日本政府は、豊かで活力のある「誰一人取り残さない」社会を実現するというSDGsの課題を達成するために、一人ひとりの保護と能力強化に焦点を当てた「人間の安全保障」の理念に基づき、世界の「国づくり」と「人づくり」に貢献することを目指しています。
これを実現するために、日本政府は「SDGsアクションプラン」を策定し、SDGsと連動する「Society 5.0」の推進、SDGsを原動力とした地方創生・強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり、SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメントという3分野を中核とする「日本のSDGsモデル」を国際社会に共有・展開している最中です。
この記事では、SDGsに対して日本政府がどのように取り組んでいるのかについて、その概要をわかりやすく解説します。
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SDGsアクションプラン2019を策定
2015年にSDGsが採択されて以降、日本政府はその実施に向け、国内の基盤整備を行いました。
2016年5月に「SDGs推進本部」を設置。総理大臣を本部長、官房長官、外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員としており、国内の実施と国際協力の両面で率先して取り組む体制が整えられています。
SDGsの推進は、日本における一億総活躍社会の実現や女性の活躍推進、働き方改革等、政府の主要政策とも軌を一にしているものであり、日本政府としても国際的な課題に取り組むことを通じて、これらの実現を目指しています。
さらに、この本部の下で、行政、民間企業、NGO・NPO、有識者、国際機関、各種団体等を含む多様な組織・人々によって意見交換が行われる「SDGs推進円卓会議」も複数回に渡り開催。
この会議での対話を経て、2018年12月、今後の日本の取り組みの指針となる「SDGs実施指針」が策定されました。その後、2019年6月の第7回推進本部会合では、2018年12月の第6回会合で決定した「SDGsアクションプラン2019」を更に具体化・拡大した「拡大版SDGsアクションプラン2019」が決定されました。
この「SDGsアクションプラン」のテーマのひとつとして「日本のSDGsモデル」の構築が挙げられています。
こうした経緯を経て決定されたSDGsアクションプラン2019では、日本のSDGsモデルの3本柱として、(1)SDGsと連動する「Society 5.0」の推進、(2)SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり、(3)SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメントを謳っています。
以下では、このSDGsアクションプラン2019の内容について詳しく解説します。
SDGsと連動する「Society 5.0」の推進
まずは、SDGsと連動する「Society 5.0」の推進するために、政府が計画としてどのようなアクションを予定しているのかについて説明します。
ビジネス
日本政府は、SDGsと連動する「Society 5.0」の推進を実現するために、次の3つの活動を行うことを予定しています。
1つ目は、2018年にSDGs推進本部がとりまとめた「SDGs経営イニシアティブ」に基づき策定された「SDGs経営ガイド」、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に係るガイダンス等で企業のSDGsの取り組みを促進、ESG投資(社会的責任投資)の呼び込みを後押しする施策を行うことです。
ESG投資(社会的責任投資)
株主が立場や権利を行使することで、経営陣に対し企業の社会的責任に配慮した持続可能な経営を求める投資方法。
そして二つ目が、中小企業のSDGs取り組み強化のための関係団体・地域、金融機関との連携を強化することです。三つ目がSDGsビジネスの国際的なルールメイキングに貢献すべく官民連携を強化することです。
日本政府は、幅広い社会課題やその潜在ニーズに技術と情報によって対応すべく、「Society 5.0」やその実装のための「生産性革命」を推進しています。
こうした活動は、SDGs推進が創出するビジネスチャンスを日本に取り込む好機となり得るものです。実際、こうした政府の動きに呼応して、経団連が7年ぶりに「企業行動憲章」を改定し、「Society 5.0」を通じたSDGsの達成を掲げています。
経済成長と社会的課題の解決が両立する未来社会の姿は、国連で掲げられたSDGsの理念とも軌を一にするものです。民間企業・地方公共団体の取り組みへの認知度を高め、更なる取り組みを拡大するための後押しとして第1回「ジャパンSDGsアワード」の表彰も行われています。
このように、政府はSDGsを通じて、ビジネスの活性化を目指しています。
科学技術イノベーション
さらに、日本政府はG20で「ロードマップ策定のための基本的考え方」を発表。
同時に、各国のロードマップ策定の支援することも表明しています。
加えて、STI for SDGsのためのプラットフォームを構築したり、STI分野の「人づくり」、国際共同研究・STIの社会実装の強化を進めています。
STI(科学技術イノベーション)
STIとは科学技術イノベーションを意味しており、異なる施策の有機的連動や教育・文化・スポーツ等の分野との連携により、多様なSDGsの課題解決に寄与することができるように、プラットフォームを構築したり、イノベーションの担い手である人材を育てたり、国際共同研究を行ったり、研究結果を実際に社会に実装する取り組みがなされています。
SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり
つぎにアクションプラン2019年の中では、SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくりも謳われています。
ここからは、政府がこれを促進するためにどのような取り組みを行っていくのかについて説明します。
地方創生の推進
SDGsは、経済・社会・環境の三側面における持続可能な開発を統合的な取り組みとして推進するものです。
そのため、日本政府は世界で進む都市化を見据え、持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりを目指す「環境未来都市」構想を進めています。
環境モデル都市は、持続可能な低炭素社会の実現に向けた目標に取り組んでいる都市で、目指すべき低炭素社会を具体的に示し、「環境未来都市」構想の基盤を支えています。
環境未来都市とは、環境や高齢化などに対応して、環境、社会、経済の三つの価値を創造することで「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」の実現に取り組んでいる都市・地域です。
環境モデル都市と環境未来都市を一体的に推進することで、「環境未来都市」構想の早期実現を目指しています。
そのほかにも、地方を創生するために日本政府は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を決定し、2025年大阪・関西万博の運営・開催を通じてSDGsの達成に向けた取り組みを推進するとしています。
現在、日本政府では大きく2つの取り組みを推進しています。1つは“SDGsのモデル事例を構築していく”ことです。
積極的に取り組まれていく自治体に手をあげてもらい、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業を選定し、その活動をサポートする仕組みづくりは2018年から開始されています。
そして、もう1つの取り組みとして、“民間企業に対し、官民体制をドッキングする”ことを実現するために、地方創生を官民が連携して取り組めるプラットフォームの形成を目指して取り組みが行われています。
強靭な循環共生型社会の構築
さらに、政府は、強靭な循環共生型社会の構築を目指して、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」・「プラスチック資源循環戦略」をそれぞれ策定しています。
実効的な海洋プラスチックごみ対策を進めるためには、途上国を含め世界全体での取り組みが不可欠です。
そのため、日本の知見・技術を活かし、途上国での海洋プラスチックごみの効果的な流出防止に貢献するため、特に廃棄物管理、海洋ごみの回収、イノベーションに関する能力強化を支援していくこととしています。
日本のベスト・プラクティス(知見・技術)を発信・共有することによって、国際的な海洋プラスティックゴミ問題やプラスティック資源循環戦略を地球規模に広げていくことを目指しています。
SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメント
最後にSDGsの担い手である次世代や女性に焦点を当てた取り組みの推進を行うこととしています。
ここでは、次世代・女性のエンパワーメントを促進するために、日本政府がどのようなことをしているのかについて説明します。
次世代・女性のエンパワーメント
エンパワーメントとは、「権限を与えること」「自信を与えること」などの意味が含まれる言葉です。近年では社会や組織の構成員一人ひとりが発展や改革に必要な力をつけるという意味で用いられることが多くなっています。
そして、次世代・女性のエンパワーメントを促進するために、発信力や創造力豊かな次世代やSDGsでも重要視されている女性をエンパワーメントし、その担い手の育成を目指します。
これを実現するために、次世代のSDGs推進プラットフォームを設立。このプラットフォームの内外での活動を支援しています。
さらに、2019年3月に開催された第5回国際女性会議WAW!/W20において、安倍総理から途上国の女性への教育支援(3年間で400万人)を表明するなど、次世代・女性のワンパワーメントを積極的に推進しています。
2019年においても、「女性活躍推進のための重点方針2017」、「人づくり革命」構想等の関連施策を着実に実施するための準備が進められています。
(出典:首相官邸「第5回国際女性会議WAW!/W20」)
「人づくり」の中核としての保健、教育
人材を育成するためには、保険・教育についても力を入れなければなりません。
こうした問題意識のもとに、日本政府は、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを目指したUHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)を推進、国際的な保健課題の解決に貢献するため、グローバルファンドへの増資を含め支援を実施しています。
私たち日本が行っている取り組みを知り、私たちも行動しよう!
2015年にSDGsが採択された後、日本政府は着実にその実施に向けて国内の基盤整備を行ってきました。
日本政府が取りまとめた「SDGsアクションプラン2019」では、どのようにSDGsに取り組んでいくかが具体的に述べられています。
今後も、日本はこのアクションプランに基づいて、SDGsの達成を目指していきます。
しかし、SDGsの担い手は政府だけではありません。日本に住む私たちも、日本が行っている取り組みについて知り、実現に向けて主体的に行動していくことが大切です。
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