アフガニスタンは1979年のソ連軍の侵攻から、内戦やタリバーンなどの武装勢力の襲撃、同時多発テロを受けた多国籍軍の攻撃など次々と紛争が勃発し、その度にたくさんの難民が発生してきました。
2002年以降、世界各国からの様々な支援によって多くのアフガニスタン難民の帰還が実現しましたが、近年再びアフガニスタンの難民は増加傾向となっており、長期化が否めない状態です。
この記事では、そんな長期化するアフガニスタン難民問題について紹介します。
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アフガニスタンにおける難民問題
アフガニスタン(正式名称はアフガニスタン・イスラム共和国)は、中東・中央アジアに位置する内陸国です。周囲を6つの国に囲まれており、日本の約1.7倍の大きさです。
アフガニスタンは東西文化の十字路として様々な国の文化が融合しており、30以上の言語が話される多民族国家としても知られています。
また、アフガニスタンの成人識字率は非常に低い水準であり、度重なる紛争によって学ぶ機会が失われてきたことを物語っています。特にアフガニスタンの女性は地位が非常に低く、いかなる教育機関においても勉強することが許されない状況です。アフガニスタンは女性への生活制限が非常に厳しく、私たちが想像を絶する女性差別があります。
(出典:外務省「アフガニスタン・イスラム共和国 基礎データ」)
アフガニスタン難民問題の原因
東西文化の十字路として多数の文化が融合するアフガニスタンは、多民族国家ということもあり、古くから争いの多い地域でした。
そして深刻なアフガニスタン難民問題は、1979年のソ連軍侵攻を皮切りに次々と紛争が起こったことが原因とされています。
アフガニスタン国内では未だ、反政府武装勢力との紛争が繰り返されており、爆破テロや襲撃などによって多くの民間人が死傷している現状です。
また、アフガニスタン国内は紛争によって住む場所を失うだけではなく、干ばつによって住む場所を追われる人々も少なくありません。家を失った人々は著しく低い生活レベルで暮らさざるを得ず、難民として国外に助けを求めることになりました。
(出典:外務省「アフガニスタンの現状と問題」)
(出典:外務省海外安全ホームページ「アフガニスタンの危険情報」)
アフガニスタン難民の数
最大時には約680万人のアフガニスタン難民がいましたが、2018年時点のアフガニスタン難民の数は、約270万人となっています。
これは世界で最も難民の多いシリアに次いだ難民数で、世界の難民のうちの約4%がアフガニスタン難民とされています。また、これまで多くのアフガニスタン難民が母国に帰還することができましたが、未だ紛争の終わらないアフガニスタンでは、いつ多くの難民が生まれるか分からない状態です。
- アフガニスタン国内では未だ、反政府武装勢力との紛争が繰り返されており、爆破テロや襲撃などによって多くの民間人が死傷している
- 最大時には約680万人のアフガニスタン難民がいたが、2018年時点では約270万人となっている
(出典:外務省「アフガニスタンの現状と問題」)
(出典:外務省「難民の出身の多い国」)
40年以上にわたる紛争によって、アフガニスタンは多くの難民を流出する国となりました。そんなアフガニスタン難民に対して必要な人道的支援とは何があるのでしょうか。この記事では、アフガニスタン難民の数や行われている支援などについて紹介します。ぜ[…]
アフガニスタン難民の受け入れ国
アフガニスタン難民は、パキスタンやイランが中心となって受け入れてきました。
これまでアフガニスタン人口の4分の1にあたる数がアフガニスタンへと帰還することができましたが、未だ多くの人々が難民としてパキスタンやイランに避難しています。
パキスタン
パキスタンでは多くのアフガニスタン難民が長期間に渡って避難している状況です。
教育や医療、インフラなどの生活分野において、アフガニスタン難民の支援を継続的に行っており、アフガニスタン難民の保護に取り組んでいます。
また、パキスタン政府は自主帰還を推進する支援活動も行っており、これまでに多くのアフガニスタン難民が自国に帰還しました。
さらにパキスタンでは教育や医療、インフラなどの生活分野において、難民やパキスタン国内の受け入れコミュニティの支援を行い、アフガニスタン難民の支援を継続的に行っています。
(出典:外務省「パキスタンにおけるアフガニスタン難民及び受入れコミュニティに対する緊急無償資金協力」)
(出典:外務省「パキスタンにおけるアフガニスタン難民受入40周年記念に係る国際会議」)
イラン
イランでも未だ多くのアフガニスタン難民が避難しており、法的手続きを終えていない難民の数はさらに多いと言われています。
イランはアフガニスタン難民に対して、難民登録の有無関係なく、すべての子どもたちの教育サポートなど、教育支援を積極的に行っているのです。また、イランでは国民健康保険の加入や就労許可もされているため、アフガニスタン難民が自立した生活を送るための支援をしています。
- アフガニスタン難民はパキスタンやイランが中心となって受け入れており、未だ多くの人々がパキスタンやイランに避難をしている
- パキスタンでは、難民やパキスタン国内の受け入れコミュニティの支援を行い、アフガニスタン難民の支援を継続的に行っている
- イランでは、アフガニスタン難民が自立した生活を送るための支援をしている
(出典:外務省「国別地域別政策・情報 イラン」)
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難民に関するグローバル・コンパクトとは
難民問題はアフガニスタンだけの問題ではなく、世界各地で発生しています。世界各地には6,000万人以上の難民が存在し、国際社会は難民問題改善に向けた新たな対応を求められている状況です。
そこで策定されたのが「難民に関するグローバル・コンパクト」です。難民に関するグローバル・コンパクトは2018年に国連総会で採択され、世界が一体となって難民保護を促進する様々な活動が行われています。
次に、難民に関するグローバル・コンパクトとはどのようなものなのかを紹介します。
難民受け入れ国の負担軽減
アフガニスタン難民をはじめ、世界各国で難民が増加することにより、その難民を受け入れる国々には大きな負担がかかります。難民の大量流入は難民受け入れ国の公的サービスや社会経済に影響を与え、混乱を招く原因にもなりかねません。
難民に関するグローバル・コンパクトでは、難民受け入れ国に対しても早い段階での開発支援や人道的支援を行い、難民流出国と受け入れ国の両国に効果的な支援を行えることを目標に掲げています。
第三国定住の拡大
難民によるグローバル・コンパクトでは、避難した先で難民として保護が受けられなかった人々も、第三国(他国)で難民としての保護が受けられる環境を作り、多くの難民を保護することを目的としています。
第三国の拡大によって難民受け入れ人数が増加することはもちろんですが、人道ビザの発給や奨学生として難民を受け入れるなど、第三国の柔軟な対応が求められています。
安全かつ尊厳ある帰還に向けた環境整備
アフガニスタンは未だ、反政府武装勢力との紛争が繰り返されており、自国に戻っても命の危険性が伴います。
難民に関するグローバル・コンパクトでは、難民たちが安全に母国に帰還できるための環境整備の取り組み拡大を目指しています。
難民の保護および自立促進
難民に関するグローバル・コンパクトに基づく活動としては、難民に対して法的・身体的な保護のほか、性的被害を含む暴力からの保護を目的とした支援も挙げられます。
加えて難民キャンプにおける医療支援や食糧支援、水や衛生環境などの支援は必要不可欠です。
ほかにも、適切なシェルターの支援、子供たちへの教育支援など、国際機関などの支援機関と協力・調整を行いながら、様々な支援を実施しています。
さらに、難民支援においては、難民が支援だけに依存しない自立した生活を行えるようにするための支援は必要不可欠です。難民に関するグローバル・コンパクトでは、将来、母国に帰還することを見据えた人材育成など、難民の自立促進に関する取り組みを実施しています。
難民に関するグローバル・コンパクトについて
- 難民流出国と受け入れ国の両国に効果的な支援を行うことを目標にしている
- 難民としての保護が受けられる環境や、母国に帰還できるための環境整備の取り組みがある
- 母国に帰還することを見据えた人材育成など、難民の自立促進に関する取り組みを実施している
(出典:外務省「難民に関するグローバル・コンパクトとジャパン・プラットフォーム」)
(出典:外務省「令和元年(2019年)度 国際機関等への拠出金等に対する評価シート」)
(出典:内閣官房「第三国定住による難民の受入れ事業の対象拡大等の検討結果について」)
アフガニスタン難民問題への支援
世界各国の様々な支援機関では、アフガニスタン難民に対して幅広い支援活動を行っています。
紛争や災害が起きたときの緊急支援として緊急用テントや毛布、衛生キットなどの援助物資の配布を行うほか、自立促進支援として職業訓練や起業支援、農業支援など、難民自身が主体となって自立した生活が送れるような支援をしているのです。
また、アフガニスタン難民の子どもたちの学ぶ機会を設けるために、学校修復や建設、学用品の提供を行うなどの教育支援、支援センターを設置して健康診断や予防接種、地雷回避の教育、そして交通費給付などの現金給付支援を通して、難民の生計支援、自発的な帰還促進を支援しています。
日本政府のアフガニスタン難民問題への支援
日本政府もアフガニスタン難民支援として、様々な支援機関への資金援助を行ってきました。
また、日本はアフガニスタンへの支援だけでなく、難民による影響を受けた周辺国の負担軽減のため、アフガニスタンおよびアフガニスタン難民受け入れ国でもあるイランやパキスタンに対して、資金援助や人道支援を行っています。
日本がイランに行った支援では、職業訓練センターを設立し、現地で必要となる職業技能の取得や帰還に関する情報提供を行っています。
パキスタンにおいても、アフガニスタン難民およびパキスタンの受け入れコミュニティに対して食料配布や教育・職業訓練の支援をしています。日本は、パキスタンやイランなど周辺国で暮らすアフガニスタン難民が母国に戻ったときの自立を促す活動支援を行っています。
また、日本政府は資金提供だけに留まらず、生活関連物資を自衛隊機によって輸送する物資協力も行いました。
- 難民自身が主体となって自立した生活が送れるような支援を行っている
- 日本はアフガニスタン難民だけではなく、受け入れ国でもあるイランやパキスタンに対しても、資金援助や人道支援を行っている
(出典:外務省「日本のアフガニスタン難民・避難民支援」)
(出典:外務省「パキスタンにおけるアフガニスタン難民及び受入れコミュニティに対する緊急無償資金協力」)
(出典:外務省「イラン「アフガニスタン難民及びイラン人貧困層のための「職業訓練センター」設立・運営事業(第3期)」
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日本におけるアフガニスタン人の難民申請
日本でもアフガニスタン難民をはじめとした、難民受け入れを行っています。しかし、日本の難民認定は条件が厳しく、受け入れられている難民の数は他国と比較して圧倒的に少ない現状です。
2018年に日本での在留が認められた難民認定申請者は82名で、そのうちアフガニスタン難民は4名でした。
日本で難民認定されたアフガニスタン難民は、更新可能な1~3年の定住者として日本での在留資格が与えられることになります。そして、アフガニスタン難民も日本の国民健康保険の申請が行えるため、市区町村を通して福祉支援が受けられるようになります。
また、日本では申請の手続きを行えば、1年間のうち何回でも出入国ができる難民旅行証明書の発行も行われるのです。
さらに、困窮しているアフガニスタン難民に対しては、一定額の生活費や住居費が支給され、難民として一定の水準で保護されることになります。
- 日本の難民認定は条件が厳しく、受け入れられている難民の数は他国と比較して圧倒的に少ない
- 日本での在留が認められた82名の難民認定申請者のうちアフガニスタン難民は4名だった
(出典:法務省「平成30年における難民認定者数等について」)
(出典:出入国在留管理庁「難民認定制度」)
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アフガニスタン難民問題に解決策はある?私たちにできる支援とは
長期化しているアフガニスタン難民問題は、世界が協力して取り組まなければ解決しない問題です。
そんなアフガニスタン難民問題は、私たち一人ひとりが支援機関に寄付することで、間接的に支援することができます。
また、アフガニスタン難民問題に対する理解を深め、自分の周りにいる人々に伝えることも、私たちにできる支援の一つです。
1人でも多くの人がアフガニスタン難民の現状や支援活動を知ることで、アフガニスタン難民問題への支援活動に共感してくれる人々が増えることにつながります。
1人の力は小さなものですが、多くの人々が賛同して協力することによって、多くのアフガニスタン難民を救うことができます。
ぜひこの機会に、アフガニスタン難民問題について理解し、私たちにできる支援を行ってみてはいかがでしょうか。
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