つくる責任つかう責任

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」のポイントとなる天然資源の現状とは

私たちの生活のあらゆるものに天然資源が使われています。その資源は目に見えるもの、目に見えないものを含め、多種多様な資源による恩恵を受けていますが、その天然資源が私たちの営みによって失われつつあります。

2030年を期限としたSDGs(持続可能な開発目標)に、目標12「つくる責任 つかう責任」というものがあります。また、12.2「天然資源を持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」というターゲットを掲げ、様々な取り組みを行っています。

このまま天然資源を使い続ければ、持続可能な開発ができなくなるほどの被害を受ける可能性もあります。
この記事では、天然資源の現状について紹介します。

持続可能な開発目標・SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットや現状は?

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SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」とは

私たちの生活は多くの「もの」に支えられています。それは日常的に使用するものから、時々しか使わないものまで様々ではありますが、どれも多種多様な原料を用いて作られています。
それらを作り使用するということは、消費されることで破棄されるものも出てきます。
適切に生産され、消費者の元に届き、十分に使用されたのであれば、それは資源を有効に活用できたと見ることもできます。

しかし、生産工程において商品にならないため廃棄物となるものや、消費者が十分に使用しないまま廃棄してしまい、有効に利用できていないことも少なくありません。
特に食品においては食品ロスと呼ばれる廃棄が後を絶たず、多くの資源を活用しないまま浪費していると言えます。

有価物(有償取引される物)の投棄などもそうですが、このような資源の浪費は持続的な開発を阻むことにほかなりません。
このまま大量の資源を浪費し続ければ、いつかは枯渇し、今のようにものを作り、使用することができなくなる可能性があります。

持続可能な生産と消費の形態を作っていることを目指すため、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)では目標12に「つくる責任 つかう責任」を掲げました。
これによれば開発途上国の開発状況や能力を見つつ、持続可能な消費と生産に関する計画を10年の枠組みで実施し、先進国主導で、すべての国が対策を講じることや、2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成することなどがターゲットとして定められています。

この「ものづくり」においてのつくる責任やつかう責任は、産業界のみならず、消費者、政治、メディア、地域の共同体などが一丸とって取り組むべき問題であり、それは先進国だけでなく開発途上国も含め、世界で取り組むべき問題です。

そのため国連ではSDGsの目標として設定し、より少ない資源で、良質かつ多くのものを得られるような生産と消費の形態を作り上げることを目指しています。
そのためにも、現在存在している、そしてこれから生まれる天然資源の持続可能な管理と効率的利用は必要不可欠となっています。

  • 大量の資源を浪費し続ければいつかは枯渇し、今のようにものを作り使用することができなくなる可能性がある
  • SDGsの目標は先進国だけでなく開発途上国も含め、世界で取り組むべき問題
  • SDGs目標12において、より少ない資源で、良質かつ多くのものを得られるような生産と消費の形態を作り上げることを目指している

  • (出典:国際開発センター「目標12 つくる責任つかう責任」,2018)

    天然資源の現状と持続可能な管理・利用の方法とは


    そもそも天然資源とは何なのか、そこから触れていきます。
    天然資源とは自然資源とも呼ばれており、自然の中に存在する物質や物質を生成する素となる環境の働きを言います。
    土地や水、鉱物などを無生物資源、森林や野生鳥獣、魚などを生物資源として分けています。
    また、それらは存在する場所によって地下資源、地上資源、水産資源と分けられ、用途によって食料資源、原料資源などにも分類されます。
    このように分けられる天然資源ですが、水、土地、鉱物、森林のそれぞれの観点で現状について紹介します。

    水資源の現状

    土地(土壌)や水、鉱物資源の現状の中でも特に私たちの生活に直結するのは水資源です。
    現在世界では、7億8,500万人の人々が管理された水を利用できない状況にあります。

    日本は豊富な水源があることから、安全に管理された飲み水を得ることができますが、これは年間の降水量が多いことが根底にあります。
    日本の年間降水量は約6500億㎥であり、そのうちの約35%は蒸発してしまいますが、残りの約4,200億㎥は日本国内で最大限利用することができると推測されています。

    2016年の取水量ベースで見たとき、生活用水として147億㎥、工業用水として約112億㎥、農業用水として約538億㎥使用されており、合計は約797億㎥と試算されています。
    これに加えて、養魚揚水や消・流雪用水、火力発電所などの用水、建築物用などとして約63億㎥の水が使用され、使われていない水が約3,400億㎥以上であり、これらは地下水として貯水されているものや、海域へ流失しています。

    つまり日本は十分に利用できる水資源があることになりますが、一方で年平均気温がこの100年間で約1.19℃の割合で上昇していることや、異常少雨と異常多雨によって河川の流量の変動が起こりやすくなっており、たびたび渇水も発生しています。
    これにより水道水の断水や減圧給水などによる生活への影響や、工業用水不足による工場の操業短縮や停止、農作物の成長不良や枯死などの被害が発生することもあります。
    特に近年は渇水が頻発していることから、各地で安定的な水資源の供給が損なわれている傾向にあり、今後さらに増える可能性も懸念されています。


    (出典:国際連合広報センター「天然資源とエネルギー」)
    (出典:公共公益財団日本ユニセフ協会「安全な水」,2017)
    (出典:国土交通省「日本の水資源の現状と課題」,2019)

    土壌資源の現状

    水資源は特に重要な無生物資源ではありますが、それに次いで重要なのが土壌資源です。土壌がなければ農作物の栽培や畜産は成り立たず、私たちが生活する土台もなくなります。

    日本では、古くから土壌のあり方や土づくりについてルールを定めており、肥料取締法による厳しい規制の下、土壌の保全を行ってきました。

    しかし、近年は水田への堆肥の使用量が減少したことで、水田土壌の可給態窒素(※)が2割ほど不足し、リン酸やカリの過剰な土壌が増加しています。
    この状況を改善するために、2019年に肥料取締法改正が行われ、堆肥と化学肥料の配合を柔軟にできるようにするなどの対策を講じました。
    また微量要素の組み合わせや濃度の規格上の規約の見直しなど、農家が土づくりをしやすくなるような内容が盛り込まれ、土壌資源を持続的に利用するための土づくりの見直しがなされています。

    土づくりについての問題は日本だけでなく世界でも検討が行われています。現在、世界の3分の1が何らかの土壌劣化状態に陥っており、人口増加に伴って今よりも60%アップで食料の増産が求められるため、この状態を改善しなければ増産が間に合わないどころか、土壌の劣化をさらに進める可能性が出てきます。
    そのため国連は2015年を国際土壌年と定め、「健全な土、健全なくらし」をスローガンとして、食糧増産と生態系全般の維持のための土壌保全を行う方針を定めています。

    ※可給態窒素(地力窒素):微生物の働きで植物が吸収・利用できる形に変化できる有機性の窒素

    (出典:国立環境研究所「土壌保全が喫緊の課題に」,2020)

    鉱物資源の現状

    日本にとって国内でほとんど獲得できないものが、鉱物資源です。
    日本はベースメタルもレアメタルも、ほぼすべてを輸入に頼っている状態です。国内でも鉱物資源は採掘できることもありますが、産出量の少なさや環境問題などにより生産コストが高くつくため、利用されていません。

    ベースメタルもレアメタルも海外からの輸入がほぼ100%となっていますが、鉱物によっては偏在しており、中南米やアフリカなど紛争などの政治リスクがある国から産出されている鉱物も多々あります。
    そのため世界情勢と鉱物資源によっては安定的な供給を確保できない可能性もありますが、現在は対策として、レアメタルの再利用や備蓄などが行われています。
    また、2017年には海底から鉱石を揚げる「海底熱水鉱床プロジェクト」を世界で初めて成功させたことで、今後国内での鉱物資源供給も期待されています。

    下記はベースメタルとレアメタルに分類されるものです。

    ベースメタル 銅、鉛、亜鉛、鉄、スズ、ボーキサイト(アルミニウム)
    レアメタル チリウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、モリブデン、アンチモン、タングステン、タンタル、レアアースなど


    (出典:経済産業省「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」,2018)

    森林資源の現状

    日本は世界有数の森林国であり、森林面積は国土面積の3分の2に当たります。ただ森林資源は紙や建築材料など幅広く使用されるため、伐採がなされ、一時期その割合を減らしていました。
    森林資源を消費するだけでは、いずれ枯渇してしまうという問題が浮き彫りとなったことで、天然の森林の保全と人工林の拡大が行われてきました。
    その結果、現在は2,500万haの森林面積があり、そのうちの約1,000万haは人工林となっています。

    1966年からの推移では、2017年までの50年間で約6倍にまで人工林が増え、毎年約7,000万㎡の増加が見られます。これにより森林資源は人工林を中心に、約52億㎡の蓄積がなされています。
    ただ人工林の半数が一般的な主伐期(※)である50年生を越えているため、これらを資源として有効活用するとともに、循環利用に向けて計画的に再造成することが求められています。

    このような森林資源の蓄積は早くからその有限性を認識していたからにほかならず、政府や関係機関、企業、林業に携わる人々の取り組みにより現状があります。
    そのため好循環の状況を崩すような消費は今後も行われないように、森林資源を元にした商品の大量消費などは控えることが望ましいとされています。

    ※主伐期:木を伐採し、木材として利用する時期

  • 天然資源とは自然資源とも呼ばれており、自然の中に存在する物質や物質を生成する素となる環境の働きのこと
  • 日本は年間の降水量が多いため豊富な水源があり、安全に管理された飲み水を得ることができる
  • 水資源はある一方で、年平均気温は上がっており、異常少雨と異常多雨によって河川の流量の変動が起こりやすくなっている
  • 日本の森林面積は国土面積の3分の2に当たり、その半分は人工林

  • (出典:林野庁「森林の現状と課題」,2020改定)

    SDGs目標達成に向けて天然資源を大切に使おう

    天然資源は私たちの生活を支えると共に、私たちの周りに存在するものばかりです。
    手元に届くときには加工されているものも多いですが、どれもがこの自然の中で育ち、日常生活の中で使用されます。
    しかしその資源ができあがるまでには多くの時間を使うため、生産が追いつかないほど大量に消費すれば、いずれは枯渇します。

    水資源や土壌資源、森林資源は生態系にも直結するため、私たち人間だけでなく、そこに住むすべての生き物に影響を与えます。
    それは食料となる野生鳥獣や魚などの食料資源にも悪影響を与え、私たちはどちらも得られなくなる可能性が出てきます。

    そうならないためには、有限である天然資源を利用していることを自覚し、無駄遣いや廃棄をできるだけ抑え、リユースやリサイクルなどを行い、効率的に資源を利用できるよう心掛けることが必要となります。

    SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」では、世界各国や政府などが天然資源を守る取り組みを行っていますが、一人ひとりが行動することでも、より良い環境を作ることが可能になるでしょう。
    まずは小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。

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