2024年1月1日に石川県能登地方を震源とした能登半島地震が発生しました。2024年10月29日時点での能登半島地震の被害は、死者が412人(うち災害関連死185人)、全壊家屋は6,425棟にのぼります。
今回の地震では、断層の上下方向の動きによって陸側がせり上がりました。輪島市の沿岸では最大約4メートルも隆起しました。
道路や水道管などのインフラは甚大な被害を受け、そのことから消火が遅れ火災の被害も拡大したのです。被害が甚大であることに加えて、山間地を結ぶ道路が各地で寸断されており、インフラや住居の再建には時間を要するため、震災前の生活に戻るにはまだまだ時間がかかる状況です。
この記事では以下について解説します。
- ・能登半島地震の被害の状況、特徴
- ・災害に備えて今後できること
- ・被災者支援のためにできること
能登半島地震の被害規模や特徴を知りたい方はぜひ、ご一読ください。
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2024年 能登半島地震の概要
2024年1月1日に能登地域を襲った地震の規模は以下の通りです。
- ・発生日時 1月1日16時10分
- ・震源地 石川県能登地方
- ・マグニチュード 7.6(暫定値)
震度5強以上の地域は以下です。
石川県 | |
震度 7 | 志賀町、輪島市 |
震度 6 強 | 七尾市、珠洲市、穴水町、能登町 |
震度 6 弱 | 中能登町 |
震度 5 強 | 金沢市、小松市、加賀市、羽咋市、かほく市、能美市、宝達志水町 |
新潟県 | |
震度 6 弱 | 長岡市 |
震度 5 強 | 新潟中央区、新潟南区、新潟西区、新潟西蒲区、三条市、柏崎市、見附市、燕市、糸魚川市、妙高市、上越市、佐渡市、南魚沼市、阿賀町、刈羽村 |
富山県 | |
震度 5 強 | 富山市、高岡市、氷見市、小矢部市、南砺市、射水市、舟橋村 |
福井県 | |
震度 5 強 | あわら市 |
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能登半島地震の特徴
能登半島地震は、活断層が上下方向に動いた逆断層型の地震(※)です。地震波の解析から、海底活断層でも大きな動きがあったことが分かっています。上下方向の動きによって陸側がせり上がり、輪島市の沿岸では最大約4メートルも隆起しました。
※逆断層型地震:断層面を境として両側のブロックが上下方向に動く「縦ずれ断層」の一種。「縦ずれ断層」のうち、上盤側がずり下がる場合を「正断層」、のし上がる場合を「逆断層」と言う。
画像出典:地震調査研究推進本部 | 正断層・逆断層・横ずれ断層
今回、道路や水道管などのインフラが甚大な被害を受けたのは、こうした土地の隆起という永久的な変位と強い揺れが影響していると考えられます。
大きな地震は断層の破壊領域が大きいため、断層面上のいろいろなところで余震が起こります。また今回の地震では、断層が地表から10数キロの浅いところで動いており、それも余震の多さにつながっていると言われています。
さらに、海岸に近い活断層が大きく動いたため、津波が早く到達しました。早い地域では、地震発生から1〜2分以内で到達しています。
半島の先端部が震源地であったため、元々アクセス経路が限られていました。さらに、地震によって道路が途中で寸断されたことで、救助や支援物資の輸送が困難になったことも特徴です。
津波の特徴
今回の津波の特徴は以下の通りです。
- ・震源、つまり動いた断層が沿岸部に近かったため第一波の到達が早かった点
- ・能登半島から富山湾までの特徴的な海底地形の関係から、複雑で広範囲に伝わり広がっていった点
東北大学の研究*で、石川県珠洲市には遡上高(陸地をはい上がった高さ)が3メートル以上の津波が推定約1分で到達したことがわかっています。
また、同大学の研究では、能登半島から富山湾までの特徴的な海底地形が今回の津波伝播(でんぱ)を複雑にし、珠洲市での津波の被害を大きくしたと解析しています。
珠洲市鵜飼川の河口付近では津波が低い堤防を越えて浸水し、川沿いの道路に漁船なども乗り上げたという様子が報じられています。(北國新聞,2024/1/7)
国土交通省によると石川県の珠洲市、能登町、志賀町の浸水面積は約190ヘクタールに達します。**
津波のメカニズムについて詳しく知りたい方は以下の記事もご一読ください。
>>東日本大震災で甚大な被害を出した津波の大きさや恐ろしさとは
*出典:科学技術振興機構 Sicence Portal | 能登半島地震の甚大な津波被害が明らかに 特徴的な海底地形など影響、東北大災害研が解析
**出典:国土交通省 令和6年能登半島地震 津波による浸水および海岸保全施設の被害状況(速報)
2024年 能登半島地震の被害状況(2024年10月29日時点)
人的被害、建物の被害、インフラの被害について最新状況をまとめます。
人的被害
人的被害は以下の通りです。
都道府県 | 死者数(うち災害関連死) | 重症者数 | 行方不明者数 |
石川県 | 408人(181人) | 341人 | 3人 |
富山県 | 2人(2人) | 14人 | 0人 |
新潟県 | 2人(2人) | 9人 | 0人 |
今回の地震では、能登地域の特徴である古い瓦屋根の木造住宅の倒壊、土砂崩れによる被害によって、多くの犠牲者が出ました。
また、石川県輪島市では、観光名所「朝市通り」で火災が発生。約240棟が焼け、およそ5万平方メートル近くが焼失しました。地震で倒壊した家屋の下敷きとなった住民が逃げ遅れ、多くの人が犠牲になりました。
火災被害が拡大した原因として以下が挙げられています。
・燃えやすい市街地だったこと
・地震の影響で消火活動が難しかった(断水していた、防火水槽までの経路が塞がれていた、川が干上がっていた)
建物の被害状況
建物の被害状況と避難者数は以下の通りです。
都道府県 | 全壊 | 半壊 | 最大避難者数 |
石川県 | 6,059棟 | 19,150棟 | 40,688人 |
富山県 | 257棟 | 797棟 | 8,100人 |
新潟県 | 109棟 | 3,933棟 | 38,518人 |
能登地域には、「旧耐震基準」が制定された1981年5月以前に建築された、耐震性の低い古い瓦屋根の木造住宅が多くあります。また2020年ごろから活発な地震活動が続いており、建物が地震に耐えられる力が低下していました。
石川県珠洲市では市内の住宅のおよそ半数が全壊になるなど、多くの建物に被害が出ました。
また、建物倒壊の影響で多数の火災も発生しました。専門家の調査で、火災の発生率は東日本大震災を上回っていたことが分かっています*。
さらに、能登半島は地形的にみて急峻な山地地形が多い地域であるため、土砂災害の影響も多大でした。
石川県穴水町などでは、複数の地点で住宅が土砂災害によって崩壊しました。石川県七尾市や津幡町では土を盛って造成した土地が崩壊し、多くの住宅に被害が出ました。
新潟県新潟市の一部や、石川県内灘町の周辺など広い範囲で、地盤の液状化による著しい被害が生じています。日本海側の平野は、潟湖(せきこ※)や砂丘列があり、液状化リスクが高いのが特徴です。
※潟湖(せきこ)湾口が砂の堆積などで閉塞され海の一部が閉じ込められてできた湖)
*出典:京都大学防災研究所 2024年能登半島地震に伴う地震火災・津波火災について(速報)
インフラの被害状況
インフラの被害状況は以下の通りです。
石川県
停電戸数:約80戸 ※安全確保等の観点から電気の利用ができない家屋等を除き復旧。(発災時は40,000戸)
断水:約0戸(最大時約112,420戸)
ガス供給:住宅崩壊等により復旧困難な場所を除き供給再開
富山県
停電戸数:約0戸(発生時も0戸)
断水:約0戸(最大時18,937戸)
ガス供給:発生時より供給停止なし(地震発生時、県内一部でガス漏れが発生、対応済み)
新潟県
停電戸数:約0戸(発生時も0戸)
断水:約0戸(最大時2,718戸)
ガス供給:発生時より供給停止なし(約300戸でガス漏れが発生し数日中に対応済み)
また、土砂災害や地盤の変動による被害が大きく、配水管の損傷に加え、浄水場や配水池といった水道のおおもとの施設に大きな被害が出ました。
道路の被害状況は以下の通りです。
道路種別 | 道路状況 |
高速道路 | 全線復旧(最大時5区間通行止め) |
国道 | 1路線6区間で通行止め(最大時40区間通行止め) |
県道 | 36区間で通行止め(最大時145区間通行止め) |
能登半島では山間地を結ぶ道路が各地で寸断されたため、地震発生直後、人員や物資を送るという点で非常に難航しました。
今回の地震では土砂災害や地盤の変動による被害が大きく、道路の本格的な復旧には数年かかる見込みと言われています。
能登半島地震の被害は大きく、インフラや住居の再建には時間を要するため、震災前の生活に戻るにはまだまだ時間がかかる状況です。
被害状況データ参考:
内閣府 防災情報のページ 令和6年能登半島地震による被害状況等について
石川県 目的別・令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報(対策本部・被災状況)被害状況
新潟県 令和6年能登半島地震による被害状況一覧
富山県 令和6年能登半島地震に係る県内被害状況(人的被害・住家被害等)
内閣府 令和6年能登半島地震における避難所運営の状況
富山県 令和6年能登半島地震について
新潟県 【被害状況等】
地震発生時に備え私たちが今できることは?
能登半島地震の被害を知り、地震発生時に備え何かしなければと思った方に向けて、私たちが今できることを紹介します。
- ・地震に備える
- ・被災地を支えるための行動を知っておく
地震に備える
災害はいつ起こるかわかりません。特に地震は発生から被災までの時間が短く、その予測も難しいです。そのため、自らの身を守るために日頃から地震対策を行っておく必要があります。
今から準備しておけることを解説します。
- ・家具の配置と固定
- ・防災バッグや備蓄品の準備
- ・避難方法の確認
- ・地震保険への加入
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家具の配置と固定
震度によっては家具が移動し、倒れる危険性があります。家屋が下敷きになって亡くなる、家具がドアを塞いだことで脱出できなくなる、といった被害にあうことがあります。
そうならないためにもベッドやドアの近くに、倒れると危険な本棚などの家具を置かない、置く場合は壁や床に固定する、あるいは天井との間にポールなど挟んで固定するといった方法を取ることも大切です。
出典:埼玉県 「(1)家具の固定 ~命を守る3つの自助の取組~」
防災バッグや備蓄品の準備
地震の揺れが収まった後は、安全な避難場所に移動し、避難生活を送ります。このとき、すぐに持ち出せるように防災バッグ(非常用持ち出しバッグ)を準備し、詰めておく必要があります。
このバッグには避難生活に必要な、以下のようなものを入れておくことが望ましいです。
- ・飲料
- ・食料(アルファ米などのご飯、ビスケット、板チョコ、乾パンなど保存が利いてエネルギーになりやすいもの)
- ・預金通帳、印鑑、現金、健康保険証などの貴重品
- ・ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬などの救急用品
- ・ヘルメット、防災ずきん、マスク、軍手
- ・懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池、携帯電話の充電器(モバイルバッテリーなど)
- ・衣類、下着、毛布、タオル
- ・洗面用具、使い捨てカイロ、ウェットティッシュ、携帯トイレ
- ・ミルク、紙おむつ、哺乳びん ※乳児がいる場合
あくまでこれは例であり、これ以外にも必要なものだと思うものは詰めておくといいでしょう。
ただし、あまりに量が多すぎると持ち運ぶだけで避難の妨げになる可能性があるので、持ち出せる範囲に留めましょう。
また、大地震が起こったときは、電気やガス、水道などのライフラインが止まることがほとんどです。それに備え、3〜7日分の飲料水や保存食などを備蓄しておくことをおすすめします。
3日というのはあくまで地震発生後から救援物資が届くまでの想定です。大震災発生時には土砂崩れなどで分断されてしまい、支援がなかなか届かないこともあります。
特に用意しておくべき備蓄品は以下の通りです。
- ・飲料水(1人1日3リットルを目安)
- ・食料
- ・トイレットペーパーやティッシュペーパー
- ・マッチ、ろうそく、カセットコンロ
さらに飲料水とは別に、トイレを流すための生活用水なども必要なので、日頃から水道水を入れたポリタンクの用意やお風呂の水を張っておくなどの備えもしておくとよいです。
避難方法の確認
実際に地震が起こったとき、避難場所や避難経路を知らないと慌ててしまい、避難場所へたどり着けない可能性があります。また、災害が起こると避難場所までの状況が平時とは変わってしまい、すんなりたどり着けなかったり、二次災害に遭遇してしまう可能性もあります。
慌てずに避難するためにも自治体のホームページや国土交通省ハザードマップポータルサイトなどから、防災マップやハザードマップを入手しましょう。災害時に危険になり得る場所や避難場所・経路を確認することができます。
ただし防災マップやハザードマップは、地震以外にも豪雨や津波、火山噴火など災害によって種類が変わるため注意してください。
地震保険への加入
地震の後に問題になるのが元の生活に戻るための取り組みです。
大地震では、家屋に甚大な被害が出る可能性があります。仕事にすぐに復帰するのは難しく、家屋の修繕などにはお金もかかるため、保険の加入は大事な防災につながります。
火災や風水害などの自然災害への補償として「火災保険」がありますが、こちらは地震や火山の噴火、津波による火災、損壊、埋没、流出などの損害には対応していません。そのため地震保険に加入する必要があります。地震保険は「地震保険に関する法律」により、政府と各損害保険会社の共同で運営されています。
いつ地震が起こってもいいように、地震が起こった後のことも考えて備えておきましょう。
地震への備えについて以下の記事で詳しく解説しています。
>>地震に備えて日頃の防災が大切!準備しておくべきこととは?
>>今すぐできる地震対策とは?家庭で準備しておくことを紹介
>>地震が来たら取るべき行動は?知っておきたい対策方法
被災地を支えるための行動を知っておく
能登半島地震などの大きな地震の状況をニュースなどで耳にするたび「混乱の中を不安な気持ちで過ごす被災者のためになにかできることはないか」と考える人もいると思います。
ここでは、被災地を支えるためにできることを3つ紹介します。
- ・被災地で活動する支援団体へ寄付する
- ・ボランティア活動に参加する
- ・被災地の様子を知り、発信を続ける
- ・消費活動を通して被災地を応援する
被災地で活動する支援団体へ寄付する
地震発生時には、各自治体や民間支援団体が救命や医療支援、物資配付を行います。
私たちが震災発生時にすぐできる支援は、被災地のために活動する団体へのお金の寄付です。お金の寄付であれば、今この瞬間にインターネットを通じてクレジットカードで行うことができます。また、現地で活動する支援団体が判断し、その時に一番必要とされる支援に使われるので効果的です。
団体によっては継続寄付を受け付けている団体もあります。食料や物資の支援により混乱を乗り越えた後は、復興のための持続的な支援が必要となります。現地へ行けない方でも気軽に支援する方法として、寄付があります。
主に2種類の寄付方法があります。
継続寄付
支援活動を行う団体に対して寄付をするというもので、毎月決まった額を自動的に寄付してくれるシステムです。毎月1,000円などの少額からできるため、無理なく長く続けられるのが魅力です。
都度寄付
任意の金額を好きなタイミングで寄付できるため自由度の高い方法です。ネットから寄付できることも多く、気軽に行えます。
こちらの記事では、地震の被災地支援を行うNPO団体を紹介しています。
>>地震の被災地支援でできること | ボランティア活動の例や支援団体も紹介
ボランティア活動に参加する
被災地支援の1つとしてボランティア活動があります。以下のような作業でボランティアが必要とされます。
- ・支援物資の仕分け
- ・炊き出し
- ・瓦礫の撤去
- ・家屋の掃除や荷物の運び出し
- ・避難所設営
- ・避難者の生活介助(見守り、話し相手、交流活動など)
ボランティア活動に参加する際は、受け入れ体制を事前に確認しましょう。
県及び各市町村センターの募集情報は震災発生後、ホームページなどで随時更新されます。
被災地への電話や個別の来訪などは控え、募集情報を必ず確認してから行動してください。また、ボランティア活動に係る費用・手配はすべてボランティアの自己負担となります。交通費、宿泊場所、食事、可能な限り活動に必要な資機材はご自身で用意しましょう。
被災地の様子を知り、発信を続ける
被災地の様子は日々変化していきます。
自分自身がボランティアに出向けなくても、ボランティアの受け入れ状況や、物資を始め必要とされている支援ニーズを発信することも支援の1つです。正しい情報を仕入れ、SNSなどで発信を続けることで被災地の復旧に協力できます。
消費活動を通して被災地を応援する
被災地で生産・製造しているものを購入することも支援の1つです。その地域に収入や雇用の創出をもたらすだけでなく、商品によっては文化や歴史を守ることにもつながります。
また、収益の一部が復興支援に使われる商品を購入する方法もあります。商品の収益の一部が、その企業が行う支援活動に活用されたり、復興支援を行う団体に寄付されたりします。
さらに、被災地が旅行者を受け入れられる状態になったら観光に行くのも1つの方法です。現地で観光したり、商品を購入したりしてお金を使うことで、地元経済の活性化に貢献できます。
【簡単3分スタート】毎日使う電力を節約しながら自動的に社会のために活動する団体に寄付
被災地の支援や地震への備えなど、私たちもできることから取り組もう
この記事では、能登半島地震の被害や特徴について紹介しました。
以下に記事の内容をまとめます。
- ・陸地が隆起したことや、半島という地理の関係でインフラや住居の再建に時間がかかる
- ・古い木造住宅が多かったことや近年地震が続き建物の耐震性が落ちていたことが、被害が拡大した原因の1つ
- ・今後起きる可能性のある地震に備え、自分自身の防災の他、被災地支援の方法を知っておくことなど、私たちにもできることはある
地震や津波は、日本のいつどこで起きてもおかしくありません。被害を最小に抑えるために、日頃からできる対策を行いましょう。
また、寄付やボランティア活動など被災地の人々のために私たちにもできることがあります。地震発生時にすぐ支援に動けるよう、日頃から情報収集をしておきましょう。
以下記事では、自然災害の復興支援活動について解説しています。ぜひご一読ください。
>>災害被災地の復興支援活動にはどんな種類がある?私たちにできることも紹介