日本で暮らしていると「奴隷」という言葉を身近に感じることはほとんどありません。それは決して悪いことではなく、それだけ日本においては人の権利が守られている証でもあります。
奴隷とは本来、人間でありながら「他者の所有物と扱われる存在」を指す言葉でした。特に古い時代では、そもそもの身分が奴隷という人物が多く存在していたのです。
しかし現代になり、奴隷という身分で扱われる人物は少なくなっています。しかし、一方で児童労働や人身取引により、実質的に奴隷となっている子どもたちは未だ多く存在しています。
この記事では、このような問題について解説します。
人身取引・売買問題とは?
子どもの強制労働や売春、誘拐への対策や支援について知ろう
また、人身取引などのない平和な社会の実現へ少しでも貢献したいという思いのある方は、平和構築に関連する団体の支援を体験してみませんか?
約30秒のアンケートに回答いただくと、さまざまな国で平和の実現へ活動する団体に10円の支援金が届きます。記事を読み進める前にぜひお試しください!
\たったの30秒で完了!/
子どもの人身取引・売買による労働とは
現在、世界では子どもの人身取引および児童労働が大きな問題となっています。
それは、子どもが物のようにお金で買われ、教育を受ける権利も与えられぬまま買主のために労働させられているのです。また売買の結果、子どもが性的搾取の被害にあうこともあります。
ここでは子どもの人身取引および児童労働についてデータからみていきましょう。
子どもの人身取引の数と被害
はじめに子どもの人身取引について確認していきます。
「GLOBAL REPORT ON TRAFFICKING IN PERSONS 2016」では、2012年から2014年の間に、人身取引における被害者が106の国で63,251人も確認されたと報告しています。そして、そのうちの約17,700人は子どもだったともいわれています。
これは被害が確認された数であり、世界で行われている子どもの人身取引の総数ではありません。そして人身取引はその性質上、発見が難しい側面があるため、ここに表れた被害者の数は氷山の一角であると考えられます。
人身取引は紛争や貧困が原因となって起こることが多くなります。そして人身取引の対象となった子どもは以下のような被害にあうことが多いと言われています。
- 強制労働させられる
- 性的搾取に遭う
- 強制結婚させられる
- 臓器を摘出される
- 社会的に奴隷の烙印を押される
- 教育の機会を奪われる
- 自由を奪われる
このように様々な犯罪行為の起点となる人身取引ですが、以下ではその被害の一端である児童労働について詳しく確認していきます。
(出典:国連薬物犯罪事務所(UNODC)「GLOBAL REPORT ON TRAFFICKING IN PERSONS 2016」,2016)
PCの買い替えを考えている方へ:NHKなど大手メディアでも取り上げられている、環境負荷のもっとも少ないエシカルなパソコンをご存じですか?
児童労働の数と被害
児童労働とは、法律で定められた最低年齢を下回る児童が従事する労働です。1973年に採択された「就業が認められるための最低年齢に関する条約」における最低年齢は以下のとおりです。
- 労働最低年齢:15歳(義務教育終了後)
- 危険有害労働最低年齢:18歳
ただし途上国では就業最低年齢が14歳まで引き下げられており、軽労働は12歳以上から始めることが認められいています。
2016年において児童労働に従事している子どもの数は1億5千万人を超えています。
こうした児童労働が起こる原因は実に様々です。それこそ先ほど紹介した人身取引から児童労働のケースもありますが、そもそも特定のコミュニティでは児童に教育の機会を与えずに労働させることが当然と認識されている場合もあります。
そして幼いうちから労働に従事させられることで、子ども自身も教育を受ける機会を失い、特定のコミュニティが有する悪循環から抜け出すことができなくなるのです。
ただしここで紹介した児童労働のすべてが人身取引から発生しているわけではありません。中には貧困から自発的に働いているような場合もあります。そのためすべての児童労働が、人身取引を伴う児童労働ほどに悪質ということは難しいのが現状です。
- 2012年から2014年の間に、人身取引における被害者が106の国で63,251人も確認された
- そして、そのうちの約17,700人が子どもだった
- 2016年、児童労働に従事している子どもの数は1億5千万人もいた
(出典:ILO(国際労働機関)「児童労働の世界推計」)
(出典:ILO(国際労働機関「児童労働 Q&A」)
海外で行われる人身取引・売買による子どもの奴隷制
人身取引から児童労働をさせられる具体例に着目してみましょう。以下のケースは、子どもの権利を著しく害するものです。
人身取引を起点とする労働の具体例
人身取引を起点とする労働といっても、具体的な内容は多岐にわたります。以下では4つの具体例を紹介していきます。
家庭内労働
人身取引された子どもが以下のような家庭内労働に従事させられるケースは数多く存在しています。
- 家事労働
- 子守り
- 子育て
- 内職
このような家庭内労働に従事させられる子どもたちは、日常の大部分を労働に割かなければならなくなります。そのため教育を受ける機会を得ることができず、また自らの望む人生を歩むこともできなくなります。
家庭外労働
また人身取引された子どもが家庭の外で労働に従事させられるケースも後を絶ちません。具体的な仕事としては、農業、林業、漁業、鉱業、建設業といった力仕事が多くなります。
この場合、人身取引の対象となるのは女性よりも男性が多くなります。
そして売られた先で従事するのが適法な労働であることから、起点となる人身取引も含めて必ずしも大きな問題として取り上げられません。
ただし、こうした人身取引からの強制労働も個人の権利と自由を奪うものです。
違法行為
強制労働として違法行為に従事させられるケースもあります。具体例としては以下のものが違法行為に該当します。
- 売春
- 性的コンテンツの作成
- 薬物の密売
- 危険地域での労働
こういったケースは強制労働とともに性的搾取や犯罪行為といった側面も問題となります。そのため原因が複雑化していることもあり、継続的な支援と対策が求められます。
紛争への参加
ここまで紹介してきたように強制労働の具体例にも様々なケースがあります。その中でも子どもたちの命が消えていくのが、紛争へ参加させられる形での強制労働です。
紛争に参加させられる子どもたちは「子ども兵士」「少年兵士」とも呼ばれ、国際的にも大きな問題となっています。
彼らは自らの持つ権利や自由を意識する間もなく、戦闘で命を落としていくのです。
(出典:ユニセフ「子どもの人身売買」)
(出典:国際労働機関(ILO)「児童労働」)
子どもの人身取引・売買にどのような対策が行われている?
このように人身取引からの児童労働には様々なものがあり、世界のいたるところで問題となっています。それでは、この問題に対してはどのような対策がとられているのでしょうか。
人身取引からの児童労働の発生には様々な原因が複雑に絡み合っているため、以下のように段階を分けた対策が必要となります。
- 予防の段階:状況の把握、啓発活動
- 被害者の保護の段階:被害者の保護、心のケア、被害者が社会復帰できる仕組みづくり
また人身取引からの児童労働をなくしていくためには、特定の機関やNPO・NGOによる活動に依存するのではなく、国などのより大きな組織での活動が求められます。
経済支援や教育体制の整備などによって、途上国を豊かにすることも間接的に人身取引からの児童労働を減らすことにつながっていきます。
- 人身取引された子どもたちは家事労働や様々な分野の業種での強制労働などを強いられている
- 売春や薬物の密売などの違法行為に加担させられることもある
- 子ども兵士などのように紛争に参加させられ命を落とすケースもある
日本でも児童労働、子どもの人身取引・売買はあるのか?
ここまでで世界における人身取引による児童労働の状況について解説しましたが、日本においてはどうなのでしょうか。
日本というと人身取引や児童労働と関わりのない国というイメージを持つ人は多いですが、日本においても人身取引および児童労働は少なからず存在しています。
はじめに人身取引の具体例としては以下のようなものがあります。
- 家出少女が援助交際を強要される
- 恋人である男性の手により風俗店で働かされる
このように日本における人身取引は、被害者の弱みや経済不安につけ込む形で行われ、ときとして被害者の中に「人身取引の対象となっている」という自覚のないものも存在しているのです。
次に日本における児童労働としては以下のようなものがあります。
- 15歳の子どもが高所作業をさせられている
- 高校生がサービス残業やパワハラの横行する過酷な環境でバイトをしている
高校生がバイトをすること自体は問題ありませんが、作業内容や職場環境が危険・有害である場合は、やはり児童労働に該当するのです。このように一見すると平和で安全と考えられる日本においても、人身取引と児童労働は確かに存在しているのです。
(出典:国際労働機関(ILO)「ILOヘルプデスク・児童労働に関するQ&A」)
日本で行われている人身取引・売買の対策や支援は?
それでは日本における人身取引および児童労働については、どのような対策および支援が行われているのでしょうか。以下では3つの段階に分けて紹介します。
啓蒙活動
はじめに日本における人身取引および児童労働の被害者は、自らの環境を当然のものとして受け入れている場合があります。それこそ以下のように考えてしまっているのです。
「家が貧しいから、中学を出てすぐに働くのは仕方のないことだ」
「借金があるのは私だから、風俗店で働かされても仕方がない」
こうした被害者を救うためには、まずは自らの環境が違法かつ異常なものであると被害者自身に理解してもらう必要があります。
このために行われるのが啓蒙活動です。啓蒙活動は、NPO・NGOなどに相談してきた被害者個人に対して行われることもあり、シンポジウムなどを通して地域や市区町村に対して行われることもあります。
シェルターの設置
次に自らの環境を変えたいと考えた被害者を受け入れる場所を作る活動も行われています。
被害者たちは経済的に自立できていない場合も多いため、児童相談所や婦人保護施設で被害者を受け入れ、生活を立て直す基盤を与えていくのです。
こうしたシェルターはまさに被害者を保護する施設であり、人身取引および児童労働に関わらなければならなかった環境を被害者から切り離すことが期待できます。
日本に逃れてきた難民を正社員として雇用。エシカルなPCでSDGs「つくる責任つかう責任」に取り組みませんか?
社会復帰支援
被害者をシェルターに受け入れることができたとしても、それだけで被害者が救われることはありません。なぜならば、被害者はそこから経済的に自立して、いずれは一人で生活していかなければならないためです。
そのため保護した後に社会復帰支援を行うことも、人身取引および児童労働への対策となります。
(出典:首相官邸「人身取引対策に関する取組について」,2018)
- 日本における人身取引は被害者の弱みや経済不安につけ込む形で行われ、ときとして被害者の中に「人身取引の対象となっている」という自覚のないものも存在している
- 人身取引を未然に防ぐために、啓蒙活動が行われている
- 被害者に対してはシェルターを設置し、社会復帰支援が行われている
人身取引・売買の被害から子どもの未来を守る!私たちにできることは?
ここまで解説してきたように、諸外国のみならず日本においても人身取引および児童労働の問題は存在しています。そして、これらの問題に対して支援活動を行うNPO・NGOがあります。
では、私たちにできることには何があるのでしょうか。知識や組織を持たない私たちが人身取引および児童労働の問題を直接解決していくことは決して簡単ではありません。
そこで、第一の支援方法となるのが寄付です。
寄付したお金は、一例として以下のような取り組みに使われます。
- 貧困状態の改善
- 被害者の裁判費用
- 被害者の精神面のケア
- シェルターの維持・管理
- 被害者の自立支援
寄付は少額から可能であり、負担のない範囲でできる支援です。
まずは人身取引や被害者に対し、どのような支援が行われているかを知ることから初めて見るのも良いかもしれません。
- 人身取引に対する活動を行うNPO・NGOに寄付することも私たちにできる支援の一つ
- 寄付したお金は貧困対策や被害者の裁判費用、精神面のケアなど様々な用途に利用される
- 寄付は少額から行うことができる
子どもたちが自由で自立して暮らせるために
人身取引および児童労働の発生には、貧困の環境、コミュニティにおける常識、被害者の知識不足など様々な要因が関係しています。そのため問題の改善には、各分野における組織が協力して対策と支援を行っていく必要があるのです。
その中で寄付はNPO・NGOを支える根幹となる支援活動です。子どもたちが自由を得て、自立して暮らしていくことのできる環境を構築するために、できる支援を始めてみてはいかがでしょうか。