世界で行われている人身取引は違法行為であるほか、さらに児童労働、強制結婚、臓器売買などの悪質な犯罪を生み出します。
人身取引は人の身体や権利を強く害することで深刻な問題として世界的に重要視されています。
この記事では、その中における性的搾取について解説していきます。
人身取引・売買問題とは?
子どもの強制労働や売春、誘拐への対策や支援について知ろう
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子どもの人身取引・売買による売春、性的搾取とは
子どもの人身取引・売買は売春や性的搾取などの犯罪、人権侵害に結びついています。
まず、これら人身取引・売買の現状について説明します。
人身取引の対象となるのは7割が女性
はじめに性的搾取の起点となる人身取引についてみていきましょう。
2014年時点で、世界で行われている人身取引の対象となる人物の71%が女性と言われています。ここに性的搾取との深い関係をみてとることができます。
人身取引により強制労働させられるケースもあるため、そういった犯罪においては力の強い男性が対象となることが多いです。
一方で女性や女児の多くは、力の必要な労働ではなく男性の性欲を満たすために利用される性的搾取の対象となります。
(出典:国連軍萎縮委員会(UNDC)「GLOBAL REPORT ON TRAFFICKING IN PERSONS 2016」)
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性的搾取の具体例
では、性的搾取とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。人の性的な自由および権利を侵害する行為は性的搾取としての側面を持ちますが、人身取引との関係で問題になることが多いのは以下の3つです。
以下ではそれぞれの実態について解説します。
売春
人身取引により売られてしまった女児や女性が売春させられるケースは非常に多くなっています。一人あたり数千円から数万円で売られ、売春に従事させることで利益を生むために利用されます。
そして女児や女性が少しでも反抗しようものなら、当然のように暴力がふるわれ、最終的に被害者が命を落とすことも珍しくありません。
こうして不特定多数の男性と売春させられた被害者は、体や心を著しく傷つけられ、HIVをはじめとした病気に感染し、最終的には商品価値がないと捨てられていきます。
児童ポルノおよび成人ポルノ
人身取引の対象となった女児や女性を利用して性的コンテンツを作成し、それを販売することで利益を得ようとする組織もあります。
現在ではインターネットの普及により、素人であっても動画や画像を世界に向けて発信することが容易となりました。
こうした環境も相まって、性的なコンテンツを作成して利益を得るために人身取引が行われているのです。
性的虐待
人身取引された被害者の中には意に沿わぬ相手と強制的に結婚させられる人も多いです。
そうした場合、往々にして性的虐待が発生します。これも成人女性のみならず女性として女児にまで広く行われている性的搾取となります。
さらに、性的虐待は暴力行為と合わせて行われることも少なくありません。女児や女性が反抗的な態度をみせると、殴る・蹴るの暴力を用いて屈服させようとする場合もあるのです。
(出典:政府広報オンライン 「暮らしに役立つ情報」)
(出典:独立行政法人国際協力機構JICA「なんとかしなきゃ!プロジェクト」)
買春目当てに海外旅行をする人が後を絶たない
このように人身取引が性的搾取の一つのきっかけとなっていますが、なぜ女児や女性が売られるかというと、それを買う人間がいるからです。
例えば売春については、そもそも被害者を買春する男性がいるからこそ成立します。そして、日本のように国内で売春が禁じられている国では、海外に出向いて買春する人物も決して少なくないのです。
こうしたニーズがあり続けることも、性的搾取がなくならない一つの理由となっています。
人身取引・売買され強制的に結婚させられることも
強制結婚は、人身取引を起点とする大きな問題の一つです。強制結婚の被害者となるのはほとんどが女性であり、彼女たちは金品などと交換されるかたちで意に沿わない相手と結婚させられます。
つまり結婚というかたちをとってはいるものの、そこで行われているのは紛れもない人身取引なのです。金品との交換が多いということは、問題の背後には貧困が存在していることも多くあります。。
つまり被害者は必ずしも誘拐などで身柄を拘束されるのではなく、本来は自分を守ってくれるはずの家族の手によって金品と交換するかたちで売られていくのです。
そして結婚の先には強制的な性交も存在します。そのため多くの女性は、強制結婚から逃れるためには自死の道を選ぶしかないような状況にあるのです。
(出典:公益財団法人日本ユニセフ協会「児童婚」,2019)
海外で起こる人身取引・売買による子どもの売春、性的搾取
ここでは人身取引からの性的搾取の被害が多い国や民族について個別に紹介していきます。
インド
インドでは児童婚・強制的な結婚が問題です。
女の子が18歳未満で結婚する割合が世界で最も高い10カ国のうちの一つにインドが入っています。
インドでは貧困な家庭が多く、子供を育てる上でかかる食事や医療、教育などの費用を捻出することが難しいケースも多くあります。
そのため、女児にとってできるだけ早く比較的余裕のある家計に嫁ぐことが最適な選択であるという考え方もあります。
また、女児と結婚する男性側としては若い花嫁は出産可能期間が長いほか、コントロールがしやすいと考える人もいます。
しかし、2019年に発表された報告書では、子どもの花嫁の割合は10年前の約50%から今の30%へと3分の1以上減少しています。
その大きな要因がインドにおける児童婚の発生を大幅に縮小できたことと言われています。
(出典:公益財団法人日本ユニセフ協会「児童婚」,2019)
(出典:日本貿易振興機構JETROアジア経済研究所「南アジアのジェンダーと結婚慣習」,2016)
行われている対策、支援活動
インドのアンドラプラデシュ州では、性的搾取の被害者を保護するシェルターがあり、被害によって体と心に受けた傷を癒やし、手に職を付けるための研修が行われています。
こうした取り組みは一見すると大きな効果を発揮するようにも思えます。しかし長期にわたって性的搾取の被害を受けた女性は、自らを責めてしまう傾向があります。
そのため簡単に心の傷を癒やすことができないのです。
その結果、NPO・NGPなどが積極的に手を差し伸べても、被害者自らそれを拒否することも少なくありません。「手に職を付けて社会復帰させる」と言葉にするのは簡単ですが、そこに至るまでには多くの困難が待っているのが現実です。
ネパール
ネパールでは、女性の生活が男性に依存していることから多くの人身取引および性的搾取が存在しています。
つまり、女性は父親や夫がいなければ生活できない環境に身を置いており、そこから抜け出すために犯罪組織が提示する上手い話に乗ってしまうのです。
このように女性に対する教育が確立していない地域で、女性の無知につけ込む形で行われる性的搾取は非常に多くなっています。
「実家から出たいなら、良い仕事があるよ」と上手い話を口にする犯罪組織にだまされる女性自体の数を減らしていかなければなりません。
ネパールでは多くの女性が人身取引の被害にあっているとされ、その多くがインドの売春宿へ売られてしまっているのです。
(出典:公益財団法人日本ユニセフ協会「人身売買から少女を守る 〜教育が果たす大きな役割〜」)
行われている対策、支援活動
ネパールでは、「子どもの権利条約」や「女性差別撤廃条約」に基づく女性の権利についての啓蒙活動がなされています。そして女性が教育を受ける機会を確保するための活動もなされています。
このようにして女性自らが危険を回避できる知識を持つことで、人身取引および性的搾取を減らしていくことができるのです。
ロヒンギャ
ロヒンギャはミャンマー西部に暮らすイスラム系の少数民族です。
ロヒンギャはミャンマーに暮らす人の3分の2を占めるビルマ民族と対立関係にあり、長らく迫害されてきました。
そうしてミャンマーを脱出しなければならなくなった女児や女性が人身取引および性的搾取の被害にあっているのです。
2017年8月以降、 40万人の子どもを含む、73万人以上のロヒンギャの人々がバングラデシュに到着。合計90万6,000人以上のロヒンギャの人々が同国に身を寄せています。
そして、おとなの同伴がない子どもや離ればなれになった子ども6,000人が人身売買や児童婚、性的搾取のリスクにさらされていると言われています。
武力衝突で家族を殺されて国外への奪取をはかっている途中で、犯罪組織に「安全なところへ連れていく」と声をかけられ、その先で売春をさせられることもあるのです。
(出典:公益財団法人日本ユニセフ協会「ロヒンギャ難民危機ユニセフの支援」,2019)
行われている対策、支援活動
このようなロヒンギャの人々に対して、ビルマ民族との武力衝突に際して物資の提供などの支援活動が行われています。また被害者を保護するためのシェルター設置・運営といった対策もとられています。
ロヒンギャの例のように政治情勢の不安定さや紛争は、人身取引および性的搾取を起こす一つの原因となります。もちろん政治や紛争といった根本の問題から解決できれば良いのですが、それは決して簡単なことではありません。そのため水際の対策が求められているのです。
中国
中国で人身取引および性的搾取の被害にあうことが多いのは、北朝鮮から亡命してきたような女性および農村部で貧困にあえぐ女性です。彼女たちの中には中国の国内で正式な身分を持たない人も多く、そういった点が犯罪組織につけ込まれやすいのです。
そして売春をさせられたり、性的なコンテンツに利用されたりします。
(出典:「朝鮮民主主義人民共和国における人権に関する国連調査委員会の報告書」,2014)
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行われている対策、支援活動
中国では国境を越えた人身取引などを厳しく罰する法整備も進んでいますが、それだけで性的搾取の被害を受ける女性を救うことはできません。そのため難民も含めて保護する施設の開設などが検討されています。
また教育を受ける機会を持ちにくい地域の女性に対して、女性の権利や万が一の際の手段について広く啓蒙していく活動も行われています。
日本でも起こる子どもの人身取引・売買による売春、性的搾取
世界各地で人身取引および性的搾取の問題は未だに根強く残っています。そして、これは日本においても同様です。
日本では被害者となる女児や女性が他の選択肢を持てないまま半ば強制的に売春に従事させられるようなケースが後を絶ちません。
日本における人身取引および性的搾取の例としては、借金を背負った風俗関係者の女性が売春を強要されている場合や、家出をしている少女が出会い系サイトで男性と知り合い売春を強要されるケースなどがあります。
また外国人が日本国内で被害にあうことも少なくありません。
(出典:首相官邸「人身取引対策に関する取組について」,2018)
行われている対策、支援活動
こうした日本国における人身取引および性的搾取に対しては、以下のような幅広い対策と支援が行われています。
このように、先進国であっても様々な対策および支援が必要となるほど人身取引および性的搾取は世界中で横行しているのです。
人身取引・売買を減らすために私たちにできることは?
人身取引および性的搾取を根絶していくのは決して簡単ではありません。なぜならば、その多くは犯罪組織と密接に関わりのある中で行われるため、根絶する際は大きな危険を伴うのです。
だからといって見て見ぬふりをしていいわけでもありません。私たちにできることもあるのです。
具体的な活動としてすぐに行動に移せるのは寄付です。人身取引および性的搾取を減らすための寄付には以下のようなものがあります。
人身取引および性的搾取は貧困と大きな関わりを持つため、貧困に対する支援が必要です。
一人ひとりの寄付は小額だとしても、小さな支援が積み重なって大きな効果を生んでいくためできることから見つけてみてください。
人身取引・売買を食い止め、子どもたちに自由で明るい未来を
途上国はもとより先進国であっても、子どもの人身取引および性的搾取の問題はいまだに存在しています。
そして、多くが女性軽視や貧困などの問題に結びついています。
人身取引からの性的搾取にあった女児および女性は、保護された後も自らを責め続け人生を台無しにしてしまうことがあります。
そうした人を一人でも減らし、また被害にあった女児および女性が自らの権利と人生を取り戻すことができるように、あなたもできる範囲で支援活動を検討してみてはいかがでしょうか。