた第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)にて発足し、アフリカ各国と支援機関が連携を深め、アフリカにおける栄養改善に向けた目標達成を支援しています。
2025年までの10年間で、アフリカの国々における栄養改善戦略の策定や、既存の分野の垣根を越えた栄養改善実施活動の促進などに取り組んでいます。
栄養改善事業推進プラットフォーム
2016年に「新興国・途上国を含む各国の栄養改善のため,官民連携を通じた包括的ビジネスを含む事業の国際展開を進める」ことを実現するために発足されました。
途上国における栄養改善に関わる食品関連企業のビジネス環境の整備や、官民連携での栄養改善事業の推進が主な目的となっています。
(出典:独立行政法人 国際協力機構JICA「栄養改善」,2017)
食料安全保障や世界の現状について知ろう
食料安全保障は日本だけでなく、世界全体で必要なものとなっています。先述したように、世界では食糧不足や栄養不良、飢餓に苦しんでいる人がたくさんいます。
途上国の飢餓を改善するのは食料安全保障の役割であることや、飢餓に苦しむ人たちがいる現状と解決に向けての取り組みを知ることが、飢餓ゼロへの第一歩になるかもしれません。