手当や給付金は生活していく中で支給要件に該当することがあり、申請をすれば支給してもらえるものや、申請しなくても条件を満たしていれば支給されるものがあります。
様々な手当がありますが、その中には税金がかかるものとかからないものがあるのです。場合によっては翌年の所得税に大きく関わることもあります。
この記事では、税金がかかる手当とかからない手当はどのように分類されるのか紹介します。
税金がかかる手当、かからない手当
日本では様々な手当が支給されますが、その中には税金がかかるものとかからないものがあります。
しかしその違いが分かりにくく、手当をもらっても課税されて税金が高くなる場合もあります。課税されるか分かるだけでも、翌年の税金に影響するかどうか心構えをしておくことはできます。
国税庁によれば、基本的には役員や使用人に給付される手当は給与所得になります。例えば残業手当や休日出勤手当、職務手当などです。
ほかにも地域手当や家族(扶養)手当、住宅手当なども該当します。そのためこれらを支給されれば税金がかかります。
ただし通勤手当のうち一定金額以下のものや、転勤や出張などの旅費のうち、通常必要となるもの、宿直や日直の手当のうちの一定金額以下は非課税です。
子育てやひとり親世帯に給付される手当は非課税なものが多い
子育てやひとり親世帯に給付される手当はどうでしょうか。
まず子育て世帯すべてが対象となる児童手当や、ひとり親世帯が対照となる児童扶養手当、特定の条件を対象とする遺児手当や遺族手当は非課税の収入です。
また有事の際に必要となる休業手当や失業手当ですが、失業手当については非課税となっています。
ただし休業手当は少し複雑です。労働基準法の規定に基づく休業手当は、使用者の事由により休業した際に支給されますが、給与所得扱いとなるため課税されます。
しかし労働者が業務上の負傷などにより休業した場合に支給される休業補償などに関しては、労働基準法の規定により受ける療養のための給付などは非課税となります。
ほかにも手当からは少し外れますが、2014年の消費税率の引き上げから2016年の3年間行われた臨時福祉給付金や、2020年の新型コロナウイルス感染症の蔓延の際に支給されたひとり親世帯臨時特別給付金も非課税です。
税金がかからない手当にはルールがある
手当や給付金は所得税法に基づいて課税されるか非課税なのかが決まっています。
この場合非課税となっているもののほとんどは「社会政策的(担税力)に基づくもの」に当たります。これらは非課税とするものと法律により規定されています。
具体的には増加恩給、傷病賜金、負傷または疾病に起因して受ける特定の給付、遺族恩給、遺族年金などです。遺族年金や休業補償などはこれに当たります。
また学費に充てるためなどに給付される金品が挙げられますが、これは児童手当や児童扶養手当などが該当します。
雇用保険や健康保険、国民健康保険の保険給付なども非課税になることから、失業保険も非課税です。
このように特定の職に関しては、社会政策などから所得税を課さないこととしており、課税対象から除外されています。
手当の中には子育てやひとり親世帯を対象とした支援政策の一環として行われているものがあります。これらは社会政策などに含まれるため、該当するものはすべて非課税です。
※2020年11月時点
(出典:国税庁「給与所得となるもの」)
(出典:大府市「子育て・教育」)
(出典:国税庁「労働基準法の休業手当等の課税関係」)
(出典:高知市「失業中で現在,雇用保険の失業手当を受給中ですが,所得税の確定申告,市県民税の申告は必要でしょうか。(申告について)」)
(出典:厚生労働省「低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金」)
(出典:国税庁「所得税の意義と特色」)
社会的配慮による手当は税金がかからない
児童手当や児童扶養手当、失業手当など、子育てやひとり親世帯向け、あるいは就職に向けたものなど社会的に支援が必要とされる手当には税金がかかりません。
これらの手当が低所得、あるいは所得がない人を中心として支援するために作られた制度にほかならないからです。
児童扶養手当は子育てと仕事を両立しなければいけないひとり親世帯のための手当です。
条件を満たしていれば支給を申請することができますが、このような手当が必要となるのは、ひとり親世帯が置かれる状況にあります。
厚生労働省によるひとり親世帯に関する2016年の調査では、母子世帯が123.2万世帯、父子世帯は18.7万世帯もあることが分かっています。
全世帯数から考えれば少なく見えますが、特に母子世帯は平均年間収入が243万円であり、低収入の中で生計を維持しながら子育てをしなければいけません。
そのような世帯にとって、手当は必要な支援ですが、それらが課税対象となっていたら結局負担を重ねることになってしまいます。
低収入が多いひとり親世帯にとって、税金は大きな負担になります。
また失業手当についても同様のことが言えます。2008年のリーマンショック以降、失業率は大きく変動することになりました。
翌年の2009年の完全失業率は5.1%になり、有効求人倍率は0.47倍とここ20年間の間では最低まで落ち込んでいます。
徐々に回復はしていき、2018年には完全失業率が2.4%、有効求人倍率も1.61倍にまでなっています。
それでも10年ほどの間に多くの失業者が出たことになり、その人々が生活を維持していくためには失業手当が必要です。翌年の所得税への影響も考えると非課税でなければ負担は増えることになります。
ほかの手当や給付金もそうですが、社会的配慮として状況が悪化する人を助けるために行われる支援は、後々の負担も減らすために課税をしないという方針がとられているようです。
(出典:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について」,2016)
(出典:総務省「完全失業率と有効求人倍率の推移」,2018)
税金がかかる手当とかからない手当を区別しよう
手当は社会的配慮として作られた手当かどうかで課税されるかが決まります。
子育てやひとり親世帯への支援として支給される手当は課税されませんが、勤務先から支給される手当は課税される可能性が高いです。
その場合、翌年の所得税にも影響し、児童扶養手当などの所得限度額を満たしてしまう可能性もあります。
つまり受け取る手当が課税されるか知らなければ、翌年の手当の申請などに影響を与えることもあるのです。
そのようにならないためにも、受け取る前に課税される手当なのか知っておくことが大切です。