近年、世界中で気候変動による問題が起こっています。気候変動は各国や地域に様々な影響や被害をもたらしており、日本でも様々な事象が観測されています。
このまま気候変動が続いていけばどうなってしまうのか、この記事では日本の気候変動についての観測事実と将来の変化について紹介します。
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気候変動とは。日本や世界で起きていること
気候変動は、日本はもちろん世界の様々な地域で起こっています。地球温暖化などが要因となっていますが、日本と世界ではその影響に違いがあります。
例えば日本だと、世界と比較して早いペースで年平均気温の変動を繰り返しながら上昇しています。 1990年代以降に集中して顕著な高温を記録しており、このまま行けば日本の年平均気温は21世紀末に全国的に上昇することが予測されています。
これにより夏季には真夏日や猛暑日の日数の増加が見られており、10年あたり0.2日の割合で増加しています。 また豪雨が増加しており、記憶に新しいところだと2018年7月豪雨など、様々な地域で大雨による被害が増加しています。
しかし一方では降水日が減少しているというデータもあり、短時間強雨の発生が増加して、弱い降水を含めた降水日数自体は減少していることから、今後無降水日が全国的に増加していくとも考えられています。
降雪に関しても温度の上昇により、日本海側など多くの地域で降雪量の減少が見られています。 ここ10年のデータでは、東日本の日本海側で12.3%、西日本の日本海側で14.6%の減少となっています。
一方で、降雨と同様に大雪が増加する可能性も示唆されており、大きな被害も予想されます。 これを世界に向けてみても、気温に関しては同じように上昇が見られます。世界での年平均気温は19世紀後半以降100年あたり0.72℃の割合で上昇しています。
これによって海洋の温暖化も進んでおり、1891~2010年において100年あたり0.53℃の割合で上昇しています。 この温度上昇は海洋生物の生態系に影響を与えるだけでなく、北極海の海氷を減少させている要因にもなっています。
このまま続けば海氷は失われ、海面の顕著な上昇は免れません。 さらに熱帯低気圧の最大風速、降雨量も増加の傾向にあります。
日本でも最近は大型の台風が接近・通過した件数が増えていますが、これは世界でも共通です。 ハワイやメキシコ西海上にかけては、猛烈な台風の通過が増加する可能性が高いと報告されています。
このように日本や世界ではそれぞれ気候変動の影響を受けた様々な弊害や被害が起こっています。
(出典:環境省「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~」,2018)
- 日本は世界と比較して早いペースで年平均気温が上昇している
- 弱い降水を含めた降水日数自体は減少し、今後無降水日が全国的に増加していくと考えられている
- 大型の台風の接近・通過の増加は世界共通である
気候変動はどのような影響を及ぼすのか
気候変動による影響は日本各地で観測されています。その影響は特に自然に由来する農業や林業、水産業などに顕著であり、自然生態系にも影響を与えています。
また自然災害や水資源にも大きな影響を与えてしまいます。日本で気候変動がもたらす影響がどのようなものなのか、分野ごとに分けて紹介します。
農業・林業・水産業・森林
日本では米を主食としていますが、これまでと異なり、気温の上昇が起こることで白未熟粒という高温などの障害で、でんぷんが十分に固まらず濁ってしまうものが出てきます。
また高温などにより粒に亀裂が生じる恫割粒の発生なども多く見られるようになります。 これにより全国の米の品質の低下が確認され、一部地域では極端な高温年には収量の減少まで起こっています。
これは夏場の高温よって引き起こされていますが、米だけに限りません。高温と強い日差しによって果物の日焼け果が発生し、林檎や葡萄、柿、温州みかんなどの着色不要などが起こっています。
高温になりやすく降雨が多い西日本では、果実内部に水侵状果肉褐変症と呼ばれる果肉障害などが発生し、こちらも品質の不安定化につながっています。
日本の料理では欠かせない存在でもある椎茸も夏場の気温上昇と病原菌の発生により、きのこの発生量の減少が指摘されています。
2019年には一時不漁とまで言われたサンマも南下が遅くなっており、今後も来遊期間が遅くなり、サンマの体重が徐々に減少する可能性があると予測されています。
自然生態系
自然生態系にも影響を及ぼしています。日本で繁殖する猛禽類のハチクマは秋に日本列島を西に進んで、五島列島周辺から東シナ海を越え、中国へ移動します。
しかし気候変動により、ハチクマの渡りに適した空域が失われつつあり、将来的には東シナ海が渡りに適した空域から外れると予想されています。
また気候変動による竹林の侵食の増加とそれによる地域の生態系・生物多様性への悪影響や海水温上昇による沖合・沿岸部の水産生物の産卵場や餌場、回遊経路の藻場・干潟の衰退も観測されており、将来的には消失してしまう可能性も示唆されています。
水資源・自然災害
近年気候変動により大型の台風が接近、あるいは通過していきます。 台風そのものの被害も大きなものとっていますが、二次災害も発生しやすくなっています。
気圧や風によって海面が平常より高くなる高潮の被害が増えており、特に台風によっては甚大な被害が発生しています。
また台風や近年の豪雨の増加などにより、土砂災害の激甚化や形態の変化も懸念されています。 実際に2017年の九州北部豪雨の災害では、広範囲に渡って斜面崩壊や土石流が直接的な災害の原因となりました。
産業・生活・経済活動
産業や経済活動、そして私たちの生活にも影響を与えます。真夏日や猛暑日の増加による熱中症とそれによる死亡者数が増加傾向にあります。
2010年は記録的な猛暑となりましたが、この年に過去最多の熱中症死亡者数を記録しました。 この気温の上昇だけでなく、先ほどの自然災害などは製造業や商業、建築業など各種の産業にも甚大な損害をもたらしています。
台風や豪雨の発生による洪水、あるいは強風による影響で、生産施設への浸水や公共交通機関の遮断など経済活動を行う上で必要不可欠なものが失われ、損害を被りながら長期的な復旧を余儀なくされる、または破棄しなければならなくなるケースも見られています。
(出典:環境省「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~」,2018)
- 気候変動は農業や林業、水産業、自然生態系にも影響を与えている
- 気温の上昇により一部の地域では、米や果物などの収量の減少・品質の不安定化が起こっている
- 真夏日や猛暑日の増加による熱中症とそれによる死亡者数が増加傾向にある
気候変動の将来予測
このように気候変動が多くの影響や被害をもたらしているのは明らかです。
気候変動は地球温暖化など人為的、あるいは自然的要因で起こっていますが、もしこのまま進んでいけばどのように変化していくのか、将来的な予測も為されています。 その予測を、気温、降水量、海洋の分野でそれぞれ紹介します。
気温
日本の年平均気温は世界よりも進んで上昇傾向にありますが、今後の予測としては全国的に2.5~3.5℃上昇するとされています。
低緯度より高緯度、夏季より冬季の気温上昇が大きいとされていますが、夏季の極端な高温の日は最高気温が2~3℃、冬季の極端な低温の日でも最低気温では2.5~4℃の上昇が予測されています。
これにより冬日、真冬日の日数は減少し、熱帯夜や猛暑日の日数が増加すると考えられています。
降水量
降水量に関しては年降水量が北日本で増加し、太平洋側も含め春季や秋季の降水量、大雨や短時間強雨の発生頻度は全国的に増加、無降水日も増加するとの予測が立てられています。
一方で積雪や降雪は東日本の日本海側を中心に減少しますが、北海道内陸の一部では増加するとの見方もあります。
海洋
日本近海の海面水温は長期的に上昇し、地球温暖化対策をとったとしても、その上昇は続くと予測されています。
(出典:環境省「日本における気候変動による将来影響の報告と今後の課題について(中間報告)」,2014)
- 日本の年平均気温は、今後全国的に2.5~3.5℃上昇すると予測されている
- 冬日、真冬日の日数は減少し、熱帯夜や猛暑日の日数が増加する
- 日本近海の海面水温は長期的に上昇し、地球温暖化対策をとったとしても上昇は続く
気候変動に適応した行動を
気候変動は現在進行形で起こっていることであり、容易に改善できるものではなく、今後もその影響や被害は何年も続くと予想されています。
改善できるように温暖化対策などは持続的に行っていかなければいけないですが、 その結果が出るのは先のことであり、現状を生きていくためには今の気候変動に適応した行動をとらなければいけません。
今の気候変動はこれまで行われてきた人間活動の結果です。今の私たちに求められていることは、この気候変動の要因を1つでも多く取り除きつつ、気候変動と付き合っていくことです。
気候変動による影響や被害、そしてその要因について知り、私たちができること、すべきことを1つ1つ行っていくことをおすすめします。
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