LGBTQ+は近年広く知られるようになった性的マイノリティの人々を表す言葉です。 国によってはそのような人々を認め、権利を保障するよう法整備を行っているところがあります。
一方で性的マイノリティを認めていない国や地域、あるいはそのような人々の権利を認める法整備が遅れている国もあります。
日本はその遅れている国の1つです。LGBTQ+の人々が少しでも生活しやすくなるように、地方公共団体や企業などが取り組んでいます。 この記事ではLGBTQ+の人々に対する差別をなくすために、ジェンダー平等に向けた活動について紹介します。
LGBTQ+に関する課題とは?ジェンダー平等に向けた知識や活動を知ろう
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LGBTQ+とは
LGBTは性的マイノリティ(性的少数者:セクシャルマイノリティ)を表す言葉の1つであり、多様化する性の分類として用いられます。
Lは女性の同性愛者(レズビアン)を表し、心の性が女性で、女性を恋愛対象とする人が当たります。
Gは男性の同性愛者(ゲイ)であり、心の性が男性で、男性を恋愛対象とする人です。
Bは両性愛者(バイセクシャル)であり、恋愛対象が男性にも女性にも向く人を言います。
このようにLGBTQ+のLGBは恋愛対象が誰になるかという性的指向をそれぞれ表した言葉の頭文字です。
これに対してTはトランスジェンダーを表しており、身体の性と心の性が一致していない性同一性障害、あるいは性自認を意味しています。
さらに、Qは性的指向や性自認が「分からない/違和感がある(クエスチョニング)」人、+(プラス)はLGBTQでは表現しきれない多様な性的指向や性自認を表しています。
(出典:法務省人権擁護局「多様な性について考えよう!」)
LGBTQ+の人々に向けられる差別に関する問題
LGBTQ+の人々は様々な差別問題や困難に直面していることが多いです。 それは教育を受ける学校や同級生との付き合い、社会に出れば就労など仕事のシーンで起こります。
また医療や公的サービス・社会保障など、本来なら差別されることなく受けられるものでさえ、LGBTQ+などの性的マイノリティという理由で困難に陥ることもあります。 そのような差別問題や解決すべき課題について紹介します。
(出典:参議院「LGBTの現状と課題」,2017)
教育
性的指向や性自認は思春期に自認するケースが多いため、教育の現場はそのような性的マイノリティに対しての教育が最も必要な場所です。 しかし、そういった環境にあっても教育が至っておらず、差別的な発言を投げかけられることも少なくありません。
例えば「男(女)のくせに」、「気持ち悪い」、といった侮辱的な言葉をぶつけてくる子どももいます。それにより性的マイノリティを自認している子どもは、自尊感情を深く傷つけられることがあります。
また性的マイノリティへの理解の欠如は子どもだけに限りません。本来はそのような子どもにも理解を示し、周りの子どもへの教育をすべき教員からも、差別的な言葉が出ることもあります。
性的指向や性自認に対して理解が及ばないことで、そこに置かれている性的マイノリティの子どもが差別的、侮辱的な扱いを受けている現実があります。
仕事
仕事においても困難は絶えません。 就職活動の際には、結婚などの話題が出ることがあります。そういったときに、性的指向や性自認をカミングアウトすると、面接が打ち切られたという例があります。
また昇進や昇格などに結婚要件がある企業も存在しますが、その際同性のパートナーは認められず昇進や昇格ができなかったということもあったようです。
そういったことがなくても、性の不一致への理解が得られず、カミングアウトしたことをとがめられ、隠しておくことを強要されることも少なくありません。 他にも仕事では数々の困難に直面することがあり、仕事を続けられない、支援を受けられないというケースが後を絶ちません。
医療
本来、このような性的マイノリティへの理解や配慮は医療の現場でも行われる必要があります。しかし、このような場所でも理解が至っておらず、差別的な対応をされることが少なくありません。
例えば、パートナーが意識不明の状態で入院した際も、同性であったことから病院及び医師から安否情報、治療内容の説明を受けられずに面会できなかったケースがあるようです。
また性転換を行っても、戸籍上の変更ができる条件を満たしておらず、医療機関の受付では現在の戸籍上の名前で呼ばれるため、受診し辛かったというような困難に直面した人もいたとのことです。
性の多様化により、こういったケースは増える傾向にあり、医療機関はどのような人でも利用する場所であることから、このような困難が起こってしまうのは大きな課題に他なりません。
公的サービス・社会保障
公的サービスにおいても、性的マイノリティの人は困難を感じています。 例えば高齢者向けの施設において、男女分けで施設が運営されていますが、性に違和感を抱えていることを伝えても考慮されず、戸籍の性で分類され精神的な負担が大きかったというケースがあります。
また公営住宅を申し込む際にも、同性のパートナーが同居親族にあたらないといった理由から拒否をされた例も報告されています。
法的な関係もあるので難しいところではありますが、性的マイノリティを含む誰もが不自由のない暮らしをするためには公的サービスや社会保障の現場における理解を深めることが、大切なこととなります。
(出典:参議院「LGBTの現状と課題」,2017)
ジェンダー平等に向けた取り組み
性的マイノリティへの差別や直面する困難を解消し、ジェンダー平等な社会を目指すためには、法整備など様々な政策だけでなく、社会全体でも取り組みを行う必要があります。
地方公共団体や企業などでは取り組みが進められており、ジェンダー平等に向けて動いています。 ここからは政府、地方公共団体、企業のそれぞれの取り組みを紹介しましょう。
日本政府の取り組み
政府ではLGBTQ+を巡る様々な対応が進められてきました。 その始まりは2002年まで遡ります。この年、「人権教育・啓発に関する基本計画」に同性愛者への差別など性的指向に係る問題の解決に資する政策の検討を行うことが盛り込まれています。
翌年の2003年には法整備として性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が制定され、翌年施行されました。 その後数年間は主な動きはなかったものの、2012年に文部科学省が性同一性障害への対応徹底を求める事務連絡を発出して以降、再び大きく動き出しています。
例えば性的マイノリティであることによる抑圧や差別による自殺が増加していたことから、自殺総合対策大綱で言及することで認識を改め、文部科学省・法務省・厚生労働省の重点施策として挙げられています。
また性的指向・性自認に関する特命委員会の設置や文部科学省における教職員向け手引きの作成及び公表もされています。
男女雇用機会均等法に基づく改正セクハラ指針やいじめ防止対策推進法に基づくLGBTQ+への対応を盛り込んだ基本方針の改定なども行われていますが、しっかりとした法整備には至っていないのも事実です。
特に同性婚や同性パートナーシップなどの制度は先進国の中でも遅れており、G8の中では日本とロシア以外は法整備を進めていることから、今後の対応が待たれています。
地方団体の取り組み
国の法整備が遅れている中で、地方自治体では渋谷区や世田谷区で同性パートナーを認める「同性パートナーの証明」の発行を行う制度が2015年に始まりました。
渋谷区では条例を制定することで、同性パートナーを対象とした証明書発行要件を定めています。 これは渋谷方式と言われており、当事者による共同生活の合意契約などの公正証書の作成を求めることで、同性パートナーを承認しています。
それに対して世田谷区では行政の判断で策定できる要綱、という形で同性パートナーの宣誓書を渡し、写しを受領する世田谷区方式という方法をとっています。 この2つの方式を中心として、他の地方自治体でもこのような同性パートナーの証明書を発行しています。
例えば北海道札幌市や三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市では世田谷区方式を採用して、証明書を発行する制度を開始しています。
同性パートナー証明は、社会において同性パートナーを承認するだけでなく、同性パートナーの存在を可視化することで、社会通念や慣行に働きかけ、人々の意識を変えてもらうきっかけにしていくことも目的としています。
他にも文京区男女平等参画推進条例や多摩市女と男の平等参画を推進する条例や、自治体レベルでの性的指向や性自認を理由とした差別的な扱いの禁止などを明記する条例が存在し、各地での性的マイノリティに対する取り組みは進められています。
企業の取り組み
企業の取り組みでもLGBTQ+に配慮したサービスが展開されています。 例えば生命保険においては、同性パートナーを保険金の受取人にでき、手続きも簡易的にしたサービスがあります。
また家族を対象とした割引サービスなどを同性のパートナーにも適用できたり、貯めたマイルを同性のパートナーと分けあえると言った同性パートナーを認めたサービスが少しずつ増えてきています。
(出典:参議院「LGBTの現状と課題」,2017)
LGBTQ+の差別をなくしジェンダー平等の実現に向け、私たちにもできること
LGBTQ+の人々は様々な困難や生き辛さを感じながら生活してることが多くあります。
LGBTQ+の人々への差別をなくしていくことで、私たちが平等に暮らせる社会を作ることになります。
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