「ルッキズムとは?どんな意味なの??」
「ルッキズムの何が社会問題なの?」
「私自身がルッキズムに侵されている気がする。やめる方法は?」
このような疑問を持っている方に向けて、この記事では下記の内容を紹介します。
- ・ルッキズムの定義
- ・ルッキズムの弊害
- ・ルッキズムにとらわれないためにできること
ルッキズムは「外見至上主義」とも言われ、私たちの社会に根深く存在している差別的な考え方です。
ルッキズムの解消に取り組むことは、より良い社会の実現やSDGsの達成につながります。
ぜひ最後までご一読ください。
ルッキズムとは「外見至上主義」のこと
「ルッキズム」とは見た目や容姿を意味する「Looks」と、主義を意味する「ism」という二つの言葉を組み合わせたものです。日本語では「外見至上主義」と言われることもあります。
ルッキズムは、人間の価値を測るうえで「外見」を最も重要な要素とする考え方です。容姿を理由に差別的な言動を取ることもルッキズムに含まれます。
下記でルッキズムの歴史と現状について解説します。
ルッキズムは昭和から存在していた
日本でルッキズムという言葉を耳にするようになったのはここ最近のことかもしれません。しかし、ルッキズムの考え方自体は古くから存在していました。
例えば、昭和の時代には求人票に「容姿端麗」と、見た目の美しさを条件にすることが許容されていました。現代では公然と表記することはないものの、いわゆる「顔採用」という言葉でその風潮は残っています。
さらに現代では、SNSの普及によって容姿の美しさが「いいね」やフォロワー数に大きな影響を与える要因の一つになりました。
脱毛や美容整形などの広告が増えたことで心理的に始めやすくなったことも、ルッキズムに拍車をかけています。
ルッキズムの行きすぎは健康問題に発展する
ルッキズムが行きすぎると健康問題に発展するケースがあります。体型に悩んでダイエットにチャレンジしたものの、摂食障害に陥ってしまうことが、一例として挙げられます。
見た目の細さを追求するあまりに、食べることが怖くなってしまうのです。家族や友人、恋人からの指摘が本人を追い込んでしまうこともあります。
そのため、内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局*では、痩せていることが美しいとする価値観をはじめとしたルッキズムとの決別を提言しています。
さらに、SDGsもルッキズムと関係があります。SDGsでは10番目の目標に「人や国の不平等をなくそう」と掲げており、外見で人を差別するルッキズムは克服すべき課題としてとらえられています。
SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」については下記の記事をご覧ください。
>>持続可能な開発目標・SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」のターゲットや現状は?
現代は、ルッキズムによる問題が可視化されるとともに、それに対処しようとする流れも存在している状態といえます。
*参考:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 包摂的コミュニティプラットフォームの構築 社会実装に向けた戦略及び研究開発計画
ルッキズムはなぜ社会問題なのか
ルッキズムは人々に様々な弊害をもたらしています。二つの側面から紹介します。
- ・心理面、体調面への悪影響
- ・差別や格差の助長
心理面・体調面への悪影響があるから
ルッキズムは心理面・体調面に悪影響を及ぼす可能性があります。
「痩せている=美しい」という価値観にとらわれるあまり、摂食障害に陥ってしまうのがその一つです。
とある民間団体の調査によると、コロナ禍で子供たちの神経性やせ症(摂食障害の一つ)が増加したといった指摘が見受けられます。
この背景には、コロナ太り対策としてダイエットが多くメディアに取り上げられたことに子どもたちが過度に影響を受けた可能性が指摘されています。
もちろん適度なダイエットは悪いものではありません。しかし、そこに「痩せていなければいけない」という価値観が加速してしまうと健康を害する要因になります。
また、若年女性において極端な痩せは月経不順や不妊、低出生体重児出生の原因となり、中高齢層には骨粗鬆症や糖尿病など生涯にわたって健康に影響する*ことが指摘されています。
*参考:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 包摂的コミュニティプラットフォームの構築 社会実装に向けた戦略及び研究開発計画
差別や格差を助長するから
ルッキズムは社会にも悪影響を及ぼします。ルッキズムが増長すると、その価値観に沿った外観に当てはまらない人が、外見を理由に日常生活で差別を受けるようになります。
また、その人が持っている能力が正当に評価されず、就職先が狭まってしまう恐れもあります。優秀な人材が評価されずに能力を発揮できないことは社会にとっても損失です。
さらに、外見だけで人の良し悪しを判断することは多様性の尊重を阻害します。多様性を尊重し、さまざまな価値観を受け入れることは、新しい発想やイノベーションのきっかけになり社会の発展につながります。
より良い社会を実現するために、ルッキズムは取り組むべき課題の一つではないでしょうか。
ルッキズムが進行する原因
なぜルッキズムは進行してしまうのでしょうか。考えられる二つの原因について紹介します。
- ・メディアやインターネットの影響
- ・「顔採用」をはじめとした外見を重視する風潮
メディアやインターネットの影響
メディアやインターネットがルッキズムに拍車をかけている可能性があります。
例えば、内閣府の男女共同参画局が公開しているデータ*によると、商業誌におけるグラビアなど、女性の見た目を商業的に扱うことがルッキズムを助長する可能性があると指摘されています。
また、総務省が公開しているデータ**では、web3に関する議論の中で「メタバース(インターネット上の仮想空間)では美少女のアバターが選択されることが多く、それがルッキズムを助長する側面もあるのではないか」との言及がなされています。
*参考:「第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」 についての公聴会及び意見募集の意見 |内閣府
**参考:「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」中間とりまとめ|総務省
「顔採用」をはじめとした外見を重視する風潮
ルッキズムを象徴する言葉の一つに「顔採用」があります。顔採用とは、就職活動において顔などの外見を採否の主な判断基準とすることです。
企業側の採否の基準が公開されているわけではないため、実際に顔採用が行われているのか、容姿がどこまで採用に影響しているのかはわかりません。
しかし、大手メディアでも取り上げられるほど顔採用という言葉が認知されているのは、ルッキズムの風潮が社会に浸透しているからではないでしょうか。
また、女性を外見的要素のみで評価するミスコンも、外見重視の風潮を象徴しているといえます。
広告やミスコンなどでルッキズムを見直す動きがある
さまざまな弊害をもたらすルッキズムを見直そうとする動きがあります。例えば広告に表示されるのが、痩せている人だけではなくなってきています。
プラスサイズモデルと呼ばれる、身長や体重が平均より大きい、いわゆるぽっちゃり体型のモデルの活躍も見られるようになりました。
その根底にあるのは、社会や他人が持つ理想的な外見のイメージに左右されることなく、ありのままの自分を愛する「ボディ・ポジティブ」というルッキズムとは真逆の考え方です。
ミスコンにも変化が起きています。ミスコンそのものを廃止する動きのほか、男女の区別をなくしたり、スピーチや自己PRで発信力などを審査する仕組みを導入したり、外見以外で評価するものが出てきました。
ルッキズムをやめるために私たちができること
ルッキズムとはある意味「このような外見であるべき」という価値観の押しつけといえます。ルッキズムを解消するためには、私たち一人一人がありのままの自分の容姿を受け入れ、そのような考え方にとらわれないことが第一歩です。
多様性の実現を目指すSDGsやさまざまな差別について理解を深めることが、きっとあなたの視野を広げてより多様な価値観を理解する手助けになります。
例えば、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、性別による差別に言及しています。実現に寄与する取り組みとして、ジェンダーレス制服を採用する学校が増えています。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」については下記の記事をご覧ください。
>>SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の取り組み内容とは?
ジェンダーレスについては下記の記事をご覧ください。
ルッキズムをやめて住みやすい社会を目指そう
本記事ではルッキズムについて解説しました。ここで、紹介した内容をまとめます。
- ・ルッキズムは外見で人の価値を判断する差別的な価値観や言動のこと
- ・ルッキズムが増長すると心身を害し社会に悪影響を及ぼす可能性がある
- ・多様性を実現しより良い社会を実現するためにルッキズムは克服すべき課題
人間の価値は外見だけで決まるものではありません。また、外見の美しさも画一的なものではなく、さまざまな美しさがあるはずです。
私たち一人一人がそのことを理解し、行動に移してくことがルッキズムで苦しむ人たちを減らし、より良い社会の実現につながるのではないでしょうか。
ルッキズムの解消はSDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」の実現と結びつきがあります。詳しい内容については下記の記事をご覧ください。