日本ではほぼ100%の子どもが義務教育を受けられていますが、開発途上国では十分な教育を受けることができない子どもが多くいます。
そして2018年時点で世界で学校に通えていない子どもの5,900万人うち、3,400万人がサハラ以南のアフリカの子どもが占めています。
今回は、アフリカの女子教育の現状について詳しくご紹介します。
アフリカの教育の現状とは?男女格差や支援の内容、私たちにできること
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アフリカの教育の男女格差とは
サハラ以南のアフリカでは、女の子の初等教育純就学率は78%と低い数値です。さらに中学校などの前期中等教育の純就学率は31%と世界平均の68%と低く、世界の中でも特に低い水準となっています。
アフリカでは農村部において、炊事や洗濯、育児や病人の介護など家族やコミュニティの世話をするのは女性の仕事とされています。そこで女の子も学校に通わず、母親の重労働を支えるために仕事を手伝っていることが多いのです。
そのため男性は家族を養うためにお金を稼ぎ、女性はお金を生み出さない労働に従事するため家庭内での発言権も低い傾向にあります。
このような環境で女の子は依然として教育を受けられず、識字や教育レベルが低いままの女性は経済活動にも政治活動にも参加できないという悪循環が続いています。
それでも教育を受ける女の子は増えつつあるものの、依然として男性との格差は消えていません。
(出典:公益財団法人 日本ユニセフ協会)
(出典:公益財団法人 日本ユニセフ協会「世界子供白書2017」)
(出典:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所公式サイト)
女の子であるために教育を受けられない理由
アフリカで「女性だから」という理由で教育を受けられない子どもがいる理由について解説します。
女性が男性よりも地位が低いとされている
女の子が学校に通えず教育を受けられない理由に、地位の低さがあります。
「女性は教育を受けるべきではない」という慣習や「家事をするのに教育は不要である」、「早く結婚して家庭を守るべきである」といった、伝統的な差別や習慣が挙げられます。
アフリカでは女性や女の子に家事の主な責任を割り当てられ、炊事や洗濯、水や食料の運搬などに男性の2倍の時間を費やしています。
(出典:国連開発計画(UNDP)「アフリカ人間開発報告書2016」)
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貧困が理由
世界銀行が2018年10月5日に発表した「世界の貧困に関するデータ」によると、2015年時点でのアフリカのサハラ以南における貧困率は41.10%となっています。
貧困率とは1日1.90ドル未満で生活する人の割合のことです。
金銭的な余裕がなければ、女の子よりも男の子を優先して学校に通わせる傾向があり、そのため女の子は家計を助けるために、仕事をしなければなりません。
また学校に通っても家の手伝いをするために中途退学したり、学校に通う通路にも危険な地帯があったり、学校には女の子用のトイレがないなど通学の妨げとなる理由が多くあります。
それぞれの家庭における問題のほかに、国全体のインフラが整備されていないことも、女の子が学校に通えない理由の一つです。女の子が通学するための安全や衛生が確保されていないため、学校に通いたくても通えない状況を生み出しています。
(出典:世界銀行「世界の貧困に関するデータ」,2018)
女の子が学校に通えない理由のまとめ
女の子が学校に通えない理由を挙げると、その対策も考えることができます。主な理由は以下のようになります。
- 家計を支えるために女の子が働き、男の子が学校に通う
- 女の子に教育が必要なことが理解されていない
- 学校の設備や通学路のインフラが整っていない
- 学校の数が足りない
- 教員の数が足りなく授業の質が確保できない
- ④と⑤は女の子に限らず子どもが教育を受けられない理由になりますが、対処が必要な課題であることに変わりはありません。
(出典:公益財団法人 日本ユニセフ協会「アフリカに教育支援が必要な理由」)
女子教育の拡充がアフリカの経済成長につながる
アフリカでは労働市場に参加する女性が増えているとはいえ、報酬の高い就労機会が増えているとは限りません。
農業以外の男女賃金格差はサハラ以南で顕著となり、平均男女賃金格差は30%と推測されています。
(出典:世界銀行「世界の貧困に関するデータ」,2018)
女の子が教育を受けないことによる経済損失は大きい
世界銀行が2018年7月11日に発表した報告書「Missed Opportunities : The High Cost of Not Educating Girls」によると、女の子の教育機会の欠如による生涯生産性と生涯所得の損失は15兆ドル〜30兆ドルにものぼるとしています。
報告書では、平均すると中等教育を受けた女性は教育を受けていない女性のほぼ2倍の収入を得ていると記しています。さらに早産のリスクを軽減し、出生率の減少が世界人口の減少にもつながる可能性があります。
人口増加が軽減すれば、貧困の軽減につながります。
(出典:THE WORLD BANK「Missed Opportunities: The High Cost of Not Educating Girls」)
教育を受けた女性の経済活動参加は大きな利益を生み出す
アフリカでは男性が1ドル稼ぐことに対して、女性は70セントしか稼げていない状況です。
アフリカ人間開発報告書2016によると、サハラ以南は2010年以来、男女格差による経済損失の年間平均総額は950億ドルを超え、2014年には約1,050億ドルに達しています。
女の子が教育を受けて経済活動に参加することで、このような損失分は逆にアフリカの経済成長に寄与すると考えられます。
(出典:国連開発計画(UNDP)「アフリカ人間開発報告書2016」)
人口増加を食い止めて貧困を減らす
世界銀行の2017年のデータによると、アフリカは経済成長を見せるものの、人口増加率をわずかに上回る程度であり、雇用の創出や貧困削減への対応が追いついていないとしています。
このような中で教育を受ける女の子が増えることにより、婚期を遅らせて人口増加を食い止めることが予想されます。
その結果、貧困を減らし雇用の創出にもつながり、アフリカ経済はさらなる成長が期待できます。
(出典:世界銀行公式サイト,2017)
アフリカの女の子が教育を受けられるよう、私たちも協力しよう
アフリカでは子どもが教育を受けられるようにすること、特に女の子の就学率を高めることにより経済成長につながると言われています。
そのために、アフリカでは様々な支援が行われています。
学校の建設や改修
アフリカでは子どもの数に対して学校の数が足りていません。
学校があったとしても、土壁やトタン屋根のような簡素な構造のため雨漏りがしたり、机や椅子がなかったりと劣悪な環境で勉強をしなければならないケースも多くあります。
しかもひとつの教室に80人もの子どもが密集して授業を受けるという光景も珍しくありません。
このように学校そのものの設備が整っていないことに対して支援活動が行われています。
校舎を建設したり、あるいは古い建物の修繕や改修をしたりすることにより、少しでも多くの子どもが通えるようにしています。また女の子のトイレも設置することで、通いやすくなります。
学用品を提供する
アフリカでは学校へは無料で通うことができたとしても、勉強に必要な文房具などが買えない家庭が多くあります。
さらに1世帯あたりの子どもの数が多く、文房具屋や教材を買うことで家計を圧迫するという家庭が少なくありません。
そこで教科書や学用品を提供することで、家計の負担を減らしています。
教育ボランティア活動
アフリカでは学校運営のシステムやカリキュラムそのものが十分に整備されていません。そもそも、子どもたちに教える教師の数も足りないのです。
そこでボランティア活動で直接子どもたちに授業を開くという支援も行われています。さらに教育の研修も行い、質の高い授業を行えるように支援しています。
(出典:公益財団法人 日本ユニセフ協会「アフリカに教育支援が必要な理由」)
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わずかな寄付や募金で女の子たちに未来を
このような支援活動はNPOやNGOへの寄付によって行われています。
アフリカの教育へ支援すること、とりわけ女の子の就学率を高めることによって、経済成長につながり貧困問題の解決にもつながります。
また男女格差をなくし多くの女性が経済活動に参加できるようにすることで、教育問題の解決がさらに加速することになります。
そのためには、少しでも多くの資金的支援が必要です。NPO・NGOに寄付をする人が増えれば、アフリカで学校に通えない女の子に教育を受けさせることができます。
寄付金もわずかな額からできますし、そのわずかな額で多くの子どもたちが新しい未来に向かって歩むことができるのです。
これからのアフリカの経済成長の鍵を握るのが、女性の経済活動への参加と考えられており、そのためには女の子の教育が不可欠です。
たとえわずかな寄付金でも、多くの人が関心を持って支援することで、アフリカは大きく変わることになるでしょう。男女格差の習慣が解消されていけば、さらに多くの女の子が教育を受けられる好循環が生まれます。