プラスチックごみ

海洋ゴミ問題の現状とは?プラスチック汚染から海を守るために私たちにできること

海洋プラスチックごみが世界で問題になっています。

海洋汚染を引き起こし、生態系を壊してしまう原因として見られており、今後持続的に海洋資源を利用するのであれば、避けては通れない問題です。

そのため世界では様々な国がこの対策に乗り出し、取り組みを進めています。
海に囲まれる日本も取り組みを行っていますが、海外ではどのような対策を打ち出しているのでしょうか。この記事では世界の対策や取り組みについて紹介します。

なお、「海洋プラスチックごみ問題を解決するために私たちができることは何があるのだろう」と悩んでいる方は、ぜひ下記記事もチェックしてみてください。
海洋プラスチックごみの削減に向けてできることや、海洋プラスチックごみの問題点について理解を深めることができます。

海洋プラスチックごみ問題とは?日本や海外の取り組み、私たちができることを解説

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世界で広がる海洋ごみ問題の現状


ここでは、海洋ごみの種類とその割合や、海洋ごみが発生する原因など、世界で広がる海洋ごみ問題の現状について解説します。

海洋ごみの種類とその割合

海洋ごみは、発生場所や形態によって主に以下の3種類に分類されます。

  • ・漂流ごみ:海の表面や中を漂い続けるごみ
  • ・漂着ごみ:潮の流れによって海岸に打ち上げられるごみ
  • ・海底ごみ:海の底に沈んでしまい、蓄積されるごみ

海洋ごみの構成割合をみると、重量ベースでは自然由来の流木などが多い一方で、個数や容積ベースではプラスチックごみが圧倒的に多いことがわかっています。

特に、ペットボトルや食品包装、レジ袋といった使い捨てプラスチックの割合が高く、環境問題の大きな要因となっています。なかでも問題視されているのが、「マイクロプラスチック」と呼ばれる5mm以下の微細なプラスチックごみです。

「マイクロプラスチック」はさまざまなプラスチック製品から発生しており、人工芝や敷物、マット類、衣類に使われる合成繊維も主要な発生源とされています。

海を守るためには、こういったプラスチック製品の排出を減らしていく必要があることを覚えておきましょう。

(出典:環境省「一般向けマイクロプラチック発生抑制・流出抑制対策リーフレット」)

(出典:環境省「海洋ごみをめぐる最近の動向」)

(出典:公益社団法⼈ ⽇本海難防⽌協会「みんなで考える海ごみガイドブック」)

海洋ごみが発生する原因

海洋ごみの多くは、もともと街で発生したごみが河川を通じて海へ流れ込むことで生じています。その原因は、大きく「投棄・ポイ捨て」と「漏洩(ろうえい)」の2つに分けられます。

まず、「投棄・ポイ捨て」は、意図的にごみを捨てる行為だけでなく、生活環境や社会的な事情によって発生するケースもあります。

例えば、ゴミ袋を購入する余裕がない人が不法投棄したり、自治体の回収時間に間に合わず放置されたごみがカラスに荒らされて散乱してしまったりすることもあります。

一方、「漏洩(ろうえい)」とは、意図せずごみが流出してしまう現象です。例えば、ゴミ収集所で袋が破れ、軽いプラスチックごみが風で飛ばされることがあります。また、災害時に使用された土のうや農業資材が劣化し、破片が流出することも要因のひとつです。

こうした問題は、単なるモラルの問題だけではなく、社会構造や産業の仕組みも関係しているため、個人の意識だけで解決するのは困難な部分もあります。そのため、自治体や企業、NPOなどが協力し、実態を把握したうえで、効果的な対策を講じることが重要といえるでしょう。

(出典:公益財団法人日本財団「【増え続ける海洋ごみ】海ごみの7〜8割は街由来。流出原因の調査で分かったモラルでは解決できない問題」)

(出典:政府広報オンライン「海洋プラスチック問題に取り組もう!きれいな海と生態系を守る!「プラスチック・スマート」キャンペーン
」)

こちらの本ではプラスチックが作られてから廃棄されるまでの流れを、グラフやイラストを活用して分かりやすく解説しています。
プラスチックごみ問題について理解を深めたい人はぜひチェックしてみませんか。

海洋ごみが引き起こす影響

ここからは、海洋ごみが引き起こす影響について詳しく解説します。

環境への影響

海洋ごみ、特にプラスチックごみは、生態系や海洋環境に深刻な影響を与えています。

例えば、海鳥や魚が誤ってプラスチック片を飲み込み、消化不良や窒息を引き起こす事例が世界各地で報告されています。

また、海に流れ出た漁網やカゴが、管理されないまま海中で長期間生物を捕らえ続ける「ゴースト・フィッシング」と呼ばれる現象も発生し、漁業資源の減少につながっています。

さらに、プラスチックは製造時や漂流中に有害物質を吸着することがあり、それが食物連鎖に取り込まれることで、生態系全体に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。

こうした海洋ごみの影響は、景観の悪化や観光・漁業への打撃など、私たちの生活にも直接関わる問題となっています。

(出典:環境省「令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失」)

経済的な影響

海洋ごみは、観光業や漁業、船舶の安全に深刻な影響を及ぼし、地域経済にも大きな負担をかけています。

観光業では、海岸に漂着したごみによる景観の悪化が問題となっています。訪れた観光客が「汚れている」と感じれば、リピート訪問が減少し、観光地としての魅力が低下します。地域経済にも直接影響を与える要因となるでしょう。

漁業への影響も深刻です。水産物に細かいごみが混入すると、除去作業が必要になり、漁業者の負担が増加します。また、プラスチック片などが混入した水産物は品質が下がり、風評被害につながることもあります。

さらに、ごみの回収・処理にも膨大な費用がかかっています。特に離島では、漂着ごみの処理施設がなく、本土へ運搬するコストが大きな負担となっています。

また、船舶事故のリスクも高まります。漂流ごみが船のプロペラに絡まると航行不能になったり、エンジン故障を引き起こしたりするため、安全な海運にとって深刻な課題となっています。

(出典:一般社団法人JEAN「経済的な影響」)

健康への影響

海洋ごみに含まれるプラスチックは、食物連鎖を通じて人間の健康にも影響を及ぼす可能性があります。マイクロプラスチックを摂取したプランクトンを小魚が食べ、それをさらに大型の魚が捕食することで、有害物質が濃縮されていく現象が懸念されています。

人間がこうした魚介類を摂取した場合、プラスチック自体は体外に排出されるものの、プラスチックに付着した有害化学物質が体内に蓄積する恐れがあります。これにより、がんの発生リスクや免疫力の低下、生殖機能への悪影響などが指摘されています。

また、プラスチックに含まれる環境ホルモン作用を持つ物質が、ホルモンバランスを乱し、長期的に健康に悪影響を及ぼす可能性もあるため、対策が急がれています。

(出典:千葉商科大学「海が汚染され、海の生物も人も危ない! マイクロプラスチック汚染問題とは」)

海洋プラスチックごみに対する世界の取り組みや方針


海洋プラスチックごみは世界中の海で問題となっており、持続可能な開発目標(SDGs)でも取り上げられるほど深刻な問題です。

SDGsで定められたターゲットを元に、特に海に隣接する国や海洋資源を重要視している国などを中心に、この問題に対しての取り組みが行われています。

特に積極的な取り組みを行っている国や地域にEUが挙がりますが、そのような国の取り組みや方針について紹介します。

EUの取り組み

EUでは「EUプラスチック戦略」という方針を打ち出し、取り組みにあたっています。

  • ・プラスチックリサイクルの経済性と品質の向上
  • ・プラスチック廃棄物と海洋ごみ量の削減
  • ・サーキューラー・エコノミーに向けた投資とイノベーションの拡大
  • ・国際的なアクションの醸成

これら4つの柱を軸に対策を行い、先進国の中では熱心に取り組み、多くの効果を上げているのがEUです。
以下に柱になっている項目についてそれぞれ詳しく見ていきます。

プラスチックリサイクルの経済性と品質の向上

2030年までに全てのプラスチック容器包装を、コストを抑え効果的にリユースやリサイクル可能にすること、再生プラスチックの品質基準の設定、分別収集と選別のガイドラインの発行など、リサイクルを通した経済性と品質の向上を目指した方針です。

プラスチック廃棄物と海洋ごみ量の削減

プラスチックごみと海洋ごみの削減を目指した方針です。

使い捨てプラスチックに対して、法的対応や海洋ごみのモニタリングとマッピングを行い、生分解性プラスチックやラベリングの用途特定、マイクロプラスチックの意図的添付の制限や、製品からの非意図的な放出の抑制などに取り組んでいます。

サーキューラー・エコノミーに向けた投資とイノベーションの拡大

サーキュラー・エコノミーとは循環経済を意味し、製品と資源の価値を可能な限り長く保ち、維持することで廃棄物の発生を最小限にするという方策です。

つまり、商品の製造時から消費、破棄にいたるまで価値を損なうことなくできる限り長く保ち再利用していくことで、破棄するプラスチックを最小限に抑えていくという考え方です。

これにより、ヨーロッパでは既に6000億ユーロのコスト削減や、EU圏内の年商8%アップ、温室効果ガスの総排出量2~4%の削減などの効果を上げており、プラスチックに対して更なる戦略的研究イノベーションを進めるため1億ユーロの追加投資を計画しています。

国際的なアクションの醸成

EUだけが取り組みに積極的であっても、世界全体の海洋の状況を改善することはできません。

そこで各国にもさらに動いてもらうために、国際行動の要請や多国間イニシアティブの支援、欧州外部投資計画といった協調ファンドの造成などを盛り込み、国際的なアクションの醸成を進めていく方針です。

EU全域に使い捨てプラスチック等に関する規制案

またEU全域に使い捨てプラスチックに関する規制案も提案されています。

これは主に使い捨てプラスチック10品目と漁業などで使用する漁具に関して消費削減や市場規制、ラベル要求などを求めることで有害な海洋プラスチックごみ削減に向けた取り組みの1つとしています。

(出典:環境省公式サイト

アメリカの対応

アメリカは使い捨てプラスチックごみの発生量が世界第1位の国です。

排出量こそ20位程度でおさまっていますが、それでも対策を講じなければいけないのは確かです。

アメリカではこれを受け、国内ではプラスチックを原料とするストローやマドラーを禁止する法案を可決した州や、再生材の利用促進のため、再生プラスチックの比率の記載の義務付け、環境配慮製品調達のためのシステムである「包括的物品調達ガイドライン(CPG)」、「バイオプリファードプログラム」を元に、プラスチックを再利用する取り組みを進めています。

また2021年、環境保護省は「国家リサイクル戦略」を発表。2030年までに固形廃棄物のリサイクル率を50%に高めるため、リサイクル商品市場の改善、原材料の選別などによるリサイクル可能な製品の増加、リサイクル過程から生じる環境汚染の減少、など5つの目標を掲げています。

マイクロビーズ除去海域法

さらにアメリカではマイクロビーズ除去海域法がオバマ氏の政権下で2015年に可決されました。

これによりマイクロビーズ入りの洗顔料や歯磨き粉の製造や販売の禁止が行われています。
さらにカリフォルニア州ではレジ袋の提供の禁止、2020年までには生分解性であってもマイクロビーズなど全面禁止をする法案を制定しました。

(出典:環境省公式サイト

アジア諸国が輸入規制

アジア諸国は輸入規制を中心に対策を行っています。

これまでアジアは、中国を中心に廃プラスチックを輸入してきました。
安価で輸入できる廃プラスチックを再利用することで、プラスチックの製造を行ってきたためです。

それもあり、世界の海洋プラスチックごみの排出量は、2010年時点では1位から4位まで東アジアの国が占めており、その第1位は中国という結果が出ていました。

これを是正するため、アジア諸国では廃プラスチックの輸入規制が次々と行われていきました。

中国政府の動き

中国では海洋プラスチックごみの排出量、そして一部の地域で環境保護を軽視し、人体や生活環境に対して重大な危害をもたらしたことから、中国は「固体廃棄物輸入管理制度改革実施案」を公表しました。

これによると中国はこれまで輸入してきた廃プラスチックなど環境への危害が大きい固体廃棄物の輸入を2017年末を機に禁止するとともに、2019年末までに国内資源で代替可能な固体廃棄物の輸入を段階的に停止すると発表しました。

これまで中国は日用品や工業製品に使うため、安価な再生素材獲得のため世界の廃プラスチックを輸入し受け入れてきました。

1988年から2016年までに中国が輸入したプラスチックごみは計2.2億トンであり、これは世界で発生した廃プラスチックの約7割を占めるといわれています。

上記の施案公表を受けたことで、16年には月60万トンだった廃プラスチックを18年には月3万トンにまで減少しました。

また、これまで回収方法や廃棄方法についての体制を見直し、早急な整備を行うことで国内の固体廃棄物の回収率を高めたのです。
これにより、中国からのプラスチックごみ排出量は激減したと言われています。

さらに2020年には、特定のプラスチック製品を生産・販売規制、使用禁止・制限する法を整備。加えて、2025年までにプラスチック製品の生産、流通、消費及び回収処置などのプロセスの管理制度をほぼ確立する枠組みも設定しました。

タイ政府の動き

タイでも輸入規制が強化されています。
廃プラスチックだけでなく、電子廃棄物の制限も強化されており、取り締まりの強化と新規輸入許可手続きの停止を行い、廃プラスチックの輸入一律禁止をする方針で2018年から取り組みを開始しています。

(出典:環境省公式サイト

日本政府の取り組み


世界がこのような取り組みを行う中で、海に囲まれた島国である日本でも、海洋プラスチックごみに対して取り組みが行われています。

先に挙げた中国の輸入規制や、プラスチックごみの削減に向けた方針・計画の策定などが行われています。

中国の輸入規制への対応

中国をはじめとした廃プラスチックの輸入禁止あるいは輸入規制措置を受けて、日本国内ではその対応に追われました。

国内資源循環体制を整備すべく、リサイクル高度化設備の導入に対する国庫補助など緊急的な財政支援制度を創設し、これまでのプラスチックの扱いを見直して分別から選別、線状、原材料化を全て国内で行える体制を確立する方針で対応しています。

第4次循環型社会形成推進基本計画

政府の取り組みを行う上で2013年に環境省によって作られたのが、「循環型社会形成推進基本計画」です。

第四次(2018年閣議決定)まで進められているこの計画は循環型社会形成推進基本法に基づいて、循環型社会を作り上げていくための施策を総合的に、そして計画的に推進するための基本計画になります。

第四次計画ではその方向性として3つの項目が新たに挙げられましたが、そのうち「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」では、過剰な供給などを行わないことを徹底しており、便利で大量に生産されるプラスチックも徹底した管理のもと資源循環を推進する取り組みを打ち出しています。

また「適正な処理の更なる推進と環境再生」のなかには安定的・効率的な処理体制の確立に加え、環境再生のためにマイクロプラスチックを含む海洋ごみ対策への取り組みも盛り込まれています。

海洋プラスチックごみ対策アクションプラン

海洋プラスチックごみ対策アクションプランというものも政府で策定されています。

これはプラスチックの有効利用を前提としつつ、海洋の新たな汚染を生み出さないため取り組みを徹底するというプランとなっています。

具体的な方針としてはプラスチックごみの回収から適正処理を徹底、ポイ捨てや不法投棄、非意図的な海洋流出の防止の推進、既に流出してしまったプラスチックごみの回収にも取り組むことを盛り込んでいます。

それだけでなく、海洋に流出しても影響や負担が少ないプラスチックに代わる新たな素材の開発や、その素材への転換などを推進していく取り組みも進められています。

(出典:環境省公式サイト

私たち一人ひとりの行動も大切!


このように世界各国で海洋プラスチックごみの対策が立てられ、取り組みが行われています。

広大な海のごみを私たちの手で除去することは現実的に不可能です。
しかしプラスチックごみの発生を抑えることや、川に流れているごみや海岸に流れ着いたごみを回収するだけでも、その削減に繋がります。

私たち消費者一人ひとりの行動が、海を守ることになるのは確かです。まずは自分の今の生活を見直し、できることを考えて動き出すことが大切なのです。

また、私たちができる海を守る活動の一つに「海洋汚染問題に取り組んでいる団体へ寄付する」ことが挙げられます

たとえば「一般社団法人グリーンピース・ジャパン」では、プラスチックごみ問題を解決するため「海岸での掃除・ごみのブランド調査」や、調査にもとづいて政府や都に対して提言を行ったりしています。

グリーンピース・ジャパンの活動については下記で詳しく紹介しております。活動内容が気になる方や寄付を通じた支援に関心がある方は、ぜひチェックしてみてください。
>>グリーンピース・ジャパンについて詳しくみる

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この記事を書いた人
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