不登校とは?原因と解決のための取り組みについて


  • 2020年10月6日
  • 2022年7月16日
  • 不登校

不登校は、今やどこの学校や学年でも起こり得る事象です。学校によっては多くの不登校を抱えているところや、一家で複数の子どもが不登校になることもあります。
この不登校について考えるとき、しっかりとした定義やどういうものなのかを知った上で、子どもが該当するのかを理解するべきです。
この記事では、不登校の原因や解決のための適切な取り組みを解説します。

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不登校とは


不登校と聞くと、学校に行かない生徒というイメージが強いかもしれませんが、この「不登校」という言葉には明確な定義があり、その定義に従って使用されています。
つまり子どもが学校に行かない場合でも、必ずしも不登校とは言えないのです。
また不登校という言葉へのイメージそのものも、良い印象を持たれることは少ないですが、現代において不登校は増加傾向にあり、決して珍しいものではなく、許容されるものに変わりつつあります。

不登校という言葉は、1992年に定義されるまでほとんど使われていませんでした。
学校教育における基本調査では、それまで欠席理由を病気や経済的理由、学校嫌い、そのほかに区分して調べており、「学校嫌い」を名称変更して生まれたものが不登校とされていました。

1966年から1990年までは、不登校に当たる定義は、学校嫌いで50日以上欠席した児童生徒、という位置づけだったのです。
それが1991年から1997年までは学校嫌いで50日、30日以上欠席した児童生徒というように変わりました。
そして1998年以降は2020年時点の不登校の定義の下、調査が行われていますが、文部科学省によると定義は以下のようになっています。

何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの

(引用:文部科学省「不登校の現状に関する知識」)

現在の不登校の状況とは

2020年時点の不登校の状況を簡単に確認しておきましょう。
2018年時点での不登校児童生徒数は、全国の小中学校で16万4,528人と報告されています。1,000人あたりでは全国平均で16.9人であり、このうち年間で90日以上欠席した児童生徒は、不登校児童生徒数の58.1%を占めており、長期におよぶ不登校生徒が多いことが伺えます。

その理由は様々ですが、いじめによる不登校は一部であり、いじめを除く友人関係を巡るトラブルや、教職員との関係を巡る問題、学業不振、進路に係る不安、学校の決まりなどを巡る問題、入学・転編入学・進級時の不適応などです。

高校についても、2018年の不登校生徒数は5万2,723人、1,000人あたりで全国平均は16.3人と高い水準となっています。
高校は小中学校とは違い、2004年から2009年にかけては減少傾向、そこから2012年までは増加、そして2016年までは減少に転じ、2018年までは増加傾向でした。
このように増減を繰り返している特徴が見られるのが高校の不登校の現状です。

長期におよぶ不登校が続くと原級留置(留年)となることもあり、不登校からそのまま退学してしまうケースが多くあります。
現に国公私立すべての合計で見たとき、欠席日数が30~89日間の生徒は4万1,573人(78.9%)であり、90日以上の生徒は1万1,150人(21.1%)でした。

また不登校の生徒に対する中途退学の割合は25.4%、留年は6.9%というデータもあります。
中途退学は年々減少傾向にはあるものの、欠席日数が増えれば留年があることを考えると、中途退学をするか、学校に復帰するかの選択を迫られる場面もあるようです。

  • 不登校の定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」とされている
  • 不登校は、小中学校で16万4,528人、高校では5万2,723人となっている
  • 不登校の生徒に対する中途退学の割合は25.4%、留年は6.9%いる
  • (出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」,2019)
    (出典:国立教育政策研究所「第3章 不登校 」 )

    不登校になる原因・理由とは何か


    なぜ多くの生徒が不登校になってしまうのか、その原因や理由も文部科学省が行った調査・アンケートなどで明らかになりました。
    文部科学省の調査によると、学校に係る状況よりも家庭に係る状況の割合が高いという結果が出ています。

    学校に係る状況として最も多い回答は、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」です。
    この項目の割合は小学生で21.7%を占め、中学生でも30.1%と2~3割の生徒がこの問題を抱え、不登校になるというデータが得られています。
    次点で高いのは、「学業不振」であり、小学生が15.2%、中学生が24.0%で、学習内容が難しくなる中学生の方が割合としては高いです。
    続いて「入学・転編入学・進級時の不適応」が続き、小学生が4.5%、中学生が7.7%でした。
    小学生は「教職員との関係をめぐる問題」も同率で4.5%となっています。

    不登校になる原因として注目されることがある「いじめ」は小学生で0.8%、中学生で0.6%と全体的にも低めです。
    ほかにもクラブ活動や部活などへの不適応、学校の決まりなどを巡る問題も学校に係る状況として挙げられます。

    家庭内の事情が子どもに大きな影響を与える

    学校に係る状況に対して、家庭に係る状況は小学生で55.5%と半数以上を占め、中学生でも30.9%と全体で比較しても最も高い割合を示していました。
    この家庭に係る状況とは、両親の別居や離婚、近親者の死別など、生活環境の劇的な変化、親子関係をめぐる問題、家庭内の不和などが挙がります。

    子どもにとって家庭とは、帰るべき場所であり安らげる居場所の一つです。
    しかしその家庭環境が崩れてしまえば、子どもの大きなストレスになることは避けられません。
    ストレスから不登校になってしまうケースが多いことが分かっており、特に心が成長する時期である小学生や中学生など多感な時期には影響しやすく、登校できなくなってしまうようです。

    両親の別居や離婚などは子どもへの影響も大きく、ストレスの増加につながることがあります。親子関係を巡る問題は、思春期で上手くコミュニケーションを取れない親が子どもに過干渉になってしまう、あるいはまったく干渉しない状況が生まれることが、不登校の原因の一つです。
    家庭内の不和では、両親の不仲だけでなく、祖父母と両親の不仲、兄弟の不和などがあることで、ストレスや疲弊を感じ、登校する気力がなくなってしまうことがあります。

    高校で不登校が起こるのはなぜか

    高校では小中学校とはやや違った調査やアンケートが行われ、結果にも違いがあります。
    主な理由は下記の通りです。

    学校に係る要因 ・いじめ
    ・いじめ以外の友人関係を巡る問題
    ・教職員との関係を巡る問題といった人間関係
    ・学業の不振や進路に関する不安
    ・クラブ活動・部活動への不適応
    ・学校の決まりなどを巡る問題
    ・入学・転編入学・進級時の不適応など
    家庭に係る要因 ・親子関係の問題
    ・家庭内の不和など
    本人に係る要因 ・学校における人間関係に課題を抱えている
    ・あそび・非行の傾向がある
    ・無気力の傾向がある
    ・不安の傾向があるなど

    小中学校では、上記のような学校に係る要因と家庭に係る要因が挙げられます。
    高校ではこれに加えて本人に係る要因があり、「学校における人間関係に課題を抱えている」「あそび・非行の傾向がある」「無気力の傾向がある」「不安の傾向がある」というように分類されています。
    これを学校や家庭に係る要因との関連で多くの回答があったものを抽出しました。

    2018年に文部科学省が発表したデータによると、学校に係る要因として「いじめ」が最も多く79.8%でした。
    また、高校の不登校全体(5万2,723人)のうち、本人に係る要因として「無気力の傾向がある」が主な理由であると回答した人が1万7,359人(32.9%)と最も多くなっています

  • 不登校の原因は、学校に係る状況よりも家庭に係る状況の方が割合が高い
  • 家庭に係る状況は小学生で55.5%と半数以上を占め、中学生でも30.9%と全体で比較しても最も高い
  • 高校の不登校は、学校に係る要因と家庭に係る要因に加えて本人にかかる要因がある
  • (出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」,2019)
    (出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」,2019)

    不登校への対応と取り組み


    不登校は今や珍しいことではなく、全国の学校に起こり得ることで、実際にそのための支援体制の確立などが各学校や地域で行われています。
    これは不登校が子どもの甘えや怠けではなく、子どもに襲い掛かる様々な原因による心の疲弊であることが周知されてきたためです。そのための対応を、国をはじめとして教育委員会を含む地方公共団体や現場となる学校が組織的に不登校を解決するための動きを見せています。
    それを加味した上で親はどのような対応方法を取ればいいのか、そして学校の支援体制や、どのような対応をしてくれるのか紹介します。

    不登校に対する親の対応方法とは?

    子どもが不登校になった際に、親は冷静に子どもの話を聞くことが大切です。
    親が焦りや不安などを感じるのは仕方のないことですが、それを敏感な子どもも感じ取り、責任やプレッシャーを感じることで、より復帰ができなくなってしまう可能性があります。

    そのため子どもには冷静になって対応し、不登校は悪いことではないことや、子どもの味方であることを伝えながら、どうして不登校になってしまったのか尋ねてみましょう。
    ただし、子どもによってはなかなか話してくれない、子ども自身も分かっていないという状況も発生します。
    そうなったときには無理に聞き出そうとはせず、じっくり時間をかけて話し合ってください。
    また、原因や理由を聞きだしたとき以外の子どもの言動なども、できれば記録しましょう。これらの情報を学校やカウンセラーに伝えることで、不登校に対する対応方法やアドバイスなどをしてくれます。

    不登校に対する学校の対応とは?

    学校では不登校を未然に防ぐ取り組みや、早期発見・対応のための組織作りが実施されています。
    そこに学級担任や学年主任、養護教諭、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、必要であれば不登校相談センターなどの外部機関を含めたチームを発足して対応に当たるのです。
    また教育支援センターも設けられており、この指導員も支援に加わり、学校での兆候の確認や親から得た情報などを元に、対応方針を決定していきます。

    親の情報やスクールカウンセラーによるカウンセリングから学業不振による不登校であることが分かれば、別室登校を進めた上で、空き時間の教員を中心とした補習授業を行います。
    また徐々に教室に戻れるような働きかけなどを行いますが、あくまで子どもの自主性を尊重した対応が必要です。

    家庭の問題が大きいのであれば、関係機関との連携を図りつつ、特にスクールソーシャルワーカーとの連携を密にして、家庭へ必要な支援を行います。
    完全な不登校になってしまい、学校に1日も行かない状況が続いているのであれば、教育支援センターへの通級(※)を勧め、支援を行うという対応も実施されます。

    ※通級:通常の学級に在籍していながら個別の特別支援教育を受けること

    不登校への間接的な対応もある

    間接的に行われる不登校への対応もあるのです。
    例えば養護教諭との連携を取り、保健室や相談室などの環境や条件の整備を行って、学校内の居場所の充実を図っています。
    加えて不登校の子どもの学習状況の把握と学習強化の工夫を行い、復帰するまでの学力あるいは復帰した後に再び学業不振によって不登校にならないための対応です。

    個人情報の取扱いに十分配慮しつつ、校内や関係者間における情報共有のための個別記録票の作成などを行い、学力やこれまでの記録から不登校の子どもの立場に立った学級編成への情報提供なども行われます。

    またこのような不登校に対する学校の対応を適切に行うために、初期段階での判断を誤らないようにするため、不登校の子どもを理解するための研修や、精神医学、LD・ADHDの基礎知識の習得など、教職員の資質の向上も対応の中に含まれているのです。
    これらの対応については、学校内外に関わらず、教育相談主任がコーディネーター的な役割として中心となり行っています。

    (出典:佐賀県教育センター「すべての子どもたちに魅力ある学校生活を」,2019)

    通信制高校への編入という選択肢

    高校で不登校になり留年やそれに伴う中途退学となってしまった場合、親ができる対応方法として、通信制高校への編入という選択肢があることを知っておくと良いでしょう。

    通信制高校の不登校の生徒に対する大きなメリットは、登校日数が少ないことにあります。
    通信制高校は全日制高校に比べて登校日が少なく、その多くを家にいながら勉強するので、勉強時間を自由に設定することができます。
    不登校の子どもにとっては、毎日学校へ行かなくても良いという負担の軽減がメリットになります。

    また、通信制高校は同じような悩みを抱えている生徒がいることから、自分だけではないことを実感できる場所にもなるでしょう。

    近年は、通信制高校も新しい選択肢として認知されるようになってきていることから、学校側の受け入れ体制も充実しており、学習方法も選べるため、子どもにあったペースで学習を行い高校卒業を目指すことができます。
    もとの環境に復学するという解決方法ではありませんが、環境を変えるのも一つの手段であることを理解しておきましょう。

  • 不登校になった際に親が取るべき行動は、冷静に子どもの話を聞くこと
  • 不登校を未然に防ぐ取り組みや、早期発見・対応のための組織作りも実施されている
  • 通信制高校の不登校の生徒に対する大きなメリットは、登校日数が少ないこと
  • (出典:文部科学省「定時制・通信制課程について」)

    不登校から子どもが元気に安心して通える環境を


    不登校は子どもにとって身を守るための緊急避難的な行動であり、悪いことではありません。
    無理やり学校に行かせることは避けるべきですが、子どもが自主的に学校に復学できるようにするためにも、親は親の、学校は学校の持つ役割のもと不登校解決に向けた取り組みを協力して行っていく必要があります。
    そのためには子どもと向き合い、原因や理由を把握し、それらを解消して子どもが元気に安心して学校へ通える環境を作っていくことが重要です。

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