高齢者

高齢者世代の貧困の現状は?男女で見られる格差とは

近年、単身の高齢者が貧困に陥り生活保護を申請する人が増えています。

内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の生活保護受給者の数は、2000年から2016年の間に2.5倍に急増しています。

また、女性は男性よりも寿命が長い傾向にあるため、夫と死別して一人暮らしになることが多く、単身世帯は「女性」「75 歳以上」「死別者」の比率が高いという特徴があります。

単身世帯は同居人がいないため、世帯内の支え合いが薄く、子どもがいなかったり、いたとしても子ども世帯からの扶助を期待しにくいのが現状です。

この記事では高齢者世代の貧困の現状をお伝えし、男女で見られる格差、その背景、対応策にも言及します。

(出典:内閣府公式サイト)
(出典:内閣府「平成29年度版高齢社会白書」)

高齢者の貧困の現状は?男女の違いや格差の原因について解説

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日本の高齢者の貧困とは


65歳以上の高齢者のいる世帯数は2015年には全世帯の47.1%を占め、そのうちの4分の1ほどは一人暮らしです。
特に、75 歳以上になると単身の人が43.2%、そのうち死別により一人になった人は6割以上となり、女性だけを見ると7割近くに上ります。

一人暮らしをしている高齢者の経済状態を見てみると、約8割が年金を主な収入として暮らしており、全体の7割以上の人は収入のある仕事をしていません。

そして、65歳以上の高齢者のいる世帯の一か月あたりの収入をみると、以下のようになっています。

  • 10万円未満:37.8%
  • 10万~20万円:44.8%
  • 20万円以上:17.5%

すなわち一人暮らしの高齢者3人に1人以上が貯蓄がなくひっ迫した状態で暮らしているのです。
単身世帯は住居費や光熱費、食費など1人当たりの生活コストがあがり、貧困に陥るリスクも高いといえます。

2017年の1世帯当たり貯蓄現在高を見てみましょう。

(出典:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2018年平均結果」)

平均値は1812万円で、60代が2382万円、70歳以上が2385万円となっています。
4000万円を超える貯金を持っている高齢者もかなりいます。

貯蓄する理由は「万一に備えて」が一番多く、配偶者の介護やケア、医療費など必要な出費が家計をひっ迫するために、貯蓄を切り崩しています。

貯蓄なしという高齢者がいる一方で、格差が進んでいることがわかります。

(出典:内閣府高齢者の経済・生活環境に関する調査」,2016)

高齢者の貧困でも男女差が明確に


貧困の状況には男女で違いが見られます。

高齢になると女性の貧困率は5人に一人ですが、男性の貧困率は6人に一人の割合です。
特に高齢単身女性、なかでも離別した経験を持つ高齢女性の貧困率が高い状況がみられます。次の章で詳しく、その背景と要因を考えます。

(出典:内閣府「平成29年度版高齢社会白書」)
(出典:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」)

高齢単身女性の貧困率が高い背景とは

高齢女性の相対的貧困率(等価可処分所得の貧困線に満たない世帯員の割合)を状況別に見てみましょう。

離別者 42.3%
未婚者 35.2%
死別者 29.9%
有配偶者 14.0%

(出典:総務省「平成27年国勢調査」)

離別女性は夫の収入や遺族年金に頼ることもできず、3人に1人が年収120万円未満です。
近年、シングルマザーや女性の貧困が問題視されていますが、今や高齢者の貧困や経済格差の問題も多く取り上げられ、特に1人暮らしの女性の貧困率が問題視されています。

その背景と大きな要因の一部は以下の通りです

基礎年金のみ受給している単身女性の現状

高齢単身女性は厚生年金や共済年金を受給できず、収入に占める公的年金の比率が高い人が多いです。そして、満額でも月6.5万円の基礎年金だけの受給になります(2019年9月時点)。

たとえば、自営業を夫と営んでいたり、農業や漁業など一次産業に従事してきた妻が高齢期に夫と死別して一人暮らしになった場合、基礎年金のみの受給となります。

また現役時代にパートタイム労働に従事していた未婚者が高齢期になれば、公的年金としては基礎年金のみを受給します。

さらに、無職の人の年金はもらっても生活保護水準以下で、結果、女性単身高齢者の貧困率は5割を超えています。働いた経験があっても生活保護水準以下となっているのです。

厚生年金や共済年金を受給している単身女性の現状

厚生年金や共済年金を受給している単身女性であっても、現役時代の賃金が低かったり、就労期間が短かったりすると、受給額が低く厚生年金・共済年金を受給する単身女性の45.0%が世帯年収150万円未満となっている現状があります。

単身女性が無年金者である比率

年金を掛けてこなかった無年金者の割合は、夫婦世帯2.9%、単身男性9.7%、単身女性4.7%となっていて、単身女性は、夫婦世帯よりも無年金者の比率が高いものの、単身男性よりは低い水準にあります。

高齢夫婦の現状

以上、高齢単身女性の現状を見てきましたが、高齢夫婦の現状はどうでしょうか?
夫がいれば、夫の受給する公的年金と妻の公的年金を合算することができます。有配偶者は貧困率が3.1%となっていて比率が低いことがわかります。

(出典:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」)

高齢単身女性の貧困において求められる対応とは


高齢単身女性の貧困対策には社会制度と家族のサポートなどが必要です。

まず、高齢期の貧困を予防する対策として、短時間労働者への厚生年金の適用拡大が求められます。

現役期に短時間労働に従事する人の比率が高い未婚者が高齢になった場合、基礎年金だけを受給することになり、貧困に陥る危険が高くなります。
なお、厚生年金の適用拡大は2016年に実施されましたが、様々な要件がつけられたために対象者が限定されています。貧困予防のためには厚生年金の一層の適用拡大が望まれます。

第二に、働き続けられる環境の整備が必要です。
子育て期であっても、仕事と子育てを両立できるように、就業形態の多様化や、男女間の賃金格差の是正も必要です。

また、現在の公的年金制度には、マクロ経済スライド(年金の被保険者の減少や社会の経済状況・平均寿命の延びなどを考慮して年金の給付金額をカットする制度)が導入されていますが、就労する期間を長くして繰下げ受給を活用できれば、年金の減少分を補える可能性があります。

第三に、高齢者向けの生活保護制度の創設も一案です。
就労意欲がもてなかったり、働くことが困難な高齢者には、セーフティーネットの強化が重要で、一般向けの生活保護制度に比べて資力調査が緩和されたり、給付水準が高めに設定されたり工夫が必要です。
こうした制度は、イギリス・アメリカ・ドイツ・フランスなどの主要先進国でも設置されています。

(出典:公益財団法人日本学術協力財団 学術の動向「高齢単身女性と貧困」,2018)

まずは高齢者の貧困の現状について知ろう


所得の平均値でみる限り、高齢者の経済力は現役世代と遜色のない水準にありますが、個々の高齢者世帯の稼得所得のばらつきが大きく、大きな格差が存在しています。

また、高齢者の「親子同居」に影響を与えている要因について分析すると、高齢者は経済的に困らないようにするために「親子同居」を行う傾向があると厚生労働省では見ています。

真に高齢者が幸せな老後を送れるよう、家族のサポートが必要とされています。

(出典:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」)

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