ひとり親家庭では、片親となってしまった母、あるいは父が家計のすべてを支えなければいけません。本来であればふたり親での収入で無理なく生活できる状態の家庭が多いですが、1人で同様の収入を得ることは難しいです。
さらに健康を維持していくために必要な医療費も大きな負担となることがあります。
この記事では、そうした負担となる医療費を軽減するために行われている、ひとり親世帯のための医療費助成について紹介します。(※2020年6月末時点)
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困窮するひとり親家庭には医療費も大きな負担に
ひとり親家庭のうち、貧困であると判断されているのは母子家庭に多く、厚生労働省が発表している相対貧困率では母子家庭で51.4%、父子家庭で22.9%が貧困状態にあるとされています。
母子家庭は半数以上が貧困状態にありますが、年収の平均値で見ても299.9万円、中央値で250万円とかなり低い収入で生活している世帯が多いと伺えます。
この年収の中から食費や光熱費などを支払わなければいけないわけですが、健康状態を維持しながら生活していくにはギリギリの家庭もあります。
医療機関にかかる可能性は誰しもありますが、その場合、貧困のひとり親世帯にとっての医療費は大きな負担となります。
しかし、医療費の関係から医療機関を敬遠する家庭も少なくありません。
それでは健康的な生活が送れないことから、政府では医療費による負担を軽減するために医療費助成制度を設けています。
(出典:労働政策研究・研修機構「母子家庭の貧困率は5割超え、13%が「ディープ・プア」世帯」,2018)
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ひとり親家庭が受けられる医療費助成とは
ひとり親家庭が受けられる医療費助成は地方公共団体が各自で行っているため、その対象者や助成方法などに細かな違いがあります。
こちらでは全体的に共通して見られる条件などを中心に紹介させていただきますが、申請される際は、自身が住んでいる地方自治体の役所の担当課に問い合わせすることをおすすめします。
医療費助成制度は受給資格以外にも所得制限などが条件としてあります。また医療証の交付手続きを受けなければいけない自治体が多いので、こちらも事前に申請しておく必要があります。それぞれの条件について見ていきましょう。
受給資格
医療費助成制度を受給するには条件を満たすことが必要となります。
自治体により、表記のされ方や内容などに細かな違いがあるので、この記事では東京都新宿区と名古屋市を例に説明します。
東京都新宿区
このような状態にある18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童を監護・養育している父母または養育者が対象となります。
ただし、児童が中度以上の障害を有するときは20歳未満までを児童の範囲としています。
名古屋市
続いて名古屋市の受給資格を例に紹介します。
名古屋市では以下いずれかに該当する女子で、18歳以下の児童を扶養されている人を対象としています。当然ですが、ひとり親家庭なので母子家庭だけでなく父子家庭も同様の条件で対象となります。また、児童と扱われる範囲は新宿区と同じです。
※未婚の母(父)と言われる状態
※婚姻には、事実婚関係も含まれる
こちらは上記の理由により父母ともにいない18歳以下の児童なども申請可能となっています。
比較しても内容としては共通な部分があっても、細かく見ると異なる部分もいくつかあります。特に新宿区は児童を受給資格の対象にしているのに対して、名古屋市は親または養育者を直接条件に挙げているため、自治体ごとに表記の仕方が違うことが分かります。
基本的にはひとり親であることが条件となるため、ひとり親になった場合は、まずは申請を行うことを前提に動いてみましょう。
対象外
対象外となる条件もあります。こちらも新宿区を例に挙げますが、以下の条件に当たる場合は対象外になりますので、各自治体で申請する際も予め確認しておくことをおすすめします。
生活保護を受けている場合は医療費助成制度を受けることができません。
また、医療費助成制度は医療証の申請が必要であることが多く、そのために健康保険に加入していることが必須となります。
生計を同じくするという条件が付与されているものは、母子家庭の場合は児童の母、父子家庭の場合は児童の父が元配偶者や事実婚の配偶者、またはそれに準ずる人と以下の状況にあることを言います。
条件としては法律上の婚姻関係にある、住民票上同一住所地にある、あるいはなくても同居しているか、定期的な訪問があり定期的に生計の補助を受けている状況です。
所得制限
申請者または扶養義務者の所得が指定される一定の限度額以上あるときは、医療費助成制度を受けることができません。
扶養親族数 | ひとり親家庭の父または母及び孤児など以外を養育する養育 |
---|---|
0人 | 1,920,000円 |
1人 | 2,300,000円 |
2人 | 2,680,000円 |
3人 | 3,060,000円 |
4人 | 1人増すごとに380,000円ずつ加算 |
この場合の所得額は以下の方法で計算します。
養育費を受け取っている場合は、そちらの8割も所得額に計上されますので注意してください。
地方自治体によっては公式サイトに所得制限が載せられていない自治体がありますが、必ず自身が住む自治体に確認の上、申請を行うようにしてください。
医療証と助成内容
医療費助成制度の認定を受けられれば、医療証が交付されます。こちらは健康保険証と一緒に提示することで、医療費助成制度の給付を受けることができます。
こちらは毎年1月1日から12月31日まで、または18歳に達する日以後の最初の3月31日までが有効期間であり、1月1日に更新が行われます。
また医療証を交付されている場合は、更新のために毎年10月下旬から11月上旬に現況届を提出する必要がある自治体もあります。
交付後はこれを提示することで助成を受けられますが、助成内容が自治体によって異なるため注意してください。こちらも新宿区と名古屋市について比較してみます。
新宿区の助成内容
新宿区では住民税課税世帯と非課税世帯で助成内容が異なります。住民税課税世帯では医療費が定率1割自己負担となります。
ただし自己負担額には、個人ごとでは外来で月18,000円、世帯ごとでは外来・入院で57,600円までを上限としています。また医療機関や受診者が複数の場合は合算で計算します。
これに対して住民税非課税世帯は医療費について一部負担はありません。
名古屋市の助成内容
名古屋市であれば県内の病院で受診する場合は、健康保険証とともに医療証を窓口に提出することで医療費の自己負担額が助成され、無料で受診できます。
ただし、入院したときの差額ベッド代や健康診断、予防接種、文書量などの保険診療対象外の費用、入院時の食費負担などは助成されないので注意しましょう。
さらに、やむを得ず医療証交付前に県内の病院での受診を受けた場合や、県外の病院などで受診したとき、医師の指示で治療用装具を購入した場合には、申請することで医療費などの払い戻しを受けることができます。
その際には医療証、健康保険証、印鑑、対象者名義の預金通帳、領収書、医療費支給申請書などが必要となります。
このように自治体ごとで助成内容も異なるので、申請前にどのような助成を受けられるか、確認しておくことをおすすめします。
(出典:新宿区「ひとり親医療費助成」,2020)
(出典:名古屋市「ひとり親家庭等医療費助成制度」,2019)
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ひとり親にとって医療費助成の受給は必要な権利
医療は生きていく上で必要なものであり、健康を維持していくためにもこまめに受診していくものになります。
しかし医療費自体は本来高額であり、健康保険に加入していたとしても、一定額の負担が必要となります。
医療費はひとり親家庭の収入においては大きな負担となり、生活に困窮している世帯では医療への受診を敬遠してしまう場合もあります。
そうなれば子どもだけでなく、その家庭で共に生活する人の健康状態すら危うくする可能性も出てきます。
それは日本国憲法第25条にある、「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことに反することになります。ひとり親家庭になろうと、その権利を享受する権利は当然あります。
もしひとり親になったとしても健康な状態で生活を送るために、医療費助成制度の申請を行うことをおすすめします。