様々な場所で支援活動を行うNPO法人の中には、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)という法人があります。
この記事では、認定特定非営利活動法人とは何か、認定特定非営利活動法人の設立方法や運営方法について紹介します。
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認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)とは?
認定特定非営利活動法人とは、NPO法人として法人格を取得してから、2事業年度の実績判定期間(※)において、所轄庁から一定基準を満たしたと認定を受けたNPO法人のことを言います。認定特定非営利活動法人は、認定NPO法人とも呼ばれています。
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)とNPO法人の違い
認定特定非営利活動法人とNPO法人との大きな違いは、認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)にあります。
認定特定非営利活動法人制度とは、NPO法人の活動をより一層支援するために、個人や企業によるNPO法人への寄付を促すことを目的とした、税制上の優遇措置として設けられた制度です。
認定特定非営利活動法人に寄付を行った企業や個人などの寄付者には、税額控除や所得控除といった寄付控除による税制措置を受けることができます。
また、認定特定非営利活動法人は、納める法人税が優遇される「みなし寄附」を行うことができるため、寄付金が集まりやすくなります。
みなし寄付金
認定特定非営利活動法人になると、収益事業から得た利益を、非収益事業で使った際に、この支出した金額分を寄付金とみなす「みなし寄付金」を行うことができます。
つまり、収益事業の利益から自身の活動に寄付を行ったということになり、法人税など負担を減らすことができます。
※実績判定期間:認定を受けていないNPO法人では過去2年、過去に認定を受けたことがあるNPO法人では過去5年の事業期間のこと
(出典:NPOホームページ「NPOのイロハ」)
(出典:東京都生活文化局「認定NPO法人制度について」)
(出典:NPOホームページ「認定NPO法人自身に対する税の優遇措置(みなし寄付金制度)」)
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)の設立までの流れと設立方法
認定を受けようとするNPO法人はまず、所轄庁にて認定申請について事前相談を行い、認定申請書などを所轄庁に提出します。
その際、「提出日を含んだ事業年度の初日がNPO法人設立日から1年以上経過していること」という要件を満たしていることが必要となります。
所轄庁によるNPO法人の実態確認などがされたうえで、一定の基準を満たしていると認められると、認定特定非営利活動法人の認定が受けられます。
認定の申請に必要な書類
認定特定非営利活動法人として認定を受けようとするNPO法人は、以下の3つの書類を用意する必要があります。
- 実績判定期間内の日を含んだ各事業年度の寄附者名簿(寄附金の支払者ごとの氏名や法人の名称、住所と寄附金の額、受け入れた年月日を記載したもの)
- 認定の基準に適合する旨を説明する書類および欠格事由に該当しない旨を説明する書類
- 寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類
上記の書類を添付した認定申請書を所轄庁に提出をし、認定を受けることとなります。
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)になるための要件
認定特定非営利活動法人になるには、一定の基準が設けられており、以下の要件を満たす必要があります。
- パブリック・サポート・テスト(PST)をクリアすること
- 事業活動の共益的活動が50%未満であること
- 運営組織および経理が適切に行われていること
- 事業活動の内容が適切であること
- 事業報告書などの情報公開が適切に行われていること
- 所轄庁へ毎年、事業報告書などを提出されていること
- 法令違反や不正行為、公益に反した事実がないこと
- 設立日以降1年を超える期間が経過していること
ただし、実績判定期間として、認定を受けていないNPO法人では過去2年、過去に認定を受けたことがあるNPO法人では過去5年の事業期間が必要となります。
また、認定特定非営利活動法人の基準を満たしていても、欠格事由に該当しているNPO法人は認定特定非営利活動法人としての認定を受けることはできません。
パブリック・サポート・テスト(PST)とは
認定基準のポイントとなる「パブリック・サポート・テスト(PST)」とは、広く市民からの支援(賛同)を受けているかどうかを判断するための基準として設けられたものです。
パブリック・サポート・テストには以下の3種類が存在しています。
- 相対値基準:実績判定期間内の総収入に対する寄附金の割合が5分の1以上であること
- 絶対値基準:実績判定期間内の各事業年度中の寄附金総額が3,000円以上である寄附者の数が、年平均100人以上であること
- 条例個別指定:事務所のある都道府県または市区町村の条例により、個人住民税の寄附金控除の対象として指定された特定非営利活動法人であること
認定または不認定の決定
認定申請書を提出後は、所轄庁による認定の基準および欠格事由の有無によって、認定または不認定の決定が行われます。
所轄庁による認定が行われたときは、当該認定特定非営利活動法人に関する以下の事項が公示されることとなります。
(出典:NPOホームページ「認定制度について」)
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)の運営方法
認定特定非営利活動法人として活動を行うには、高い公益性が求められるだけではなく、法令などを遵守した適正な運営組織であることが求められます。
寄付金の管理と書類の作成
認定特定非営利活動法人になると、企業や個人からの寄付金を集めやすくなるだけではなく、広範な情報公開が求められています。
なぜなら、税制上の優遇措置がある認定特定非営利活動法人は、市民や寄付者によるチェックが期待されているためです。
認定特定非営利活動法人に認定されると、寄付に関する名簿管理や事務処理が増えてくるため、寄付金の管理や報告書類の作成を継続的に行っていく必要があります。
適切な寄付金の管理と正確な書類の作成を行っていかなければいけません。
(出典:NPOホームページ「事業報告書等」)
(出典:NPOホームページ「情報公開に関する基準(5号基準)」)
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)などの情報公開
認定特定非営利活動法人となると寄付者が増えることによって、活動および運営に注目されやすくなります。
毎年1回、所轄庁に役員報酬規程や事業報告書といった書類を提出する義務が生じます。そして、認定特定非営利活動法人では経理の適切性や事業報告の迅速な報告が求められ、会計・経理はもとより、情報開示も徹底的に実施していく必要があります。
組織としての信頼度を低下させないためにも、事務所で常に閲覧できるようにしておく必要があります。
(出典:NPOホームページ「情報公開に関する基準(5号基準)」)
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)の有効期間の更新
認定NPO法人の有効期間は所轄庁による認定の日から起算して5年と決まっています。そのため、有効期間満了日の6ヶ月前~3ヶ月前までに更新の申請を行わなければいけません。
次の認定有効期間は、前回の認定有効満了日の翌日から5年間となります。
認定基準をクリアした運営
認定特定非営利活動法人は、社会的信頼度が通常のNPO法人よりも高く、認定特定非営利活動法人制度によって寄付金が集まりやすくなります。
寄付金による収益が集まりやすい反面、認定NPO法人として、地域や社会をより良いものにするために活動を継続して行っていく必要があります。
認定特定非営利活動法人を継続して運営をしていくためには、5年ごとの再認定をクリアしなければいけません。再認定には、初めて認定を受ける時と同様に市民から多くの賛同を受けているかどうかなどが判断基準となります。
(出典:NPOホームページ「認定制度について」)
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)について理解しよう
認定特定非営利活動法人は、高い公益性と法令を遵守した適正な組織運営で、地域や社会をより良いものにするために日々活動を行っています。
私たちも、認定特定非営利活動法人の活動についてより理解を深めることで、自分たちの住む地域の利益・発展のために、自分たちが今協力できることは何かを考えてみてはいかがでしょうか。