レジ袋などプラスチックは非常に便利であり、多くの国で製造・販売、あるいは利用されています。
私たちの生活においてはなくてはならない存在となりましたが、一方で大きな影響を環境に及ぼしています。
これは以前から世界中で問題視されており、その問題はより深刻となっています。
そこで国際的な取り決めで、各国でプラスチックへの対策が行われるようになり、日本を含め、対策としてレジ袋の有料化を進めている、あるいは実施している国があります。
この記事ではレジ袋有料化を取り入れている国の状況などを紹介します。
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プラスチックごみがもたらす世界規模の問題とは
プラスチックは軽量であり丈夫で大量生産が可能であることから、多くの国で利用されてきましたが、それが海洋を中心とした環境汚染へとつながっています。
不法投棄され海へと流れ出たプラスチックごみは、海を汚染し、生物が誤飲することで生命を奪い、海洋生物や海岸に住む生物の住処や繁殖場所も奪いました。
それは私たちの生活にも影響します。海岸や海洋の汚染は観光業に損失を与え、漁業の漁獲量を減少させる原因となりました。
もちろん海洋は一例であり、陸や空にも影響を与えています。このような影響が、年を追うごとに深刻となり、早急に対策を行う必要が出てきました。
プラスチックは多種多様であり、様々な製品に使われているため、すべてをすぐに規制することはできません。
また、多くの製品に使われているプラスチックを環境に負担が少ない別の素材に即座に転換することは難しいです。
そのため、まずはできる対策から順次行っていくものとして、日常生活の中で実施しやすいレジ袋有料化が行われるようになりました。
日本では2020年7月1日から実施されましたが、世界では先駆けて導入した国もあり、レジ袋の削減を行っています。
世界で取り組まれているレジ袋の有料化や容器包装への対応
レジ袋を含むプラスチックごみは大気や海洋などを汚染している大きな要因の1つです。
そのため世界各国、特に先進国の多くが国内での対応を行ってきました。その中には日本と同様にレジ袋有料化、あるいはそれに準ずる制度を導入しています。
ではレジ袋有料化を取り入れた国々はどこなのか、そしてどのような対応を行っているのか紹介します。
中国の制度
中国は世界の中でも早くからレジ袋を規制する動きが見られました。これは世界で比較したプラスチックごみ発生量のランキングにおいて中国が首位になるほど、レジ袋などのプラスチック製品の使用量および排出量が高かったことが要因として挙げられます。
ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用の制限に関する通知(限塑令)を2008年に公布し、小売店で提供される消費者が商品を持ち運ぶため、あるいは保持するためのプラスチック製レジ袋を有料化しました。
ただし25マイクロメートル(※)以下の非生分解性プラスチック製レジ袋は生産から販売、使用に関しても禁止されています。
また、生鮮食品や調理された食品などをまとめて入れる袋など、健康と食品安全のために使用される場合は除外されています。
※マイクロメートル:長さの単位。1マイクロメートル=0.001ミリ
アメリカの制度
アメリカでは全土で有料化や禁止が行われているわけではなく、州や市で実施されています。
最も早かったのはサンフランシスコ市であり、2007年からレジ袋の配布を禁止しました。罰則規定も向けられたこともあり、多くの大型スーパーや薬局、小売店が規制を遵守しています。
一方でワシントンDCでは2010年からレジ袋の有料化を開始しています。
食品やアルコールを販売するすべての商店を対象とし、レジで消費者が受け取るリサイクル可能なプラスチック製の使い捨て持ち運び用レジ袋が有料となります。
珍しいのは、プラスチック製だけでなく紙製もレジで提供される使い捨て持ち運び用であれば有料となっている点です。
ナッツや生鮮食品、冷凍食品、処方薬や新聞など除外される商品を入れる場合は有料にはなりません。
価格は法定により1枚あたり5セントであり、レジ袋の売り上げは一定の割合で環境保全のために寄付することも決められています。
ヨーロッパの動向
ヨーロッパではEUが加盟国に対して取るべき措置を取り決め、2015年に指令として発布しました。
その内容によると、軽量のプラスチック製レジ袋の1人あたりの年間使用量を2019年までに90枚以下、2025年末までに40枚以下に削減することが求められています。
また、対象とする袋は商品購入時に供給される50マイクロメートル未満の軽量なプラスチック製袋であり、衛生面から必要とされる厚さ15マイクロメートル未満の袋は除外されています。これらの条件を元に、削減方法は各国の施策に委ねられました。
イギリスの制度
イギリスでは2008年3月12日にスーパーや小売店に対して、使い捨てのプラスチックを原料としたレジ袋の有料化を義務付ける方針を発表しました。
当初はイギリスで制定されている気候変動法の枠組みとして、課税措置が導入されることが検討されていましたが、小売業界などが反対を示したことにより、政府と業界による協議が行われました。
この協議により、税の導入は見送り、業界が自主的に決めた取り組みを実施することとなりました。
その過程で2009年春までに2006年比でレジ袋使用量の50%の削減目標を課されています。
しかし世界全体での環境問題の深刻化や動向の変化、EU指令により、イギリスも2015年に有料化に踏み切ることになったのです。
対象としてはプラスチック製で70マイクロメートル以下のものであり、シングルユースで商品の持ち帰りや配達に利用される持ち手があり、密閉されていない口が開いたものとなります。
ただし商品の販売ではなく、サービスとして使用される場合や厚さ50~70マイクロメートルのもので再利用可能なもの、郵便物や試供品などの商品を入れる場合は対象外となります。
法定では有料のレジ袋に対して、5ペンス(約10円)以上の価格設定が義務付けられました。
フランスの制度
フランスは2005年に農業基本法改正案の審議において、生分解性以外のレジ袋の販売および配布の禁止を2010年1月1日以降実施する条項を盛り込むことが全会一致で可決されました。
さらに2016年には、2015年に出されたEU指令に基づき、2020年以降のレジ袋を含む使い捨てプラスチック製容器の使用を原則禁止する政令を出しています。
この政令にはレジ袋のほかに、使い捨ての想定されるタンブラーやコップ、皿も対象となります。
対象となる袋は50マイクロ―メートル未満の使い捨てプラスチック袋であり、ばら売りの野菜や果物袋など、レジ袋以外のものも定義されています。
ただし、必要最低含有量のバイオマス原料を使用した袋で、一般家庭でコンポスト※にすることができるものは除外されています。
この必要最低含有量の割合は段階的に引き上げられ、2025年には60%にすることも予定されています。
※コンポスト:生ごみ雑草などを土の栄養である堆肥に変えたもの
スペインの制度
スペインではオンライン販売や宅配を含み、商品の販売時点で消費者に提供されるプラスチックを原料とした袋に関しては、すべて有料化とすることを2018年に制定しています。
ただし衛生面から必要とされるものや、厚さ50マイクロ―メートル以上で再生プラスチックが70%以上を含むものは対象外です。
使用禁止とはしないものの、明確な基準を決めて使用を抑制する狙いがあります。
価格設定は事業者の自由裁量になっていますが、法令で示す概算価格は参考にすることが示されています。
オランダの制度
オランダではプラスチック製のレジ袋を含むすべての袋を有料化することが2016年に決定しています。
ただこちらも例外があり、15マイクロメートル以下で衛生面または利便性で必要な場合や、免税店で液体を入れた容器や缶を購入した際に規定に従って透明な袋を使用するなど、他の制度上必要な場合は除外されています。
価格は事業者の自由裁量ではあるものの、政府では1枚あたり0.25ユーロを推奨しています。
(出典:経済産業省「レジ袋有料化に係る背景について」,2019)
(出典:経済産業省「諸外国におけるレジ袋等容器包装の使用実態調査」,2008)
レジ袋を使わない!世界でプラスチックごみを削減しよう
プラスチックは軽量で変形させやすく、大量生産もしやすいため非常に便利です。
しかしそれ故に人間は大量に消費し、一部はごみとして環境に大きな影響を与えることとなりました。
これ以上環境汚染を深刻化させないためにも、私たちはプラスチックごみ削減に取り組む必要があります。
プラスチックの使用量を抑えることも、ごみ削減に向けた1つの対策になりますが、その1つがレジ袋の使用を減らすことです。
レジ袋の有料化は使用量を抑えつつ、私たち自身でもプラスチック製のレジ袋の必要性の見直しや、布製の買物袋を持参するなど自発的に取り組まなければいけません。
買い物は生活している以上、オンライン販売を含めて誰もがする行為ではありますが、身近で取り組める環境問題への対策として、今日から意識して行動してみてはいかがでしょうか。
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