海洋汚染

海洋汚染防止法とは?目的や内容をわかりやすく解説

海洋汚染は世界で問題になっている事象の1つです。
これは海洋ごみや油の排出などによって起こっていますが、日本では数十年前から油の排出による海洋汚染を防ぐための法律を定め、防止に取り組んでいます。

海洋汚染を防ぐための法律である海洋汚染防止法の目的や内容を何なのか、この記事で解説していきます。

海洋汚染とは?原因や環境への影響、現状について解説!

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日本の海洋汚染の現状


海洋汚染がこのまま進むと2050年には海洋生物よりも海洋ごみの方が多くなると言われています。

海洋ごみの中でも特に深刻なのはプラスチックが海に漂い汚染する海洋プラスチックごみです。
また油排出による汚染も深刻です。2018年の汚染確認件数は414件あり、その中で油による汚染は283件と全体の68%にも及んでいます。

海洋ごみや油排出による海洋汚染の影響は様々なところに現れていますが、その中でも顕著なのは海洋生物やその周辺で生きる生物の減少です。

海洋汚染によって海洋生物が住みづらい環境ができてしまい、ごみや油、化学物質を取り込むことで大量に死んでしまう生物も少なくありません。
またこれまで産卵などをしていた場所が汚染され産卵に適した環境でなくなり、その数を減らす原因にもなっています。

海洋汚染による影響は私たちの生活にも返ってきています。
海洋生物が減少するということは、生態系のバランスが乱れこれまで獲ってきた魚介類の数の減少につながります。

そうなると私たちが食事の中で取り入れる魚介類が減るばかりか、漁業者も減ることになります。
彼らは海洋の環境保全も行っていることから、その数が減ると海洋環境はさらに悪化する可能性もあります。

実際に漁獲量の減少により廃業しなければならなくなった漁業者もいます。海洋汚染をしてしまうと負のスパイラルが起こり、余計に汚染を進めてしまうことにもなりかねません。

  • 海洋汚染がこのまま進むと、2050年には海洋生物よりもごみの方が多くなる
  • 海洋プラスチックごみと油の排出による汚染が特に深刻である
  • 海洋汚染による漁獲量の減少によって、廃業に追い込まれる漁業関係者も珍しくはない

(出典:環境省「海洋プラスチック問題について」)

(出典:環境省 海洋生物多様性保全戦略公式サイト「海のめぐみって何だろう?」)

(出典:海上保安庁「平成30年の海洋汚染の現状について」,2019)

海洋汚染防止法とは


海洋汚染防止法は正式名称を「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」と言います。1970年に制定され、2017年に最新の改正が行われています。
この法律の目的は船舶などから油や有害液体物質、廃棄物などを海洋に排出することや海底の下に廃棄することを規制することです。

これらを規制することで海洋汚染や海洋災害を防止し、海洋環境を保全することが目的となっています。

  • 海洋汚染防止法の正式名称は「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」
  • 1970年に制定され、2017年に改正が行われている
  • 船舶などから油や有害液体物質、廃棄物を排出したり海底の下に廃棄することを規制している

(出典:e-Gov「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」)

海洋汚染防止法が策定された背景


海洋汚染防止法は1970年に成立した法律です。これ以前に政府の重点政策として公害対策を取り上げた「公害対策基本法」が成立しており、その子法として船舶からの油の排出を規制する「海水油濁防止法」がありました。

海水油濁防止法の規制対象と範囲を拡大する形で、同法を廃止し成立したのが海洋汚染防止法です。
2004年2月には国際海事機関(IMO)において船舶バラスト水規制管理条約が採択され2017年9月に発効しました。

これを受け、この条約を国内担保する改正海洋汚染防止法が2017年9月に施行されました。

  • 1967年に公布された「公害対策基本法」の子法となる「海水油濁防止法」が前身である
  • 「海水油濁防止法」の規制範囲を拡大したものが「海洋汚染防止法」
  • 2004年に国際海事機関(IMO)による「国際バラスト水規制管理条約」採択された影響を受け、2017年に改正海洋汚染防止法が施行された

(出典:国土交通省「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法令(条文)」)

(出典:環境省「第6節 海洋環境の保全」)

海洋汚染防止法の内容とは


それでは海洋汚染防止法で定められている目的や海洋汚染の防止義務とその具体的な内容について紹介します。

まずこの法律では油や有害液体物質、廃棄物を海洋に排出することや海底の下に廃棄することを規制することにより、海洋の汚染や海洋災害を防止すること、そして海洋環境を保全することを目的としています。

また海洋汚染の防止義務として、船舶や海洋施設、航空機から、油や有害液体物質、廃棄物の排出、海底への破棄などを行わないことで海洋汚染の防止に努めなければいけないと定められています。

船舶からの油の排出の規制

この規制では「何人も海域において有害液体物質を排出してはいけない」と定めています。
ただし以下の条件下において有害液体物質の排出などやむを得ない場合には、その限りではありません。

  • 船舶の安全の確保、あるいは人命を救助するため
  • 船舶の損傷などやむを得ない原因による油の排出が行われた場合、それ以上の油の排出を防止するため、可能な一切の措置をとったとき

またある条件下において排出海域や方法に関して政令で定める基準に適合するものや、海上保安庁長官の承認を受けているものについては適用されません。

有害液体物質による海洋汚染防止のための設備

船舶所有者は有害液体物質を輸送する船舶に、有害液体物質を船舶内に貯蔵または処理するための設備、または有害液体物質排出防止設備を設置しなければなりません。

有害液体汚染防止のための管理者を選任

船舶所有者は船舶ごとに船舶職員の中から船長を補佐し、船舶から有害液体物質の不適正な排出を防止する業務を行う有害液体汚染防止管理者を選任しなければなりません。

さらに「有害液体汚染防止規程」を定め、船舶内に備え置き、掲示しなければなりません。
また有害液体物質の不適正な排出がある、あるいは排出する恐れがある場合は船舶職員などが直ちにとるべき措置について、「有害液体汚染防止緊急措置手引書」を作成し、これを船舶内に備え置き、または掲示しておかなければいけません。

有害液体記録簿

有害液体物質を輸送する船舶の船長は、有害液体物質記録簿を船舶内に備え付け、国土交通省令で定める有害液体物質の排出や有害液体物質の取扱いに関する作業が行われた場合は、この記録簿に記載する必要があります。

さらに有害液体物質記録簿を最後に記録した日から3年間船舶内に保存しなければなりません。

大量の油、有害液体物質の排出に備える防除措置

特定油以外の油及び有害液体物質の防除のための資材、排出油などの防除のために必要な資材を、国土交通省令で定める場所に備え付け、機械器具を配備し、及び排出油などの防除に関し必要な知識を有する要員を確保しておかなければなりません。

有害液体物質について

1978年の国際会議において、「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MARPOL73/78)」が採択されました。追加されたMARPOL(マルポール)条約附属書Ⅱに規定されている有害物質リストによってX類、Y類、Z類に分類されています。

また海洋環境の保全の見地から有害でない物質も定められています。タンクの浄化作業またはバラスト水の排出作業により海洋に排出された場合、次のようになります。

X類物質:海洋資源または人の健康に重大な危険をもたらすもの
Y類物質:海洋資源または人の健康に危険をもたらすもの
Z類物質:海洋資源または人の健康に軽微な危険をもたらすもの

  • 「何人も海域において有害液体物質を排出してはいけない」と定められているが、人命救助などある条件下ではその限りではない
  • 船舶所有者は、有害液体物質や油の防除設備や専門家を置く必要がある
  • 有害液体物質の排出や取扱いが行われた場合、有害液体物質記録簿に記載しなければならない

(出典:e-Gov「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」)
(出典:国土交通省「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MARPOL73/78)」)

油・廃棄物による海洋汚染は深刻な問題に


油や廃棄物は海洋汚染の原因の1つであり、その被害は深刻です。
油や廃棄物が排出されることで、大きく汚染されます。これによりその地域に住む海洋生物はこれらを取り込んでしまい、生殖や生育などに障害をもたらすことがあります。

また海洋で生きる哺乳類や爬虫類は呼吸や産卵のため海面に浮上しますが、その際体表は油に汚染されることになります。
漁業や観光産業にも影響を及ぼします。このように油や廃棄物による海洋汚染が広がれば深刻な事態になりかねません。

そうならないためにも、海洋汚染防止法などの法律による規制で大切な海を守っていけるよう取り組まれています。

私たちが故意に油を排出することはほとんどありませんが、ごみのポイ捨てによる海洋汚染なども同様に被害をもたらします。

私たち自身も海を守れるように、日常的に心がけていくことが大切です。

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この記事を書いた人
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