世界には学校に通っていない子どもや若者が約3億300万人もいます。
この記事では子どもたちが学校へ通えない理由や背景について解説します。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト,2018)
世界で深刻な教育問題。各国の制度や男女格差、必要な支援について知ろう
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世界の教育事情とは
現在は教育不足に陥っている子どもが多く、世界中の国が協力して解決するべき問題です。
世界では2018年時点で学校に通っていない子ども・若者が約3億300万人にのぼります。
学校へ通えない子どもの多くは途上国に集中していますが、たとえ学校に通っていても教材が不足していたり、先生が教える内容の質が悪いなどの問題もあります。
そのため、6億1,000万人以上の子ども・若者は必要最低限の読解力や計算力を習得していないと推計されています。
その結果、読み書きができないまま大人になった人が世界では7億5,000万人(うち63%が女性)もいるのです。
途上国・低所得国では中等レベルの教育を受けている子どもはわずか12人に1人。それだけでなく、貧困、ジェンダー、障害、民族・言語、居住地域などによる格差の問題なども生じています。
教育はすべての人が同じように受けるべき基本的権利です。私たち一人ひとりが自分の才能や能力を伸ばし、尊厳をもって生きていくための大切な基盤となります。
また、教育を通じて多様な文化や価値を尊重する態度を育てることは平和な社会を構築していく基礎にもなります。
2000年以降、国際社会が取り組んだ「万人のための教育(Education for All:EFA)」と「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)」の結果、2015年までに教育へのアクセスは大幅に改善されました。
しかし、教育の質や教育における格差、若者の雇用などの課題がまだまだ残されており、これまでの成果と安定を揺るがす事態になっています。
国連は2015年、「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」という新たな教育目標(SDG4)を掲げ、就学前教育から高等教育までの教育の質の保証を目指しています。
以下では、それぞれの教育課程による世界の現状について紹介します。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
(出典:独立行政法人 国際協力機構JICA公式サイト)
(出典:教育協力NGOネットワーク(JNNE)事務局 「世界一大きな授業2018」)
就学前教育
2019年現在、世界の半分以上の子ども、1.75億人は就学前教育を受けておらず、低所得国における状況はわずか5人に1人しか就学前教育を受けていません。これは教育のスタートで大きな格差が生じていることを表しています。
世界64カ国において、最も貧しい子どもたちは、最も裕福な家庭の子どもたちと比較して、就学前教育を受けない可能性が7倍も高く、世帯の経済状況、母親の教育レベル、および地理的なものも就学前教育の就学率に影響を与えていて、特に貧困が一番の要因になっています。
(出典:ユニセフ,2019報告書)
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初等・中等教育
また、2018年時点で、世界で学校に通っていない5歳から17歳の子どもの数は3億300万人もおり、このうち3分の1以上にもあたる1億400万人は紛争や自然災害の影響を受ける国に暮らしています。
これらの国に暮らす15歳から17歳の子どもの5人に1人は、これまで一度も学校に通ったことがなく、5人に2人は小学校を修了していないこともわかりました。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
青年・成人スキル
近年では、世界的に若年層(15〜24歳)の失業率も増加傾向にあります。2016年には約13.1%が失業していることもわかっており、職業技術教育や訓練へのアクセスを拡大することや質の改善を図ることが課題とされています。
一方、高等教育へのアクセスは向上しているものの、サブサハラアフリカ地域を中心にまだまだ教育へのアクセスや教育の質など、大きな課題が残されています。
(出典:国際労働機関(ILO)発表資料,2016)
学校へ行けない子どもは途上国に多い
学校にいけない子どもは途上国、低所得国に集中している傾向にあります。
満足に教育が受けられないまま大人になると、収入を得る術が身につかないために貧困からなかなか抜け出せません。
では、なぜ途上国の子どもたちが学校へ行けないのでしょうか。
子どもたちが学校に通えない理由
子どもたちが学校に行くことができない、教育を受けることができない理由は、貧困と紛争が大きく関わっています。
先述したとおり、世界で学校に通えない3億300万人のうち、1億400万人が紛争や自然災害の影響を受ける国に暮らしています。
自然災害を受ければ農業で生計を維持することが難しくなり、貧困状態に陥ってしまいます。その場合、子どもは家族のために家事や子育て、労働をしなければならず学校へ行く時間を確保することができません。
また紛争や内戦により危険な状況であれば学校へ安全に行くこともできず、学校自体が封鎖されてしまうケースも多々あります。
子どもたちが教育を受けられない背景には、子どもたちが暮らす環境が大きく影響しています。教育不足の問題を解決するためには、貧困や紛争の問題を解決へ導く必要もあるのです。
すべての子どもが学校へ通うために必要な支援とは
子どもたちが学校へ通い、教育を受けられるために世界中の国や機関、団体が支援を行っています。
世界レベルでの支援状況を見てみると、国連機関は2017年の人道支援計画で対象を48カ国とし、総額33億米ドルを要請。2018年、ニューヨークで開催された国連総会に合わせたハイレベル会合で、以下のような支援が表明されました。
欧州連合(EU)は、2018年の人道支援予算のうち、世界平均の6%を大きく上回る8%を緊急時の教育支援に特化させることで、危機下の教育の支援を拡大すると表明。
以下に各国の資金提供を挙げます。
- EUは、『Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)基金』に対し、1,320万米ドルの追加資金提供を表明。
- デンマークは『Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)基金』に対し、1,610万米ドルの資金提供を表明。
- マララ基金は来年、地域の教育者と活動家への投資を300万米ドル増加させる。
- 教育のためのグローバル・パートナーシップは、資金調達を増やし、2020年までに、89カ国の子どもたち8.7億人を支援するために毎年20億米ドルを提供し活用する。
- ドバイ・ケア(Dubai Cares)は『Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)基金』に50万米ドルの資金を提供。
- ヒューレット・パッカードは、インテルと1700のスクール・クラウド(School Clouds)で協力して、2020年までに100万人の生徒を支援し、『Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)基金』を通して、危機的状況下の国々での技術使用の可能性を模索する。
- 日本は民間部門が910万米ドル、日本政府からの拠出5,930 万米ドルの貢献が報告。
(出典:子どもたちのための人道支援報告書(Humanitarian Action for Children-HAC)2019年)
次に各団体による支援を項目ごとにお伝えします。
水・衛生環境の改善
途上国では子どもが水汲みに費やす時間を教育へ回したり、女子トイレの設置や衛生環境を整えて病気になる子どもを減らすことが大切です。
途上国・低所得国では10人に1人の人が清潔な水が飲めておらず、31%の学校で清潔な水を利用できず、また20億人が適切なトイレを利用できずにいます。
そこで、人々が健康な生活を送るうえで不可欠な清潔な飲み水、適切なトイレ、手洗いなどの衛生習慣に向けて支援が行われています。
(出典:日本ユニセフ 公式サイト)
教師の育成
ほとんどの開発途上国では、有資格の教員が不足している状態です。また、教員の労働条件も悪く、大人数のクラスを一度に教えなければならなかったり、給与も安かったり、なかには適切な養成を受けていない教員もいます。
そのため、教師を育成するだけでなく、教師の質の向上も求められている課題です。
そうした途上国の教師に対し、教材を活用して質の高い教育を行うためのサポートが行われています。
給食の配布
貧困層の子どもたちは、親が子どもにくず拾いなどをさせて、わずかなお金を稼がせることも少なくありません。
しかし、学校で給食が支給されようになれば、教育にあまり熱心ではない親も一食助かるという理由で学校に子どもを通わせます。
子どもたちに栄養を取ってもらうだけでなく、子どもを労働から遠ざけ学校へ通わせるためにも、給食の配布を行うことが必要とされています。
教育の必要性を伝える
自分が教育を受けずに育った親は、教育の必要性を理解していないために貧困の世代間連鎖を繰り返してしまいます。
基礎的な知識や教養を持っていなければ、しっかりとした仕事に就けないことを親に解ってもらうことが大切です。安定的な生活を送るためには、教育は必要不可欠といっても過言ではありません。
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世界の教育の現状について知ったうえで私たちができることとは
SDGsの目標4では、すべての人が公平に質の高い教育が受けられる世の中を目指し、「2030年までにすべての男女が無償で初等・中等教育を修了すること」を目標にしています。
貧困や紛争などの環境により、教育を受けられない子どもたちを救うため、世界中の国や機関に加え、様々な方々や団体が支援を行っています。
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