2015年、国連サミットにおいてSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されました。
SDGsは、2000年の国連サミットで合意されたMDGs(ミレニアム開発目標)に代わる、国際社会の新しい共通目標として採択されたものです。
MDGsは、2015年までに貧困や飢餓、差別の撲滅など8つの目標と、より具体的に示した21のターゲット、そして進捗状況を測るための60の指標が定められており、達成期限となった2015年には、MDGsの達成状況が報告されています。
この記事では、SDGsの前身として位置づけられるMDGsの概要と達成状況についてわかりやすく解説していきます。
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ミレニアム開発目標(MDGs)とは
2000年9月、ニューヨークで開催され189ヵ国が参加した国連ミレニアム・サミットにおいて、21世紀の国際社会の目標として、国連ミレニアム宣言が採択されました。
この宣言は、7つのテーマに関して、国際社会が連携・協調して取り組むことを合意したものです。
テーマ1 | 平和、安全及び軍縮 |
テーマ2 | 開発及び貧困撲滅 |
テーマ3 | 共有の環境の保護 |
テーマ4 | 人権、民主主義及び良い統治 |
テーマ5 | 弱者の保護 |
テーマ6 | アフリカの特別なニーズへの対応 |
テーマ7 | 国連の強化 |
(出典:外務省公式サイト)
このミレニアム宣言と、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、一つの共通の枠組みとしてまとめたものが、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)です。
ミレニアム開発目標(MDGs)では、開発途上国の貧困削減を掲げ、8つの目標、21のターゲット、60の指標が設定された国際目標です。
MDGsのほとんどの目標は1990年を基準年、2015年を達成期限としていました。
そのため、2015年、国連にて2030年までの新たな開発目標となる「持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)」が採択されています。SDGsの前身となるMDGsは、2000年に始まり、世界の多くの人々の目を開発途上国が抱える課題に向けることに貢献しました。
MDGsの取組みによって、極度の貧困状態にある人口割合が半減するなど、多くの目標に対して大きな前進が見られました。
MDGsの8つの目標
MDGsの取組は、これまでの歴史で最も成功した貧困撲滅のための取り組みであったと評価されています。
実際、当時の国連事務総長、潘基文(パン・ギムン)は、2015年7月6日に「MDGs報告2015」を発表し、「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくせるところまで来た」「MDGsは歴史上最も成功した貧困撲滅運動になった」と成果を強調しました。
ここからはMDGsのそれぞれの目標とその達成状況について端的に説明していきます。
目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
1-A | 1990年と比較して1日の収入が1米ドル未満の人口比率を2015年までに半減させる。 |
1-B | 女性、若者を含むすべての人々に、完全(働く意思と能力を持っている人が適正な賃金で雇用される状態)かつ生産的な雇用、そしてディーセント・ワーク(適切な仕事)の提供を実現する。 |
1-C | 1990年と比較して飢餓に苦しむ人口の割合を2015年までに半減させる。 |
成果や達成度
1990年には、開発途上国の半数に近い人口が一日1.25ドル以下で生活していました。しかし、2015年にはその割合が14%まで減少。
これは、10億人以上の人々が極度の貧困から脱却したと解釈することができます。開発途上地域における栄養不良の人々の割合は、1990年からほぼ半分に減少しています。
目標2:普遍的初等教育の達成
2-A | 2015年までに、世界中のすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。 |
成果や達成度
開発地域における小学校の純就学率は、2000年の83%から2015年には91%まで達しました。
この目標は、サハラ以南アフリカを除く全ての地域において達成間近であり、開発途上地域の小学校就学率の最大の増加はサハラ以南アフリカで見られました。
目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
3-A | 2005年までに初等・中等教育における男女格差の解消を達成し、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差を解消する。 |
成果や達成度
すべての開発途上地域は、 初等、中等および高等教育における男女格差を撲滅するという目標を達成しました。
1990年の南アジアでは、100人の男子に比べ、74人の女子が小学校に通学していましたが、
MDGsの取り組みにより、100人の男子と比較して103人の女子が通学しています。過去20年において、174カ国のほぼ90%の女性が政治に参加する基盤を得たと言って良いでしょう。
目標4:乳幼児死亡率の削減
4-A | 1990年と比較して5歳未満児の死亡率を2015年までに3分の1に削減させる。 |
成果や達成度
1990年代初頭以降、5歳未満の幼児死亡率改善のペースは世界規模で3倍に加速しています。
世界における5歳未満の幼児死亡率は、1990年から2015年の間に生まれた1,000人あたり90人から43人へと、半分以下に減少しました。
はしかの予防接種は、2000年から2013年の間に1,560万人の死亡を防ぎました。
目標5:妊産婦の健康の改善
5-A | 1990年と比較して妊産婦の死亡率を2015年までに4分の1に削減させる。 |
5-B | 2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)への普遍的アクセス(必要とする人が利用できる機会を有する状態)を実現する。 |
成果や達成度
1990年以降、妊産婦の死亡率は45%減少。これらの減少の多くは2000年以降に起こっています。
2014年には、世界の71%以上の出産は、医療従事者の立会いの下に行われました。これは1990年の59%から、目立った上昇です。
目標6:HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止
6-A | HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。 |
6-B | 2010年までにHIV/エイズの治療への普遍的アクセスを実現する。 |
6-C | マラリアおよびその他の主要な疾病の蔓延を2015年までに阻止し、 その後減少させる。 |
成果や達成度
HIVへの新たな感染は2000年から2013年の間で約40%低下し、感染者数も約350万人から210万人へ減少しました。
2014年6月までに世界中で1,360万人のHIV感染者が抗HIV療法を受けていましたが、これは2003年の80万人から飛躍的な進歩です。
抗レトロウイルス療法によって1995年から2013年までの間に760万人がHIVによる死から免れました。
また、2000年から2015年の間に、620万人以上の人々がマラリアによる死を免れていますが、その多くがサハラ以南のアフリカに住む5歳未満の子どもたちです。
2004年から2014年までの間に、9億以上もの殺虫剤処理された蚊帳が、マラリアが風土病となっているサハラ以南アフリカの国々に配布されました。
2000年から2013年の間に、結核の予防、診断、治療によって、約3,700万人の命が救われました。
目標7:環境の持続可能性の確保
7-A | 持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。 |
7-B | 生物多様性の損失を2010年までに有意(確実)に減少させ、その後も継続的に減少させ続ける。 |
7-C | 2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生設備を継続的に利用できない人々の割合を半減させる。 |
7-D | 2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。 |
成果や達成度
2015年には世界人口の91%が改良された飲料水源を使用しており(1990年には76%)、目標は期限である2015年の5年前に達成されました。
1990年以来改良された飲料水へのアクセスを得た26億人のうち、19億人が水道水へのアクセスを得ています。
オゾン層破壊物質は1990年以来除去・消滅されており、オゾン層は今世紀半ばまでに回復すると見込まれています。
目標8:開発のためのグローバル・パートナーシップの推進
8-A |
開放的で、ルールに基づいた、予測可能でかつ差別のない貿易および金融システムのさらなる構築を推進する。 (グッド・ガバナンス、開発および貧困削減に対する国内および国際的な公約を含む。) |
8-B |
後発開発途上国(LDC)の特別なニーズに取り組む。 LDCからの輸入品に対する無関税・無枠 重債務貧困国に対する債務救済および二国間債務の帳消しのための拡大プログラム 貧困削減に取り組む諸国に対するより寛大なODAの提供を含む。) |
8-C |
内陸国および小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。 (小島嶼開発途上国のための持続可能な開発プログラムおよび第22回国連総会の規定に基づく。) |
8-D | 国内および国際的な措置を通じて、開発途上国の債務問題に包括的に取り組み、債務を長期的に持続可能なものとする。 |
8-E | 製薬会社と協力し、開発途上国において、人々が必須の医薬品を安価に入手・利用できるようにする。 |
8-F | 民間セクターと協力し、特に情報・通信における新技術による利益が得られるようにする。 |
成果や達成度
ODAが2000年から2014年の間に実質66%増加し、1,352億ドルに到達。
過去15年間(2000年から2015年)で携帯電話の契約数は7億3,800万から70億とほぼ10倍まで増加しています。
インターネットの普及率は2000年に世界人口の6%だったものが2015年には43%まで増加し、32億人がグローバル・ネットワークとつながりました。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
MDGsからSDGsへ。2030年までに達成を目指そう
2015年までに達成すべき目標を掲げていたMDGsは、一定の効果を上げることに成功しました。
MDGsを引き継いだSDGsもまた、世界各国の取り組みによって、それぞれの目標を達成することが求められています。
SDGsはMDGsで行われてきた内容を発展させたもですが、いくつかの面においてMDGsと決定的な違いがあります。
MDGsが発展途上国の発展を目的としていたのに対して、SDGsは発展途上国、先進国を問わず解決すべき課題を明示していることです。
つまり、SDGsは全人類が解決すべき共通の目標として提示されています。
そんなSDGsの目標は2030年までを達成目標年限としています。あなたも今できることからSGDsの取組みに参加してみてはいかがでしょうか。
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