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ポリティカルコレクトネスとは?具体例や問題点をわかりやすく解説

「ポリティカルコレクトネスとはどういう意味だろう」
「ポリティカルコレクトネスは社会にどのような影響を与えたのだろうか」
このように疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では下記の内容についてご紹介します。

  • ・ポリティカルコレクトネスの定義
  • ・ポリティカルコレクトネスの具体例
  • ・ポリティカルコレクトネスの弊害

ポリティカルコレクトネスは私たちの生活だけでなく、学校や企業活動にも影響を与えている考え方です。ただし一部では行き過ぎたポリティカルコレクトネスによる弊害も指摘されています。ポリティカルコレクトネスについて理解を深めたい方はぜひ読んでください。

ポリティカルコレクトネスとは?

ポリティカルコレクトネス(Political Correctness)とは、人種や性別をはじめとしたあらゆる差別的な表現をなくそう、とする考え方のことです。頭文字をとって「PC」と略されたり「ポリコレ」と呼ばれたりすることもあります。

差別表現や固定観念からくるステレオタイプな表現を見直し、より多くの人が幸せを感じて過ごせる社会を目指す考え方です。

過去には「政治的な正しさ(妥当性)」といった意味合いで使われていたことがあり、政治的な活動に使われていた言葉です。また現代ではエンタメ作品に様々な影響を与えている側面があり、ファンの間で議論が勃発する場面も見かけます。

このような背景から、ポリティカルコレクトネスがネガティブな意味合いで使われることもあります。

ポリティカルコレクトネスの具体例

ポリティカルコレクトネスという考え方が世の中に浸透したことにより、主に下記の変化がおこりました。

【国内での変化】

  • ・職業名の変化
  • ・敬称の変化
  • ・服装の変化
  • ・同性パートナーに関する社会の変化

【海外での変化】

  • ・人種表現の変化
  • ・宗教に関する表現の変化

詳しく見ていきましょう。

職業名の変化

ポリティカルコレクトネスという概念が浸透することによって、職業名にも変化が発生しています。たとえば男女平等の観点から、下記のような表現の変化がありました。

  • ・ビジネスマン→ビジネスパーソン
  • ・旦那、妻→パートナー
  • ・スチュワーデス→客室乗務員(フライトアテンダント)
  • ・看護婦→看護師
  • ・カメラマン→フォトグラファー

このように、ポリティカルコレクトネスは職業の名称にも影響を与えているのです。

敬称の変化

ポリティカルコレクトネスの影響によって敬称にも変化が見られます

たとえば男性は「〇〇くん」、女性は「〇〇ちゃん」という敬称をつけるのが一般的でした。しかし最近では、性別に関係なく「〇〇さん」と呼ぶケースが職場・学校問わず多くなっています

服装の変化

服装にもポリティカルコレクトネスは大きな影響を与えました。

たとえば学校の場合、これまでは「男性はズボン、女性はスカート」が一般的でした。しかし最近では女性もズボンの制服を選択したり、男性もスカートを選択したりすることが可能な学校も出てきています。

制服だけでなく、水着も男女ともに対応している「ジェンダーレス対応の水着」を導入する学校もあるなど、教育現場にも大きな影響を与えています。

ポリティカルコレクトネスは学校だけでなく、職場の制服にも影響を与えました。男性はスーツ、女性は指定の制服着用を義務にしている企業が過去では一般的でした。しかし最近では、スーツや革靴といった指定をなくして動きやすい服装を選べるようになった企業もあります。

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同性パートナーに関する社会の変化

既存の価値観に当てはまらない、新しい男性と女性の在り方についての動きも日本で見られます。たとえば2023年9月現在、同性婚を巡る訴訟が全国5地裁で行われ「同性婚は違憲かどうか」の判断が地裁によって分かれている状況です。

また一部の企業では「誰でも自分らしく働ける」ようにと、同性パートナーを配偶者に準じた扱いにしたりLGBTQ+に関する啓発活動を行ったりしています

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人種表現の変化

過去にあった差別的な人種表現の1つに、主にアメリカで黒人のことを「Black」と呼んでいたケースが挙げられます。近年「Black」は差別的・侮蔑的な意図を含んでいる、という理由から呼ばれることが減りました。

最近では黒人のことを「African American」と表現されることが多くなりました。しかし「黒人=アフリカ系」とは必ずしもいえず、アフリカ以外にルーツを持つ黒人にとっては違和感がある表現として現在も問題となっています。

宗教に関する表現の変化

宗教に関する表現にも、ポリティカルコレクトネスは影響を与えています。

たとえば「メリークリスマス」という言葉はキリスト教徒以外の宗教を信仰している人にも配慮するため、海外では「ハッピーホリデー」と呼ばれるようになりました。

ポリティカルコレクトネスが企業で重視される背景

なぜ企業はポリティカルコレクトネスを重視しているのでしょうか。主な背景を3つ解説していきます。

  1. 企業が多様性を重視しているため
  2. 海外人材を採用するため
  3. ハラスメントを予防するため

詳しく見ていきましょう。

企業が多様性を重視しているため

多様性に配慮するため、企業はポリティカルコレクトネスを意識するようになりました。

「ルッキズム」や「LGBTQ+」といった言葉が世間で認知されてきていることから分かるように、多様性が重視される時代になってきています。もし多様性を無視した企業経営をしていると、顧客獲得の機会を逃したり優秀な人を採用しにくくなったりしかねません

このような背景から、企業はポリティカルコレクトネスをはじめとする、多様性を意識した取り組みにも目を向けるようになったのです。

>>【やめたい】ルッキズムとは?意味やなぜ社会問題なのかを解説
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海外人材を採用するため

海外では日本よりも多様な文化的背景を持つ人が多いです。海外にいる優秀な人材を採用するためにも、企業側はポリティカルコレクトネスを意識して、多様な人材を受け入れられる体制を整えています。

ポリティカルコレクトネスを意識して海外人材も働きやすい環境を整えれば、必要な人材を採用しやすくなったり外国企業との取引がスムーズに進みやすくなったりする、といった効果が期待できます。

ハラスメントを予防するため

ポリティカルコレクトネスの考え方を理解し社内に浸透させることは、ハラスメントの予防にもつながります。

たとえば外国人を採用したりLGBTQ+の人と一緒に働いたりする時、(本人に悪気があるかどうかにかかわらず)相手のことをからかったり否定的な対応をしてしまったりする恐れがあります。

このような扱いは人種差別やハラスメントに当たる可能性があり、企業として問題になりかねません。ポリティカルコレクトネスについて正しく理解すれば、このようなトラブルを予防できるはずです。

ポリティカルコレクトネスに関する企業側の取り組み

ポリティカルコレクトネスに関する企業の取り組みとしては、主に以下のような例が挙げられます。

  • ・男女で異なる服装規定を設けない
  • ・性別による職種の限定を行わない
  • ・性別による給与、福利厚生の格差を設けない
  • ・採用面接時に性的指向、宗教、家族に関する質問を行わない

上記のような、性別や性的指向によって差別を行うことは厳禁です。人事・総務部に対応を丸投げすると、個人によって対応にばらつきが発生する恐れがあります。ポリティカルコレクトネスを意識した取り組みを行う場合は、会社が一丸となって取り組む必要があります。

行き過ぎたポリティカルコレクトネスの弊害

ポリティカルコレクトネスが行き過ぎることによる弊害も発生している点も理解しておきましょう。

たとえば職場でちょっとした言動がハラスメントと捉えられてトラブルに発展する恐れが指摘されています。また映画やアニメ、ゲームといった作品にも影響があり、ファンからは様々な意見が飛び交っています。

職場の息苦しさ

ポリティカルコレクトネスは職場のハラスメント予防にも効果がある一方で、過剰な反応を示す方も一部でいます。

たとえば「髪を切った?」「〇〇ちゃん」と言っただけでセクハラだという人がいます。一方で「この程度でセクハラだと訴えられるのは行き過ぎだ」「職場がなんとなく息苦しくなった」と閉塞感をおぼえる方もいます

社会的な息苦しさ

行き過ぎたポリティカルコレクトネスは社会全体に、ある種の息苦しさをもたらす恐れがあります。

  • ・有名人の女性軽視の発言がSNSで炎上する
  • ・美しい女性しか出てこない美容関係の広告が批判される
  • ・マイノリティが登場しないエンタメ作品が批判される

上記のような事例は「過剰なポリティカルコレクトネス」として指摘されることがあることです。多様な価値観に配慮した表現を推進することは間違っていませんが、炎上や過剰なクレームなどは行き過ぎではないか、といった意見もあります。

このような事態が続くことで「息苦しい社会になった」と閉塞感をおぼえる人もいます。

映画(アニメ)の設定変更

映画やアニメなど、映像系の作品にもポリティカルコレクトネスをきっかけとした騒動が起こっています。

たとえば原作で「白い肌」や「〇〇色の髪」が特徴として語られているキャラクターが、映画で違う肌の色、髪色の人を起用して物議を醸してしまった作品があります。また原作で設定されていた性別が、映画版では異なる性自認として設定されている作品もあるようです。

このように原作からの不自然な設定変更が原作ファンの間で物議を醸し「違和感をおぼえる」といった指摘が発生するケースもあります。

ゲームキャラクターのジェンダーフリー化

ポリティカルコレクトネスによる影響はゲームにも影響を与えています。

たとえばあるゲームでは、「男性」「女性」といった設定項目をなくし、性別にとらわれず自由な見た目を選択できるようになりました。また「女性らしくない女性」や「男性らしくない男性」が登場するなど、これまでの固定概念にとらわれないキャラクターも登場しています。

こうした動きに「性別に縛られず好きな格好ができる」と肯定的な意見もある一方で、「男らしい(女らしい)登場人物がいないと物足りない」といった趣旨の指摘も散見されます。

ポリティカルコレクトネスを正しく理解しよう

本記事ではポリティカルコレクトネスについて解説しました。ここで紹介した内容をまとめます。

  • ・ポリティカルコレクトネスとは、あらゆる差別をなくすことを目的とした考え方のこと
  • ・ポリティカルコレクトネスは表現や服装に大きな影響を与えている
  • ・行き過ぎたポリティカルコレクトネスについて疑問視する声もある

ポリティカルコレクトネスは人種や性別による差別・制約から私たちを自由にして、より過ごしやすい社会を実現するために役立つ考え方です。一方で行き過ぎたポリティカルコレクトネスは、かえって不自由な社会を助長しかねないなど、課題も指摘されています。

この機会にポリティカルコレクトネスについて正しく理解し、自分が差別や偏見のあるモノの見方をしていないか、考えてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
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