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営利法人と非営利法人の違い。非営利法人にはどんな種類がある?

  • 2020年8月31日
  • 2022年7月20日
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法人という言葉はよく耳にしますが、法人は大きく分けて、営利法人と非営利法人に区別することができます。
この記事では、営利法人と非営利法人の違いや、非営利法人の種類について説明します。

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営利法人と非営利法人の違いとは?


営利法人も非営利法人も、いずれも法人です。法人とは、法律の規定に基づき、権利や義務の主体となることができる資格を有した組織のことを意味しています。
下記は法人に関しての法律の規定です。

第三章 法人
(法人の成立等)
第三十三条 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
2 学術、技芸、慈善、祭祀し、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

(出典:e-Gov「民法」, 2019改正)

法人と一口に言っても、営利法人と非営利法人には「利益の配当の可否」に決定的な違いが存在しています。まずは、営利法人と非営利法人の違いについて見ていきましょう。

営利法人とは?

営利法人はビジネスで得た利益を特定の構成員(社員や株主など)に分配することを目的とした法人のことを意味します。

営利法人は別名、営利社団法人と呼ばれ、一般的に会社を指す言葉です。
例えば、営利法人の代表とも言える株式会社は株主の経済的利益を追求し、会社が得た利益を株主に分配することを目的としています。
また、株式会社以外にも合同会社(LCC)、合名会社、合資会社も営利法人に該当します。

(出典:内閣府「法人格の選び方」)

非営利法人とは?

営利法人とは反対に、非営利法人は「定款等で非営利性(構成員への利益分配を目的としていないこと)が徹底されている法人」あるいは「共益的活動を目的としている法人」を指しています。
つまり、非営利法人は利益をあげてはいけないのではなく、「団体で得た利益を構成員に分配することを目的とせず、社会貢献活動のために利用する」ことになります。

例えば、営利法人である株式会社では、利益を株主配当として分配することができます。
しかし、非営利法人では利益が出ても寄付者や法人の会員に分配することはできません。
もちろん、非営利法人とはいえ人を雇用することはできますので、非営利法人の活動収益から経費として職員の給与が支払うことができます。

  • 法人とは、法律の規定に基づき、権利や義務の主体となることができる資格を有した組織のこと
  • 営利法人は「ビジネスで得た利益を特定の構成員(社員や株主など)に分配すること」を目的とした法人のこと
  • 非営利法人は「定款等で非営利性(構成員への利益分配を目的としていないこと)が徹底されている法人」あるいは「共益的活動を目的としている法人」のこと
  • (出典:内閣府「用語について 」
    (出典:内閣府NPOホームページ「NPOのイロハ」)

    非営利法人にはどんな種類がある?


    非営利法人は利益を職員や寄付者に配分するのではなく、社会貢献をはじめとする団体の目的を達成するために活動する法人です。

    非営利法人の種類としては、NPO法人(特定非営利活動法人)、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人、学校法人などが挙げられます。

    NPO法人(特定非営利活動法人)

    NPO法人(特定非営利活動法人)とは、特定非営利活動促進法に基づいて法人格を取得し、法人認証を受けたNPOのことを言います。
    法人格を取得することで、NPO団体が法人の名の下に契約締結や土地の登記を行うなど、様々な権利や義務の主体となることができます。
    法人格を有していないNPOの場合、法人ではないため、契約締結や土地の登記をNPO団体名で行うことはできません。

    また、NPO法人を設立するためには、所轄庁に申請をして「認証」を受ける必要があります。認証制となっているため、条件を満たした書類を提出し、登記することで法人として設立することができます。

    (出典:内閣府NPOホームページ「NPOのイロハ」)

    一般社団法人

    一般社団法人とは、事業内容や財産によって設立されるのではなく、人の集まりによって設立される非営利団体法人です。法人設立後に最初の社員となる者が2名以上いることが、設立要件となっています。

    一般社団法人の事業内容は基本的に自由で、目的や事業の制約はありません。そのため、資格認定機関や業界団体、介護事業などが一般社団法人として利用されています。
    ただし、一般社団法人は人の集まりで設立されている団体のため、社員が0人となると解散することになります。

    (出典:内閣府「法人格の選び方」)
    (出典:e-Gov「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」)
    (出典:法務省「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」)

    一般財団法人

    一般財団法人とは、ある一定基準の財産があれば誰でも設立することができる非営利団体法人です。団体の目的などは問われることはなく、役所による認可も必要がありません。
    また、遺言で一般財団法人を設立する意志を示し、記載するべき内容を遺言で定めていれば、亡くなった人でも一般財団法人を設立することが可能です。
    ただし、設立には資金として300万円以上の財産を持ち合わせておくことが設立の条件であり、設立後は2期連続して純資産額が300万円を下回ると強制的に解散させられてしまう特徴があります。

    (出典:e-Gov「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」)
    (出典:法務省「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」)

    公益社団法人・公益財団法人

    公益社団法人や公益財団法人は、一般社団・財団法人のうち、公益認定を受けた財団法人のことを言います。
    一般社団・財団法人は団体の目的は問われていませんでしたが、公益社団法人や公益財団法人は、公益目的事業を行うことが主たる目的(公益目的事業比率が50%以上)である必要があります。
    民間の有識者からなる第三者委員会によって公益性の審査を受けた後、内閣府または都道府県から公益認定を受けると、税制上の優遇措置を受けることができます。

    社会福祉法人

    社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的とした社会福祉のみを行う非営利団体です。
    社会福祉事業とは、社会福祉法第2条に定められている第1種社会福祉事業(※1)の「特別養護老人ホーム、児童養護施設、障がい者支援施設、救護施設など」や、第2種社会福祉事業(※2)の「保育所、訪問介護、デイサービス、ショートステイなど」が挙げられます。

    社会福祉法人になると、社会福祉事業だけではなく、公益事業として「子育て支援」「入浴、排せつ、食事などの支援」「介護予備事業、有料老人ホーム、老人保健施設の経営」「人材育成事業」などを行うことができます。
    また、貸しビルや貸し駐車場、公共的な施設内の売店経営といった収益事業も行うことができます。

    ※1 第1種社会福祉事業:利用者への影響が大きく、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業
    ※2 第2種社会福祉事業:比較的利用者への影響が小さく、 事業公的規制の必要性が低い事業

    学校法人

    学校法人とは、私立学校(幼稚園から大学院まで)の設置運営を行う法人のことで、私立学校法によって定められています。
    私立学校法は所轄庁の権限を国公立の学校よりも限定していますが、私立学校の自主性が尊重されているのが特徴です。自主性が尊重されることで、私立学校では教育方法や学習内容に自由が生まれ、教育の多様性を実現することができています。

    (出典:文部科学省「学校法人制度の概要」)
    (出典:文部科学省「私立学校法」)
    (出典:e-Gov「私立学校法」)

    医療法人

    医療法人は「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の開設を目的(医療法第39条)」として設立された法人であり、社団・財団どちらの種類でも設立することが可能です。
    ただし、医療は生命・身体の安全に直接関わることから非営利法人と認められており、本来業務を行わずに附帯業務のみを行ったり、附帯業務を委託したりすることは医療法人の運営として不適当とされています。

    「医療法人の附帯業務」

    1. 医療関係者の養成又は再教育
    2. 医学又は歯学に関する研究所の設置
    3. 巡回診療所、医師又は歯科医師が常時勤務していない診療所
    4. 疾病予防施設
    5. 疾病予防温泉施設
    6. 保健衛生に関する業務
  • 非営利法人は、社会貢献をはじめとする団体の目的を達成するために利用する法人
  • 非営利法人の種類は、NPO法人(特定非営利活動法人)、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人、学校法人などが挙げられる
  • (出典:e-Gov「医療法」)
    (出典:厚生労働省「医療法人の業務範囲」)

    営利法人、非営利法人の違いについて理解しよう!

    営利法人と非営利法人の大きな違いは、利益配分の可否にあります。
    非営利法人は利益を配分することだけは禁止されていますが、利益を得ることは問題なく、事業活動で大きな利益をあげることもできます。

    また、非営利法人と一口に言っても、NPO法人や公益社団法人、公益財団法人、学校法人、医療法人、社会福祉法人といった多くの非営利の団体法人が存在しています。
    どの非営利法人も地域に貢献し、社会的な利益を生み出せるよう日々活動しているのです。
    私たちも、非営利法人についての理解を深めることで、自分たちにできることは何かを考えるきっかけとなり、地域の発展・向上に協力していけるのではないでしょうか。

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