LGBTQ+に関する課題とは?ジェンダー平等に向けた知識や活動を知ろう


  • 2020年4月6日
  • 2023年7月6日
  • LGBT

最近、ニュースなどでも取り上げられるLGBTQ+は、世界でも1つの問題として議論されています。

LGBTQ+の存在を前提とした社会制度を導入した国もあれば、酷い差別や人権侵害が続く国もあり、どのように対処すべきかが国によって異なります。

日本でもLGBTQ+を取り巻く社会制度については長年に渡り議論と対策が行われていますが、この記事ではこのLGBTQ+について、そしてジェンダー平等に向けた知識や活動について紹介します。

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LGBTQ+とは

LGBTとは4つの言葉の頭文字を取り、組み合わせてできた言葉になります。これは現在における性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉の一つとして使われることもあり、現代の多様な性を表現している言葉とも言えます。

4つの言葉は3つの性的指向(セクシャルオリエンテーション:Sexual Orientationと1つの性自認(ジェンダーアイデンティティ:Gender Identityの言葉に分けられています。性的指向とはどのような性別の人を好きになるか、と言うことを意味します。

また性的少数者はこの性的指向と性自認の頭文字を取った「SOGI」と表現されることもあります。

これは多くの場合、思春期の時期に気付くものであり、現代の多様な性が認識されるようになってからは、公表する人も増えてきています。

性的指向の3つとはレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)に分類されます。

また性自認あるいは性の自己認識と呼ばれるものは、自分の性についてどのような認識なのか、ということです。

上記にも出てきていますが心の性と言われることもあり、身体の性と心の性が一致している割合が多いですが、そうでない人も当然存在し、トランスジェンダー(Transgender)として分類されています。

あくまでLGBTに区分される代表的な例ではありますが、性的少数者は他にも男女どちらにも恋愛感情がない人や自分の性を決められない、または分からないと言う人など様々であり、性の多様性が見られます。

最近ではQ(クエスチョニング:心の性別が定まっていない人、変化している途中である人)と+(プラス:それ以外の性)を加えた「LGBTQ+」という呼び方が広がっています。

レズビアン

レズビアン(Lesbian)は心の性が女性であることを認識しており、その上で女性が恋愛対象となる女性の同性愛者を表す言葉です。

ゲイ

ゲイ(Gay)は心の性が男性であり、恋愛対象も男性となる男性の同性愛者を表しています。

バイセクシャル

バイセクシャル(Bisexual)は自身の心の性に関わらず、恋愛対象が男性にも女性にも向いている両性愛者を示します。

トランスジェンダー

トランスジェンダー(Transgender)は身体の性と心の性が一致しないことから、身体の性に違和感を持つ人を表します。
こういった人の中には心の性に沿って生きたいと望む人が多く見られます。

クエスチョニング

心の性別が固まっていない人、変化している途中である人を表します。

プラス

ここまでの定義に当てはまらない、それ以外の性を表す言葉です。

  • LGBTとは4つの言葉の頭文字を取った言葉であり、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉の1つである
  • LGBTは3つの性的指向と1つに性自認に分けられ、それぞれレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)に分けられている
  • 性的少数者は他にも男女どちらにも恋愛感情がない人や自分の性を決められない、または分からないと言う人もいる
  • 最近ではLGBTの定義に当てはまらない人を含めて「LGBTQ+」と呼ばれることがある。

(出典:法務省人権擁護局「多様な性について考えよう!」)
(出典:法務省「あなたが あなたらしく 生きるために」)

LGBTQ+の人々が直面する問題

LGBTQ+とは性の多様性であり、差別されるべきことではありません。

しかし実際は、これまでLGBTQ+が少数派であるとして、年齢や地域に関わらず、世界各地で人権侵害や差別、迫害を受けることも多くありました。

これに伴い国連事務総長は2010年にLGBTQ+に関する演説を行い、世界各国での同性愛の犯罪指定解除や、LGBTQ+の人々に対する暴力や差別に取り組む措置を求めました。

それ以降LGBTQ+は徐々に世界に認識され、LGBTQ+の存在を考慮した社会制度の国も少しずつ増えてきています。

それでもなお世界全体を見れば、反LGBTQ+法と位置づけられた法律を定める国も存在し、重い刑罰として死刑を課す国も存在します。LGBTQ+であるというだけで、人権侵害を受けるケースは数多く存在しますが、彼らあるいは彼女らが直面する問題はそれだけはありません。

子ども・教育

自分の性的指向は早ければ思春期に気付くことがあります。思春期は学校で生活していますが、LGBTQ+への認識や差別への知識がそれほどない子どもがほとんどです。

そのため「男(女)のくせに」、「気持ち悪い」など侮蔑的な言葉を浴びせられることもあり、自尊心を深く傷つけられるケースもあります。

また子どもだけでなく教員にも理解がない人も少なくないため、差別的な見方をし、正しい教育がなされていないという場合もあります。

就労・仕事

LGBTQ+であることは、就労や仕事にも影響することがあります。例えば就職活動の際、結婚などの課題からLGBTQ+であることを告白したところ、その時点で面接を打ち切られたという事例があります。

他にも昇進や昇格の際に結婚要件がある職場もありますが、同性パートナーは認められず、昇進・昇格ができなかったというケースもありました。

下記の本では、トランスジェンダーの著者が、どのような環境の職場なら働きやすいのか、わかりやすく解説しています。
カミングアウトされたときにどうしたらいいのか、どのような言葉をかけたら相手を傷付けないのか、自分の身に起こったときの対処方法を知るのにピッタリな1冊ですので、ぜひチェックしてください。
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医療

医療においても同性愛者や両性愛者の場合、認知症・意識不明状態のパートナーが入院したにも関わらず、病院そして医師からは安否情報や治療内容の説明を受けられず面会ができなかったという事例があります。

トランスジェンダーの場合は、性別適合手術を終えているケースでも戸籍の性別変更をしていないため、身体の状態と保険証の性別の違いから、他の病気などの際に受診しづらいといった例も報告されています。

これは一部でしかありませんが、このように各分野でLGBTQ+の人たちが困難な状況に陥るのは、世間的な認知や理解が及んでいないためというのも理由の一つです。

  • LGBTQ+が少数派であるため、年齢や地域に関わらず世界各地で甚大な人権侵害や差別、迫害を受けている
  • 国連事務総長は2010年にLGBTQ+に関する演説をきっかけにLGBTQ+は徐々に世界に認識され、合法とする国も少しずつ増えてきた
  • 世界全体で見ると、教育、就労・仕事、医療、などの現場において格差が発生している

(出典:国際連合広報センター「LGBT」)
(出典:参議院常任委員会調査室・特別調査室「LGBTの現状と課題」,2017)

LGBTQ+に関する課題

LGBTQ+に関する差別や人権侵害を解消するためには多くの課題があり、対策が不可欠となります。

その対策のためにも法律の制定や条例についての議論がされていますが、一方で行政手続きや企業によるサービスなどにおいては、個別で配慮した対応が可能なのか、あるいは一律で規定を設ける必要があるのか、様々な議論が行われています。

LGBTQ+と教育

LGBTQ+の多くは思春期に気づくケースが多く、そういった場合多くの困難に直面します。
これに対して政府はLGBTQ+の児童生徒に対して配慮のある対応を求めています。

しかし一方でこのような多様な性的指向が存在することを学習指導要領上明記すべきなのではないか、という意見もあります。

これに対し、スポーツ庁からは「生徒の発達段階を踏まえたものになるか、保護者や国民の理解を得られるかなどの観点から、慎重に検討していく必要があると考えている」との返答がされています。

また性的マイノリティについての規定に関しても異性への関心は削除すべきと言うものと、配慮は指導内容ではなく個別カウンセリングで対応すべきとの意見に割れています。

それに対して文部科学省は指導内容として性的マイノリティについて取り扱うことは個々の生徒の発達の段階に応じた指導、保護者や国民の理解、教員の適切な指導の確保などを考慮すると難しいと考えている、と回答しています。

このようにLGBTQ+に関する教育の必要性については今なお議論が交わされており、学習指導要領に盛り込んで統一的に行うか個別の相談により対応すべきか意見が分かれ、政府としても決めかねているのが現状です。

戸籍上の性別

2003年に施行された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律による性別取扱いの変更は医学的な3要件と法的な3要件の合計6要件を満たすことで家庭裁判所において審判手続きにより認められるものとしています。

医学的3要件
1. 経験ある2名以上の医師による性同一性障害との診断
2. 生殖腺がないこと・生殖機能を永続的に欠くこと
3. 望みの性に近似する性器を有すること

法的3要件
1. 20歳以上
2. 現に婚姻していないこと
3. 現に未成年の子がいないこと

そのため性同一性障害と診断されていないトランスジェンダーや、診断を受けていても性別適合手術を求める医学的3要件の2と3を満たさない人は性別取扱の変更ができないということで、社会生活上の困難に直面しています。

その事例は先ほども挙げたとおりですが、LGBTQ+の人々が困難に直面する要因となってしまっているため、これらも課題として議論されています。

結婚

課題の議論の中には日本の憲法の下で同姓婚が補償されているかどうかという問題も見られます。

憲法によると、婚姻には「両性の合意」への言及が、一夫一婦の婚姻を想定していると記載されています。

一方では既存の性的役割に拘束されない対等な配偶者を前提として、性別に関わらず平等に婚姻できることを定めた規定であると理解し、同姓婚を制限すべき規定はないという意見もあります。

また幸福追求権から同姓婚を認めないと言うことは、これを侵害し、性的指向による差別であり平等権に反するという声もあります。

それぞれの意見が出る中で、元安倍内閣総理大臣は憲法での婚姻は元々両性の合意に基づいて成立するものとし、同姓婚を想定していないこと、同姓婚を認めるか否かは日本の家族の根幹に関わることから慎重な検討を行う必要があると述べています。

同姓婚が認められないことはパートナーの遺言がないと遺産相続ができない、安定した環境で子どもを育てることが難しいなどの困難に直面します。

そのためこのような同姓婚を認めるのか、具体的な対応についての議論が必要であるとの声も挙がっています。

海外に目を向ければ、同姓婚を認める国や結婚の代替になる制度を設けている国もあり、日本と同様の先進国に多く見られます。

こういった海外の動きや制度も踏まえた上で、慎重な議論と対応を模索していかなければいけないのが、今の日本の同姓婚への課題であると言われています。

  • LGBTQ+の教育において文部科学省は性的マイノリティについて取り扱うことは個々の生徒の発達の段階に応じた指導、保護者や国民の理解、教員の適切な指導の確保など、難しい面が多いとし、今なお議論されている
  • 戸籍上の性別変更は医学的な3要件と法的な3要件の合計6要件を満たすことで家庭裁判所において審判手続きにより認められる
  • 日本では、同性婚があまり好ましく思われていないが海外に目を向けると同姓婚を認める国や結婚の代替になる制度を設けている国もある

(出典:参議院常任委員会調査室・特別調査室「LGBTの現状と課題」,2017)

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本は、日本におけるLGBTQ+差別の撲滅をめざし、オンラインでの情報発信による啓発活動やLGBTQ+に対する差別禁止の法制化を日本政府に求める、「Love Beyond Genders」キャンペーンを行っています。
また、特設ウェブサイト「LBGTニュースブログ」で世界のLGBTQ+についての最新情報を知ることができます。
>>アムネスティ・インターナショナル日本について詳しくみる

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日本におけるLGBTQ+を取り巻く課題への取り組みについて

日本ではLGBTQ+に対しての動きが2002年からありました。人権教育・啓発に関する計画の中に同性愛者への差別といった性的指向に関わる問題の解決を目指す施策の検討をするとされています。

その施策の検討が始まってから2年後、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が施行されています。

しかし世間ではLGBTQ+に対する理解はなかなか得られないことから、課題も浮き彫りとなり、新たに国会議員連盟も発足されました。

これをきっかけとして連盟が発足された同年の2015年からは文部科学省から性的マイノリティの児童生徒全般に配慮を求める通知や、第4次男女共同参画基本計画で性的指向や性同一性障害を理由として困難な状況に置かれている場合への対応が取り組まれています。

また東京都渋谷区と世田谷区では同姓パートナーの証明の発行を行う制度も始まりました。

現在、パートナーシップ制度を導入する自治体は増えてきており、2022年10月には240自治体、人口にして55%以上をカバーするまでに広がっています*。

このようにLGBTQ+に関する課題の解決、そしてジェンダー平等を目指す取り組みは2015年を皮切りに一気に進んだことが分かります。

翌年2016年には自民党で「性的指向・性自認に関する特命委員会」の設置や、文部科学省による教職員向け手引きの作成と公表も行われました。

さらに課題とされたLGBTQ+への差別に対しては、2017年に男女雇用機会均等法に基づく改正セクハラ指針の施行で、被害者の性的指向・性自認に関わらず職場におけるセクハラが対象となることも示されています。

他にも性的指向や性自認をからかい、いじめの対象にすることもセクハラにあたり許されないこと、LGBTQ+への対応がいじめ防止対策推進法の基本方針に盛り込まれたことも課題の解決、そして平等に向けた動きにつながっています。

2020年6月には「パワハラ防止対策関連法(労働施策総合推進法)」が施行され、SOGI(※)ハラスメント対策として、企業での取り組みも広がってきています**。

また政府だけでなく、民間においてもLGBTQ+の人々に配慮した取り組みが進められています。
NPO・NGOによる法整備のための組織の発足や、その組織による周知啓発や情報発信、あるいはLGBTQ+の差別禁止を行う法整備の訴えが行われています。

さらにNPO・NGOによるLGBTQ+教育や、LGBTQ+の若者のためのLGBTQ+成人式、就職活動の支援などの活動も見られます。

  • 日本では2002年からLGBTQ+に関わる課題に対する活動が行われ、性同一性障害者の性別の取扱いや、性的施行や性自認に対する法律が施行されている
  • 東京の都渋谷区と世田谷区では同姓パートナーの証明の発行を行う制度が始まった
  • 政府以外にも、NPO・NGOなどの民間団体による法整備の訴えや情報発信、教育や就職支援などの様々な活動が行われている

(※)SOGI:性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字を取った略称

(出典:参議院常任委員会調査室・特別調査室「LGBTの現状と課題」,2017)
(*出典:渋谷区・虹色ダイバーシティ 全国パートナーシップ制度共同調査)
(**出典:厚生労働省 職場におけるハラスメントの防止のために)

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>>持続可能な開発目標・SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」のターゲットや現状は?

LGBTQ+における課題やジェンダー平等実現のために私たちにできること

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