寄付金控除という言葉をなんとなく知っていても、具体的に説明できるという人は少ないのではないでしょうか。
近年、日本では甚大な被害を及ぼす災害が多く発生しています。災害によってライフラインなどに壊滅的な被害が出ることも多く、復旧には多くの資金が必要です。被災地の人が1日も早く日常の生活を取り戻すために、大きな力になるのが「寄付金」です。
もちろん寄付の目的は災害だけではありませんが、寄付金によって多くの人を支援できるだけではなく、寄付をした人にも寄付金控除という形で還元される仕組みになっています。
この記事では、寄付金控除とは具体的にどのようなものなのか、寄付金控除の仕組みについて紹介します。
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寄付金控除とは
寄付金控除とは、国、地方公共団体、特定公益増進法人に特定寄付金の支払いを行った際に、所得控除を受けることができます。
所得税や住民税は、課税所得に所得金額に応じた税率をかけて計算されています。課税所得とは、給与所得や事業所得から経費を差し引いた所得のことです。経費として認められる控除には14種類あり、寄付金控除は14種類の控除のうちの一つです。
特定寄付金とは
特定寄付金とは、以下の団体に対して行う寄付のことを言います。
など
ただし、学校の入学の際に行う寄付や、寄付をした相手に特別の利益が及ぶと認められるもの、政治資金規正法に違反するものは特定寄付金として認められていません。
寄付金控除を受ける際に必要な書類
寄付金控除を受けるためには、寄付先から送付される寄付金の受領証(領収書)又は電磁的記録印刷書面(電子証明書に記録された情報の内容と、その内容が記録された二次元コードが付された出力書面)が必要になります。
確定申告の際に添付が必要な場合もあるため、必ず保管しておくようにしましょう。
(出典:国税庁「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」)
(出典:国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」)
寄付金控除の仕組み
国や地方公共団体、特定の法人などに寄付をした場合、確定申告を行うと所得税や住民税の所得控除を受けることができます。
会社に勤務している人の場合、会社が年末調整を行っているため基本的には確定申告を行う必要はありませんが、寄付金控除を受ける場合は確定申告が必要です。
個人で政党、政治資金団体、認定NPO法人、公益社団法人などに寄付を行った場合は、寄付金控除(所得控除)または寄付金特別控除(税額控除)の有利な方を選ぶことができます。
寄付金控除(所得控除)の計算方法
寄付金控除の金額は、以下の計算式で求めることができます。
ただし、特定寄付金額には上限があります。
特定寄付金として所得控除の対象になるのは、所得金額の40%相当額までです。
(出典:国税庁「寄附金を支出したとき」)
住民税に関する寄付金控除
以下に該当する団体に対して寄付を行った場合は、住民税も税額控除の対象になります。
住民税の寄付金控除の基本控除額は、以下の計算式で求めることができます。
ただし、寄付金の上限は所得金額の30%相当額が限度です。
(※)「都道府県・市区町村が条例で指定する寄付金」の場合は、次の率により算出
(都道府県と市区町村のどちらからも指定された寄付金の場合は10%)
(注)平成30年度分以後の個人住民税において、指定都市に住所を有する者は、
(都道府県と市区町村のどちらからも指定された寄付金の場合は10%)
(出典:総務省 自治税務局「ふるさと納税以外の寄附金税制」)
寄付金控除とふるさと納税の違い
寄付金控除とふるさと納税の違いは、所得税控除、住民税の基本控除に加えて、住民税の特別控除が受けられる点にあります。
ふるさと納税による住民税控除額には、「基本控除」と「特別控除」があります。
基本控除額の計算は、前述のとおり「(寄付金(ふるさと納税の額)-2,000円)×10%」の計算式で計算します。
特例控除額の計算は、以下の計算式で求めることができます。
特例控除はふるさと納税にのみ適用され、個人住民税所得割額の2割が限度です。
平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生ずる所得については、所得税率に復興特別所得税が加算された率となります。
0~45%と所得税率に幅があるのは、所得税の限界税率を指しているためです。所得税の限界税率とは、寄付者に適用されている所得税の税率のうち、最も高い税率のことを言います。
(出典:総務省 自治税務局「ふるさと納税以外の寄附金税制」)
寄付金控除の確定申告
寄付金控除を受ける場合は確定申告が必要です。確定申告は郵送や持参して税務署に提出するだけではなく、インターネットでe-Taxを利用して提出することができます。
e-Taxを利用して確定申告を行うと、入力に必要な内容が自動で表示されるため、初めて寄付金控除を利用するという人にとっても分かりやすく、おすすめです。
ここからは、e-Taxを利用して確定申告をする場合の寄付金控除欄の入力例を紹介します。
寄付金控除欄の入力例
e-Taxを利用して寄付金控除を行う場合、寄付金は以下の8種類に分類されています。
寄附金の種類 | |
---|---|
1 | 国に対する寄附金 |
2 | 都道府県、市区町村に対する寄附金(ふるさと納税など) |
3 | 日本赤十字社に対する寄附金 |
4 | 共同募金会に対する寄附金 |
5 | 政党及び政治資金団体に対する寄附金 |
6 | 認定NPO法人等に対する寄附金 |
7 | 公益社団法人及び公益財団法人等に対する寄附金 |
8 | 上記1~7以外の寄附金控除に該当する寄附金 |
次の項目について、その内容を寄附金控除欄へ入力していきます。
寄附金控除欄の入力項目 | |
---|---|
1 | 寄附年月日 |
2 | 寄附金の種類(詳細) |
3 | 支出した寄附金の金額 |
4 | 寄附先の所在地 |
5 | 寄附先の名称 |
複数の寄付金の種類や一つの寄付金の種類に対して複数の寄付を行った場合は、寄付金の種類別にまとめて入力することができます。
ただし、寄付をした団体などから交付された寄付金の受領証等の添付又は提示を省略して申告書を提出する場合は、寄付の全件についてすべて入力することが必要です。
(出典:国税庁「確定申告書等作成コーナーよくある質問」)
ふるさと納税のみを複数の自治体に寄付をした場合の入力例
寄付金の種類がふるさと納税のみで、複数の自治体に寄付をした場合は、寄付金の種類を「都道府県、市区町村に対する寄付金(ふるさと納税など)」として、すべての寄付をまとめて入力します。
寄附金控除欄の入力項目 | 説明 | |
---|---|---|
1 | 寄附年月日 | 別々の日にちで複数のふるさと納税を行った場合は、任意の1件の寄附を行った年月日を入力します。 |
2 | 寄附金の種類(詳細) | 寄附金の種類はドロップダウンリストより「都道府県、市区町村に対する寄附金(ふるさと納税など)」を選びます。 寄附金の種類(詳細)の項目は、必要に応じて自動で表示されますが、寄附金の種類がふるさと納税の場合は、何も表示されません。 |
3 | 支出した寄附金の金額 | 支出した寄附金の金額は、ふるさと納税で支払った合計金額を入力します。 |
4 | 寄附先の所在地 | 寄附先の所在地は、「寄附年月日」で入力した任意の寄附先の住所を入力し、最後に「ほか」と入力します。 「ほか」と入力することで、寄附先が複数であることがわかります。 |
5 | 寄附先の名称 | 寄附先の名称も「寄附先年月日」、「寄附先所在地」で入力した任意の寄附先の名称を入力し、所在地のときと同様に最後に「ほか」と入力します。 |
(出典:国税庁「確定申告書等作成コーナーよくある質問」)
寄付金控除の仕組みを知って多くの人を支援しよう
寄付金控除の仕組みは、それほど難しいものではありません。
寄付金によって多くの人を支援できるだけではなく、寄付をした人にも所得税や住民税の控除によって還元される仕組みになっています。
ただし、寄付金控除を受けるには、必ず確定申告が必要です。控除対象となる寄付をした場合は、忘れずに確定申告をしましょう。
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