世界では、差別はあらゆるところに潜んでいます。それは性別や年齢、出身国や民族など様々ですが、どの差別もあってはならないことです。
特に人種差別は、歴史の中でもたびたび行われており、その価値観は現在まで受け継がれているものもあります。
国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、目標10「人や国の不平等をなくそう」というものがあり、差別をなくすための取り組みがなされています。
この記事では、SDGs目標を達成するために必要な人種差別と、その撤廃のための取り組みなどを紹介します。
持続可能な開発目標・SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」のターゲットや現状は?
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人や国の不平等をなくすために
世界に住む人々はあらゆる面で平等であるべきですが、実際には一国内あるいは国家間の不平等が存在し、問題となっています。
そのため、国連で採択された目標10では「人や国の不平等をなくそう」という目標を掲げ、差別に関してのターゲットも定めています。
このターゲットでは年齢や性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位やその他の状況に関わらず全ての人が能力強化や社会的、経済的、政治的な包含を促進することを掲げています。
人種差別は、白人による黒人の人種隔離政策や、ユダヤ人の迫害など、長い歴史の中で古くから数多く存在してきました。
現在でもそのような人種差別は続いており、世界では人種差別に関しての条約などを定め、各国で取り組みが行われています。日本でも各種啓発・広報活動などによる人種差別撤廃に向けた施策が講じられています。
(出典:国際開発センター「目標10 人や国の不平等をなくそう」,2018)
世界に存在する人種差別の実態
人種差別は性別や年齢に関わらず起こる問題です。それは国や人々の間で起こる不平等ですが、特に分別がつかない子どもの間で起こりやすい問題でもあります。
差別や偏見は世界の何百万人もの子どもたちにとって日常的に直面する問題です。
例えば民族と種族による差別については、1997年にブルガリアにおいて、基礎教育を修了していない割合が総人口の3%でした。これに対して少数民族のロマ民族は16%を占めていました。
一方でルーマニアでの基礎教育未修了者は総人口の12%で、少数民族は42%にも上りました。
この割合からも分かる通り、少数民族であることにより本来得られる教育を受ける権利を享受できない子どもたちがいます。
子どもは自分とは違うものに対して偏見を持ち、差別やいじめに発展することがあります。
教育において、あるいは家庭で自分と他人との差を認め、受け入ることを教えられなければ、子どもたちは偏見を持ったまま大人になってしまいます。
子どものときに構築された価値観は大人になっても変わらないことがあり、それが国内の、または国家間の差別にもつながります。
差別や偏見の考え方は親から子へ、次の世代へと受け継がれてしまうこともあり、各国で見られます。アメリカやヨーロッパなどの先進国でも、長い歴史の中で多くの差別が問題となりました。
それは日本国内にも存在します。北海道には先住民族としアイヌの人々が暮らしていましたが、江戸時代以降不平等な扱いを受け、本土の人々(アイヌ民族は和人と呼ぶ)から差別を受けていました。
それは現代でも起こっており、あるアイヌの血筋にある人は、小学生の時に和人からアイヌ民族であるということから差別を受け、学校へ行けなくなったという経験をした人がいます。
またある人は、中学で純粋なアイヌの血筋の10人の子どもが見た目や勉強、運動のできなどから差別を受けていたという事実を語る人もいます。
子どもの人種差別はいじめという形で現れる一例です。いじめを受けた人の中には、差別をしない先生や友人、大人によって救われたという人もいますが、すべての人がそういうわけではありません。
同じ国に住む人の間でさえ、このように偏見と差別によって心に傷を負い、一生を過ごす人がいることを忘れてはいけません。
差別や多様性について深掘りしたいなら、こちらの書籍がおすすめです。
日常のなかに潜む差別や、私たち自身の思考のバイアスなどに気付くための1冊となっていますので、関心のある方はぜひご参照ください。
世界で制定された人種差別法
差別は人の間で行われることが多いですが、国ぐるみで国内の差別が行われたことがあります。
それがアパルトヘイト政策です。
このアパルトヘイトとは現地の言葉で「分離・隔離」を意味する言葉です。
1911年に南アフリカで制定された「鉱山・労働法」は、金やダイヤなどの鉱山で働く白人と黒人の職種区分と人数比を全国で統一する法律であり、白人政府が白人労働者の暮らしを保護するために思考した、最初の人種差別法でした。
第一次世界大戦後の不況から白人の貧困層を救済することが目的であり、1949年には白人農民や都市貧困層を支持基盤とする国民党が政権を獲得したことで、より強力なアパルトヘイトが推進されました。
白人専用とそうでない場所が区別され、黒人が白人専用の場所に立ち入れば、容赦なく逮捕されました。
また異人種間での恋愛や結婚も禁止され、政策が徐々にエスカレートしたことから国際社会からは「人類の人類に対する犯罪」と厳しい非難を受けましたが、南アフリカ政府は人種ごとの分離発展のためであることを理由に改善しませんでした。
(出典:公益財団法人日本ユニセフ協会「差別・偏見」)
(出典:北海道大学「アイヌの人への差別の実像」)
(出典:外務省「躍進する南アフリカ~途上国のリーダーとして」)
SDGs目標達成に向けた人種差別をなくすための取り組み
世界には過去に様々な人種差別がありました。先述したアパルトヘイトだけでなく、第二次世界大戦時にあったユダヤ人の迫害から、1959~1960年にあった反ユダヤ主義思想を先導するネオ・ナチズムの活動など、ヨーロッパを中心に続発しました。
このような状況を改善するため、1960年の第15回国連総会で、社会生活における人種的、宗教的および民族的憎悪のあらゆる表現と慣行は、国連憲章および世界人権宣言に違反すると確認しました。
その上で、植民地主義およびこれに関連する分離や差別のすべての慣行を終結させることを内容に盛り込んだ「植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言」が採択されました。
しかし人種や民族の差別は撤廃にいたらなかったため、法的拘束力を持たせ、各国に対して差別を撤廃するための具体的な措置の履行を義務付ける条約の採択を行うことが必要とし、文書の作成が行われました。
それが1965年に全会一致で採択された「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、いわゆる人種差別撤廃条約です。
この条約では人種、皮膚の色、世系または民族的もしくは種族的出身に基づくあらゆる区別や排除、制限または優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的などあらゆる公的生活の分野で平等な立場での人権および基本的自由を認識し、享有し、行使することを妨げまたは害する目的または効果を有するものを人種差別と定義しました。
その上で締約国は、あらゆる人種差別を非難し、撤廃する政策や人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法で遅滞なく実施することを約束しています。
この条約は2019年8月時点で、181カ国が締約し、条約に基づいた人種差別の撤廃を目指した取り組みを行っています。
日本での取り組み
日本でも先に紹介したアイヌ民族の差別を含め、様々な差別が存在しています。
特に近年問題となっているのはヘイトスピーチの存在です。ヘイトスピーチは特定の国の出身者であることやその子孫であることを理由に、日本社会から追放しようと危害を加えるなど、一方的な言動のことを言います。
これも人種だけを理由とした差別に他なりません。これに対してヘイトスピーチ解消法を成立させ、不当な差別的言動を許さないものとして宣言しています。
また法務省は人権擁護機関を通して、ヘイトスピーチがあってはならないものであることを各種啓発・広報活動を行って周知に努めています。
他にも各都道府県や市町村による条例などにより、人種差別やヘイトスピーチを禁止する措置も取られています。
こちらの書籍では入管問題やヘイトデモなど、15人の体験談を取材した様子がまとめられています。
複雑性やアイデンティティと向き合った1冊になっていますので、関心のある方はぜひ手に取ってみてください。
(出典:外務省「人権・人道」)
(出典:外務省「作成及び採択の経緯」)
(出典:外務省「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」)
(出典:法務省「ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動」)
SDGsで重要な人種差別問題の解決に向け、私たちにできることとは
SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」を達成するために、世界では様々な取り組みが行われています。
しかし、未だに世界には人種差別に苦しむ人々がたくさんいます。
人種差別がなく、すべての人が平等に生活できる世界をめざすために、支援活動に取り組む方々・団体がいます。
たとえば、「アムネスティ・インターナショナル日本」は、差別に苦しむ人々の自由と尊厳が平等に守られる世界となるよう活動を続けている団体です。
活動している国・地域は200カ国におよび、アムネスティの運動に参加するサポーターの数は世界中で1,000万人を超えました。具体的な活動内容について、詳しく知りたい方はぜひ下記をチェックしてみてください。
しかしながら、これらの団体が継続して活動するための資金や人材がまだまだ足りていないのが現状です。
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