私たちは燃料や原料に油を用います。私たちの生活にとっては必要なものですが、その油が海に流出してしまうと、海洋汚染を引き起こしてしまいます。
油による海洋汚染は環境への影響だけでなく、生態系にも大きな問題を発生させています。
この記事では油による海洋汚染について紹介します。
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海洋汚染の原因とは
海洋は私たちにとって様々な恩恵を与えてくれます。海洋資源、特に漁業資源は私たちの食を支えてくれていることから、特に身近な恩恵となっています。他にも二酸化炭素や地表熱の吸収など、生活していく上で目に見えない働きもしてくれています。
もちろんそれだけではなく、私たちが生きていく上で助けられていることばかりであり、海がなくなれば人間だけでなく、この世界に存在するほとんどの生物が絶滅せざるを得ないほど、かけがえのない存在です。
そんな海洋が恩恵を受けている私たちの手によって直接的、あるいは間接的に汚染されています。
その要因として主となるのが海洋ごみの存在であり、特にプラスチックが海洋に流れ出すことで、環境を壊し、生態系を狂わせる事態を招いています。
また生活排水や工場排水に含まれる栄養塩が富栄養化という現象を起こし、赤潮による汚染や貧酸素化による海洋生物の大量死などを引き起こすこともあります。
このような汚染は間接的なものであり、環境や海洋生物にも大きな影響を与えています。
どれも私たちが営む生活の中で発生したものばかりですが、そうではない要因で海洋を汚染しているものもあります。
それが油による海洋汚染です。もちろん油は私たちの生活の中から排出されることもありますが、それ以上に船舶などによる油の流出が海洋を汚染しているというデータがあります。
油の海洋汚染は、流出した環境を即汚染するだけでなく、除去に時間がかかることから他の原因と同様にすぐに改善できません。
この油による海洋汚染が現状どれくらい発生しており、どのような被害を及ぼすのか、見ていきましょう。
油による海洋汚染の現状
油による海洋汚染は世界中で起こっていますが、今回は日本近海での汚染状況に着目していきます。
海上保安庁がまとめたデータでは、2016年の海洋汚染発生件数が437件にのぼることが分かっています。
この内訳は廃棄物、油、有害液体物質、その他と分けられていますが、油による海洋汚染は293件、次いで廃棄物が111件、有害液体物質が21件、その他が12件と報告されています。
廃棄物自体は相当数海へ流れ出ており、その中でも汚染につながった件数がまとめられています。
報告内容から油による件数が多いことがわかります。これを海域別・物質別に分けてみると、瀬戸内海における油による汚染が57件と最も多く、次いで本州東岸が47件、廃棄物による北海道沿岸の汚染が32件、廃棄物による本州東岸が22件と続いています。
このように油による汚染発生件数が多いのは、油が流出することによって汚染が広がりやすいことも一因です。
油がどのような理由で排出されたのかについても見ていきましょう。
油による汚染293件のうち、船舶による排出が170件で全体の58%を占め、このうち取扱不注意が85件、故意が20件となっています。
特に取扱不注意に関しては、初歩的なミスが主要因となっていることが多く、人為的な流出が3割ほどを占めていることになります。
データを2018年の汚染状況と比較してみると、2018年には414件の海洋汚染が発生し、うち油による汚染が283件であったとの報告がなされています。
そのうち船舶による排出が165件で取扱不注意は67件という結果になりました。
この結果から2016年から2018年にかけて減少はしているものの、依然として油による汚染が続いていることが分かります。
(出典:海上保安庁「平成28 年の海洋汚染の現状について」,2016)
(出典:海上保安庁「平成30年の海洋汚染の現状について」,2018)
海洋に流出した油が及ぼす被害
海洋に流出した油は、見た目にも環境を汚染していることが分かりますが、さらに深刻なのは生態系への影響です。
また、回り回って私たちの生活や健康にも被害を及ぼします。それぞれの観点で、どのような被害をもたらすのか紹介します。
海洋生態系への影響
油の流出による生態系への影響は非常に深刻です。魚は植物やプランクトンと異なり、水中を素早く移動できるため、一時的に流出した油から逃れることができます。
しかし内湾や養殖場など閉鎖的な空間ではそれが難しく、大量死につながりやすいとされています。
また油は付着しやすく、魚のエラや体表に付着すると機能不全を起こし、稚魚や卵は抵抗力が低いことから死に至ることが多くなります。
これは魚に限らず水鳥や海獣にも言えることです。水鳥はその体表に油が付着することがあり、これによって羽毛が空気を蓄えられず、機能を損なって遊泳や飛翔が困難になることや、体温の低下を起こすなどの被害が出て死ぬこともあります。
水鳥類や海獣類は石油で汚れた羽根や体毛を口で整える手段しか持たないため、体内に油を取り込んでしまいます。
あるいは皮膚から直接浸透することや油膜から蒸発した石油成分を蒸気として吸い込んでしまうことで、細胞毒性による内臓の損傷や中枢神経系への作用で行動障害や知覚麻痺を起こすことがあります。
死に至らなかったとしても、動きが鈍化して餌が取れなくなることや外敵から身を守れず、結果的に死んでしまうこともあります。
これは海面や海中だけでなく、海岸などに生息する貝や甲殻類にも起こりえることであり、油は海岸へ波に乗って押し寄せることで被害が拡大するため、油の流出が広範囲にわたれば、それだけ多くの生物に影響を与えることになります。
海藻類についても油を取り込むことによる障害の発生や、油の付着による光合成の阻害により生長不順や死に至ることが少なくありません。
仮にこのような海洋生物が被害から逃れたとしても、海洋の食物ピラミッドの土台となっているプランクトンが油によって減少することが考えられ、魚の餌が激減して連鎖的に大量死を起こすことがあります。
また油流出後しばらくすると、珪藻類などの特定のプランクトンが増殖し、赤潮の発生に結びつく可能性が指摘されており、間接的な海洋汚染にもつながると考えられています。
私たちの生活や健康への影響
油の流出は私たちの生活や健康へも影響を与えます。油の流出は魚や水鳥、海獣種、貝類、甲殻類、海藻類とあらゆる海洋生物に被害を与えるため、私たちが食卓で食べる魚介類の漁獲量にも影響を与えるとされています。
死滅しなかったとしても、石油臭の付着によって商品にならないことや、汚染された海域での養殖場の壊滅的な被害により、魚介類は高騰する可能性があります。
また石油臭などの付着がなくても、油を取り込んでしまった魚などを食べれば健康被害は免れません。油が広がることで観光産業にも被害を与えます。
こういった経済的あるいは産業的な被害を改善するために、油の回収や防除作業が行われますが、この作業を行う人々も油に直接接触するため、健康被害を受けやすいとされています。
石油に含まれる成分には、人体に悪影響を及ぼす毒性が強い成分が確認されています。
石油に触れ続ければシンナー中毒のような症状を起こして、酷い場合は頭痛やめまい、吐き気などを催します。
重度になれば死に至るため、慎重に作業が行われますが、それでも健康へ何らかの被害が及ぶことは少なくありません。
(出典:製品評価技術基盤機構「流出石油が環境に及ぼす影響」)
油の流出による海洋汚染は大きな人災
油は人の手によってしか流出しません。海洋ごみの流出や生活排水・工場排水の流出も人の営みによるものです。
これは自然に支えてもらっている私たちが、その恩を仇で返すように海を汚染していることになります。
油の流出の大部分は船舶によるものであることは分かっていますが、私たちの生活の中でも油の流出は起こっています。
油の流出は人災です。海に携わる人たちはもちろんのこと、海から離れた地域に住む人であっても油によってどのような汚染が起こり、どのような被害が生まれているのか知ることはとても重要なことです。
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