2008年、不況の煽りを大きく受けた時代のこの年、リーマンショックの影響により、世界規模で経済が大きく傾きました。
しかし、この年に日本社会を驚かせたのはリーマンショックだけではありません。
子どもの貧困率というものに焦点が当たった年でもあり、世間に大きな衝撃を与えました。
それから10年以上が経ち、その間の経済状況の変化とともに、子どもの貧困状態を取り巻く環境も大きく変化を遂げました。
ここでは子どもの貧困が、時代とともにこれまでどのように変化してきたのかを紹介していきます。
子どもの貧困問題とは?国内・海外で貧困に苦しむ子どもが増えている現状や支援方法とは
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2008年に子どもの貧困・再発見
2008年は「子どもの貧困・再発見」の年と呼ばれることがあります。
この年に子どもの貧困に関する書籍が数冊同時に発表されたことにより、マスメディアが取り上げて注目を浴びたことが起因とされています。
日本は教育制度の整備、保育所の施設、保険による医療制度など、子どもが生活していく上では不自由はなく、子どもには優しい社会であると思われがちです。
しかし、厚生労働省の調査では2022年の時点でも9人に1人の子どもが貧困であり、1人親世帯ではその割合は半分にも及びます。*
*出典:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
2008年当時、政府は経済協力開発機構(OECD)が発表したデータに基づき、「日本の相対的貧困率はOECD加盟国34か国中29位と高い水準である」と発表。しかし、ひとり親世帯の相対的貧困率について問題視していました。
(出典:内閣府「平成26年版 少子化社会対策白書」)
政府や自治体の対策とは
子どもの貧困率が高いことに対して、政府や自治体はどのような対策をとっていったのでしょうか。
まず政府が行った対策としては、児童手当や社会保障給付が挙げられます。
また保育・幼児教育の無償化、待機児童問題など保育面の改善など、保育や幼児教育にかけられる資源の改善も行われました。
同時に経済政策にも力を入れています。
2013年には「子どもの貧困対策法(正式名称は子どもの貧困対策の推進に関わる法律)」が制定されました。
これは子どもたちが生まれ育った環境によって左右されることのない社会を目指すことを基本理念として掲げています。
基本的な方針としては、貧困の世代間連鎖の解消と積極的な人材育成を目指すこと、第一に子どもに視点を置いて、切れ目のない施策などに配慮することとしています。
子どもの貧困に関する複数の指標を設定し、それに対して貧困率を定めることで現状を把握し、教育支援、生活支援、就労支援、経済的支援の4つの観点で支援しているのです。
教育支援
教育支援では、学校を貧困対策のプラットフォームと位置づけ、総合的な対策の推進と教育費の負担の軽減を図るように掲げています。
そして、放課後予習や地域学習支援など、福祉関連機関との連携も視野に入れています。
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生活支援
生活支援では社会的孤立の深刻化を防ぎ、保護者の生活支援も併せて家計相談事業の実施や家庭生活支援員を派遣することで、子どもを取り巻く生活の確保を支援で行うとしています。
就労支援
就労支援は、直接的な子どもに対する支援ではなく、保護者への支援となります。
経済的な支援という面もありますが、家庭で家族が接する時間を確保することや、1人親家庭が抱える様々な問題に対する課題の対応など、生活支援的な側面も持っています。
経済的支援
経済的支援は貧困の根本的な解決として必要であり、児童扶養手当や公的年金との併給調整、母子福祉資金貸付金、入学料、入学考査料の支給などを行うとしています。
これが政府の基本的な政策として行われていますが、もっと身近な自治体レベルだとどうでしょうか。
行政以外が行っている支援
地方公共団体ではより地域的な施策として、子どもの居場所作りを行っています。
ボランティアの講師による子どもの学習支援を行う自治体もあります。おかげで、塾に行けない子どもたちでも、学校外での教育支援を受けることができるのです。
地域とも密着しており、どのような状況なのかも把握しやすいため、子どもが栄養失調に陥ることや、学力不足に陥ることを防げる可能性が広がるのです。
そのほかにもNPO法人やボランティア団体が行っている「子ども食堂」の取り組みに対して、地方自治体等が予算を組んで財政的に支援しているところもあります。
こども食堂は、3食の食事が満足にとれない家庭の場合、偏った食事のせいで栄養価の不足や、保護者の共働きで孤食となってしまう子どもたちのために開かれています。
無料、あるいは安価で栄養価の高い食事を食べられ、さらに温かい団欒の機会を作ることができ、周りとのコミュニケーションを図る機会が生まれるのです。
- 2008年は「子どもの貧困・再発見」の年となった
- 2013年には「子どもの貧困対策法(正式名称は子どもの貧困対策の推進に関わる法律)」が制定
- 政府は教育支援、生活支援、就労支援、経済的支援の4つの観点で支援
(出典:厚生労働省「ひとり親家庭等の支援について」,2019)
(出典:内閣府「国における子供の貧困対策の取組について」,2017)
(出典:農林水産省「子供食堂と連携した地域における章行くの推進」)
時代の変化とともに貧困はどう変わったか
子どもの貧困・再発見の年から10年以上が経過しました。この10年間の対策で貧困状況は変わったのでしょうか。
子どもの貧困率で見てみると、2012年には16.3%、つまり6人に1人は貧困であるという結果が出ていたのに対して、2022年には11.5%、9人に1人*が貧困状態にある状況まで改善しています。
*出典:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
2012年から2015年の子どもがいる世帯の平均所得金額についてみてみると、総所得が35万円増加している一方で、児童手当や社会保障給付が減少しています。
これは純粋に世帯の所得が増えたことによる改善であり、社会保障等の充実による改善ではないことを示しています。
政府や自治体の対策の結果は?
政府や自治体によって児童手当や社会保障給付などで家計の子育て支援を行い、経済政策にも力を入れたことによって改善の方向へ向かっています。
また、総所得の増加によって児童手当などは縮小の方向へと向かいました。
これは低所得層の賃金が増加したため、子どもの貧困率が低下し、結果としてはわずかでも改善しているという見方ができます。
また、2013年に制定された子どもの貧困対策法によって、より具体的な貧困対策を行うように変化してきました。
子どもたちとそれを取り巻く環境を4つの支援で改善するという対策です。
また自治体レベルでは、より密着した子どもたちの居場所を作ることで、学習支援や食事の支援といった、教育と生活の双方に関しての支援を行うように変化してきています。
継続的に支援を行うことで貧困率は改善されてきていますが、それでも油断できないのが現状です。
- 子どもの貧困率は、2012年から2015年の3年間で6人に1人から7人に1人へ改善、2022年には9人に1人まで改善
- 児童手当や社会保障給付などで家計の子育て支援を行い、経済政策にも力を入れたことによって改善
- 総所得の増加によって児童手当などは縮小傾向になった
(出典:厚生労働省「グラフでみる世帯の状況」,2018)
(出典:厚生労働省「平成 29 年 国民生活基礎調査の概況」,2017)
貧困率は改善傾向にあるが油断はできない
2012年には日本の子どもの貧困率は16.3%でしたが、2022年では11.5%まで低下するなど、改善の兆しが見えてきています。これらは政府や自治体、支援に取り組んでいる各団体の努力が成果として現れていることが伺えます。
しかしデータを精査すると、子どもの貧困状況が改善したのは「二人以上の大人がいる世帯」です。ひとり親世帯だと、状況はあまり改善されていません。つまり、弱い立場の人は以前と変わらず苦しい状況が続いていることが伺えます。
近年の物価高騰は、こうした弱い立場の人をさらに追い詰めてしまいかねません。、厳しい状況に追い込まれている人を助けるためにも、これまで以上に支援の重要性は増していることが推察されます。
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子どもの貧困をなくしていくために私たちができること
子どもの貧困は改善しつつありますが、まだまだその流れは緩やかであり、今も苦しんでいる子どもがいるのも事実です。
政府や自治体、非営利団体が支援に励んでいますが、私たちができることについても考えてはいかがでしょうか。
例えばボランティアや寄付といった形で支援をすることも可能です。
一人ひとりが少額の寄付やボランティア活動を行うことで、やがて助かる子どもが増えていくのではないでしょうか。