奨学金制度は、大学などへ進学する人たちが必要とする支援です。
実際に家計だけで学費をすべて賄うのは難しく、奨学金による手助けがなくては成り立たない家庭も多いでしょう。
しかしこの奨学金制度がどのような内容なのか、条件や採用までの流れはどうなっているのか、理解していなければ利用しにくい制度でもあります。
この記事では奨学金制度について、その内容などを紹介します。
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奨学金制度とは
日本の大学は高い学費を必要とします。
文部科学省の資料によると、国立大学は入学料は28万2,000円、授業料は毎年53万5,800円となっています。
これが私立大学となると、入学料こそ25万2,030円と国立大学より低いですが、授業料は年間90万93円と非常に高いです。
また文部科学省が2018年に行った学校基本調査では、国立大学への入学者数は9万9,371人であるのに対して、私立大学への入学者は約5倍にもなる49万6,377人となっています。
2018年だけみても、これだけの人が高額な授業料を支払わなければいけない状況にあるのです。
そのような高額な授業料による家計への負担を軽減するために奨学金制度があります。
奨学金制度は給付型や貸与型が用意されており、その人の経済状況や学習意欲などを条件に審査を行っています。
貸与型は、第一種は無利子、第二種は利子付きで奨学生に貸与され、大学などを卒業後一定期間が経つと月々の返還が始まります。
これが負担となってしまい、返還が滞る人がいる状況にあるのです。
2017年における新規返還者の初年度末の回収率は第一種奨学金(無利子)で98.3%、第二種奨学金(有利子)で96.9%でした。
つまり多くの新卒生が奨学金を返還する中で、無利子である第一種でも1.7%、利子付きの第二種では3.1%の人がすでに返還できずにいる状況です。
さらに同年の総回収率は87.7%であり、12%程度の人は返還が滞ってしまっています。
返還できない事情のアンケートによると、64.5%が低収入を理由としており、失業中あるいは無職であることが理由の人は27.4%もいます。
さらに延滞することで、延滞額も負担を増していると答えた人もいました。
奨学金制度は、大学などへ進学する人々にとってはなくてはならない制度ですが、一方では、延滞する人を多く生んでしまう日本社会の問題の一つにもなっています。
※2020年11月時点
(出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」,2017)
(出典:文部科学省「私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」,2017)
(出典:文部科学省「学校基本調査-平成30年度結果の概要-」,2018)
(出典:日本学生支援機構「返還金の回収状況及び平成29年度業務実績の評価について」,2019)
奨学金制度の種類とは
奨学金はいくつかの種類に分けられています。
大きく分ければ給付型と貸与型に分類されますが、貸与型には第一種と第二種があり、さらに入学特別増額というものも存在します。
それぞれの奨学金について、どのような制度なのか見てみましょう。
給付型奨学金
給付型奨学金は、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生が対象となる奨学金です。
給付型のため、大学の卒業後に返還する必要はない奨学金が支給されます。
また、それだけでなく申請を行うことで入学料や授業料が免除・減額することもできる奨学金です。授業料だけでも最大70万円を年間で免除・減額してもらえるため、家計への負担を減らすことができる奨学金です。
給付型は申請を行うためには条件がいくつか挙げられています。
世帯収入や資産の要件を満たしていること、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯であることが必要です。
また学ぶ意欲がある学生であること、高校在学中あるいは大学の学業成績や学習計画書などにより確認が行われます。
さらに大学のどの学部や学科に属するかによっても支給できるかが決まります。
国や地方公共団体から確認を受けた大学や短期大学、高等専門学校、専門学校に在籍していることが申し込みの条件に含まれるのです。
また準ずる世帯については、住民税非課税世帯でなくても、その3分の2や3分の1の支援を受けることもできます。
政府が運営する給付型奨学金制度は、ほかの団体の奨学金との併用はできませんが、ほかの団体同士の併用や併願は可能なところもあります。
(出典:文部科学省「お金の心配なく学び続けたい 学生のみなさんへ」,2020)
貸与型奨学金(第一種)
給付型奨学金と異なり、支援機構からお金を借りる形で支援を受ける奨学金です。
そのため貸与終了後、一定期間が経つと毎月一定額の返還を長期間に渡り行う必要があります。
対象となるのは国内の大学や短期大学、高等専門学校、専修学校、大学院に在学する学生や生徒です。ただし学業成績に優れており、経済的理由により著しく修学困難な人が選考されます。
そのため貸与型奨学金でもこの第一種では無利子での貸与を行ってもらえるのです。
(出典:日本学生支援機構「第一種(無利子)」)
貸与型奨学金(第二種)
貸与型奨学金の第二種は利子が付くタイプの制度です。
対象は第一種と同じですが、選考基準が第一種より緩やかであり、採用された人には年3%を上限とする利子をつけて貸与されます。
貸与額は大学院では5種類、それ以外では11種類の貸与月額から自由に選択できる点も、第一種とは異なります。
(出典:日本学生支援機構「第二種(利子が付くタイプ)」)
入学特別増額
第一種および第二種の貸与型奨学金に加えて、入学した月の分の奨学金の月額に、一時金として増額して大要する利子付きの奨学金がこの制度です。
対象は「国の教育ローン」に申し込んだが利用できなかった世帯の学生や生徒とし、5種類の額から自由に選択できます。
ただし入学時特別増額だけの貸与はできず、入学前の貸与ではないことには注意が必要です。
※2020年11月時点
(出典:日本学生支援機構「奨学金の種類」)
(出典:日本学生支援機構「入学時特別増額」)
奨学金制度の申し込み方法は?
奨学金の申し込み方法は、在学中に申し込む「在学採用」は一般的ですが、これから入学する見込みがある人に対して、大学などへの進学前に行える「予約採用」というものもあります。
基本的には、給付型と貸与型も申し込み方法の流れは変わりません。
奨学金制度の申し込みと採用までの流れ
奨学金制度には「予約採用」と「在学採用」の2種類があります。
以下では「予約採用」と「在学採用」の申し込み方法から採用の流れを紹介します。
予約採用
予約採用は、大学に入学する前に行う申し込み方法です。
そのため在学中の高等学校など、あるいは高等学校卒業程度認定試験の合格者は奨学金を運営する機構や団体から必要書類を受け取ります。
提出する必要書類は、給付奨学金確認書か貸与奨学金確認書のいずれかになります。
申し込みの手引きなどをもとに、提出書類の必要事項を記入してください。
基本的には保護者または養育者と本人の署名と捺印が必要になります。
捺印はたとえ家族であっても同じものを使用できないので、別々の印鑑を用意するようにしましょう。
また、マイナンバー提出書という書類も準備する必要があります。
これらの書類を提出する前にインターネットでの奨学金申し込みも必要になります。
サイトにアクセスし、必要事項を入力して申し込みを行ってください。必要となるIDやパスワードは高等学校などから教えてもらえます。
申し込み後、受付番号が表示されていれば正常に申し込みができています。
この受付番号をマイナンバー提出書に書き写し、必要事項を記入してください。
奨学金確認書など必要書類は記入し、漏れや誤りなどないか確認して、学校が定めた期日までに提出します。
ただしマイナンバー提出書だけは、運営する支援機構に簡易書留で提出します。
それぞれの提出が終われば、申し込み完了です。
(出典:日本学生支援機構「予約採用の申込み」)
在学採用
続いて在学採用の場合は、在学している大学などから必要書類を受け取ります。
確認書兼個人信用情報の取扱に関する同意書の必要事項を記入して書類を作成します。
また貸与月額や振込み口座、利率の算定方法などを決定し、収入に関する証明書類などの取得を行います。
この申し込み書類を在学中の大学などに提出すると、在学校からインターネット申し込み用のIDとパスワードを教えてもらえます。
それを使ってインターネットでの申し込みを行い、受付番号をマイナンバー提出書に記入し、残りの必要事項を記入して、簡易書留で支援機構へ提出します。
大まかな流れは予約採用と変わりませんが、必要書類が異なりますので、申し込みの手引きをしっかり確認して記入するようにしてください。
それぞれ申し込みが済み、特に書類の不備などがなければ審査に入ります。
無事審査が通れば採用となり、予約採用の場合は高等学校から、在学採用の場合は所属する学校から「採用候補者決定通知」が公布され、進学届を提出することで正式に採用が決定します。
その後、誓約書の記入を行い提出する手続きはありますが、順調に進めば奨学金の振込が始まります。
※2020年11月時点
(出典:日本学生支援機構「申込方法」)
(出典:日本学生支援機構「緊急採用・応急採用」)
(出典:日本学生支援機構「奨学生を希望する皆さんへ」)
(出典:日本学生支援機構「給付奨学金案内」,2020)
(出典:日本学生支援機構「貸与奨学金案内」,2020)
(出典:日本学生支援機構「奨学生を希望する皆さんへ」,2020)
貸与型奨学金制度の返還と利率について
貸与型奨学金は、大学などを卒業した後に返還が必要です。
第一種奨学金であれば、借りた総額を月々などで分割して返還すれば良いのですが、第二種奨学金は利率による利子が発生し、その分を上乗せして返還しなければいけません。
では返還開始や返還期間、利率などはどのようになっているのか見てみましょう。
貸与奨学金制度の返還開始月と割賦方法について
奨学金の返還は、大学を卒業したら直ちに開始されるわけではありません。
返還方法に月賦返還が含まれる場合は、返還開始月は貸与期間終了の翌月から数えて7ヶ月目の27日から始まります。
つまり2022年3月に貸与が修了した場合、4月から数えて7ヶ月目なので2020年10月27日から毎月定額での返還となります。
返済期間は、貸与金額がいくらかによって変わります。
例えば毎月3万円の奨学金を4年間(48ヶ月)貸与し続けた場合は、総額144万円になります。
貸与額にはそれぞれ割賦金の基礎額が設定されており、144万円であれば基礎額が11万円/年です。この割賦金の基礎額で貸与総額を割ることで返還年数が決定されます。
小数点以下は切捨てで、13年間での返還になります。
また返還回数は、月賦返還であればこの年数を12倍するので、156回で返還していきます。
なお繰り上げ返済は、奨学金の貸与終了後であれば可能です。
一部繰り上げ返還を行った場合は、繰り上げた分の返還期間が短縮され、翌月からの返還は通常通り行われます。
無利子である第一種奨学金であれば返還期間の短縮だけですが、利子が発生する第二種奨学金であれば、繰り上げに相当する分については利息が付かないというメリットがあります。
一括返済というシステム自体は存在しませんが、繰り上げ返還を最終回まで一気に行うことは可能です。
貸与奨学金制度の利率について
第二種奨学金の利率は、そのときの市場金利によって決定されます。
また貸与型奨学金を申し込んだときに、利率固定方式と利率見直し方式のどちらかを選択しますが、これによっても利率が変わります。
例えば2020年3月(令和元年度3月卒業)に貸与が終了した場合、公開されている利率は、利率固定方式が0.070%、利率見直し方式が0.002%です。
貸与された基本月額が7万円であったのならば、4年間(48ヶ月)貸与を受けたとして、これを返済期間20年間(240回)で返還するとしたら、月々の返還金額は1万4,000円に利息を加えた金額となります。
1万4,000円の0.07%は98円なので、月々は1万4,098円となり、利息総額は2万3,520円、総返還額は338万3,520円となり、20年間でこれだけの金額を月々分割で返済します。
増額貸与利率
奨学金は基本月額のほかに増額月額というものがあります。
増額月額は私立大学の医学部や歯学部、薬学部、獣医学部を履修する課程に在学する人や法化大学院に在学する人に貸与されるものです。
基本月額に加えて増額月額の貸与を受ける場合は、返還時に逸れに応じた返還利率で、増額貸与分を返さなければいけません。
増額月額に関しても選択した利率固定方式か利率見直し方式かで利率が変わりますが、設定された基本月額の利率に0.2%を上乗せした利率を月額貸与利率として計算します。
※2020年11月時点
(出典:日本学生支援機構「割賦方法と返還開始月」,2017)
(出典:日本学生支援機構「返還期間(回数)」)
(出典:日本学生支援機構「返還に関する各種制度」)
(出典:日本学生支援機構「利率の算定方法選択制」,2020)
(出典:日本学生支援機構「平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率」,2020)
奨学金制度の返還が難しいときの対処
貸与奨学金の返還は、負担となってしまい、返還が滞る人が出ていることが問題となっています。卒業後に就職できなかった、就職はできたが収入が低いなど、返せない何らかの状況があるのも確かです。
そのような場合には、対処方法が存在します。延滞してしまう前にその対処方法を実施することが、後々の負担を減らすことにもつながります。
奨学金の減額返還の制度
災害や傷病、経済困難、失業などで約束通り返せない、返すのは困難であるが、減額によって返還することなら継続してできる場合、「減額返還」の願い出を行うことができます。
当初の割賦金を減額すれば返還できることを判断された場合、一定期間返還月額を減額して、減額変換適用期間に応じた分の返還期間を延長します。
この制度では毎月の返還額を減額するため、無理のない返還の継続を行うことが可能です。
ただし願い出にはその事由に応じた証明書を提出し、その願い出と証明書が一定の要件に合致する必要があるため、審査があります。
1回の願い出につき、適用期間は12ヶ月で、最長15年(180ヶ月)まで延長ができます。
減額返還の申請は余裕を持って行わなければならず、開始を希望する2ヶ月前までしか受け付けてもらえません。
(出典:日本学生支援機構「減額返還」, 2020)
奨学金の返還期限猶予の制度
減額返還の願い出と同様に、災害や傷病、経済困難、失業などの返済困難な事情が生じた場合に申請できる制度です。
この制度では「一般猶予」と「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」があります。
一般的に一定期間の返還を待ってもらう場合に願い出る制度が一般猶予です。減額返還に応じてもらえなかった場合もこの願い出を行うことになります。
適用期間は通算10年(120ヶ月)が限度ですが、災害や傷病、生活保護受給中、産前休業・産後休業および育児休業、一部の大学校在学、海外派遣を事由とする場合は10年の制限はありません。
ただし災害原因が同一の場合は、災害発生から原則5年が限度となります。
(出典:日本学生支援機構「返還期限猶予」, 2020)
奨学金の返還免除制度
返還免除制度とは、本人が死亡し返せなくなった場合、精神もしくは身体の障害により労働能力を喪失してしまった、または労動能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったときに願い出る制度です。
願い出を行うことで、返還未済額の全部または一部の返還が免除されます。
※2020年11月時点
(出典:日本学生支援機構「返還が難しいとき」,2020)
(出典:日本学生支援機構「返還免除」, 2020)
奨学金とは進学を希望している人々のための制度
奨学金は高額な大学などへの進学費用を補助する上で必要なものであるのは確かです。
しかしそれ以前の問題として、日本の大学などの学費が高額であることや、家計への負担が大きいことが挙げられます。
その負担を少しでも減らし、大学などへの進学を希望している人々を支援していくために奨学金はあります。
奨学金にも種類があるため、利用する場合には事前に制度内容を理解した上で、自分に合ったものを選択していきましょう。
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