海洋プラスチックごみが世界で問題になっています。
海洋汚染を引き起こし、生態系を壊してしまう原因として見られており、今後持続的に海洋資源を利用するのであれば、避けては通れない問題です。
そのため世界では様々な国がこの対策に乗り出し、取り組みを進めています。
海に囲まれる日本も取り組みを行っていますが、海外ではどのような対策を打ち出しているのでしょうか。この記事では世界の対策や取り組みについて紹介します。
なお、「海洋プラスチックごみ問題を解決するために私たちができることは何があるのだろう」と悩んでいる方は、ぜひ下記記事もチェックしてみてください。
海洋プラスチックごみの削減に向けてできることや、海洋プラスチックごみの問題点について理解を深めることができます。
海洋プラスチックごみ問題とは?日本や海外の取り組み、私たちができることを解説
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世界規模で深刻な海洋プラスチックごみ問題
海岸などで打ちつけられるごみは、その景観を損なうだけでなく環境汚染にもつながります。
私たち人間は、ペットボトルやビニール袋などを便利なものとして利用しますが、ポイ捨てや不適切な処分により、風や大雨などの影響を受けて海に流れ出ます。
プラスチックごみの約9割がリサイクルされず海へと流出しており、2019年の国際連合広報センターの発表によると、1億トンのプラスチックごみが投棄されているとしています。
プラスチックごみは海洋生物にも大きな影響を及ぼします。餌と間違えて誤飲したり、網が絡まり動けなくなるなど、死に至る場合もあります。また、ウミガメや海鳥なども、食料を探しにごみの周りに集まったとき、釣り竿や釣り糸に引っ掛かり取れなくなってしまうこともあります。その影響を受けている生物は多く、世界中で問題となっています。
環境省によると、海洋には毎年800万トン以上のプラスチックごみが流出しており、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという推計もされています。
これらの海洋プラスチックごみの主要排出源は中国やインドネシア、フィリピンなど東アジア地域や東南アジア地域であるという推計もあり、開発途上国も含めた世界全体の課題として対処が必要です。
こちらの本では、プラスチックが作られてから廃棄されるまでの流れを、グラフやイラストを活用して分かりやすく解説しています。
プラスチックごみ問題について理解を深めたい人はぜひチェックしてみませんか。
(出典:国際連合広報センター公式サイト)
(出典:政府広報オンライン「海のプラスチックごみを減らしきれいな海と生き物を守る!,2019)
(出典:環境省「第3章 プラスチックを取り巻く状況と資源循環体制の構築に向けて」)
(出典:海上保安庁「未来に残そう青い海 私たちの生活(ごみ)と海洋汚染」)
(出典:環境省「海洋プラスチック問題について」,2018)
海洋プラスチックごみに対する世界の取り組みや方針
海洋プラスチックごみは世界中の海で問題となっており、持続可能な開発目標(SDGs)でも取り上げられるほど深刻な問題です。
SDGsで定められたターゲットを元に、特に海に隣接する国や海洋資源を重要視している国などを中心に、この問題に対しての取り組みが行われています。
特に積極的な取り組みを行っている国や地域にEUが挙がりますが、そのような国の取り組みや方針について紹介します。
EUの取り組み
EUでは「EUプラスチック戦略」という方針を打ち出し、取り組みにあたっています。
- ・プラスチックリサイクルの経済性と品質の向上
- ・プラスチック廃棄物と海洋ごみ量の削減
- ・サーキューラー・エコノミーに向けた投資とイノベーションの拡大
- ・国際的なアクションの醸成
これら4つの柱を軸に対策を行い、先進国の中では熱心に取り組み、多くの効果を上げているのがEUです。
以下に柱になっている項目についてそれぞれ詳しく見ていきます。
プラスチックリサイクルの経済性と品質の向上
2030年までに全てのプラスチック容器包装を、コストを抑え効果的にリユースやリサイクル可能にすること、再生プラスチックの品質基準の設定、分別収集と選別のガイドラインの発行など、リサイクルを通した経済性と品質の向上を目指した方針です。
プラスチック廃棄物と海洋ごみ量の削減
プラスチックごみと海洋ごみの削減を目指した方針です。
使い捨てプラスチックに対して、法的対応や海洋ごみのモニタリングとマッピングを行い、生分解性プラスチックやラベリングの用途特定、マイクロプラスチックの意図的添付の制限や、製品からの非意図的な放出の抑制などに取り組んでいます。
サーキューラー・エコノミーに向けた投資とイノベーションの拡大
サーキュラー・エコノミーとは循環経済を意味し、製品と資源の価値を可能な限り長く保ち、維持することで廃棄物の発生を最小限にするという方策です。
つまり、商品の製造時から消費、破棄にいたるまで価値を損なうことなくできる限り長く保ち再利用していくことで、破棄するプラスチックを最小限に抑えていくという考え方です。
これにより、ヨーロッパでは既に6000億ユーロのコスト削減や、EU圏内の年商8%アップ、温室効果ガスの総排出量2~4%の削減などの効果を上げており、プラスチックに対して更なる戦略的研究イノベーションを進めるため1億ユーロの追加投資を計画しています。
国際的なアクションの醸成
EUだけが取り組みに積極的であっても、世界全体の海洋の状況を改善することはできません。
そこで各国にもさらに動いてもらうために、国際行動の要請や多国間イニシアティブの支援、欧州外部投資計画といった協調ファンドの造成などを盛り込み、国際的なアクションの醸成を進めていく方針です。
EU全域に使い捨てプラスチック等に関する規制案
またEU全域に使い捨てプラスチックに関する規制案も提案されています。
これは主に使い捨てプラスチック10品目と漁業などで使用する漁具に関して消費削減や市場規制、ラベル要求などを求めることで有害な海洋プラスチックごみ削減に向けた取り組みの1つとしています。
(出典:環境省公式サイト)
アメリカの対応
アメリカは使い捨てプラスチックごみの発生量が世界第1位の国です。
排出量こそ20位程度でおさまっていますが、それでも対策を講じなければいけないのは確かです。
アメリカではこれを受け、国内ではプラスチックを原料とするストローやマドラーを禁止する法案を可決した州や、再生材の利用促進のため、再生プラスチックの比率の記載の義務付け、環境配慮製品調達のためのシステムである「包括的物品調達ガイドライン(CPG)」、「バイオプリファードプログラム」を元に、プラスチックを再利用する取り組みを進めています。
また2021年、環境保護省は「国家リサイクル戦略」を発表。2030年までに固形廃棄物のリサイクル率を50%に高めるため、リサイクル商品市場の改善、原材料の選別などによるリサイクル可能な製品の増加、リサイクル過程から生じる環境汚染の減少、など5つの目標を掲げています。
マイクロビーズ除去海域法
さらにアメリカではマイクロビーズ除去海域法がオバマ氏の政権下で2015年に可決されました。
これによりマイクロビーズ入りの洗顔料や歯磨き粉の製造や販売の禁止が行われています。
さらにカリフォルニア州ではレジ袋の提供の禁止、2020年までには生分解性であってもマイクロビーズなど全面禁止をする法案を制定しました。
(出典:環境省公式サイト)
アジア諸国が輸入規制
アジア諸国は輸入規制を中心に対策を行っています。
これまでアジアは、中国を中心に廃プラスチックを輸入してきました。
安価で輸入できる廃プラスチックを再利用することで、プラスチックの製造を行ってきたためです。
それもあり、世界の海洋プラスチックごみの排出量は、2010年時点では1位から4位まで東アジアの国が占めており、その第1位は中国という結果が出ていました。
これを是正するため、アジア諸国では廃プラスチックの輸入規制が次々と行われていきました。
中国政府の動き
中国では海洋プラスチックごみの排出量、そして一部の地域で環境保護を軽視し、人体や生活環境に対して重大な危害をもたらしたことから、中国は「固体廃棄物輸入管理制度改革実施案」を公表しました。
これによると中国はこれまで輸入してきた廃プラスチックなど環境への危害が大きい固体廃棄物の輸入を2017年末を機に禁止するとともに、2019年末までに国内資源で代替可能な固体廃棄物の輸入を段階的に停止すると発表しました。
これまで中国は日用品や工業製品に使うため、安価な再生素材獲得のため世界の廃プラスチックを輸入し受け入れてきました。
1988年から2016年までに中国が輸入したプラスチックごみは計2.2億トンであり、これは世界で発生した廃プラスチックの約7割を占めるといわれています。
上記の施案公表を受けたことで、16年には月60万トンだった廃プラスチックを18年には月3万トンにまで減少しました。
また、これまで回収方法や廃棄方法についての体制を見直し、早急な整備を行うことで国内の固体廃棄物の回収率を高めたのです。
これにより、中国からのプラスチックごみ排出量は激減したと言われています。
さらに2020年には、特定のプラスチック製品を生産・販売規制、使用禁止・制限する法を整備。加えて、2025年までにプラスチック製品の生産、流通、消費及び回収処置などのプロセスの管理制度をほぼ確立する枠組みも設定しました。
タイ政府の動き
タイでも輸入規制が強化されています。
廃プラスチックだけでなく、電子廃棄物の制限も強化されており、取り締まりの強化と新規輸入許可手続きの停止を行い、廃プラスチックの輸入一律禁止をする方針で2018年から取り組みを開始しています。
(出典:環境省公式サイト)
日本政府の取り組み
世界がこのような取り組みを行う中で、海に囲まれた島国である日本でも、海洋プラスチックごみに対して取り組みが行われています。
先に挙げた中国の輸入規制や、プラスチックごみの削減に向けた方針・計画の策定などが行われています。
中国の輸入規制への対応
中国をはじめとした廃プラスチックの輸入禁止あるいは輸入規制措置を受けて、日本国内ではその対応に追われました。
国内資源循環体制を整備すべく、リサイクル高度化設備の導入に対する国庫補助など緊急的な財政支援制度を創設し、これまでのプラスチックの扱いを見直して分別から選別、線状、原材料化を全て国内で行える体制を確立する方針で対応しています。
第4次循環型社会形成推進基本計画
政府の取り組みを行う上で2013年に環境省によって作られたのが、「循環型社会形成推進基本計画」です。
第四次(2018年閣議決定)まで進められているこの計画は循環型社会形成推進基本法に基づいて、循環型社会を作り上げていくための施策を総合的に、そして計画的に推進するための基本計画になります。
第四次計画ではその方向性として3つの項目が新たに挙げられましたが、そのうち「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」では、過剰な供給などを行わないことを徹底しており、便利で大量に生産されるプラスチックも徹底した管理のもと資源循環を推進する取り組みを打ち出しています。
また「適正な処理の更なる推進と環境再生」のなかには安定的・効率的な処理体制の確立に加え、環境再生のためにマイクロプラスチックを含む海洋ごみ対策への取り組みも盛り込まれています。
海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
海洋プラスチックごみ対策アクションプランというものも政府で策定されています。
これはプラスチックの有効利用を前提としつつ、海洋の新たな汚染を生み出さないため取り組みを徹底するというプランとなっています。
具体的な方針としてはプラスチックごみの回収から適正処理を徹底、ポイ捨てや不法投棄、非意図的な海洋流出の防止の推進、既に流出してしまったプラスチックごみの回収にも取り組むことを盛り込んでいます。
それだけでなく、海洋に流出しても影響や負担が少ないプラスチックに代わる新たな素材の開発や、その素材への転換などを推進していく取り組みも進められています。
(出典:環境省公式サイト)
私たち一人ひとりの行動も大切!
このように世界各国で海洋プラスチックごみの対策が立てられ、取り組みが行われています。
広大な海のごみを私たちの手で除去することは現実的に不可能です。
しかしプラスチックごみの発生を抑えることや、川に流れているごみや海岸に流れ着いたごみを回収するだけでも、その削減に繋がります。
私たち消費者一人ひとりの行動が、海を守ることになるのは確かです。まずは自分の今の生活を見直し、できることを考えて動き出すことが大切なのです。
また、私たちができる海を守る活動の一つに「海洋汚染問題に取り組んでいる団体へ寄付する」ことが挙げられます。
たとえば「一般社団法人グリーンピース・ジャパン」では、プラスチックごみ問題を解決するため「海岸での掃除・ごみのブランド調査」や、調査にもとづいて政府や都に対して提言を行ったりしています。
グリーンピース・ジャパンの活動については下記で詳しく紹介しております。活動内容が気になる方や寄付を通じた支援に関心がある方は、ぜひチェックしてみてください。
>>グリーンピース・ジャパンについて詳しくみる
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