「選択的夫婦別姓のデメリットを公平な視点で知りたい」「外国人配偶者がいる場合の影響を確かめたい」
本記事は、賛成派・反対派どちらの立場の方にも役立つように、デメリットの論点を整理し、外国人との結婚(国際結婚)で固有に生じる課題まで踏み込んで解説します。
制度の基本(いつから?メリット・現行制度との違い)については 日本の選択的夫婦別姓制度はいつから?メリット・デメリットも解説 で、ジェンダー平等の関連トピックは ジェンダー平等カテゴリ で詳しく解説しています。
本記事では「デメリット」と「外国人との結婚」という2つの切り口に絞り、2025年の法案提出など最新動向も交えながら整理していきます。
選択的夫婦別姓をめぐる現状と2025-2026年の最新動向

デメリットの議論に入る前に、選択的夫婦別姓をめぐる前提を最新動向とあわせて整理します。
現行法では夫婦同姓が義務
民法750条により、日本人同士の結婚では夫婦が同じ姓を名乗ることが義務付けられています。
法務省の調査では、実際には約94%の夫婦が男性の姓を選んでおり、女性側が改姓するケースがほとんどです。世界で夫婦同姓を法律で義務化している国は日本のみという状況も、たびたび指摘されます。
(出典:法務省『我が国における氏の制度の変遷』『各国の氏の制度』)
2025年4月、28年ぶりの法案提出
2025年4月、立憲民主党と国民民主党は選択的夫婦別姓を導入する民法改正案を国会に提出しました。これは選択的夫婦別姓に関する民法改正案が国会で実質的に議論された28年ぶりの出来事です。日本維新の会は『旧姓の通称使用の法制化』という別アプローチの法案を同時期に提出しています。
(出典:立憲民主党『選択的夫婦別姓法案を提出』(2025年4月)/各種報道)
2025年10月、自民+維新連立合意
2025年10月、自民党と日本維新の会は連立合意で『旧姓使用の法制化法案を2026年通常国会に提出する』方針を明記しました。選択的夫婦別姓そのものではないものの、与党側でも何らかの制度改正に向けて動きが進んでいます。
(出典:自民党・日本維新の会 連立合意文書(2025年10月))
・2025年4月、立憲・国民が選択的夫婦別姓法案を提出。28年ぶりに国会で実質議論
・2025年10月、自民+維新の連立合意で『旧姓使用法制化』法案を2026年通常国会へ提出する方針が明記
選択的夫婦別姓の主なデメリット6点

ここからが本題です。選択的夫婦別姓のデメリットとして、議論で頻出する6つの論点を整理します。
1. 子どもの姓の選択をめぐる悩み
選択的夫婦別姓制度では、結婚時に夫婦のどちらかの姓を子どもの姓として決め、複数の子どもがいる場合は全員が同じ姓を名乗ることとされています。夫婦が別姓だと、子どもがどちらの姓を名乗るかで意見が割れる可能性があり、家族内の対立を生むことが懸念されています。内閣府の世論調査でも『夫婦の名字が異なることについて、子どもに好ましくない影響がある』と考える層が一定数います。
(出典:内閣府『家族の法制に関する世論調査』各年版)
2. 家族の一体感が弱まるのではないかという不安
『家族は同じ姓を名乗ってこそ』という伝統的家族観を大切にする層からは、別姓が家族の絆を弱めるのではないかという懸念が挙げられています。データで因果を示すのは難しい論点ですが、感情的な抵抗感としては根強く残っており、制度設計の議論で必ず触れられる点です。
3. 戸籍・行政システムの大規模改修コスト
選択的夫婦別姓を導入する場合、戸籍法・住民基本台帳・マイナンバー関連システムなど、多数の行政システムの改修が必要になります。改修には費用と時間がかかり、自治体窓口の運用も一時的に混乱する可能性があります。これは制度導入の純粋な実務的デメリットです。
4. 家庭裁判所の手続き増加
夫婦が別姓を選んだ後で、後日同姓に揃えたい、子どもの姓を変えたいといったケースが出てくる場合、家庭裁判所への申立てが増える可能性があります。利用者の負担と裁判所のリソース両方の観点でデメリットとして挙げられます。
5. 旧姓使用との二重コスト
『旧姓を法的に併記できる仕組みを拡充すれば十分』という意見の側からは、選択的夫婦別姓と旧姓使用の法制化が並走することで、ルールが二重化して企業・行政の運用が煩雑になるとの指摘があります。日本維新の会・自民党側が法案として『旧姓使用の法制化』を選んでいる背景でもあります。
6. 一部の海外法制との接続の論点
外国人配偶者がいる国際結婚の場合、本国法と日本側のルールの接続が複雑になることがあります。これが次節で詳しく扱う『外国人(国際結婚)固有のデメリット』です。
・家族の一体感が弱まるのではという不安は、データで因果を示しにくいが感情的に根強い反対理由
・戸籍・行政システムの大規模改修コスト、家庭裁判所の手続き増加、旧姓使用との二重コストといった実務的デメリットもある
・外国人配偶者がいる国際結婚では、本国法との接続で固有の論点が生じる
選択的夫婦別姓と外国人との結婚(国際結婚)の固有論点

ここからが本記事の核心です。日本人と外国人の国際結婚は、実は現行制度でも『夫婦別姓が原則』となっています。選択的夫婦別姓制度が導入されると、日本人同士の結婚にも別姓が選択肢として加わり、外国人配偶者がいるケースには独自の論点が生じます。
現行制度:国際結婚は『夫婦別姓』が原則
戸籍法107条2項により、日本人と外国人が結婚した場合は、日本人配偶者が改姓しないのが原則です。外国人配偶者の姓は日本の戸籍には記載されず、住民票や在留カードで管理されます。同姓を望む場合は、婚姻から6か月以内なら家庭裁判所の許可なく市区町村への届出で日本人配偶者の氏を変更できます(6か月超は家裁許可が必要)。
(出典:戸籍法107条2項/法務省『国際結婚と氏』)
デメリット1:制度が二重構造になり判別が複雑化
選択的夫婦別姓が導入されると、日本人同士でも別姓を選べるようになり、現行の『国際結婚=原則別姓』『日本人同士=同姓義務』という構造が見直されます。日本人配偶者と外国人配偶者の姓の選択肢が増える一方、自治体窓口や勤務先での運用上のケース判別が複雑になる点はデメリットといえます。
デメリット2:外国人配偶者の本国法との不整合
外国人配偶者の本国(米国・英国・中国・韓国・フィリピンなど)の婚姻氏ルールは国によって大きく異なります。本国法と日本側の運用が一致しない場合、パスポート・銀行口座・在留資格申請・査証手続きで姓の表記不一致が生じることがあります。これは現行制度でも発生している課題ですが、選択肢が増えるとケース判別がさらに細かくなります。
デメリット3:子どもの姓と国籍の一貫性
国際結婚で生まれた子どもは、特別な手続きをしなければ戸籍筆頭者(日本人親)の姓を引き継ぎます。複数の国籍を持つ子どもの場合、日本側の戸籍と外国側のパスポートで姓が異なると、海外渡航や学校手続きで毎回説明が必要になります。選択的夫婦別姓が導入されると、両親が別姓のケースで子どもの姓をどちらに揃えるかが追加で論点になります。
(出典:家事事件手続法/各家庭裁判所『子の氏の変更許可申立』案内)
デメリット4:複合姓(ダブルネーム)運用の複雑化
国際結婚では家庭裁判所の許可で日本人と外国人の姓を組み合わせた『複合姓(ダブルネーム)』を採用できます(例:田中スミス、山本ガルシア)。選択的夫婦別姓が導入されると、選択肢が『日本人配偶者の姓』『外国人配偶者の姓』『複合姓』『別姓のまま』と増え、家族で十分話し合いと事前準備が必要になります。
デメリット5:相続・在留資格との関係
外国人配偶者と別姓のまま婚姻している場合、現行制度では同居・経済的関係などから法律婚であることが立証可能です。しかし、同姓・別姓の選択肢が増えると、相続手続きや在留資格更新時に夫婦関係を示す書類の整え方に追加配慮が必要になる場合があります。実務的には行政書士・弁護士に確認するのが安全です。
・選択的夫婦別姓導入で日本人同士でも別姓選択可になると、国際結婚との制度接続で運用判別が複雑化
・外国人配偶者の本国法との不整合、複数国籍の子どもの姓・国籍の一貫性、複合姓の選択肢拡大などが固有論点
・相続・在留資格との関係も含め、実務面では行政書士・弁護士に事前相談すると安全
デメリットの裏返し——選択的夫婦別姓のメリットも整理

中立的な視点を保つため、デメリットの裏返しとなるメリットも簡潔に整理します。詳しくは関連記事を参照ください。
改姓に伴う事務手続きの負担軽減
マイナンバーカード・運転免許証・パスポート・銀行口座・国家資格などの名義変更が不要になり、本人と事務手続き側の負担が大幅に減ります。
キャリア・実績の連続性
論文・特許・営業実績などが旧姓で蓄積されている場合、改姓後も同一人物だと外国人取引先を含む関係者に認識してもらえる利点があります。経団連も2024年6月にこの観点から選択的夫婦別氏制度の早期実現を求めています。
(出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『選択的夫婦別氏制度の早期実現を求める』(2024年6月))
国際結婚での家族のアイデンティティ保持
外国人配偶者が『日本側でも自分の姓を保持できる』ことは、家族のアイデンティティ保持という観点でメリットになり得ます。これはデメリットとも言われる『二重構造の運用複雑化』の裏返しでもあります。
・キャリア・実績の連続性が保たれ、外国人取引先を含むビジネスでも本人特定がしやすくなる
・国際結婚では外国人配偶者のアイデンティティ保持に寄与する側面もある
海外動向——日本だけが取り残されているのか?

最後に、海外の制度動向を簡潔に整理します。
欧米・アジアでは別姓が法的に認められている
ドイツは1991年から、フランス・イギリス・アメリカでは慣習的・州ごとの違いはあれども、夫婦が自由に姓を選べる仕組みが整っています。中国・韓国は夫婦別姓が原則(妻が改姓しない)で、結婚後も旧姓を保持します。
国連からは4回の勧告
国連の女性差別撤廃委員会は、2003年・2009年・2016年・2024年の計4回、日本に対し選択的夫婦別姓を含む民法改正を勧告しています。世界で夫婦同姓を法律で義務付けている国は日本のみという比較からも、国際的な視点では制度改正が求められている状況です。
(出典:国連女性差別撤廃委員会『総括所見』各年版/法務省『各国の氏の制度』)
・国連女性差別撤廃委員会は2003年・2009年・2016年・2024年の計4回、日本に制度改正を勧告
・夫婦同姓を法律で義務化している国は世界で日本のみという比較も指摘される
選択的夫婦別姓・国際結婚に関わる団体・支援先

選択的夫婦別姓の議論や、外国人配偶者との家族支援に関わる活動を応援したい方は、gooddoマガジンの 団体を探すページ からテーマ別に支援先を検索できます。社会課題に取り組む企業の取り組みは 企業事例カテゴリ および discover.gooddo.jp も参考になります。
デメリットも外国人視点も理解した上で、自分の意見を持とう

選択的夫婦別姓は、メリットだけでもデメリットだけでも語り切れない、家族・社会のあり方に関わる大きな制度議論です。今日紹介したデメリット6点と、外国人との結婚で生じる固有論点5点を踏まえて、賛成・反対のどちらの立場を取るにしても、自分の言葉で語れる準備を整えていただければ幸いです。2025-2026年は国会の議論が大きく動く年でもあるため、ニュースを継続的にフォローすることもおすすめします。
関連情報・支援の輪を広げるには
gooddoマガジンでは、選択的夫婦別姓やジェンダー平等をはじめとする社会課題について、最新のデータと事例を発信しています。
(本記事はgooddoマガジン編集部が、法務省・内閣府・国会資料・国連女性差別撤廃委員会総括所見・経団連提言などの一次資料をもとに作成しました。記載のデータや法令は2026年6月時点の情報です。)