「少子高齢化は福祉分野にどんな課題をもたらしているのか」「介護人材不足や老老介護は本当に深刻なのか」——本記事は、福祉分野を志望する大学生、親の介護に直面し始めた現役世代、自治体・福祉施設の管理職の皆さんに向けて、少子高齢化がもたらす福祉の課題を体系的にまとめます。
少子高齢化の全体像や関連する政策トピックは gooddoマガジン『少子高齢化』カテゴリ で、団塊の世代が全員75歳以上となる『2025年問題』の医療・介護・経済への影響は 2025年問題とは?医療・介護・経済に与える影響と対策 で詳しく解説しています。本記事は特に『福祉分野の課題』にフォーカスしています。
少子高齢化と福祉の関係——なぜ課題が深刻化するのか

少子高齢化と福祉は密接に結びついています。まずはその構造的な関係を整理します。
『支える側』が減り『支えられる側』が増える構造
福祉サービスの多くは、現役世代の保険料と税で支えられています。しかし少子高齢化により、現役世代(生産年齢人口)は2020年の約7,400万人から2065年には約4,500万人へ大きく減少する一方、高齢者人口は2042年に約3,935万人でピークを迎えると推計されています。支える側と支えられる側のバランスが崩れ、福祉サービスの持続可能性が課題となっています。
(出典:国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(令和5年推計)』)
2025年問題・2040年問題とは
『2025年問題』とは、団塊の世代(1947-1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護需要が急増する問題を指します。さらに『2040年問題』は、団塊ジュニア世代が高齢者となり、生産年齢人口が急減する時期を指します。福祉分野の中期的な課題として、この2つが最重要トピックです。
・2025年問題は団塊の世代が全員75歳以上となる医療・介護需要急増、2040年問題は団塊ジュニアの高齢化
・福祉サービスの持続可能性そのものが構造的な課題となっている
介護分野の主な課題

介護分野は少子高齢化の影響がもっとも直接的に現れる領域です。5つの主要な課題を整理します。
介護人材不足:2040年度には約272万人が必要
厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計によれば、必要な介護職員数は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人です。2022年度の介護職員数(約215万人)と比べると、2026年度までに約25万人、2040年度までに約57万人の増員が必要となる見通しで、介護人材の確保はもっとも深刻な福祉課題の一つです。
(出典:厚生労働省『第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』 )
老老介護と認認介護
厚生労働省『国民生活基礎調査』によれば、要介護者と介護者がともに65歳以上の『老老介護』世帯は、要介護者のいる世帯の6割超を占めるようになりました。うち介護者・被介護者双方が認知症の『認認介護』も約1割にのぼり、介護負担の限界が課題となっています。
介護離職:年間約10万人が離職
総務省『就業構造基本調査』によれば、介護を理由に離職する人は年間約10万人にのぼります。40代・50代の管理職層に集中しており、企業経営・本人の家計・年金受給額の全てに影響を及ぼす福祉・雇用の複合課題となっています。
(出典:総務省統計局『令和4年就業構造基本調査』)
認知症の急増と社会的コスト
2025年時点で認知症高齢者は約700万人(高齢者の約5人に1人)と推計されており、認知症にかかる社会的コスト(医療費・介護費・家族が担うインフォーマルケアの機会損失)は、慶應義塾大学の研究班による推計で年間約14.5兆円規模と試算されています。
(出典:厚生労働省『認知症施策推進大綱(認知症施策)』 / 慶應義塾大学『認知症の社会的コスト』)
ヤングケアラー:全国調査で中学生の約5.7%が該当
こども家庭庁・厚生労働省の全国調査によれば、家族の介護や世話を担う『ヤングケアラー』は中学2年生の約5.7%、高校2年生の約4.1%が該当する可能性があると推計されました。学業や進路への影響が深刻な福祉・教育の複合課題です。
(出典:こども家庭庁『ヤングケアラーについて(ヤングケアラーの実態に関する調査研究)』)
・老老介護は要介護世帯の6割超、認認介護も1割にのぼる
・介護離職は年間約10万人、認知症高齢者は約700万人、社会的コスト年間約14.5兆円
・ヤングケアラー中学2年生の約5.7%、高校2年生の約4.1%が該当と推計
医療分野の主な課題

医療分野も少子高齢化の影響を強く受けています。高齢化に伴う課題を整理します。
医療費の増加
国民医療費は2022年度に約46兆7,000億円(46兆6,967億円)と過去最高を更新。今後も高齢化に伴い増加が続き、2040年度には約68兆円に達すると厚生労働省が推計しています。
(出典:厚生労働省『令和4年度 国民医療費の概況』/ 厚生労働省ほか『2040年を見据えた社会保障の将来見通し』)
医療従事者の偏在・地域医療の維持
医師・看護師の都市部集中と地方の医療機関の統廃合が、地域医療の維持を難しくしています。
特に人口減少地域では、救急・産科・小児科などの縮小が住民の受診の壁となっています。
・医療従事者の都市部集中と地方の医療機関統廃合で、地域医療の維持が課題に
生活支援・高齢者福祉の課題
生活保護受給世帯のうち高齢者世帯が過半数を占めるようになっており、単身高齢者の相対的貧困率は約24%と、他の年齢層より高い水準にあります。年金だけでは生活が成り立たない層が広がっており、福祉制度の見直しが課題です。
・生活保護受給世帯の過半数が高齢者世帯で、単身高齢者の相対的貧困率は約24%
解決に向けた政府・現場の取り組み

こうした課題に対して、政府や現場では以下のような解決策が動き始めています。
地域包括ケアシステム
『地域包括ケアシステム』は、医療・介護・予防・住まい・生活支援を地域単位で一体的に提供する仕組みです。厚生労働省が2025年をめざして構築を進めており、地域包括支援センターが要となる相談窓口として全国に設置されています。
地域共生社会
『地域共生社会』は、高齢者・障害者・子育て世帯・生活困窮者など、複数の課題を抱える人々を『縦割り』ではなく地域で丸ごと支える理念で、2020年の社会福祉法改正で法的枠組みが整いました。
介護DX・介護ロボット
介護人材不足への対策として、介護ロボット・見守りセンサー・記録のデジタル化などのDXが推進されています。厚生労働省は介護ロボット導入促進事業などで補助金を出しており、現場実装が進みつつあります。
処遇改善と外国人介護人材
介護職員の処遇改善加算の拡充、EPA・技能実習・特定技能・介護留学など、外国人介護人材の受け入れ拡大も進んでいます。2024年時点で外国人介護人材は約8万人が国内で従事しており、今後さらに増える見通しです。
・地域共生社会は縦割りを超えて地域丸ごとで支える理念、2020年社会福祉法改正で法的整備
・介護DX・介護ロボットで人材不足を補完、処遇改善と外国人介護人材の受け入れも拡大
私たちにできる備え・支援アクション

福祉分野の課題は制度だけで解決するものではありません。個人・家族としてできる備えと、支援アクションを紹介します。
家族としてできる備え
親の介護に備え、地域包括支援センターの場所と連絡先を把握しておく
介護休業・介護休暇の会社制度を確認しておく
ケアマネジャーや訪問介護など、公的サービスを早めに検討する。
地域・支援団体を応援する
認知症サポーター養成講座に参加する、地域の見守りボランティアに参加する、介護・福祉分野の支援団体に寄付するなど、地域で福祉を支える一員になれます。
・地域として:認知症サポーター、見守りボランティア、介護・福祉支援団体への寄付
少子高齢化・福祉分野に取り組む団体

少子高齢化下の福祉課題に取り組む団体を応援したい方は、gooddoマガジンの 団体を探すページ からテーマ別に支援先を検索できます。
福祉の課題を知り、支え合う社会へ

少子高齢化下の福祉課題は複雑ですが、地域包括ケアシステムや地域共生社会の枠組み、介護DX、そして私たち一人ひとりの家族としての備えと地域アクションが、確実に解決策を積み重ねています。まずは知ることから始め、支え合う社会をつくっていきましょう。