世界では開発途上国を中心に砂漠化が進み、深刻な事態に陥っている国もあります。
砂漠化が進む現状と、深刻な国や地域、必要な支援について解説します。
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世界で起こる砂漠化の今
世界では1970年代から砂漠化の存在と危険性を提唱し、様々な取り組みを行ってきました。
しかし各地の砂漠化は進行し、特に開発途上国で広く発生しています。
この砂漠化が起こる要因はこれまでの調査や研究で、地球温暖化や気候変動による気温の上昇や干ばつ、乾燥化などの気候的要因と過剰な森林の伐採(過伐採)や開墾や農耕(過開墾)、許容量を超えた放牧(過放牧)による人為的要因の2種類に分けられています。
人間の生産活動を行う上では必要なことですが、これが過度になるとその時の許容限度を超えてしまい、乾燥化することで脆弱となった生態系に追い打ちをかけ、肥沃だった土地も見る影を失うほど劣化してしまいます。この気候的要因と人為的要因が絡み合って砂漠化は起こっています。
- 世界では砂漠化は進行し、特に開発途上国で広く発生している
- 砂漠化が起こる要因は、気候的要因と人為的要因の2種類に分けられる
(出典:環境省「人々の暮らしと砂漠化対処」)
(出典:J-STAGE「世界 における砂漠化 とその研 究の現状」)
(出典:国連広報センター「砂漠化について考える。日常を非日常にしないために。」)
砂漠化が深刻な国は?
世界的に見て、砂漠化の大半は開発途上国で起こっています。その中でも特に深刻化しているのは、サハラ以南のアフリカ諸国です。
アフリカ大陸各地の国では水食による砂漠化が進行しています。水食とは降雨や地表を流れる水によって土壌が地表から流される現象をいいます。
水食は、畑や裸地で起こりやすく森林では起こりにくいのですが、開発途上国では経済を農業に頼らざるを得ない国が多く、農地を作るため森林を伐採し、開拓をしなければいけません。
樹木自体も商品となるため、生活基盤を得るために過開拓や過伐採が起こります。これにより森林が失われ、農地や裸地が増えることで水食の影響を受けやすくなり、砂漠化が進行します。
先述しましたが過伐採や過開拓は人為的要因であり、この要因で起こる浸食に加えて、地球温暖化や気候変動による、異常少雨や干ばつが相次いでアフリカを襲い、乾燥化が加速して砂漠化が進行することとなりました。
開発途上国だと対策を行う資金や技術がないところもあり、先進国から技術支援や援助が無ければ対策は進まず、砂漠化の進行を見守るだけとなっています。
この問題は開発途上国以外でも起こっています。その代表例が中国であり、一時期は深刻な砂漠化が進行していました。
こういった砂漠化が特に深刻な国や地域について、なぜ砂漠化が進行してしまったのかどういった国や地域で砂漠化が進行しているのかなどを見ていきましょう。
ブルキナファソ
ブルキナファソの南西地方では、2002年に内戦が勃発したコートジボワールなど外部からの人口流入が多く、綿花や食料生産のため農地を拡大し、金鉱開発のため森林を伐採していることから、森林は減少しています。
これに気候変動の影響による年間降水量の減少や干ばつ、近年の集中豪雨に襲われ、水食の影響を受けやすくなり土地の劣化や砂漠化が深刻な状況になっています。
エチオピア
エチオピアでは1974年に王政から社会主義国家に変わり、その際に土地の利用券が分配されたことで、多くの森林が伐採され農地に転換されました。
さらにエチオピアのナズレト周辺では、降雨などの気候的要因に加えて人口増加が起こり、耕作地の休閑が行えず、さらなる農地拡大や家畜頭数の増加などから、森林の現象が続き、水食による砂漠化も深刻化しています。
モロッコ
モロッコは1970年代に大規模なオリーブ畑が開発されました。これにより、元々森林であった場所を利用したため、森林が減少しています。
また1980年代には耕作地への転用、居住地域の拡大、森林火災などが進み、森林が減少したこともあって、特にシャウエン周辺では水食による砂漠化が進行しました。
ソマリア
ソマリアは20年に渡る内戦を経て、2012年9月に新しい大統領の選出により平和への歩みを進めました。
しかし内戦による土地の荒廃や、干ばつによる土壌の劣化は深刻であり、国民は劣悪な環境下で、困難な生活を強いられています。
インド
インドはその国土の3分の1がサバンナやステップ、砂漠気候に属しており、国土の半分以上である170万平方kmが劣化・荒廃した土地になっています。
これに加えて過放牧や森林伐採、農耕地の不適切な運用、灌漑水管理の不徹底などが原因と考えられる深刻な砂漠化が進行しています。
中国
中国では西北部の砂漠化が深刻となっています。北京市や河北省などが風によって土壌が分散・運搬されてしまう風食、そして森林伐採や過放牧、過開墾による森林の現象により、深刻かつ広大な範囲の砂漠化が進行しました。
これに対して中国政府は、過放牧や過開墾、過伐採を禁止し、植林を行うことで砂漠化進行を阻止しました。しかし、これまで森林が成立していなかった土地での植林による水不足や、今なお砂漠化している土地が広大であることから、新たな問題の出現と砂漠化の状況は継続しています。
- 砂漠化の大半は開発途上国で、その中でも特に深刻化しているのは、サハラ以南のアフリカ諸国
- 砂漠化が深刻な国は、ブルキナファソ・エチオピア・モロッコ・ソマリア・インド・中国
(出典:国立環境研究所「砂漠化と人間活動の相互影響評価に関する研究」)
(出典:国連広報センター「砂漠化防止」)
(出典:環境省「深刻なアフリカの砂漠化」)
(出典:国際協力機構「ソマリア」)
(出典:J-STAGE「中国における乾燥地緑化の現状と課題」)
砂漠化を防止するために必要な対策や支援
砂漠化を防止するためには、人為的要因と気候的要因のどちらに対しても取り組みを進める必要があります。
砂漠化の人為的要因は過伐採や過開墾、過放牧による森林の現象と土壌の不適切な使用になります。
中国ではこれらを禁止しました。適切な範囲で適切な量の伐採や開墾、放牧であれば砂漠化を大きく進める可能性は低くなります。
また塩害や化学肥料の使い過ぎも、土壌の生産能力を著しく低下させて劣化させるため、休閑を設ける、化学肥料を過剰に使用しないなどの適切に運用する環境保全型農業を行うことが必要になります。
まずは土壌の劣化を防ぎ、砂漠化していない土地を維持することが大切です。その上で、植林などを行い劣化した土地を回復させる取り組みを進め、劣化や砂漠化した土地の面積を減らしていく必要があります。
砂漠化が進行する国や地域への支援
砂漠化を防止するための対策を行うためには、政府が主導するなどして、必要な資金と技術を砂漠化が進行する地域に提供し、取り組まなくてはいけません。
しかし開発途上国が多いことから、対策ができていない地域も多く存在しています。そうなると先進国による支援や援助が必要です。
実際に砂漠化対処条約(UNCED)では、この条約を批准している先進締約国が開発途上締約国に対して、資金供与や技術提供などを支援することを規定します。
日本もこの条約を批准しており、先述したブルキナファソやエチオピア、モロッコなど様々な地域を支援しています。
日本の支援は主に、資金供与や砂漠化の原因を抑止するための技術提供、その地域や土地に合った新しい技術を研究することです。
ブルキナファソへは水食対策として、荒廃地回復技術や土壌を適切に活用する蓄耕技術などの技術提供が行われています。
中国の河北省の砂漠化には日本の企業が協力し、植林事業を進める支援も行われました。
土壌の維持と劣化・砂漠化からの回復に必要な技術の提供や、砂漠防止に有効な植林を支援として行っていくのは1つの方法になります。
- 砂漠化を防止するためには、まず土壌の劣化を防ぎ、砂漠化していない土地を維持することが大切
- 砂漠化対処条約(UNCED)では、この条約を批准している先進締約国が開発途上締約国に対して、資金供与や技術提供などを支援することを規定
- 日本の支援は主に、資金供与や砂漠化の原因を抑止するための技術提供、その地域や土地に合った新しい技術を研究すること
(出典:国連広報センター 「砂漠化について考える。日常を非日常にしないために。」)
(出典:環境省「人々の暮らしと砂漠化対処」)
砂漠化は世界に広がる深刻な問題
世界では砂漠化が深刻な問題となっています。砂漠化が進むことで影響を受けるのは、土壌の劣化・砂漠化が起こる地域だけではありません。日本に住む私たちにも様々な影響が出る可能性があります。
砂漠化により生活の基盤を失い、水や食料が不足すると、砂漠化の影響を受ける人々は他の街への移住や難民となる可能性があります。
難民ともなると移民問題の新たな発生、土地や資源をめぐる衝突から紛争や内戦に発展する可能性もあり、社会情勢が不安定になります。
あるいは砂漠化による動植物などの生態系の変化は気候変動や地球温暖化へも影響を与えます。
毎年日本の上空にも現れる黄砂も砂漠化の影響の1つです。黄砂が飛来する量が増え、人体へ悪影響を与えると懸念されています。
砂漠化が起こっていない地域でも関係があります。各地の砂漠化を進めないためにも、私たちができることを始めていくことをおすすめします。
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