人や国の不平等をなくそう

日本国内にある差別とは?SDGsと紐づけて見てみよう

今の世界には多くの「差別」が存在しています。それは性別や年齢などあらゆる面で、何かしらの差別があり、被害にあっている人がいます。

そのような「差別」をなくすために、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では様々な取り組みが行われています。
日本も例外ではなく、いくつもの差別が問題として挙げられています。

この記事では、日本にはどのような差別問題が存在するのか紹介します。

持続可能な開発目標・SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」のターゲットや現状は?

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持続可能な開発目標(SDGs)で取り組む差別問題とは

国連では2015年に持続可能な開発目標(SDGs)を採択しました。SDGsでは世界で起こる様々な問題に対して2030年までに達成すべき目標を立て、ターゲットを定めて問題解決のための取り組みを行っています。

その問題の中には差別を撤廃するものも含まれています。差別は性別や年齢、障害、人種、民族、宗教などあらゆる理由の元に起こり得るものであり、それによって人と人との間に、あるいは国内、あるいは国家間で差別が起きています。

これは人の所得格差や先進国と途上国の経済格差などを起こす要因となっており、持続可能な社会を築く妨げにもなっています。
そういった問題を解決するために、SDGsでは目標10に「人や国の不平等をなくそう」を掲げています。

さらに性別による差別に至っては、世界各地で起こる根深い問題であり、持続可能な社会を推進するために、是正が必要不可欠であることから目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」という目標を掲げ、各々ターゲットを定めて達成に向けた取り組みが世界中で実施されています。

しかし差別は歴史的にも長く、一人ひとりの価値観に基づくものであることから、今も差別が完全にはなくならず、日本でも様々な差別の問題が起こっています。
同化政策によって文化の伝承者の高齢化に伴い、文化や伝承の重要な基盤が失われつつあるだけでなく、民族を理由に就職や結婚などにおける差別や偏見が存在し、被害を受ける人がいます。

  • SDGsは、世界で起こる様々な問題に対する持続可能な開発目標として採択された
  • 国家間での経済格差を防ぐため、目標10では「人や国の不平等をなくそう」が掲げられている
  • 性別による差別に関しては、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられている
  •  
    (出典:国際開発センター「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」,2018 )
    (出典:国際開発センター「目標10 人や国の不平等をなくそう」,2018 )

    日本にはどんな差別がある?

    日本国内に未だにある差別問題は、人権問題に他なりません。それは国際的にも問題になっている性別、いわゆるジェンダーの問題や、子どものいじめ、高齢者の人権、障がい者の人権が挙がります。
    また、HIV感染者などの人権問題や服役していた人の人権問題なども差別につながっています。
    さらに日本固有のものとして同和問題や、アイヌ民族の人権問題、外国人の人権問題も差別として問題になっています。

    女性の人権問題

    日本国憲法に男女の同件や平等、そして普通選挙法において男女共にその選挙権を得てから、70年以上が経ちました。

    国内の最高法規にさえ、平等が謳われているにも関わらず、未だ家庭や職場、地域社会において、男女の役割分担意識などがあり、社会参加や就職、また収入などの機会において、格差が存在しています。

    それに加え、近年は配偶者からの暴力(DV)、セクシャル・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、ストーカー、性犯罪などが、女性に対しての人権問題として訴えられています。

    世界経済フォーラムにおいて、男女格差の指標となるジェンダー・ギャップ指数が発表されますが、2022年のデータでは日本は総合スコアで0.650でした*。

    このジェンダー・ギャップ指数は0に近いほど完全不平等であり、1に近いほど完全平等を意味していますが、1位はアイスランドで0.908、日本は144カ国中116位とかなり下のランクでした*。

    これは社会的な立場での女性の人権が軽視されており、特に経済や政治分野においては女性の参画がまだまだ行われていないことが分かっています。

    男女共にお互いの人権を尊重して責任を分かち合い、性別に関わらず、その個性や能力を十分に発揮できる豊かな社会の実現を目指して、男女共同参画に関する理解を深めること、そしてそれを実践していくことが重要だとされています。

    *出典:内閣府 「共同参画」2022年8月号 世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2022」を公表

    子どもの人権問題

    子どもを取り巻く社会環境は時代と共に変化し、その影響が様々なところに出ています。陰湿ないじめや、親などによる虐待の増加、教員などによる体罰、自殺、不登校の問題、学校での暴力行為、国内外の児童買春や児童ポルノの氾濫など、子どもの人権をめぐる問題は深刻です。

    子どもは国にとっての将来の財産であり、誰もが平等に権利と教育を受けることができるはずですが、教育が行き届かず子どもの頃から偏見や差別により、同学年や他学年の子どもをいじめる姿もあります。

    この考え方、価値観が大人になっても根強く残れば、さらなる差別などにつながってしまうことから、子どもを最大限に尊重し、安心して健やかに成長できる社会を構築していくこと、正しく教育を行っていくことが大人の責任として存在します。

    高齢者の人権問題

    現代は医療の発展や生活環境などの改善から、平均寿命が大幅に伸び、高齢化が急速に進行しています。

    そのため高齢者の中には社会参加への意欲が高い人も多いですが、高齢であることを理由として社会参加ができない人も存在します。これは年齢による差別に他なりません。

    また介護を必要とする高齢者に対して、介護をする側のストレスや疲労から身体的または心理的虐待を加える、家族や親族による無断の財産処分などの問題もあり、高齢者の人権を守ることが現代の日本社会の大きな課題の1つとして挙がっています。

    障がい者の人権問題

    先天的あるいは後天的のいずれであっても障害がある人は望んでそうなったわけではありません。そのため障害がある人も障害がない人も等しく社会の一員であり、互いに尊重して、支え合いながら生活していくことが当然であるというノーマライゼーションの考え方があります。

    しかし現実には障がい者に対する理解と認識不足から、就労における差別や入居拒否、乗車拒否などが発生しています。

    道路や交通機関、建物などの施設や一人ひとりの心から障害物をなくすバリアフリーの考え方から、障がい者を含むすべての人々にとって住みやすい平等な社会づくりが求められています。

    HIV感染者などの人権問題

    HIV感染やハンセン病などの感染症に対する正しい知識や理解が不足していることにより、患者や感染者が差別されることがあります。

    HIVは性的接触に留意すれば日常的に感染する可能性はほとんどなく、ハンセン病も病原菌となるらい菌(※)は弱く、仮に感染してもほとんど発症しない病気であり、有効な治療薬もあります。

    そうであるにもかかわらず、職場や社会での差別や偏見に曝され、病気の苦しみにも耐えなければいけないことで、精神的にも身体的にも苦痛を感じます。こういった無理解、無関心が差別を生んでしまっているのです。

    ※らい菌:ヒトにハンセン病という慢性感染症を起こす細菌

    服役を終えた人などの人権問題

    罪を犯し、服役して、刑を終え出所した人やその家族に対して、根強い偏見が存在しています。

    偏見によって就職に際しての差別や、住居の確保の困難など、様々な差別を受け、社会復帰が難しくなることが多いです。

    また犯罪加害者家族も偏見の目や差別に曝され、元の住居にいられないといった状況も生まれます。これも差別の1つの問題として、周りの理解と協力が必要な問題です。

    さらに犯罪被害者も興味本位や噂、中傷などにより名誉を傷つけられることや、プライバシーを侵害されるなど二次的な被害を受けることもあり、人権を侵害されているという問題が発生しています。

    同和問題

    日本固有の差別・人権問題となっているのが、この同和問題です。
    日本の歴史的発展の上で形作られた身分制度、社会的に形成された人々の意識に起因する差別が重大な社会問題となっています。
    江戸時代に存在した穢多・非人(えた・ひにん)などもその1つです。このような身分制度により、一部の人々が住居や仕事、結婚、交際など、生活のあらゆる面で厳しい差別を受けました。
    同和問題は過去のものではなく、今も根付いている場所があり、大きな差別や人権問題となっています。

    アイヌ民族の人権問題

    北海道に先住民族として住んでいたアイヌ民族は、民族固有のすばらしい文化や伝統があります。

    しかし同化政策によって文化の伝承者の高齢化に伴い、文化や伝承の重要な基盤が失われつつあるだけでなく、民族を理由に就職や結婚などにおける差別や偏見が存在し、被害を受ける人がいます。
    これはアイヌの人々に対する理解が十分でないため起こる問題であり、理解と認識を深め、偏見や差別のない社会の構築が求められています。

    外国人の人権問題

    世界はグローバル化により、様々な国の人々が日本でも生活するようになりました。

    多様な国籍や文化、生活習慣がありますが、そんな外国人であることを理由とした入居拒否や、公衆浴場での入浴拒否、在日朝鮮児童や生徒への嫌がらせ、そして特定の民族や国籍の人々を排斥するヘイトスピーチなどが起こっており、外国人を差別して尊厳を傷つけています。

    言語や宗教、習慣などによる差別はこれを認められず、多様な文化や生活習慣を受け入れ、尊重することが日本を含め、世界で求められています。

  • 国内にも未だに人種差別は存在し、日本固有の差別として同和問題や、アイヌ民族の人権問題、外国人の人権問題が問題になっている
  • 特定の民族や国籍の人々を排斥しようとするヘイトスピーチも起こっている
  • SDGs達成に向けて差別をなくす行動をしよう

    私たちの周りには、様々な差別が存在しています。仮にこれを読んでいる人が差別をしていなかったとしても、他の誰かが何かしらの差別をしているかもしれません。

    SDGsでは世界各国で差別をなくすための目標が掲げられ、取り組みが行われています。
    日本でもまだまだ差別や偏見に対する意識があり、完全にそれらををなくすことは難しい状況です。

    差別や偏見は人の考えや価値観から生まれ、様々な形で現れます。だからこそ難しい問題なのですが、この解決には一人ひとりが差別に対して正しい理解を示し、差別を行われないための行動を取ることが重要です。

    自分が起こせる行動の1つに人権保護活動を行っている団体への寄付があります。

    例えば、公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本では、世界中で人権侵害の実態に関する独自調査、人権教育、キャンペーン、政府などへの提言などに取り組んでいます。
    1ヶ月1000円の寄付で、世界の人権を守る活動をサポートできます。
    >>アムネスティ・インターナショナル日本について詳しくみる

    また、差別につながってしまう言動を知ることも行動の1つです。
    「差別はよくない」と思っていても気づかないうちに差別的発言をしたり行動を取ったりして相手を傷つけることがあります。

    こちらの書籍では「多数派には見えていない差別」を取り上げています。自分の中にあるバイアスを取り除いてみたいという方、ご一読下さい。

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    この記事を書いた人
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