日本の子どもたちは、貧困に苦しんでいる現状があります。
日本の子どもにおける貧困の特徴は、「相対的貧困」と言われるもので国内の所得格差から表わされるものです。
つまり、平均的な世帯に比べて所得が特別少ない世帯=相対的貧困に陥っている世帯ということになります。
一方、飢餓に苦しむ家庭のように、生活水準を維持するための最低限の食料や必需品を購入できないような貧困は「絶対的貧困」と言われます。相対的貧困は絶対的貧困に比べて、目には見えにくいため、日本の貧困問題は解決が難しいと言われています。
厚生労働省が行った調査によると、2016年の子ども(17歳以下)の貧困率は13.9%となっています。およそ100世帯中に14世帯の子どもが貧困状態にあるという結果です。
そして貧困は世代間で連鎖すると言われます。
見えにくい相対的貧困を解決するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
(出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」)
子どもの貧困問題とは?国内・海外で貧困に苦しむ子どもが増えている現状や支援方法とは
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子どもの貧困の原因は?
そもそも子どもの貧困はなぜ起こるのでしょうか。
原因は1つではなく、それぞれの原因が互いに密接に連関しています。
以下、その主な原因について3つの視点からご紹介します。
世帯間の所得差
日本は世帯間で所得に大きな差があります。
2016年の世帯当たりの平均所得額は545万4,000円ですが、全体のうち61.5%が平均所得金額以下の世帯に該当します。
平均所得に満たない世帯が6割以上であることから、日本の所得間格差が大きいことがわかります。
(出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」)
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ひとり親世帯の増加
「大人が一人の世帯(ひとり親世帯)」の貧困率は、「大人が二人以上いる世帯」に比べて深刻です。先に紹介した厚労省の調査によると、子どもがいる現役世代のうち一人の世帯の貧困率は50.8%、二人以上の世帯は10.7%となっています。およそ5倍近くの差です。
近年の離婚率上昇によるひとり親世帯の増加は、子どもの貧困の要因になっていることもわかります。
核家族とは、夫婦とその未婚の子ども、夫婦のみ、または親のどちらかと子どものみのいずれかからなる家庭です。
祖母・祖父らと暮らす二世帯家族(拡大家族)と対になる言葉であり、核家族化の進行によって、経済的、精神的、時間的なゆとりが減っているという見方もあります。
特にひとり親家庭は、その影響を強く受けていると考えられます。
子育てに時間を取られて非正規雇用で働かざるを得ない人が多いためです。
子どもの貧困は親やその親だけが原因となるものではありません。
広く捉えると、国や自治体にも原因となる要素があります。
国や自治体の貧困対策の遅れ
教育は子どもを貧困から救うために、非常に重要な役割を持っています。なぜなら、教育によって就業の機会や生きる力を確保できることにつながるからです。
2014年から施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」では、次のような目的が定められています。
この法律は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。
(引用:衆議院「子どもの貧困対策の推進に関する法律」)
「国・自治体には子どもの貧困を解決する責任がある」ということが明記されています。さらに第二条には、「生まれ育った環境によって左右されることのないよう、生活の支援、就労の支援を推進する」ことについて書かれています。
- 日本は世帯間で所得に大きな差がある
- ひとり親世帯の貧困率は大人が二人以上いる世帯に比べて深刻
- 国の対策の遅れが、子どもの貧困に歯止めをかけられない要因の一つ
(引用:衆議院「子どもの貧困対策の推進に関する法律」)
子どもの貧困、貧困や格差は連鎖するのか
貧困の家庭・格差は連鎖すると言われます。それは、ひとり親そのものに問題があるわけではなく、ひとり親を取り巻く社会や環境などに原因があると考えられます。
教育機会の差
一般的な家庭では、小学校の頃から学力向上のために塾や家庭教師を利用したり、私立学校を受験させたりすることが一般的になりました。
年収が100万円〜200万円代の相対的貧困家庭では、こうした教育を受けることはかなり難しいのが実情です。この教育機会の差は、貧困家庭とそうでない家庭との間で、学歴、就職、収入などあらゆる面で格差を広げてしまい、ひいては連鎖を生む要因となります。
経済力がないと結婚しにくい
今や生活を支えるために共働きが当然となり、将来の貯蓄、年金受給、介護費用などについての不安感は増大しています。こうした背景から、母子家庭・父子家庭どちらの場合でも、経済力がなければ結婚がしづらい世の中になっています。
ひとり親の貧困家庭で育ち、教育の機会に恵まれなかった子どもが条件の良い仕事に就けず、貧困によりさらに貧困生活に陥ってしまう実態があります。
生活環境
食事のバランス、部屋の衛生、着衣の質、親の素行、などの生活環境は子どもに大きな影響を与えます。貧困による劣悪な生活環境が要因で、非行や犯罪に至ってしまうケースも少なくありません。
そんな環境下で育った子どもは、大人になって平均以上の収入や貧困でない家庭と比べて、周りとの格差に自分を卑下し、さらに貧困の連鎖に入り込んでしまう恐れがあります。
注意していただきたいのは、「ひとり親=子どものために良くない」というわけではない点です。
あくまで「ひとり親の貧困」という状態から生まれる、マイナスの可能性を挙げています。貧困家庭や貧困の子どもに対して偏見や固定観念を持ってしまうことは、さらに貧困の連鎖を助長させてしまうことを、私たちは知っておかねばなりません。
- 貧困の家庭・格差は連鎖すると言われている。
- 教育機会の差は貧困家庭とそうでない家庭との間で学歴、就職、収入などあらゆる面で格差を広げてしまう。
- 貧困によりさらに「不本意型未婚」や貧困生活に陥ってしまう。
(出典:厚生労働省職業安定局「 非正規雇用対策・若者雇用対策 について」)
子どもの貧困、貧困や格差の連鎖をなくすためには?
子どもの貧困は本人たちにはもちろん、日本社会としても大きな損失です。「日本子ども支援協会」によると、子どもの貧困が社会に与える損失は42.9兆円にも上ると言われています。貧困を断ち切ることは個人的な問題ではなく、日本人全員の問題なのです。
貧困の連鎖を断ち切るためには、どのような実践が必要なのでしょうか。
(引用:NPO法人日本子ども支援協会「子供の貧困問題」)
教育にお金を出す
教育の機会平等の確保は必須です。貧困家庭の子どもは、十分な教育機会に恵まれていないため、恵まれている子どもに比べて、学力、就業機会、就業後の収入の差が大きいと言えます。
日本は、GDPに対する公的教育費が、世界的に決して高い国とは言えません。国や自治体が積極的に、教育に対してお金を使う姿勢が求められます。
企業が理解を深める
ひとり親家庭、特にシングルマザーは就労の機会が限られています。これはつまり安定的で十分な収入を確保するのが難しいということです。
正社員や管理職としての女性の活躍は、最近でこそニュースなどで耳にするようになりましたがまだまだ不足しているのが実態です。
こうした連鎖を断ち切るためには、正社員・管理職登用を進める、学歴採用重視主義を失くす、貧困家庭をサポートする福利厚生の充実、といった取り組みが企業に対しても求められます。
非営利団体を支援する
国、自治体、企業が、地域で活動する非営利団体に対して支援をすることも、子どもの貧困を救う手段です。日本には貧困家庭の子どもを救うために活動している非営利団体がたくさんあります。
業態は多様ですが、例えば、食事を無料で提供する支援、勉強を教える支援、親がいない間に預かる支援、などが代表的です。
こうした非営利団体には、運営資金に苦慮しているところも多いため、国・自治体・企業からの資金援助は非常に重要なサポートになります。さらに、資金だけでなく、物資、人材、場所などの提供も必要な支援です。
- 国や自治体が積極的に、教育に対してお金を使う姿勢が求められる
- 正社員・管理職登用を進める、学歴採用重視主義を失くす、福利厚生の充実など企業の取り組みが求められる
- 国、自治体、企業が地域で活動する非営利団体法人に対して支援をすることも子どもの貧困を救う手段となる
貧困家庭の子どもたちのために、私たちができること
子どもの貧困解決の支援をするために、私たち個人にも身近な場面でできることがあります。
非営利団体に寄付
貧困に苦しむ子どもや親を支援する非営利団体は全国に存在します。こうした団体に寄付をすることも、立派な貧困支援のための活動です。
「何か支援ができないか」と考えている人は、こうした方法がおすすめです。
近年は、団体のホームページから、スマホやパソコンで手軽に寄付ができるところも多いため、ぜひ調べてみてください。
ボランティアスタッフとして活動に参加
「直接的に支援がしたいけど、平日は仕事で忙しいから時間がない」という人も多いでしょう。そんな人は、子ども食堂や学習支援などのボランティアスタッフとして、休日等に参加する方法があります。
直接的な支援ができるので、「将来子どもや子どもの貧困に関わる仕事がしたい」という人には、特におすすめです。応募方法等は各非営利団体のホームページに記載されているはずなので、チェックしてみてください。
- 非営利団体に寄付をすることも貧困支援のための活動
- 子ども食堂や学習支援などのボランティアスタッフとして休日等に参加する
- 応募方法等は各非営利団体のホームページに記載されているのでチェックしてみよう
( 出典:内閣府NPO「寄付について」)
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貧困は個人だけの問題ではない
子どもやその親の貧困に対して、「日本は民主主義だから自己責任だ」と切り捨てる人がいます。しかし、自己責任論は「機会の平等」があって初めて成り立つ理論です。人は生まれた時から生活環境、経済的余裕、食事、教育、など様々な要素が平等ではありません。子どもの貧困の連鎖を断ち切るには、「社会全体で解決していく」という意識を不断に持ち続けることが重要と言えます。
貧困状態にある子どもたちの現状を知り、無理なく気軽に支援できることを探してみましょう。