ひとり親

ひとり親家庭の貧困率は?現状と支援策の課題とは

様々な家庭の事情によってひとり親家庭が増える昨今、貧困が問題となっています。
一般的な家庭では、共働きにより得た収入で生活を営んでいくことが多いですが、ひとり親となれば同等の金額の収入を得ることは難しいです。
これにより貧困状態にある家庭は増加し、現在はかなりの割合で困窮している家庭が存在します。

この記事ではひとり親家庭の貧困率の現状と支援策の課題について紹介します。

ひとり親家庭が抱える問題とは?どんな手当や支援があるのか見てみよう

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ひとり親家庭の現状

日本では多くのひとり親家庭が存在しています。
2015年時点の国勢調査結果では一般家庭が5,333万1,797世帯あるのに対して、母子家庭が75万4,724世帯、父子家庭が8万4,003世帯あり、ひとり親家庭の合計は83万8,727世帯あることが分かっています。
このデータは国勢調査で実際に発覚した世帯数のみなので、2016年の推計では母子家庭が123.2万世帯、父子家庭が18.7万世帯とも言われています。

実値にはなりますが、全体に占める割合としては母子家庭が1.42%、父子家庭が0.16%、ひとり親家庭の合計が1.57%とそれほど多くないように見えますが、それでもこれだけのひとり親家庭が日本全国にあるということは理解しておかなければいけません。

平成に入って初めて行われた1990年の国勢調査では、母子家庭が55万1,977世帯、父子家庭が10万1,705世帯であり、一般家庭は4,067万475世帯でした。
一般家庭が増加しているのはもちろんですが、母子世帯が約20万世帯ほど増えていることが分かります。

母子家庭は2000年ごろから急激に増加し始め、現在の世帯数にまで膨れ上がっています。
一方で父子家庭は1990年に比べると減少していることが分かりますが、1995年には13万世帯ほど減少しており、2005年に一度増加したものの、現在の水準まで減少してきています。
このようなひとり親家庭の推移、そして現状がある要因の1つに挙げられるのは、ひとり親家庭になった理由があります。

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ひとり親家庭になる理由

ひとり親家庭になる理由を母子家庭と父子家庭それぞれの視点で調査したとき、見えてくるのはどちらも「離婚」が圧倒的に多いことが挙がります。

母子家庭になった理由 父子家庭になった理由
1 離婚 79.5% 離婚 75.6%
2 未婚の母 8.7% 死別 19.0%
3 死別 8.0% その他 3.0%
4 遺棄 2.0% 不詳 1.0%
5 不詳 0.9% 未婚の父 0.5%
6 その他 0.5% 行方不明 0.5%
7 行方不明 0.4% 遺棄 0.5%

どちらも70%を超えており、母子家庭においては80%近くが、離婚が原因でひとり親家庭になっています。現代の多様な家族の在り方も影響している可能性もあり、昔より離婚する家庭が増えている節があります。

母子家庭で続いて多いのが「未婚の母」、「死別」が理由として続きます。子どもを授かっても様々な理由で婚姻を結ばず、未婚のまま出産して育てている家庭が8.0%も存在しいています。
一方で、父子家庭で2番目に多かったのが「死別」ですが、事故や病気などで死別してしまい、ひとり親として子どもを育てていかなければいけなくなったという家庭は一定数あります。

現代はこのような理由により、ひとり親家庭が増加しましたが、ひとり親家庭が増えることは、その家庭や社会にも様々な問題が発生します。
その中の1つとして「貧困」の問題が挙げられます。

  • ひとり親のになった理由として、男女とも離婚が圧倒的に多い
  • どちらも70%を超えており、母子家庭においては80%近くは、離婚が原因
  • ひとり家庭が増えるとその家庭や社会にも様々な問題が発生する
  • (出典:東京都福祉保健局「直近の調査に基づくひとり親家庭の現状」,2019)
    (出典:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親家庭等調査結果の概要について」,2016)
    (出典:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について」,2016)

    あまりにも多い日本のひとり親家庭の貧困率

    貧困、というと日本ではあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、日本国内にも貧困は多数存在しています。
    日本はバブル崩壊とともに不況と呼ばれる状態になってから、長期間に渡って脱せない時代が続きました。それにより一般家庭の収入は減少し、片働きだけでは生計が維持できず、共働きをする世帯が増加しました。

    2018年に発表された労働力調査の結果報告では、1985年に900万世帯以上あった片働き世帯が、2017年には500万世帯近くまで落ち込んでいます。

    一方で2人とも就業者である共働き世帯は1985年には1,100万世帯だったのが、2017年には1,300万世帯、2人とも雇用者である共働き世帯が1985年には700万世帯以上だったのが、2017年には1,100万世帯ほどにまで増加しています。

    もちろん不況だけでなく、税金の増加や物価の上昇なども影響していますが、片働きでは厳しいということが分かります。
    しかしひとり親家庭は、片親となった母あるいは父の実家に戻らない限り、1つの世帯で収入を得られるのは1人となってしまいます。
    長男あるいは長女がすでに就業していれば別ですが、母または父1人で生計を立てていることが多い傾向にあります。

    これはひとり親となったときの末子の年齢階級からも推測できますが、母子家庭の場合は平均年齢が11.3歳、0歳から14歳までの階級が66.6%にものぼります。
    父子家庭でも平均年齢は12.8歳、0歳から14歳までの階級が55.9%も存在しています。
    また世帯人員と構成を併せて見てみると、母子家庭では世帯人員が2~3人である家庭は64.9%、母子のみで構成される家庭が61.3%もあります。
    父子家庭でも世帯人数が2~3人である家庭は50.6%、父子のみの世帯構成が44.4%となっています。
    年の差があり、長子と末子の年齢が離れていて既に成人している可能性もありますが、すべての家庭がそうではない以上、こうしたデータを見ると、家庭の生計を立てるための生計を1人で立てている家庭は相当数あると推測されます。

    世帯収入の貧困の状況

    ひとり親家庭において、世帯収入を得られるのが片親となった母あるいは父であることは分かりましたが、ここに大きな問題が出てきます。
    それは就業状況の問題です。母子家庭と父子家庭の就業状況を見ると次のようになります。

    就業状況 母子家庭 父子家庭
    正規の職員・従業員 44.2%(約54.4万世帯) 68.2%(約12.8万世帯)
    自営業 3.4%(約4.2万世帯) 18.2%(約3.4万世帯)
    パート・アルバイトなど 43.8%(約54万世帯) 6.4%(約1.2万世帯)

    上記の表は2016年のデータですが、父子家庭は正規の職員や従業員、自営業が大半を占めているのに対して、母子家庭ではおよそ半分程度です。
    一方で、母子家庭の半分近くはパートやアルバイトで生計を立てていることも分かります。
    これは、正規の職員や従業員であった場合、子育てをしていく上で時間の融通が利かない、両立をしていくことができる条件が見つからないなどの理由で就けないこともあるようです。
    また、子どもが体調を崩したときなど、休みを取らざるを得ない状況などが発生するリスクから、会社側が正規の雇用を敬遠する節もあります。

    様々な理由から、正規雇用ではなくパートやアルバイトなどで働かざるを得ない人が母子家庭には多いということが分かります。
    そうなると世帯収入も大きく変わってきます。2018年の年間収入平均値は父子家庭で623.5万円、母子家庭で299.9万円でした。
    ふたり親家庭が734.7万円なので、父子家庭は何とか生計を立てていけますが、母子家庭はかなり厳しい世帯が多いということになります。

    さらに年間収入中央値で見たとき、同じく2018年では父子家庭が400万円、母子家庭が250万円、ふたり親家庭が665万円という結果が得られています。
    ここから父子家庭は平均値を大きく上げている世帯がある一方で、400万円以下で生活している世帯も一定数存在しているということにもなります。
    母子家庭は平均値と中央値にそれほど差がないことから、多くの家庭が250万円前後で生活している可能性があります。

    このような状況を判断するために設けられているのが、相対貧困率※というデータです。
    こちらも2018年のデータによると母子家庭が51.4%、父子家庭で22.9%となっており、母子家庭の半数以上が貧困状態であるとされています。

    さらに設定された貧困線のおよそ半分以下にあたる世帯をディープ・プアといい、深刻な貧困状態に陥っていると判断していますが、母子家庭が13.3%、父子家庭が8.6%も存在しています。
    母子家庭はもとより、父子家庭にも深刻な貧困状態となるほど収入が得られていない家庭があるということになります。

    ※相対貧困率:厚生労働省で定めている等価可処分所得(世帯の手取り収入)の貧困線について、その貧困線を下回る世帯員の割合を表したもの。
    つまり、貧困であるという判断を行う線を算出し、そこを下回った世帯を貧困率として割合で表している。

  • 1985年に900万世帯以上あった片働き世帯が、2017年には500万世帯ほどになった
  • 父子家庭は正規の職員や従業員、自営業が大半を占めているのに対して、母子家庭ではおよそ半分程度
  • 2018年の年間収入平均値は父子家庭で623.5万円、母子家庭で299.9万円で収入にも大きな差がある
  • ディープ・プアは、母子家庭が13.3%、父子家庭が8.6%も存在している
  • (出典:内閣府「第2章 家計部門の構造変化(第1節)」,2018)
    (出典:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について」,2016)
    (出典:労働政策研究・研修機構「母子家庭の貧困率は5割超え、13%が「ディープ・プア」世帯」,2018)

    ひとり親家庭への支援と課題


    ひとり親家庭、特に母子家庭が増加傾向にある中で、政府は様々な手当の支給や支援などを行っています。
    児童手当や児童扶養手当など育児を行っていく上で必要な資金の提供や、養育費確保、子ども居場所作り、子どもの学習支援、住居確保、就職に有利な取得促進など多種多様です。

    ひとり親家庭の増加により経済的に厳しい状況に置かれていることは既に触れていますが、その状況から自立していくためには、支援が必要な人に行政のサービスを十分に行き届けることが求められています。

    また、状況は一様ではなく、複数の困難な事情を抱えている人も多いため、それぞれの事情に合った寄り添った支援や、一人で過ごす時間が多い子どもに対して、学習も含めた支援、自立するための安定した就労が可能となる支援などが必要とされていいます。

    このような課題を解決するために、手当や給付金の支給、そして支援の実施を広げ、周知できるようなシステム作りを行っています。

  • 児童手当や児童扶養手当などの資金の提供や子ども居場所作り、学習支援など多種多様な支援を行っている
  • ひとり親が経済的に厳しい状況から脱するためには行政のサービスを十分に行き届けることが必要
  • 複数の困難な事情を抱えている人も多いため、それぞれの事情に合った寄り添った支援も大切
  • (出典:厚生労働省「ひとり親家庭への支援について」)

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    ひとり親家庭に私たちができること


    貧困状況に陥るひとり親家庭が多い現代の社会において、それを許容し受け入れ、手助けできる社会作りは必須となります。

    政府や行政機関、各地方自治体による支援も行われますが、すべてのひとり親家庭が享受できているわけではなく、24時間支援の中で生活できるわけではありません。
    ひとり親家庭となった人にとっては将来的な不安や、日々の負担などに押しつぶされそうになる人もいます。
    あるいは貧困から食事もまともにとれない家庭もあります。そのようなひとり親家庭に手を差し伸べる民間の支援もあります。

    例えば、子ども食堂のような、食事や居場所を提供する支援もその1つです。
    昨今は近所付き合いなど、人と人との交わりも薄くなり、安心して子どもを預けられる環境も少なくなっています。
    ひとり親家庭の人を支援するのは金銭だけの支援だけではありません。もちろん寄付や募金などで、民間でひとり親家庭を支援している人や団体を応援し、間接的に手助けするのも手です。
    しかし、周りにそのような家庭が存在するなら、小さくてもできることから手助けできることを考えていくのも大切です。
    私たちにできるひとり親家庭への支援を考え、行動に移してみてはいかがでしょうか。

    動画はこちら
    この記事を書いた人
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