人種差別は世界で起こる問題であると認識はされていますが、実は日本国内にも存在しています。
しかし日本人は人種差別に対しての意識が低いなどの理由から、あまり問題として挙がりません。それでも人種差別を受け、苦しむ人は確かに存在します。
そのような事実を知るためにも、この記事では日本における人種差別について、その歴史とともに紹介します。
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日本国内でも起こる人種差別
世界には様々な民族や種族の人々が生活しています。
住む国や地域は異なり起源にも違いがありますが、同じ人類であることに変わりはありません。言葉や文化、宗教、思想などは生まれてきた環境で違いが生まれ、それらは自由であり、お互いに受け入れ、認め合うべきものです。
それが危険思想なのであれば、排斥するのではなく、向き合い改善していくように働きかけることも必要となるでしょう。
グローバル化が進む昨今の世界において、人種差別の問題は特に重要となります。
人種、言葉、文化、考え方が違うからと区別や排斥をしてしまえば、世界全体で手を取り合って生きていくことはできません。それどころか差別が横行し、憎しみ合う世界すら生まれてしまう可能性があります。それは国家間だけでなく、国内においても同様です。
アメリカにおける白人と黒人の関係、ヨーロッパにおける移民の問題など先進国においても人種差別は起こっています。これは日本でも例外ではありません。歴史上、日本国内でもいくつもの差別がありましたが、人種を原因とした差別も存在しています。
日本は世界から見ても人種差別に対する意識が低い国とされており、人種差別を撤廃するための取り組みも遅れています。
そんな日本で、どのような人種差別があったのか、その歴史を紐解いてみましょう。
日本における3つの人種差別の歴史
差別は世界中にありますが、日本国内でも存在しています。それは女性をはじめとしたジェンダーの問題や子どもや高齢者に対する人権、障がい者やHIV、ハンセン病など感染者に対する人権問題などです。
これらは今でも日本国内でも問題となっており、正しい知識や教育、差別をなくしていくための対策が求められています。
ただこれらは様々な差別の例であり、人種差別とは異なります。日本国内にある人種差別は主に3つに分けられます。
それは「アイヌ民族の人権問題」、「同和問題」、「外国人の人権問題」です。これらは歴史との関連が根強く、未だに日本国内の様々な場所で、あるいは一部の地域で発生します。
どのような歴史で、どんな人種差別であるのか見ていきましょう。
アイヌ民族への差別
2020年時点でも北海道を中心として生活しているアイヌの人々は、元々この地で狩猟や漁労、採取などを行っていた固有の民族でした。
かつて北海道は日本の領土ではなく、アイヌ民族が住む未開の地となっていましたが、15世紀以降に和人(※1)に侵略されていきました。
侵攻に対して、1669年にはシャクシャインの指導の下で蜂起しましたが、徳川幕府による松前藩への援軍や武器・兵糧の供与などにより劣勢となって、シャクシャインの謀殺によって降伏することになりました。
これをシャクシャインの戦いといいますが、その後はさらに和人の侵略を許すことになり、明治時代に入ると一方的な同化政策が行われて、アイヌの人々のそれまでの生活様式などはすべて廃止され、奪われていきました。
旧土人として位置づけられたアイヌの人々は、法律の下、保護の名目で搾取と抑圧が行われていき、北海道の開拓を目的とした屯田兵という移住者の急増によって、和人によるアイヌの人々の差別が強まることになったのです。
アイヌ民族を保護するとの名目で1899年に制定された「北海道旧土人保護法」は国内外で厳しい批判を受け廃止し、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統に関する知識の普及及び啓発に関する法律」を新たに制定しました。
しかし、アイヌ民族が求めた先住権については触れられておらず、法律が制定しても個人レベルでのアイヌの人々への差別がすぐさま解消するものではありませんでした。
実際に生活や労働・就職、恋愛、結婚、学校生活などで差別的な経験をしたという人は今なお存在しています。
※1 和人:日本本島に住んでいた日本人
(出典:北海道「アイヌ政策推進局アイヌ政策課」)
穢多・非人への差別
日本国内では、本来は同じ日本人であるにも関わらず、異なる身分を作りだし、差別するという固有の人権問題が存在しました。
人種という意味では民族、種族的に同じであるにも関わらず、その地域の出身であるということだけで社会的、経済的、文化的に低く見られ、生活していく上で差別を受けていた人々がいました。
この身分制度は江戸時代に生まれたものであり、死に関する仕事を行う人々を穢れているものとして扱いました。そのような仕事をしている人々を「河原者(かわらもの)」と呼んで、蔑み、厳しく差別していたのです。
動物の解体処理や革剥ぎなどを行っていた彼らは、部落全体で差別を受けてはいたものの、社会に必要な仕事として様々な分野で功績をあげてきました。
しかし、江戸時代になると部落差別を受ける人々を穢多(えた)・非人(ひにん)と呼ぶようになり、社会全体で差別するようになったのです。
穢れが多い人、人に非ずと蔑まれ、同じ民族、種族であるにも関わらず、まるで別の人種かのように酷い差別を受けてきました。
明治政府になって「賤民廃止令」により、このような身分制度は廃止されましたが、人々に根付いた差別意識が変わることはありませんでした。
この差別意識は今もなお続いている地域もあり、部落解放の活動が継続して行われています。
先にも触れたように人種差別の定義からすればやや異なる部分はありますが、ほかの人種差別同様に、別の民族や種族といった見方により厳しい差別を受けてきた、という意味では日本における固有の人種差別として見ることもできる事項です。
(出典:彦根市「同和問題」)
外国人への差別
日本には労働者として、あるいは留学生、旅行者として様々な国の人々が訪れます。
日本の風土や文化に憧れ訪れる人や、出稼ぎのため滞在する人など、その理由は異なりますが、日本に入国し、活動しています。
これはグローバル化する世界において当然の光景ではありますが、外国人であることを理由に居住、就職を拒否する事例や、ハーフ、クォーターであることを理由とした嫌がらせなどが起こっています。
もちろん偏見や差別を持っていない日本人もいます。
しかしこの問題は一部であっても実際に起こっている事象です。特定の民族や種族、国籍を持つことによりヘイトスピーチなどを受け、日本を訪れた外国人の尊厳を傷つけています。
日本は日本語によるコミュニケーションが主となっており、母国語のみでやり取りをすることが多いです。
一方で海外では母国語に加えて英語ができるなど、2ヶ国語以上話せる人が多く、他国に行っても英語によるコミュニケーションがしやすい人々がほとんどです。そういう人々にとって日本語しかできない日本はある意味でコミュニケーションを取りにくい国となってしまっているかもしれません。
また日本人の中には、日本語ができない外国人を敬遠してしまう風潮が見られます。このようなコミュニケーションの不和からもお互いを理解できず、差別につながることも少なくありません。
お互いに理解をしようと努力する人も大勢いることから、差別が起こるのは一部ではありますが、その一部のヘイトスピーチが広がることにより差別を助長することもあります。
あるいは日本人が受けてきた歴史的な差別による意趣返し的なものも存在しているとも考えられます。
2020年時点でも国によっては日本人であることから差別を受けることがある地域もあると言われており、差別が差別を呼ぶ環境が構築されているのかもしれません。
日本国内の人種差別をなくしていくために
日本では世界同様に人種に対しての差別が存在しています。それは海外からの来訪者だけでなく、国内で過去に生まれてしまったものも含まれており、差別の意識は根強く残っています。
この人種差別を撤廃していくために、これまでも様々な活動が行われてきました。
しかし一部の人が差別を訴えたとしても、一人ひとりが考えていかなければ撤廃していくことはできません。それは差別が思想から生み出されているものであり、思想は私たち個人がそれぞれ持つものであるためです。
生きてきた環境や生活、文化、教育などが影響して構築される思想は、子どものときに強く影響を受けます。
つまり生活や、教育において差別をしないという考えを持てるようにできなければ、差別をしてしまう可能性も出てきます。
また大人が、子どもたちに差別をしないという姿勢を見せていかなければ、背中を見て育つ子どもたちにとって差別が悪いことであるという認識は芽生えません。
今も人種差別により傷つき、苦しむ人がいます。そのような人を助けるため、あるいは私たち自身が差別される側の立場になりえることも考え、人種差別を断ち切ることができる行動をしていきましょう。
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