日本のトイレや衛生環境は世界からみても優れていると評価されていますが、世界のトイレ事情を見ると、劣悪な環境で排泄をしている人も多く、様々な問題を引き起こしています。
この記事では世界のトイレ事情や取り組みに関して紹介します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」のターゲットや現状は?
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世界のトイレの現状とは
2019年に発表されたユニセフと世界保健機関(WHO)の報告によると、2000年以降に新たに21億人が基本的な衛生施設(トイレ)を使用できるようになったとされています。
しかし2017年時点でもなお20億人が基本的な衛生施設を使えず、42億人が安全に管理された衛生施設(トイレ)を使用できていない状況です。
2019年時点では6億7300万人は屋外排泄をしており、その人口はいくつかの国に集中しています。
さらに39カ国で屋外排泄をする人口が増加しており、そのほとんどはサハラ以南のアフリカの国に多いとされています。
(出典:ユニセフ(国連児童基金)世界保健機関(WHO)による共同プログラム(JMP)「飲み水と衛生の進歩と格差(2000年~2017年)」,2019)
世界の人々のトイレへのアクセス状況
世界の人々のトイレへのアクセス状況とその定義、また区分される人口の割合などについて、以下の表にまとめました。
世界の人々の衛生施設(トイレ)へのアクセス状況 | 衛生施設(トイレ)に関するデータの定義について | 人口(人口比率) |
安全に管理された衛生施設(トイレ)を利用できる | 安全に管理された衛生施設(トイレ)とは、排泄物が他と接触しないように分けられている、あるいは、別の場所に運ばれて安全で衛生的に処理される設備を備えており、他の世帯と共有していない、改善された衛生施設(トイレ)のことです。 | 34億人(45%) |
基本的な衛生施設(トイレ)を利用している | 基本的な衛生施設(トイレ)とは他の世帯と共有していない、改善された衛生施設(トイレ)のことです。 | 22億人(29%) |
限定的な衛生施設(トイレ)を利用している | 限定的な衛生施設(トイレ)とは他の世帯と共有している、改善された衛生施設(トイレ)です。 | 6億2700万人(8%) |
改善されていない衛生施設(トイレ)を利用している | 改善されていない衛生施設(トイレ)とは足場がないピット式トイレ、バケツに排せつし外に捨てる方式のトイレ(Bucket latrine)、池や川の上に設置され排泄物がそのまま落ちる方式のトイレ(Hanging latrine )などが含まれます。 | 7億100万人(9%) |
屋外排泄している | 道端や野原、森、やぶ、水域、海岸、その他の屋外で排せつすることを意味します。 | 6億7300万人(9%) |
(出典:ユニセフ「衛生的な環境 (トイレ)」,2018)
トイレは健康を保つためにも重要
安全なトイレを使えるということは、健康を保つためにも重要です。
トイレがないだけでなく、屋外排泄しかできない状況はさらに深刻な問題を引き起こします。
それぞれの問題について解説します。
感染症・病気
屋外排泄によって人糞に含まれる細菌が体内に浸入します。これにより下痢症などの病気や感染症を引き起こし、脱水症状に陥ることもあります。
不衛生な環境であることで病気にかかりやすくなり、重症化すると命を落とすことも少なくありません。
2015年時点、下痢症疾患でなくなる子どもは1日に800人と言われています。
女の子が学校を休まなければならない
女の子にとって「用を足している姿を人に見られるかもしれない」という不安は、切実な問題です。
特に思春期を迎えた女の子はトイレが無いことで学校を休むことも多くなります。
こうなると授業がわからなくなることもあり、教育に大きな影響を与えてしまうのです。
調査によるとアフリカの女の子の10人に1人は生理中は学校を休んだり、退学してしまったりすることもあるようです。
人間としての尊厳が傷つく
用を足している姿は女の子に限らず、性別や年齢に関わらず人に見られたくはありません。
そのような姿を見られるのは人としての尊厳に傷を付けることになります。
清潔で管理されたトイレで人目も触れず用を足せる環境づくりが、尊厳を守ることに繋がります。
(出典:ユニセフ「世界トイレの日プロジェクト」,2017)
世界中の人が安全なトイレを使えるために行われている支援
このような世界のトイレ事情を解決し、誰もが安全で清潔に管理されたトイレを使えるようにするための支援が行われています。
国際機関や人道支援を行うNPO・NGOなどの様々な組織が行っていますが、まずは衛生的に使える基本的なトイレの設備を設けています。
ただトイレを設けるだけではなく、トイレの作り方の指導や材料の提供などを行うとともに、衛生観念を持ってもらうため、トイレ後の手洗いの普及や衛生的な生活についての知識の普及も行われています。
私たちにもできることを考えよう
この世界の衛生問題については、持続可能な開発目標(SDGs)でも達成すべき目標として掲げられています。
目標6のターゲット2には「すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす」ことを謳っています。
これを元に国際機関や各国政府、関連企業などが協力しています。
そして、私たちにできることも多々あります。
例えば国際機関やNPO・NGOは、支援に対して寄付を募集しています。
私たちはそうした団体に寄付をすることで活動を助け、必要な物資などを現地へ届けてもらうことができます。
また海外ボランティアに参加することで、実際に現地でのトイレ設置や衛生指導の手伝いなどを行うことも可能でしょう。
衛生的な施設を使えることで、人々の健康や尊厳を守り、将来の世界の発展につなげることができます。
一度この問題について向き合い、できることから始めてみるのもよいでしょう。
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