飢餓は大きな社会問題となっており、世界全体で解決に向けて取り組みが行われています。特に、紛争によって多くの難民が出ている中東の国々は、深刻な飢餓・食糧問題を抱えています。
この記事では、飢餓が深刻化しているシリアやイエメンをはじめとした中東の国々に焦点をあてて、飢餓の現状を紹介します。日本に住む私たちも、遠い国で起きている他人事としてではなく、世界的な問題として理解しましょう。
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中東における飢餓問題とは
中東は情勢が複雑な地域ということもあり、紛争が多い地域として有名です。
そんな中東では多くの人々が紛争により困窮を極めています。さらに、支援物資を送ることも難しい場所に住んでいる人々も多いことから、飢餓や貧困が深刻化しているのが現状です。
中東エリアの国とは
中東とは、インド以西の西アジアとアフリカ北東部の総称で、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などの唯一神信仰の発祥の地です。多くの民族、宗教が混在しているため、争いが幾度となく繰り返されてきました。
そんな中東エリアには、アフガニスタン・アラブ首長国連邦・イエメン・イスラエル・イラク・イラン・オマーン・カタール・クウェート・サウジアラビア・シリア・トルコ・バーレーン・ヨルダン・レバノン・パレスチナの16ヶ国があり、裕福な国と貧困に苦しむ国の差が広がっています。
(出典:外務省「地域別インデックス(中東)」,2020)
イエメンの飢餓問題
イエメンは中東最貧国と言われており、2011年のイエメン危機から、経済状況が悪化の一途を辿っています。内乱およびサウジアラビアなどによる経済制裁によって内戦は激化、食糧と燃料は不足し、子どもの栄養不足率は世界最悪レベルです。
内戦によって田畑を失い、農業に必要な燃料の高騰でイエメン国民は仕事をすることができず、若者を含めた労働者の失業率が増え、イエメンの飢餓・食糧問題は深刻化しています。
とある機関では多くのイエメン国内避難民に対して食糧支援や栄養支援を行っていますが、紛争の激化によって思うように支援を行うことができず、イエメン国内の食料事情は悪化していく一方です。
(出典:外務省「イエメン共和国 基礎データ」,2020)
イラクの飢餓問題
イラクは1980年以降のイラン・イラク戦争、クウェート侵攻、そして湾岸戦争によって国際社会からフセイン政権への経済制裁が行われたことで、社会経済に大きな打撃を受けました。
経済制裁ではイラク政府に圧力をかけることが目的でしたが、実際は子どもや女性といった弱い立場の人を苦しめる事態となり、飢餓・食糧問題を抱えることになったのです。
さらに2014年から3年間、モースル市を始めとするイラク北部・西部の多くの都市が武装勢力により占拠され、米国が主導する「有志連合」の支援を受けたイラク軍が掃討のために激しい紛争が起こりました。紛争によって多くの避難民が出ただけでなく、人々の家や公共施設なども破壊されたのです。
(出典:首相官邸「日本のイラク人道復興支援(日本とイラクとの関係)」)
(出典:外務省「国別援助実績1991年~1998年の実績[6]イラク」)
(出典:外務省「イラク共和国 基礎データ」)
アフガニスタンの飢餓問題
アフガニスタンは断続的に内戦や紛争が起きている国です。
戦闘行為が起こるたびに住居や道路、信号機、バスなどの交通インフラ、電気や上下水道などが破壊されている現状にあります。農作物の生産も思うように行えず、衛生環境も最悪な状態で生活せざるを得ません。
また、アフガニスタンでは内戦や紛争だけではなく、干ばつが起きていることによって食糧問題はさらに深刻化しています。こうした食糧不足や断続的な内戦によって、アフガニスタンの国民たちは国外へと難民として逃れています。
(出典:外務省「アフガニスタン・イスラム共和国 基礎データ」,2018)
シリアの飢餓問題
シリアでは2011年3月のアラブの春以降、シリア政府軍と反政府勢力による武力衝突が本格化したことにより、シリア内戦が起こっています。
シリア内戦の影響で、シリア全土では多くの人が死亡し、難民とならざるを得ませんでした。2020年時点でも、周辺諸国では難民として避難生活を続けている人々がいます。
そして、シリアでは紛争の長期化によって電気、ガス、水道などの多くの社会的インフラが破壊され、シリア国民の生活は安定とは程遠いものとなっています。失業によって多くの人々は収入を得られない状況に置かれています。
そのため、食糧不安を抱え多くの人々が極度の貧困状態で暮らしています。
収入も食糧も得られないシリアの人々は、飢餓・貧困に苦しんでいるのです。
(出典:外務省「シリア・アラブ共和国 基礎データ」)
レバノンの飢餓問題
レバノンはキリスト教やイスラム教など18の宗教・宗派が入り混じった国家のため、幾度となく宗教間の争いが起こってきました。
紛争により首都ベイルートはこれまで何度も破壊されてきたことから、多額の復興費用によってレバノン財政は圧迫されています。
レバノンでは、2019年の大規模反政府デモの影響を受けて経済危機が起きており、国民生活が悪化するようになりました。さらに2020年にはベイルート爆発が起こり、食糧供給ルートの断絶によって、レバノン国民の多くが食糧不足に苦しめられています。
(出典:外務省「レバノン共和国 基礎データ」)
オマーンの飢餓問題
オマーンは中東の中でも裕福な国として知られています。
しかし、オマーンでは紛争や災害の多い周辺諸国から難民を受け入れていることから、栄養不足の人々もいるため、飢餓・食糧問題と無縁な国というわけではありません。
サウジアラビアの飢餓問題
サウジアラビアは石油大国であり、アラブの石油王を多く抱えた裕福な国として知られています。
サウジアラビアは裕福な国ですが、外国人労働者が油田やガス田・精製所にて出稼ぎ労働を行っています。その一方、サウジアラビアの人々の雇用が低迷しており、働く手段のない人々は飢餓・食糧問題に直面をしているのです。
ヨルダンの飢餓問題
ヨルダンは2008年に起こったリーマン・ショック以降、経済が低迷している国の一つですが、2011年に発生したシリア危機に伴って、ヨルダンは65万人以上のシリア難民を受け入れることとなりました。
しかし、ヨルダン国内のシリア難民はヨルダン人口の約7%に相当し、あまりの数の多さによって、シリア難民への対応が難しくなっています。
また、ヨルダン経済・財政状況が悪化していることから、ヨルダンの人々も苦しい生活を送ることになっています。
(出典:外務省「ヨルダン 基礎データ」,2020)
中東における飢餓の原因とは
中東は飢餓・食糧問題が深刻な地域です。そんな中東で飢餓が深刻化している原因には、紛争や災害、慢性的貧困などが挙げられます。
次に、紛争・災害・慢性的貧困が飢餓に与える影響を理解していきましょう。
中東の紛争が飢餓に与える影響
中東の紛争は飢餓に大きな影響を与えます。紛争が一度起こると、大勢の人々が家や農地を失い、難民キャンプなどへ避難をしなければいけません。
また、国内に残っても紛争がある限りは危険と隣り合わせで生きなければならず、農作業を始めとした仕事も思うようにできません。収入を得る手段もなく、食糧確保をすることができなくなり、飢餓・食糧問題へと発展してしまいます。
中東では、シリア内戦やイエメン内戦といった大きな内戦によって、多くの人々が苦しんでいます。シリア内戦およびイエメン内戦では、国内が疲弊し経済が低迷しているだけではなく、食糧や燃料の価格高騰によって人々は思うような食糧を得られることができない状況です。
中東の災害が飢餓に与える影響
農業が主である国々では、洪水や干ばつなどの災害が起きると農作物が被害を受けます。そうなると、人々は家や農地・仕事などの生活基盤を失ってしまうため、収入を得ることが難しくなります。
つまり、災害によって十分な食糧を確保することができず、飢餓が深刻化することになるのです。
中東では、2020年だけでもレバノンで起きたベイルート爆発、世界的に大流行した新型コロナウイルス、集中豪雨によって起きたイエメンの洪水といった3つの災害に見舞われています。
ベイルート爆発では食糧供給ルートの破壊、新型コロナウイルスでは国境封鎖による人的・物的資源の交流中断、イエメンの洪水では劣悪な衛生環境と貧困の悪化によって、多くの人々が飢餓で苦しんでいます。
(出典:外務省「レバノン共和国 基礎データ」,2020)
中東におけるシリア・イエメン難民問題と慢性的貧困
中東にあるシリアとイエメンでは、紛争から逃れる難民が増えたことによって、慢性的貧困化へと発展してしまい、飢餓に苦しんでいる人々が多くなっています。
(出典:外務省「シリア・アラブ共和国 基礎データ」,2020)
難民とは
難民とは、紛争に巻き込まれ、宗教・人種・政治的意見など様々なことが原因で迫害を受けたり、生命の危機に晒されたことで他国に逃れなければならない状況の人々のことす。
難民となった人々の多くは弱い立場にあることから非常に過酷な生活を送っています。
国内避難民とは
国内避難民とは、国内で避難を行っており、国境を越えていないがために国際条約で難民として保護を受けていない人々のことです。
紛争地帯に住む国内避難民は、常に危険に晒されていることから、難民同様の支援を必要としています。
庇護申請者とは
庇護申請者とは、自分たちの故郷から逃れて他国の避難所に行き、その国で庇護申請を行った人々のことす。
庇護をされると難民認定や法的保護、援助物資を受けることができます。
※2020年11月時点
中東で飢餓や貧困に苦しむシリア・イエメン難民
シリア国外では難民として登録されているシリア難民や、国内で避難生活を続けている人々がいます。イエメンでは2015年の内戦勃発以降、避難した人々が支援を待ち続けています。
シリア内戦やイエメン内戦によって、人々は飢餓や貧困によって毎日の食糧や住む場所がなくなっただけではなく、紛争によっていつ命を落とすのか分からない状況に置かれています。
特に難民の中でも子どもたちへの影響は非常に大きく、飢餓や貧困によって適切な栄養を得られないと低身長・低体重などの発育阻害が生じてしまいます。
また、難民の多くは弱い立場に置かれていることから思うような収入が得られず、子どもたちを学校に通わせることもできずに、貧困の連鎖になります。
(出典:外務省「イエメン共和国 基礎データ」,2020)
飢餓に苦しむ中東に食糧を届ける方法はある?
世界には、食糧が不足し飢餓に苦しむ国民がいる国が多く存在しています。
今、私たちにできることは、飢餓に苦しんでいる国々に食糧を届けることではないでしょうか。その方法の一つとして寄付が挙げられます。
寄付は支援を行っている機関のサイトからすぐに行うことが可能です。
機関によって食糧や飲み水の提供、救援物資など様々な支援を行っています。私たちの寄付によって、一人でも多くの命を救うことができるのです。
中東で深刻化する飢餓問題を理解し、できることから支援しよう
中東の飢餓・食糧問題は紛争や災害、慢性的貧困によって深刻化しています。多くの人々が難民として他国に身を寄せ、国内避難民も苦しい生活を強いられたりと、人道的支援を必要としています。
深刻化する中東の飢餓・食糧問題の現状を理解し、自分たちにできることから支援を行うことが求められます。
私たち一人ひとりが支援をすれば、一人でも多くの飢餓で苦しむ人々を救うことができるでしょう。
この機会に自分たちが今、どんな支援を行うことができるのかを考えて行動してみてはいかがでしょうか。
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