四方を海に囲まれた日本は、様々な海洋生物や豊かな水産物に恵まれ、食の楽しみも多く享受できる国です。しかし今、生態系に変化が起きています。
海面上昇や海水の酸性化、プラスチックごみ、乱獲などが原因です。環境省が海洋生物レッドリストを作り、魚類、サンゴ類、甲殻類、軟体動物(頭足類)、その他の無脊椎動物のうち、56種が絶滅危惧に指定されました。
海洋生物と生態系を守るために、今、私たちにできることは何か考えてみましょう。
持続可能な開発目標・SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」のターゲットや現状は?
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レッドリストとは
レッドリストとは、絶滅のおそれのある野生生物の種をリストにしたものです。作成は専門家によって、生物学的観点から行われます。野生動物種の絶滅の危険度を、個々に評価基準に当てはめて科学的かつ客観的に評価し、その結果をリストにまとめます。
始めに、海洋生物レッドリストの作成に関しての背景などをお伝えします。
環境庁は1991年から陸上動植物のレッドリストを作成してきましたが、海洋生物については、海岸付近に生息する一部の種を除き、絶滅危険度の評価を行ってきませんでした。
しかし、生物多様性国家戦略2012-2020や、海洋基本計画等が「海洋生物の希少性等の評価」に取り組むことを受け、環境省と水産庁は2012年から海洋生物のレッドリストの検討を共同で開始しました。
結果的には、水産庁が資源評価を実施している種や、小型鯨類など94種の評価を水産庁が行い、環境省はその他の海洋生物の評価を行うことになりました。
レッドリストに載せる海洋生物の対象種
レッドリストに載せる海洋生物の対象種は次の5つに分けられています。
① 魚類
② サンゴ類
③ 甲殻類
④ 軟体動物(頭足類)
⑤ その他無脊椎動物(宝石サンゴ、環形動物、腕足動物等)
環境省の海洋生物レッドリストでは、魚類は約3,900種、サンゴ類は約690種、甲殻類は約3,000種、軟体動物(頭足類)は約230種、そして、約2,300種のその他の無脊椎動物を対象として調査を行った結果、2017年時点で56種が絶滅危惧に指定されました。
- レッドリストとは、絶滅のおそれのある野生生物の種をリストにしたもの
- 環境省と水産庁は、平成24年度から海洋生物のレッドリストの検討を共同で開始した
- 環境省の海洋生物レッドリストでは2017時点で56種が絶滅危惧に指定された
(出典:環境省「環境省版海洋生物のレッドリストの公表について」,2017)
絶滅の危険度ごとにカテゴリー(ランク)分けされている
レッドリストでは、種毎に絶滅のおそれの程度に応じて、以下のようにカテゴリー分け(ランク分け)をして評価されています。
絶滅(EX) | 日本ではすでに絶滅したと考えられる種 |
---|---|
野生絶滅(EW) | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種 |
絶滅危惧I類(CR+EN) | 絶滅の危機に瀕している種 |
絶滅危惧IA類(CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧IB類(EN) | IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
絶滅危惧II類(VU) | 絶滅の危険が増大している種 |
準絶滅危惧 (NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
情報不足(DD) | 絶滅のおそれのある 地域個体群(LP) |
評価するだけの情報が不足している種 | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
赤字部分で示した絶滅危惧IA類(CR)、IB類(EN)、II類(VU)が「絶滅危惧」で、絶滅危惧に判定された種を「絶滅危惧種」と呼びます。
絶滅危惧種は、今後の絶滅の危険度が高い種で、海洋生物レッドリストの評価では、2017年時点で56種が選定されました。
56種の内訳は以下の通りです。
魚類 | 16種 |
---|---|
サンゴ類 | 6種 |
甲殻類 | 30種 |
その他無脊椎動物 | 4種 |
軟体動物(頭足類)では、絶滅危惧種として選定された種はありませんが、3種が準絶滅危惧種とされました。
情報不足(DD)とされた種は224種あり、全体の約50%を占めています。詳しい情報が得られれば絶滅危惧に判定される可能性が高い種もあるので、今後の調査等によって情報の蓄積が急務です。
絶滅(EX)と判定された種はオガサワラサンゴのみです。
- レッドリストはカテゴリ(ランク)分けされおり、絶滅危惧に判定された種を絶滅危惧種と呼ぶ
- 海洋生物の絶滅危惧種56種類において魚類16種、サンゴ類6種、甲殻類30種、その他無脊椎動物の4種がある
- 情報不足(DD)とされた種は224種あり、全体の約50%を占めている
(出典:環境省「環境省版海洋生物のレッドリストの公表について」,2017)
海洋生物を守るために私たちにできること
海洋生物と生態系を守るために、私たちにできることは何か、考えてみましょう。
プラスチックごみを減らす
私たちが日常的に使っているビニール袋の数は、世界中で年間7兆枚とも言われます。プラスチックごみが海に多く流れ、沿岸が惨憺たる状態になっています。その結果、様々な種が悪影響を被っています。
日常生活の中で、使い捨てプラスチックの利用を極力控えなくてはなりません。私たち一人ひとりがエコバッグ持参で買い物をしたり、ペットボトルの飲み物を控えてマイボトルを持参、マイ箸を使う、プラスチック製のスプーンやフォークの使用を控えたりすれば、プラスチックごみを大幅に削減できます。
ASC・海のエコラベルの商品を買う
私たちがいつまでも魚を食べ続けられるように、環境に配慮して獲られた水産物は「サステイナブル・シーフード(持続可能な海鮮)」という認証を受けています。MSCラベルやASCラベルが貼られており、MSCラベルは水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた天然の水産物の証で、ASCラベルは環境と社会への影響を最小限にして育てられた養殖の水産物の証です。サステイナブル・シーフードを買い、正しく食べることは、海を守ることにもつながります。
- 海洋生物への悪影響の1つとして、プラスチックごみが海に多く流れている状態がある
- エコバッグやマイボトル、マイ箸を使い、プラスチックごみを大幅に削減できる
- 環境に配慮して獲られた水産物は「サステイナブル・シーフード(持続可能な海鮮)」という認証を受けており、MSCラベルやASCラベルが貼られている
(出典:水産庁「エコラベルをめぐる状況について」,2018)
一人ひとりが対策を行い海洋生物の多様性を守ろう
環境省の海洋生物レッドリストで絶滅危惧種に指定されたのは56種でしたが、絶滅が心配される種が少なかったためではありません。
海洋生物の生息情報に関するデータが大幅に不足していたことが原因とされています。今後は、特に絶滅危惧種が多く指定された干潟を中心に、生態系を守るための取り組みを進め、絶滅の危険性に関する調査を徹底する必要があります。
同時に、私たち一人ひとりが心がけ、海洋生物の多様性を守っていかなければなりません。
プラスチックごみを減らす努力を各自でしたり、サステイナブル・シーフードと認定された魚や食べ物を購入することによって、多くの海の豊かさを享受することができる日本を守っていきましょう。
(出典:環境省「環境省版海洋生物のレッドリストの公表について」,2017)
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