飢餓や食糧についての問題は今の世界にとって解決すべき課題として注目され、様々な取り組みが行われています。
日本でもこの問題に対しての施策が講じられていますが、ODAを通じてアジアやアフリカなど多くの地域での支援活動や国際機関へ拠出しています。
この記事では日本の具体的な取り組みについて紹介します。
- ・飢餓・食糧不足が深刻な国について
- ・日本が飢餓・食糧問題に対し拠出を通じた協力・支援について
- ・日本の農業分野の技術協力について
飢餓・食糧不足問題への日本の取り組みついて、詳しく知りたい人はぜひ最後までお読みください。
飢餓とは?原因や世界の現状を知り、私たちにできることを考えよう
また、「飢餓のない社会に貢献したい」「栄養のある食事を全ての人がとれる社会にしたい」と少しでも思う人は、まずは30秒の無料支援をスタートしてみませんか?
約30秒のアンケートに回答いただくと、栄養失調を含む途上国の子どもが直面する問題に取り組む団体に10円の支援金が届きます。記事を読み進める前にぜひお試しください!
\たったの30秒!/
飢餓・食糧不足が深刻な国は?
実際に飢餓や食糧についての問題が深刻な国はどこでしょうか。
2021年のハンガーマップを基に、栄養不足の人口割合を地域ごとに分類し、それぞれの割合の範囲で該当する国名をまとめました。
ハンガーマップは国連世界食糧計画(国連WFP)が発表している世界地図で、世界の飢餓状況を栄養不足人口の割合により色分けして表現されています。
栄養不足の人口の割合 | 地域 | 国名 |
---|---|---|
35%以上 | 東アジア | 北朝鮮 |
アフリカ | マダガスカル ソマリア ルワンダ コンゴ民主共和国 コンゴ共和国 中央アフリカ リベリア |
|
北アメリカ | ハイチ | |
西アジア | イエメン イラク |
|
25-34.9% | 南アジア | アフガニスタン |
アフリカ | モザンビーク タンザニア ボツワナ チャド シエラレオネ |
|
南アメリカ | ベネズエラ | |
15-24.9% | 東南アジア | 東ティモール パプアニューギニア ソロモン諸島 |
南アジア | インド | |
アフリカ | エチオピア ケニア アンゴラ ナミビア ガボン トーゴ |
|
北アメリカ | ニカラグア グアテマラ |
|
5-14.9% | 中央アジア | キルギス パキスタン |
東南アジア | インドネシア フィリピン シンガポール ボヌアツ フィジー ニューカレドニア カンボジア タイ ベトナム ラオス ミャンマー バングラディッシュ |
|
南アジア | スリランカ バングラディシュ |
|
西アジア | オマーン ヨルダン イラン |
|
アフリカ | 南アフリカ エスワティニ エジプト スーダン カメルーン ネイジェリア ベナン ガーナ コートジボワール セネガル ガンビア モーリタニア マリ |
|
南アメリカ | パラグアイ ボリビア ペルー エクアドル コロンビア ガイアナ スリナム トリニダード・ドバゴ バルバドス グレナダ |
|
北アメリカ | ドミニカ国 パナマ ホンジュラス エルサドバドル ジャマイカ メキシコ |
2021年国内GDP上位の国は、ほとんどが5%未満となっていますが、第6位のインドは15〜24.9%の割合で栄養不足の人がいるという結果でした。
著しい経済発展を遂げている一方で、インドは経済格差が大きい国でもあります。
全人口14億人のうち、約2億人の人々が栄養不足の状態にあるとされています。
インドの飢餓・食糧問題の現状については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
>>インドの飢餓・食糧問題の現状を解説。飢餓の原因や私たちができることとは
- アフリカの多くの国は飢餓や食糧についての問題が深刻
- 先進工業国のほとんどは栄養不足の人口が割合が5%未満
- インドは経済成長が著しいが、所得格差が大きい影響で栄養不足の人口の割合が増えている
(出典:WFP「ハンガーマップ2021」,2021)
(出典:IMF「GDP, current prices」2021
日本はODA(政府開発協力)で世界の国々を支援
日本はODA実績が高い国として世界に知られています。
ODAとは「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動」を行うために支出される公的資金のことを言います。
政府開発援助(Official Development Assistance)の略称であり、開発途上国や国際機関に対して資金や技術提供を行います。
日本は公的資金として様々な国際機関へ拠出しています。
具体的な機関や支援は後述しますが、2022年の一般会計でのODAの予算が政府全体で5,612億円が計上されています。
- 日本はODA実績が高い国である
- ODAとは、「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動」を行うために支出される公的資金
- ODAとは政府開発援助(Official Development Assistance)の略称であり、開発途上国や国際機関に対して資金や技術提供を行う
(出典:外務省「開発協力,ODAって何だろう」,2016)
(出典:外務省「ODA予算」,2022)
飢餓・食糧問題に対し拠出を通じた協力・支援
日本は国際機関に資金を拠出して、開発途上国などに対する援助・協力を行っています。
国際機関へ拠出することで、どのような支援がどこに必要なのか、客観的に判断して活用してもらうことができます。
日本はODA(政府開発援助)を積極的に行っています。具体的には、国連世界食糧計画(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)への支援です。
それぞれどのような支援に活用されているのか、詳しくみていきましょう。
国連世界食糧計画(WFP)へ拠出金を供与して支援
WFPへの拠出金を供与したODAも実施されています。
日本が出した拠出金はWFPの活動資金となります。直接的に貧困国や飢餓で苦しむ国(政府)へ拠出することもできますが、必ずしも飢餓に苦しむ人々に使われるとは限りません。
適切な食糧支援ができる機関に拠出することで、飢餓に苦しむ人々を支援しようというのが日本の支援方法です。
2019年、日本政府は1億5700万米ドルをWFPに支援し、世界有数の支援国として国連WFPの活動を支えました。
この拠出金は様々な支援に用いられています。
カメルーンでは隣国の南アフリカ共和国からの難民支援に、フィリピンでは災害支援のための輸送通信支援などに活用されました。
次は、WFPが行っている飢餓・食糧問題への支援について紹介します。
(出典:WFP「日本と国連 WFP」,2018)
(出典:WFP「年次報告書2021」,2021)
緊急食料支援
飢餓の原因となる干ばつや洪水などの自然災害、紛争は突然起こるものです。
急に被害にあった人々や難民となった人々は食糧不足に陥ります。
食料不足になったときに国の支援が不十分であることや、全く機能しないことがあるため、緊急食糧支援は必須と言えます。
例えばカメルーンでは、隣国の南アフリカ共和国の政情不安により、2021年には約48万人の難民と約93万人の国内避難民を受け入れました。
しかし、カメルーンのみで難民や避難民の食糧をまかなうことは難しいです。そこで国連WFPは、82万7,000人以上に食料・栄養支援を実施しました。
(出典:WFP「年次報告書2021」,2021)
自立支援
緊急食糧支援による飢餓の解消も自立支援につながりますが、長期的な問題解決にはなりません。
そこでWFPでは、中長期的には住民自身が災害に強い地域づくりや、食糧不足解消に取り組めるような支援を行っています。
例えばタジキスタンでは、女性農民のために、女性生産者プロジェクトを開始しました。農場の生産性を高めるだけでなく、今までほとんど報酬がもらえなかった女性農民も、生産余剰分を販売することができるようになりました。
(出典:WFP「年次報告書2021」,2021)
災害に強い地域社会の構築
気候変動や環境悪化、それに伴う水不足、感染症の蔓延、急激な人口増加など様々な要因が重なり飢餓は深刻化していきます。
紛争や政情不安などのショックとストレスも、世界に甚大な悪影響を及ぼす可能性もあります。
あらゆる環境の変化が訪れても崩れず、ショックやストレスの影響も受けにくい災害に強い地域社会を構築することも飢餓への支援です。
人道支援機関が強い地域社会作りの視点を取り入れ、災害後であってもより良い社会を再建できるような社会にする必要があります。
(出典:WFP「災害に強い地域社会の構築」)
学校給食支援
学校給食は子どもたちの栄養状態や健康の改善に結びつきます。
給食があることにより出席率や成績向上にも繋がるデータも得られているため、学校給食支援も必要な支援方法として確立されています。
例えばラオスでは、約20年間にわたって子どもたちに学校給食を支援し、20年間で就業率が向上しており、成果が出ていることがわかりました。
(出典:WFP「年次報告書2021」,2021)
母子栄養支援
飢餓において、母子の栄養不良も深刻な問題となっています。
妊産婦の栄養不良は、生まれてくる子どもにも影響し、栄養不良状態となります。
出産や授乳にも多大なエネルギーが必要となり、新生児ともども栄養不良だと命を落とす可能性もあります。
飢餓の改善には母子の栄養支援も大切です。
飢餓地域では母子が最も飢餓にさらされやすい実態もあり、緊急支援と復興・開発支援のいずれにおいてもこの層に対しての栄養支援や産後ケアの支援などが必要です。
2021年にケニアでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響やイナゴの大量発生などで、深刻な食料不安に見舞われました。
そこでWFPは、5歳未満の子どもには栄養豊富なピーナッツペーストを、母親には栄養価の高い小麦粉を支給し支援しました。
(出典:WFP「年次報告書2021」,2021)
国連食糧農業機関(FAO)への拠出金を供与
日本はFAOへの拠出金を供与して支援を行っています。
2021年2月に、日本はアフガニスタン・イスラム共和国に1億2,220万ドルの支援をしました。
これは2021年から2024年に年最大1億8,000万ドルの資金援助を提供する日本の公約の一環です。
この支援は人道及び開発プログラムのために活用され、食料安全保障を含む様々な人道および開発セクターに割り振られました。
(出典:FAO駐日連絡事務所「日本が、アフガニスタンにおけるFAO緊急支援に新たな資金提供」,2021)
その他の国際機関
その他の国際機関にも飢餓や食糧に関する支援を行っています。その機関が「国際稲研究所(IRRI)」、「国際熱帯農業センター(CIAT)」、「国際とうもろこし・小麦改良センター(CIMMYT)」です。
農業生産環境の変化に適応した持続可能な農業栽培技術の開発において、この3機関へ拠出を行っています。
国際農業研究機関へ資金を拠出することにより、途上国の農家が実施可能で、農業環境変化に適応した持続可能な農業栽培技術の開発を支援することを対策のポイントとしています。
それぞれどのような事業なのか、内容などを紹介します。
国際稲研究所(IRRI)
この機関国際稲研究所(IRRI)では、「気候変動に対応した天水稲作における生産性向上システムの開発」を行っています。
開発済みの栽培技術や優良水稲品種を用いた生産性向上システムの研究開発が進められています。
現在起こっている気候変動の影響を受けやすいアジアやアフリカの天水稲作地帯において、二期作を実現する栽培システムを構築し、食糧不足が深刻であるアフリカの国々へ展開することを目的としています。
国際熱帯農業センター(CIAT)
「農業温室効果ガス削減のための栽培管理システム及び作物の開発」を進めているのが、国際熱帯農業センター(CIAT)です。
開発済みの高BNI能牧草と、日本のAIとIoT技術を組み合わせたGHGの発生を抑制した効率的な栽培管理システムを構築しています。
またGHGの発生を抑制するイネの品種を開発することで、地球温暖化などの原因を抑制する研究です。
ちなみにBNI能とは生物的硝化抑制(Biological Nitrification Inhibition)の略称で、植物自身が根から物質を分泌し硝化を抑制すること、GHGとは温室効果ガス(greenhouse gas)の略称です。
国際とうもろこし・小麦改良センター(CIMMYT)
国際とうもろこし・小麦改良センター(CIMMYT)は、「高度生物的硝化抑制(BNI)コムギによる窒素施肥量削減と環境保全」の研究を行っています。
高BNIコムギ系統を利用した新品種を育成するとともに、BNI能に関与する新たな遺伝子を特定し、施肥量・GHG排出量を大きく削減できる可能性をもつ集積系統を作出することを目的としています。
- 日本はODAにより飢餓や食糧問題に対して開発途上国政府に拠出するのではなく、国際機関へ拠出することで支援
- WFPとFAOへ拠出金を供与
- 「国際稲研究所(IRRI)」、「国際熱帯農業センター(CIAT)」、「国際とうもろこし・小麦改良センター(CIMMYT)」に対して飢餓や食糧に関する支援
(出典:農林水産省「令和5年度ODA予算等概算決定の事業概要」)
(出典:農林水産省「農業生産環境の変化に適応した持続可能な農業栽培技術の開発」)
農業分野の技術協力
日本は、長年培ってきた農業の知識や技術を活かした農業分野の技術協力を行っています。
アジアやアフリカに向けて行っている事業は、「開発途上国における世界農業遺産人材育成事業」と「アフリカ農業統計人材育成による世界戦略支援事業」です。
開発途上国における世界農業遺産人材育成事業
開発途上国における世界農業遺産人材育成事業では、持続可能な農林水産業の推進やコミュニティの保護、強化に資する世界農業遺産(GIAHS)の普及啓発と人材育成を通じ、開発途上国の貧困の削減を図ることを目的としています。
目的実現のために持続可能な農林水産業の推進や、コミュニティの保護や強化、開発途上国で貧困の削減を図るに資する人材育成の推進が行われています。
(出典:農林水産省「開発途上国における世界農業遺産人材育成事業[拡充]」)
アフリカ農業統計人材育成による世界戦略支援事業
アフリカ農業統計人材育成による世界戦略支援事業は、持続可能な開発目標(SDGs)の指標の整備に必要な信頼性の高いデータ収集や分析をアフリカで実施することにより、農業統計担当者の人材育成を図ることを対策のポイントとしています。
またICTを用いたデータ収集手法を開発することで、国際的な取組に貢献することも目的としています。
国際的な取組に貢献できる統計担当者の人材育成のため、農業統計担当職員の研修を実施しています。
さらに効率化や正確性向上のため、ICTを用いたデータ収集方法の開発も行っています。
- 日本がアジアやアフリカに向けて行っている事業は、下記2事業
- 開発途上国における世界農業遺産人材育成事業
- アフリカ農業統計人材育成による世界戦略支援事業
(出典:農林水産省 「アフリカ農業統計人材育成による世界戦略支援事業[新規]」)
(出典:農林水産省「令和5年度ODA予算等概算決定の事業概要」)
飢餓・食糧問題に対して日本が行っていることを知ろう
日本は世界の飢餓や食糧問題に向けた取り組みを長い間行ってきました。
WFPやFAOをはじめ、様々な国際機関への拠出や支援などを行うことで、現在の飢餓や食糧についての問題を解決できるように取り組んでいます。
日本だけでなく世界各国がこの問題に取り組んでいますが、日本に住む私たちは母国が行っている取り組みについて知ることも大切です。
日本が行っている支援を知り、国民として、私たちにもできることを考えてみてはいかがでしょうか。
飢餓や食糧問題については、SDGsでも取り上げられており、SDGsの目標2に「飢餓をゼロに」が挙げられています。
SDGsとは「持続可能な開発目標」のことです。世界中にある環境や貧困など様々な課題を、2030年までに解決していこうという計画・目標です。
世界の飢餓問題に関するSDGsの計画・目標について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
>>SDGs目標2「飢餓をゼロに」の取り組み内容とは?
また食糧問題で困っている人たちへの寄付を検討している方は、ぜひ以下の記事をご一読ください。
gooddo編集部がおすすめする寄付先団体を紹介しています。参考にしてください。
>>飢餓を世界からなくしたい!おすすめの寄付先団体を5つ紹介