陸の豊かさも守ろう

SDGsが掲げる「陸の豊かさも守ろう」のため、湿地の生態系や保全活動について理解しよう

湿地とは私たちの周りにいくつも存在する水資源や、生態系などを保存してくれる環境の1つです。

水資源が豊富な日本では様々な湿地があり、多種多様な生物が息づいています。昔はもっとたくさんの湿地や生態系が存在していましたが、埋め立てなどで失われてしまいました。今は見直され、保全活動などが行われています。

2015年に、採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標15「陸の豊かさも守ろう」では、湿地の生態系や保全についても述べています。

こちらの記事ではSDGsが掲げる「陸の豊かさを守ろう」を達成するために行われている、湿地の保全活動について紹介します。

持続可能な開発目標・SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」のターゲットや現状は?

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SDGsと湿地の生態系保全

地球上にある3割の陸地は森林や草原、湿地、砂漠など様々な地形が覆っており、そこには多種多様な陸域生態系が存在しています。

この地形と生態系は、私たちの生活を営む上で欠かせない資源をいくつも供給してくれており、仕事や食料、燃料、医療品と様々なものに渡ります。

一方で、世界で起こっている貧困問題や格差、包括的社会の発展の阻害には、陸域生態系から得られる財とサービスが関係しており、これらの基盤を守り保全していくことが必要だとされています。

現在起こる世界の問題として、砂漠化の進行や土地劣化、森林の減少などによる生物多様性の喪失は、私たちにとっても大きな損失であり、関連する問題をさらに悪化させる原因にもなっているのです。

そのため国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では目標15に「陸の豊かさを守ろう」という目標を掲げています。

森林や山地などの豊富な資源や生態系にスポットが当たりがちですが、湿地も重要な陸域生態系を育む地形であり、私たちはその恩恵を受けています。

SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」で掲げられたターゲットの中で、湿地の生態系や保全活動に関するものを紹介します。

ターゲット
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
  • 世界で起こっている貧困問題や格差、包括的社会の発展の阻害には、陸域生態系から得られる財とサービスが関係しており、これらの基盤を守り保全していくことが必要
  • 森林や山地などの豊富な資源や生態系にスポットが当たりがちだが、湿地も重要な陸域生態系を育む地形であり、私たちはその恩恵を受けている
  • SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」で湿地の生態系や保全活動について掲げている
  • (出典:国際開発センター「目標15 陸の豊かさも守ろう」)

    湿地の生態系とは

    まず湿地について確認しておきましょう。

    湿地の保全に関する国際的な取り決めであるラムサール条約によると、湿地について次のような定義がなされています。

    湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(海水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む。

    また、この湿地には以下の環境が含まれます。

  • 湿原
  • 湖沼
  • ダム湖
  • 河川
  • ため池
  • 湧水地
  • 水田
  • 遊水池
  • 地下水系
  • 塩性湿地
  • マングローブ林
  • 干潟
  • 藻場
  • サンゴ礁
  • 湿地とはこれだけの環境が含まれており、私たちの周りにもごく当たり前にあるものも含まれていることが分かります。

    このような環境には多種多様な生態系が形成されており、豊富な水資源や食料資源を得られるだけでなく、水鳥などの貴重な生物を育む環境にもなっています。

    また湿地は災害の被害を最小限にすることができる活用方法があるとして注目されています。沿岸域の湿地は自然の緩衝帯としての役割を果たします

    2012年に発生したハリケーン・サンディによる損害を、湿地のおかげで回避できたと言う事例もあります。

    内陸地の湿地は降りすぎた雨を吸収し、貯えて洪水を抑える役割や、乾季に貯えていた水を放出して、干ばつを緩和あるいは遅らせる、水不足を和らげると言った効果も発揮します。水の浄化や天然の炭素貯蔵庫としての価値も見出されています。

    かつて湿地は機能や価値を評価されることなく、干拓や埋立による開発によって、いくつも姿を消してしまいました。

    しかし今はその偉大な価値を再評価され、生物の宝庫とまで言われるほど、重要視されています。

    一度破壊されれば元に戻りにくく、脆弱な生態系であることから、各地の保全が求められています。

  • 沿岸域の湿地は自然の緩衝帯としての役割を果たす
  • 湿地は偉大な価値を再評価され、生物の宝庫とまで言われるほど重要視されている
  • (出典:環境省「湿地とは」)
    (出典:環境省「湿地:災害に対する自然の安全機能」,2017)
    (出典:国立環境研究所「さまざまな生態系」)

    湿地の保全活動

    世界全体で湿地の価値が見直され、現在は様々な取り組みが行われていますが、そのための協定としてラムサール条約が採択され、多くの国が批准しています。

    この条約では湿地の基準に従って条約湿地を登録し、湿地の保全および賢明な利用促進のための各締約国の取るべき措置について規定しています。

    日本でも多くの条約湿地を登録しており、湿地ごとに保全活動を行っています。

    ここでは、ラムサール条約と日本の湿地で行われている保全活動について紹介します。

    ラムサール条約

    ラムサール条約とは1971年2月2日に国際会議で採択された条約であり、正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と言いますが、開催地がラムサールであったことから、「ラムサール条約」と呼ばれています。

    ラムサール条約3つの柱

    ラムサール条約では3つの柱を基盤としています。

    その1つが「保全・再生」であり、水鳥の生息地としてだけでなく、湿地が持つ豊富な機能と私たちの生活を支える重要な生態系として、湿地の保全と再生を目指し、呼びかけを行っています。

    また保全を進める上で、地域の人々の経済活動や生活とのバランスをとるため、湿地の生態系を維持しつつ、そこから得られる恵みを継続的に活用する「賢明な利用(ワイズユース)」を提唱しています。

    このような湿地の保全や賢明な利用をするためには、湿地についての教育や能力養成、交流、参加、啓発活動といった「交流・学習」を進めることを重要視しています。
    これが条約の3つの柱になっています。

    ラムサール条約湿地

    ラムサール条約を締結した国は、条約に定められた9つの国際基準に従い、自国の湿地を条約湿地として登録することができます。

    国際的に重要な湿地の基準
    基準1 特定の生物地理区内で代表的、希少、または固有の湿地タイプを含む湿地
    基準2 絶滅のおそれのある種や群集を支えている湿地
    基準3 特定の生物地理区における生物多様性の維持に重要な動植物を支えている湿地
    基準4 動植物のライフサイクルの重要な段階を支えている湿地。または悪条件の期間中に動植物の避難場所となる湿地
    基準5 定期的に2万羽以上の水鳥を支えている湿地
    基準6 水鳥の1種または1亜種の個体群の個体数の1%以上を定期的に支えている湿地
    基準7 固有な魚類の亜種、種、科、魚類の生活史の諸段階、種間相互作用、湿地の価値を代表するような個体群の相当な割合を支えており、それによって世界の生物多様性に貢献している湿地
    基準8 魚類の食物源、産卵場、稚魚の生息場として重要な湿地。あるいは湿地内外の漁業資源の重要な回遊経路となっている湿地
    基準9 鳥類以外の湿地に依存する動物の種または亜種の個体群の個体数の1%以上を定期的に支えている湿地

    登録した湿地は条約事務局が管理する「重要な湿地に係る登録簿」に掲載され、「ラムサール条約湿地」となります。

    日本での湿地の登録条件

    日本でも条約湿地に50ヵ所以上の湿地を登録していますが、登録条件がやや異なります。

    1. 国際的に重要な湿地であること(国際的な基準のうちいずれかに該当すること)
    2. 国の法律(自然公園法、鳥獣保護管理法など)により、将来にわたって、自然環境の保全が図られること
    3. 地元住民などから登録への賛意が得られること

    日本の条約湿地で行われる保全活動

    日本にはいくつものラムサール条約湿地がありますが、登録されていない湿地を含め、各湿地でその環境に合わせた取り組みが行われています。

    サロベツ原野

    北海道のサロベツ原野では国営総合農地防災事業として、農業と湿地の共生を目指し、農地側に緩衝域を設定して農地と湿地の相互の影響を緩和する取り組みが行われています。

    また河川への土砂流出を軽減することを目的として沈砂地を設けています。

    いさわ南部地区

    岩手県のいさわ南部地区では、景観撮影調査や生態系調査を行い、景観の再確認や生態系の重要場所を確認しています。

    その上で設計や施行へと反映させると共に、環境配慮施設の維持管理体制について検討を行っています。

    その一例として落差を解消し、水路底を土砂として魚巣ブロックなど魚類の生活環境を確保した排水路や貴重な自然が残る溜め池をビオトーブとして保全するといった取り組みが行われています。

    市之枝地区

    岐阜県市之枝地区では景観作物の植栽として、蓮華やひまわり、コスモスなどを植え、減農薬・無化学肥料栽培による湿地の負担減をすると共に、景観作物が咲くと祭りを開催し、トラクターに連結した車に観光客を乗せて、ほ場内を走るイベントなどを実施しています。

  • ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」
  • ラムサール条約湿地の登録基準(国際基準・日本の登録条件)
  • 日本の条約湿地で行われる保全活動
  • (出典:環境省「ラムサール条約とは」)
    (出典:環境省「ラムサール条約湿地とは」)
    (出典:農林水産省「湿地・景観の保全の取組」)

    SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」のターゲットの一つである湿地を守ろう

    湿地は私たちの身近にいくつもあり、多くの恩恵をもたらしてくれる重要な環境の1つとして再評価されています。

    一方で、日常生活の中で湿地を汚染している行動もあります。水田や水路などにごみのポイ捨てをしてしまうのも、その1つです。湿地に携わる人々や国が湿地の保護に取り組んでも、私たちが意識しなければ守りきれません。

    私たち一人ひとりも自覚を持ち、地域で行われる水路の清掃などに参加して、湿地を守る取り組みに参加していくことが大切です。

    SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」について理解し、湿地の生態系保全のためにも私たちでできることから取り組みましょう。

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